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みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

私は1年半くらい前から物語ブログを始めたのですが、毎年個人的にお気に入りの小説ブログ様に自分て作った賞を勝手におくりたいと思いまして、こんな賞を作ってしまいました。名付けて…!

★☆自分的小説ブログ大賞☆★

生意気にすみません。賞品なんてありませんが…(苦笑)。

ちなみに、過去の受賞者・受賞作はこちら!

≫≫ Back Number
第1回 自分的小説ブログ大賞 (2013)  けい『夢叶』 
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-116.html
第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)  河上朔『wonder wonderful』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-183.html

超個人的な賞を快く受け取ってくれた受賞者様に、ただただ感謝です><。


しかし、まだまだ他にも素敵な小説ブログはわんさかあります!

そこで気が早いのですが、早速今年版の準備をして行こうと思っていまして、ここにその候補作を見つけ次第、勝手に更新&紹介させて頂こうかと思っています。最終的に年末、こちらでUPした候補作の中から、今年の大賞を選ぶ予定です。(惜しくも大賞を逃した作品は、来年度の候補作品としてそのまま残ります)

良ければみなさんも、ちょくちょくこちら覗いてみて下さいね☆
読むものをお探しの方のソムリエ的な役割ができたら嬉しいです。

候補作のブログ様で「気持ちは嬉しいけど、自分は遠慮したいかも…」という方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ削除いたしますので、気にせず、言って下さいね^^


★ 第3回 自分的小説ブログ大賞 (2015)候補作一覧 ★

①お名前  :松原きのこ さん
 ブログ名 :『なついてくれてサンキューな』(休止中?)
 ブロアド :http://neboushitaze.blog.fc2.com/
 小説名  :『はぐれ者のおっさん』(短編小説)
 第1話  :http://neboushitaze.blog.fc2.com/blog-entry-14.html
  選 評 :私が文部科学的な何か or 学校の先生だったら、夏休みの課題図書に推薦したいです☆

②お名前  :lime さん
 ブログ名 :『 小説ブログ「DOOR」 』
 ブロアド :http://yoyolime.blog83.fc2.com/
 小説名1 :『凍える星』(中編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-669.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-671.html
  選 評 :小説ブログってこんなにレベルが高いんだ!私的「このミステリーがすごい!」作品☆
 小説名2 :『KEEP OUT』シリーズ(長編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-304.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-305.html
  選 評 :人間の禁域に触れる時、人は目をそむけたくても、それができず、目が離せなくなる…!lime さん、あなたはなんと恐ろしい(もちろん、いい意味!)ストーリーテラーなんですか!
 小説名3 :『モザイクの月』(中編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-813.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-814.html
  選 評 :どこか心に仄暗さを抱えた学生3人と彼らに絡んでくる決してきれいではない大人たち。登場人物の心情描写や行動が徐々に絡み合い、生まれてしまう悲劇とは…?待ち受ける怒涛の後半展開に息をのむサスペンス小説。

③お名前  :大海彩洋さん
 ブログ名 :『 コーヒーにスプーン一杯のミステリーを 』
 ブロアド :http://oomisayo.blog.fc2.com/
 小説名1 :『清明の雪』(長編小説/ミステリー)
あらすじ  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E3%80%90%E6%B8%85%E6%98%8E%E3%81%AE%E9%9B%AA%E3%80%91%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%81%AE%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%A8%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%99%E3%81%98
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E2%9D%841%E3%80%80%E5%8F%A4%E3%81%84%E5%AF%BA%E3%80%80%E9%BE%8D%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BA%95%E3%80%80%E5%B9%BD%E9%9C%8A%E3%81%AE%E6%8E%9B%E8%BB%B8%20
  選 評 :このミステリーの一番の謎はブログ小説なのに紙の香りがすることかもしれない!書籍化希望☆
 小説名2 :『天の川で恋をして』(短編小説/恋愛)
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-16.html
  選 評 :長編ミステリーを得意とする大海さんが短編×恋愛モノ!?と聞いたら、飛びつかないわけにはいかない。読んだ感想はもうこの一言しかありませんでした。「お見事!!」

④お名前  :ヒロハルさん
 ブログ名 :『 三流自作小説劇場 』(休止中?)
 ブロアド :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/
 小説名  :『それでも私を愛してくれますか』(長編小説/SF)
あらすじ  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-674.html
 第1話  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-675.html
  選 評 :衝撃のラストに、あなたは『それでも私を愛してくれますか』。SF×恋愛小説の切なさがここに!!

⑤お名前  :ぐりーんすぷらうとさん
 ブログ名 :『修羅の門・刻 夢小説』
 ブロアド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/
 小説名  :『limeさんの絵につけた超SSS』(ショートショート)
 作品アド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/blog-entry-321.html
  選 評 :普段は夢小説を書かれているぐりさんが②でご紹介したlimeさんと物語×絵コラボ。熱望してたオリジナル作品も期待を裏切りません!

⑥お名前  :葉嶋ナノハさん
 ブログ名 :『はななぬか』
 ブロアド :http://hanananuka.sakura.ne.jp/index.html
あらすじ一覧 :http://hanananuka.sakura.ne.jp/syousetu-okiba.html
 小説名1 :『椅子カフェ堂』(長編小説/恋愛)
 第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0isucafedou-top.html
  選 評 :美味しい物語展開。満腹感の味わえる結末。嬉しい番外編は別腹でまだまだいける!椅子カフェ堂に恋をしたのは作中のお客さんだけではありません。一読者の私もです!
小説名2 :『ななおさん』(中編小説/恋愛)
第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0nanaosan-top.html
選 評 :和菓子屋を営む壮介さんのもとに嫁いだ、ななおさん。わけあり『和』カップルの織り成す日常が優しい雰囲気で描かれています。これを読むと、いざ鎌倉着物デートしたくなります!なんと『ななおさん』は、アルファポリス様より書籍化!その関係で、現在冒頭数話と番外編のみUP。

⑦お名前  :空野みちさん
 ブログ名 :小説家になろう 『 空野みちさんのマイページ 』
 ブロアド :http://mypage.syosetu.com/25780/
あらすじ一覧 :http://ncode.syosetu.com/n5126g/
 小説名 :『 夏目さんと私』 (長編小説/恋愛)
 第1話  :http://ncode.syosetu.com/n5126g/1/
選 評 :登場人物が魅力的で名前も素敵!森見登美彦さん(より個人的に好き!)を彷彿させる『和』感覚で小粋な文章。丁寧に紡がれる物語に、ただただ、続きが待ち遠しい。なんていいところで~、くうっ!!

⑧お名前  :小池安雲(agumo)さん
 ブログ名 :『小説カラスト』
 ブロアド :http://karasuto.x.fc2.com/index.html
 小説名1 :『フレイム・イン』(長編小説/恋愛)
あらすじ:http://karasuto.x.fc2.com/framein/top.html
 第1話  :http://karasuto.x.fc2.com/framein/00.html
  選 評 :行動派で頑張り屋の秘書課OLが主人公。彼女の意中の人がデキる男でまた素敵。オフィスラブものってあまり興味がなかったのですが、安雲さんの描く物語はオフィスラブ+aって感じで面白い!個人的にドラマ化向きだと思うんですけど、どうでしょうテレビ局さん。
小説名2 :『ブーメラン・ラブ』(長編小説/恋愛)
あらすじ:http://karasuto.x.fc2.com/boomerang/top.html
第1話  :http://karasuto.x.fc2.com/boomerang/1.html
選 評 :「フレイム・イン」で登場していた華英先輩が主人公。(話の時系列的にはこちらが先かな)彼女の社交術、学びたいです。でも、完璧女子じゃなくて恋愛下手なかわいい一面もあっていい。私の新たな憧れのヒロインになってくれました。

⑨お名前  :けいさん
 ブログ名 :『憩』
 ブロアド :http://meuniverse.blog10.fc2.com/
 小説名  :『セカンドチャンス』(中編小説/青春)
あらすじ:http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-274.html
 第1話  :http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-275.html
  選 評 :突如謎の青年に誘拐されてしまった新社会人(代議士事務所勤め)の主人公・策。彼は誘拐犯と奇妙な逃避行?を通じて、自分の中のセカンドチャンスと向き合うことになる…。誘拐から生まれる友情が誰かの心の傷を癒すかもしれない。第1回分的小説ブログ大賞受賞作『夢叶』のスピンオフですが、これだけでも充分楽しめますよ!

⑩お名前  :梅谷百さん
 ブログ名 :魔法のiらんど『梅谷 百.さんの作品一覧』
 ブロアド :http://s.maho.jp/book/3b0ae2dbb66d9869/
 小説名  :『キミノ名ヲ。』/(長編小説/歴史)
あらすじ:http://s.maho.jp/book/3b0ae2dbb66d9869/6960493028/
 第1話  :http://s.maho.jp/book/3b0ae2dbb66d9869/6960493028/1/
  選 評 :現代から鎌倉時代末期にタイムスリップした姉弟。姉は護良親王、弟は足利高氏の元に辿りつき、やがて敵同士となってしまう…。あまり目立たなかった歴史(鎌倉幕府滅亡~南北朝の動乱あたり)を恋愛と絡めてこんなにもわかりやすく魅力的に描いてしまうとは!携帯小説だからとあなどるなかれ。話題となって書籍化済。でも、ネットで全話読めます!


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読者様に感謝を込めて、今回タカシ視点の番外編を描いてみました。こちらもどうぞお楽しみ下さい。あなたにとって素敵なクリスマスになりますように☆ Merry Christmas ☆

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「今年の文化祭実行委員は、お前に任せるわ」

放課後、生徒会室に呼ばれた俺は、先輩からあることを頼まれていた。

「嫌ですよ。面倒くさい…」

先輩でも、前生徒会役員でも、言うべきことは言わせてもらう。

「現生徒会のやつら困っててさ。頼むよ。お前なら、うまく仕切れるだろう?まわりの評判(ウケ)もいいし、頭もまあまあいい」

都内でも有名な進学校。そこで堂々学年1位の俺(高2)に『頭もまあまあいい』とぬかすのは、きっとこの人ぐらいだろう。顔をそむけている俺に先輩は別の切り口で攻めてきた。

「タカシ、お前、進路どうすんの?」
「…いきなりなんですか?」

先輩はふっと笑った。

「もしかして、留学を考えてるんじゃないか?」

驚いた。

「…どうしてそれを?」

先輩は笑った。

「理由は簡単。俺とお前は似てるから。同じことを考えてるんじゃないかと思ってさ。日本の大学より向こうの大学の方が性にあってると思ったんじゃないか?もし良かったら、情報提供してやる。俺が調べたからにはぬかりなし!」

これだから、似たタイプの人間は嫌なんだ。思考回路や将来プランまで、なんだかかぶってそうで…。

「…前生徒会副会長の、スギヤマ先輩の頼みじゃ、しょうがないですね」

俺がそう言うと、先輩はニヤリと笑った。

「別に文化祭実行委員の頭をはらなくてもいいさ。委員長になるやつをフォローしてやればそれでいい。お前なら、フォローも得意だろう?」
「かいかぶってますよ。それなら、頭をはったほうが楽じゃないですか?他人に判断を委ねるの時間のロスだし」
「案外そうでもないんじゃないか?俺は前生徒会の『副』会長、楽しくやってたぞ?」
「…それ、疑問だったんですよね。なんでスギヤマ先輩は生徒会長をやらなかったんですか?」

スギヤマ先輩とは何気に中学からの付き合いだ。学年は一つ違い。俺も先輩も中学時代はサッカー部でキャプテンをつとめた。根っからのリーダー気質。…まあ、似た者同士なんて思いたくないけど。

「その疑問の答えはお前に任せる!」
「…は?なんですか、それ」
「タカシは認めたくないだろうけど、俺とお前って似た者同士っていうか、キャラかぶってんだよ!どうせ答えは一緒だ。お前なら、余裕でわかるだろ?」
「は?」
「んじゃ、担任に呼ばれてるから俺、行くな。タカシ、しっかり頼んだぞ」

先輩はそう言って生徒会室を後にした。くそ、逃げやがって。

こうして、俺は文化祭実行委員を引き受けることになったのだ。まさかそこであいつらに会って、日本にいるのも悪くないと後の進路を変えることになろうとはこの時、思いもよらなかった。

一週間後、学生会議室ではじめての文化祭実行委員の集まりがあった。各クラスの実行委員の顔合わせ。

一番乗りしたのは俺だった。…ったく、集合時間5分前になっても、誰も来やしない。みんなのやる気のなさがうかがえる。この調子じゃ、やっぱり俺が頭をはって仕切ることになるんじゃないか?…実行委員長か…。面倒くさいなあ。

― 案外そうでもないんじゃないか?俺は前生徒会の『副』会長、楽しくやってたぞ? ―

…ふうん。

― お前なら、余裕でわかるだろ? ―

魔が差したのかもしれない。先輩の答えも気になるけど、だからってあの人の思惑にまんまとハマるのも癪だった。もしかしたら一矢報いたかったのかもしれない。

「よし!」

俺はチョークをつかむと、まだ誰も来ないのをいいことに会議室の黒板にあるメッセージを残した。そして、急いで教卓の中に隠れた。

『 文化祭実行委員へ

伝統を受け継ぐべし。

① 最初の文化祭実行委員の集まりで1番最後に来たやつ(ラスボス)が委員長。
② 最後から2番目のやつ(ドンマイ)が副委員長。
③ 最後から3番目のやつが書記兼会計(『副』委員長補佐)。  』

後はタイミングを見計らって、まるで今来たように装えばいい。伝統なんて大嘘もいいところだ。我ながら、どうかしてる。ふざけてる。でも、おかげであいつらに会えた。

「ラスボス、名前は?」
「サイトウ。サイトウコウタ…です」

おかげで、高校生活が本番に向かって動き出した。

「最後から2番目の私が副委員長みたい。ミサワユリです。よろしくね」

めちゃめちゃ楽しくなった!

「ラストから3番目の俺が、副委員長補佐でーす。うそうそ。本当は書記と会計、兼任役ね。俺、マエダタカシ。よろしくな」

― お前なら、余裕でわかるだろ? ―

認めたくないけど、似た者同士でキャラのかぶってる先輩なら、俺のしたことをわかってくれるんじゃないかな?



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ chara『My Way』 ★
http://nicoviewer.net/sm1077558
なぜかこれを聞いてました。charaのカバー。

本当はもっと長く書きたかったのですが、時間的な都合でここまで。ちなみに副会長のスギヤマ先輩(マコト)は別物語の登場人物。もしかしたら、またタカシの番外編(続き?)を書くかもしれません。


【第31夜】 ノーマーク (マコト『虹の消えた後』シリーズ1/青春)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-32.html

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みなさま、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

おかげさまで、物語ブログをはじめて一年半?くらい経ちました。2014年もたくさんのご訪問、拍手、コメント等、本当にありがとうございました。(自分の物語UPでいっぱいいっぱいで、あまりこちらから訪問ができず、コメントも残せず、申し訳ありません)

そんな数少ない訪問の中で、毎年個人的にお気に入りのブログ様に自分で作った賞を勝手におくってしまう自分的小説ブログ大賞の発表です。(賞品なんてありませんが…。生意気にすみません。良ければご紹介をさせて下さい)

今年は本当に悩みましたよ…。悩んで悩んで決められないのもダメだと思い、候補8作品の中から心を鬼?にして選びましたよ!
第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)候補作一覧
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-119.html

心の準備はいいでしょうか…?

それでは、発表します!!

(良ければ、脳内でドラムロールのご準備を♪)

2013年は、けいさんの『夢叶』(長編/青春小説)!

そして2014年、『 第2回 自分的小説ブログ大賞 』はっっ!!

(ドラムロール♪ + じゃじゃーん!!(←古いな))

河上朔さんの小説ブログ『therehere』です!!

そして、そこで完結済のファンタジー小説『wonder wonderful』です!!!

おめでとうございます~!!

河上朔さんの『wonder wonderful』はネット小説として人気&話題となり、出版社の目にとまって、すでに書籍化もされています。(でも、いまだにネットで全話読めるんですよ。太っ腹!)書籍化作品は外すべきか悩んだのですが、ここは平等に。生まれは同じネット小説ですし。

私の中でファンタジーと言うのは10代の時、本好きにしてくれた思い入れのあるジャンル(きっかけは荻原規子さんの『勾玉三部作』)。なのでシビアに見てしまいます。だんだん自分も成長し、たくさんの本も読んで、このジャンルを楽しめるのはきっと10代まで。大人になったらハマることなんてないだろうなあと思っていました。

と・こ・ろ・が…。

違いました!『wonder wonderful』は大人もハマる異世界トリップファンタジー。主人公は20代女子。飛ばされた異世界で妹は歓迎されているのに、主人公はなぜか厄介者扱い。(事情あり)でも、彼女は持ち前の性格と社会人スキルで立ち向かって行きます…。最初は冷ややかだった異世界の住人たち。それが愛すべき人々に変わっていく。コメディ要素もあって笑いながらよんでいたのですが、途中からずっと泣きっぱなしでした。でも、それはかなしい涙ではなく、とても清々しいものでした。(この幸福感、第二の有川浩さんだと思う!)ちなみに私は物語中盤から出てくる名脇役・シルヴィが大好きで、彼女のその後が知れるスピンオフの書籍化もとても嬉しかったです。(後日、河上朔さんからお礼メールを頂きました。お忙しい中、本当にありがとうございました!)

ぜひみなさま、河上朔さんの『wonder wonderful』ご一読を~^^

↓↓ 詳細はこちら ↓↓

  お名前 :河上朔さん
 ブログ名 :『therehere』
 ブロアド :http://here.x0.com/
 小説名  :『wonder wonderful』(長編/恋愛ファンタジー小説)
 あらすじ :http://here.x0.com/text/ww/index.htm
 第1話  :http://here.x0.com/text/ww/0.htm
書籍情報 :http://www.amazon.co.jp/wonder-wonderful-%E4%B8%8A-%E3%83%AC%E3%82%AC%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E6%B2%B3%E4%B8%8A/dp/4872579445

今回は、河上朔さんの『wonder wonderful』でしたが、他にも素敵な小説ブログはわんさかあります!(今回惜しくも大賞を逃した作品は来年度の候補作品として、そのまま残りますのでご安心下さい!今回選ぶことができず、本当に本当に、すみません><!!)

これからも、みなさまのブログにぜひお邪魔させて下さい。

良ければ、今後も『1001夜ショートショート』をどうぞよろしくお願いします!


≫≫ Back Number
第1回 自分的小説ブログ大賞 (2013) けい『夢叶』(長編/青春小説)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-116.html



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敗戦後、日本に降り立った占領軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの残した謎の言葉がある。

『ジェネラル・イシイはどこにいるか?』

   *

アキモトが東大医学部血清学教室から勤務先を満州の研究施設に変えたのは、ただ家族と離れたくなかったからだ。

戦時中は誰もが「お国のために」と命をかけて戦っていた。男子は赤紙がきたら兵士として戦地にいくのは当然だったし、女子や子どもは兵器や航空機の工場などで厳しい労働を強いられた。これまで軍役を免れていた医学者たちも「科学者の戦争動員令」の発令により、例外ではなくなってしまった。

アキモトには妻と小さい子どもがいた。彼らを残して戦地に向かうことはなるべく避けたかった。だから満州行きの話が来た時、飛びついたのかもしれない。日本を離れることになるが、家族も同行することができる。生活環境も申し分ない。しかも研究も続けられるというではないか。断る理由などなかった。

しかし、満州に訪れた彼が巨大な研究施設を前に絶望したのはなぜろう。

『お前は何も知らずに来たんだな』

先に赴任していた友人の暗い表情のせいか、

『今日、俺はマルタを三本倒したよ』

嬉々とした様子で自分の仕事を語っていた同僚のせいか、

『よく来たね、アキモト君』

身の毛がよだつほどの恐怖を覚えた、ある人物に出会ったせいか-。

   *

巨大な研究施設だった。ロの字型に立てられた研究棟を中心に近くには鉄道、二十以上もある官舎、大講堂、プール、庭園、浴場、運動場、神社などもあり、そこに医学者や軍人が三千人ほど働いていた。生活環境においては申し分なく、これなら妻も安心するだろうとアキモトは思った。そこはまるで築きあげられた一大都市のようだった。

研究施設の表向きの仕事は防疫給水を行うというものだった。兵士の感染症予防のための衛生的な給水体制の研究。感染症対策ならば、アキモトのこれまでの研究がおおいに生かせるに違いない。自分の研究は人々を救うものだと彼は信じて疑わなかった。

施設にまだ慣れないアキモトがふと研究棟の廊下の窓から内庭を見下ろすと、ベンチに座っているロシア人女性に目がいった。彼女は子どもを大事そうに抱えている。

なぜこんなところに彼らはいるのだろう?捕虜だろうか?

「もしかして、アキモトじゃないか?」

友人と再会したのはそんな時だ。しかし、アキモトは一瞬彼が誰だかわからなかった。高校時代の同級生は昔の面影をなくし、生気のない顔をしていた。

「アキモト、お前もとんでもないところに来てしまったな」
「とんでもないところ?」
「…知らないのか?そうか。お前は何も知らずに来たんだな」

アキモトは少し怪訝な顔をしたが、友人は何も言わない。アキモトは気まずい雰囲気に話題を変えようと、窓の外を指差した。

「なあ、あそこにいるのはロシア人の母子(おやこ)だろう?どうしてこんなところにいるんだ?」

その質問にも友人はなぜか答えなかった。黙り込み、よりいっそう暗い表情になる。

その時、数人の医学者たちが彼らの横を通り過ぎて行った。

「なあ、今日はマルタを何本倒した?」
「今日、俺はマルタを三本倒したよ」
「俺の負けか。俺は二本だった」

彼らの奇妙な会話にアキモトは首をかしげた。マルタとは一体何だ。彼らは木を倒す作業でもしていたのだろうか?これだけ大きい研究施設だ。アキモトの知らない仕事があるのかもしれない。

そんなアキモトの様子を察したのか、友人は重い口をようやく開いた。

「アキモト、本当にお前は何も知らずに来たんだな」

次の言葉にアキモトは耳を疑った。

「マルタとは、人体実験用の捕虜のことだ」

   *

マッカーサーの探している男の行方は依然としてつかめなかった。

満州に存在していたと言われる謎の極秘部隊。敗戦色濃厚だった当時の日本は国際法に背くことで戦争を続けようとしていた。細菌やウイルス、それらが作り出す毒素で人間を戦闘不能にし、死に追いやる生物化学兵器の研究、実践。捕虜を人体実験の道具とし、大きな成果をあげた。

 “ 731部隊 ” 

マッカーサーは、その部隊を作った男を探していた。

   *

「よく来たね、アキモト君」

声がして振り返ると、そこには日本人らしかぬ背の高い男が立っていた。

「…イシイ軍医中将」
「アキモト君、ここにはもう慣れたかね?」

アキモトは何も答えなかった。イシイ軍医中将は口の端だけで笑った。

「医学者は自尊心が高い。私もだがね」

アキモトは視線を窓の外に戻し、語りだした。

「…少し前、ここから見える内庭のベンチに、ロシア人の母子が座っていたんです。イシイ軍医中将はご存知ですか?」
「いや、知らないな」
「姿がないということは、彼らはおそらくこの世にはいないのでしょう」
「…君は何を言いたいのかな?」

アキモトはイシイ軍医中将を見つめた。

「言いたいことも、言えることも、何もありませんよ。もう人を救う医学者でない私に」

イシイ軍医中将は声を上げて笑った。

「私にそんな口をきくとはたいした度胸だ。面白い。君に一つ教えてやろう。この戦争、日本は負けるだろうね」

イシイ軍医中将の意外な発言にアキモトは驚いた。この男こそ日本の勝利を信じ、「お国のため」と真っ先に叫ぶような人物だと思っていた。

「負ければ、他国の支配を受けるだろう。他人に虐げられること。私はそれが心底、嫌でね。だからその時がきたら、うまくやろうと思っているんだ」
「…どういうことですか?」
「国際法が禁止している研究だ。本当のところ、喉から手が出るほど、その研究資料を欲しがる輩(やから)がいる」

アキモトは言葉を失った。この男は何を言っているのだろう?

「私を悪と呼ぶなら、そいつらは一体何だろうね?」

   *

その男は研究資料を手にGHQ本部を訪れると、口の端だけで笑った。

…731部隊の者は、戦犯に問われることはなかったという。医学者たちはその後、日本医学界の第一線に復帰、能力を買われ渡米した者もいた。日米間でどのような密約があったのか…知る者は限られている。

<米軍調査官ヒルのレポート (抜粋)>
…このような情報は人体実験につきまとう良心の咎めに阻まれて我々の実験室では得られないものである。731部隊員の戦犯免責と交換に、こんな貴重なデータが手に入るなら安いものだ…。

『 私を悪と呼ぶなら、そいつらは一体何だろうね?』

   *

アキモトは研究棟の廊下の窓から内庭を見下ろしていた。母子の姿がなくなっても、そこを眺めるのが彼の日課になっていた。

研究意欲に燃えていた頃の自分が懐かしい。ただ純粋に人を救うためにと研究に没頭していた頃の自分が…。

自分は、もう医学者ではない。もしかしたら、人間ですらないのかもしれない。

自責の念にかられていると、やがて、視界の先におぼつかない足取りの子どもが入ってきた。
母親の姿はなく、その子は一人ベンチに座り、ぼんやりとしている。

…まさか、あの子どもは…。

「生きていたのか…」

それを見たアキモトは悲痛な声を漏らし、泣き崩れた。
床に落ちる涙は、彼がまだ人間であることをなんとか伝えようとしていた。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 知ってるつもり『731部隊と医学者たち』 × noisycell 『innocence』 ★

石井四郎軍医中将、秋元寿恵夫さん、マルタと呼ばれた人々、単に戦争の悲劇を書きたかったのか、自分でもよくわかりません。影響を受けた歴史番組の内容をそのまま文章におこしただけという気もするしなあ。ちなみにイシイ軍医中将とアキモトのやりとりは私が勝手に作った話。半分フィクション感覚でお読み下さい。

① 知ってるつもり『731部隊と医学者たち』
数ある歴史番組の中で、これを越えるものにまだ出会ってません。歴史好きの父とよく見ていました。今思うと、編集が凄くうまかったのかな。BD出てるなら、買うのに…。この『731部隊~』は衝撃的で、最初から死体の写真はバンバンでるわ。とにかく容赦なくて。恐くて震えた記憶が。今回、再度視聴できるとは!
http://www.dailymotion.com/video/x1uldp5_%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%81%A4%E3%82%82%E3%82%8A-731%E9%83%A8%E9%9A%8A%E3%81%A8%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1_tech

② noisycell 『innocence』
https://www.youtube.com/watch?v=kHCTl5V-zV4
ちょっと前にヨシノサツキさんの「ばらかもん」にハマってたんですが、そこで使われてた音楽が凄く良かったんです。そのままの流れで、ちょうど今回のを書いてるときに聞いてたのがこれでした。私の物語とはあってないかもですが。もう一つの音楽である「らしさ」は以前他の物語としてUP済なので、そちらも良ければ。
【第143夜】 らしさ 
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-171.html

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一通の手紙が、人間の運命を変える。

そんなこと、思いもよらなかった。

一通の手紙が、人間の運命を変える。

そんなこと、思いもよらなかった。 あの頃の、僕らは…。

   *

恭(きょう)ちゃんのお葬式には、多くの人が訪れた。

「このたびはご愁傷様です」
「突然のことで大変でしたね」
「心からお悔やみ申し上げます」

すべての言葉が私の前をむなしく通り過ぎていく。ねえ、みんな何を言ってるの…?

「麻美(あさみ)ちゃん?」

恭ちゃんの弟の潤(じゅん)ちゃんが、俯いている私を心配して声をかけてくれた。お兄ちゃんが亡くなって辛いのは、彼も同じなのに…。

「奥で休む?」
「ごめん、大丈夫だから」

重い頭を上げて、なんとか彼に微笑もうしたけど、顔が強張った。それを見て、潤ちゃんは言った。

「僕たち、こんなところで何をしてるんだろうね」

恭ちゃんの家族の心遣いで、私は遺族席に座っている。遺影を見つめると、そこには大好きだった彼の笑顔があった。

「…本当に何をしてるんだろう」

私もわからなかった。幼馴染の私たちは、同じ街で仲良く暮らしていたはずだった。なのに、なぜこんなことになってしまったのだろう。

「自殺だったそうよ」
「まあ、優等生の恭平(きょうへい)くんが?」
「家庭に何か問題でもあったのかしら?」

どんな言葉も私の前をむなしく通り過ぎていく。ねえ、みんな何を言ってるの…?

『 麻美、大丈夫か? 』

一番声をかけてもらいたい彼はここにはいない。もういない。

『好きだよ、麻美』

小さい頃から、ずっとずっと好きでようやく気持ちを伝えることができた。実は同じ気持ちだったことを知って嬉しすぎて、しばらく何も手につかなかったほどだ。

『…だからって、ちゃんと受験勉強はしなきゃだろう?ほら、教えてやるから。麻美の志望校は、Y高校だっけ?』
『うん。恭ちゃんはM学館だよね?あーあ、私も、もう少し頭が良かったら、一緒の高校に行けたのになあ』
『いいじゃん。家は近所なんだから。会えなくなるわけじゃない』
『…恭ちゃんは…』

…恭ちゃんは淋しくないの?

そう言おうとしたら、彼が私を抱き寄せて、唇をふさいだ。

『…受かったら、いろんなところにふたりで行こう。たくさん遊ぼうな』
『うん、約束ね!』

私たちは無事志望校に合格した。離れ離れになっても、休日や時間を見つけては会うようにした。お互い部活やバイトに忙しくても。何もかも、これからだった。そのはずなのに…。

「高校の屋上から飛び降りたそうよ」
「まあ」
「自分で柵を乗り越えなきゃ、落ちることはまずないって聞いたわ」

ねえ、みんな何を言っているの…?
好き勝手いう弔問客の表情はみんな同じだ。何もなくて、何も見えない。…まるで、のっぺらぼうだ。

「麻美ちゃん、無理しないで。顔が真っ青よ」

恭ちゃんのお母さんが、震える私の手を握ってくれた。子どもの死に傷つかない親なんていない。

「恭平は幸せ者ね。麻美ちゃんに、こんなに思われてたんだから。今日は来てくれて本当にありがとう」

気丈に振る舞う彼女の前で、私が泣いちゃいけなかった。私は頭を下げて席を立った。

「麻美ちゃん、家まで送るよ」

式場を出ると、後ろから潤ちゃんが追いかけてきた。

「そんな悪いよ」
「母さんがそうしろって」
「母さんにとって、麻美ちゃんは大事な家族みたいなもんだからさ。もちろん、僕もね」

潤ちゃんは、そう言って笑った。

「…ありがとう」

うまく巻けていなかったマフラーを潤ちゃんは巻き直してくれた。私より一つ下の恭ちゃんの兄弟。彼によく似た弟の潤平(じゅんぺい)。

いつの間に、潤ちゃんは私の背を追い越したのだろう。あんなに泣き虫だったのに、もう立派な男の子だ。私たちの背中に隠れてた人見知りの潤ちゃんが。恭ちゃん、びっくりだよね?ねえ、聞いてるでしょう?

返事なんてあるわけないのに、そう彼に呼びかけてしまう。
恭ちゃん。恭ちゃん。そう何度も。何度も。

『 麻美、大丈夫か? 』

恭ちゃん、私は全然大丈夫じゃないよ。

「…麻美ちゃん?」

この人は恭ちゃんじゃない。それはわかっている。

- 自殺だったそうよ -

なのに、潤ちゃんにすがりつくように、彼にしがみついて声を上げて泣いていた。

「送ってくれて、ありがとう」

家に着くと、潤ちゃんは何事もなかったように笑った。

「気にしないで。じゃあ、行くね。…あ、麻美ちゃん家のポスト、凄いことになってる」

彼の指さす方を見ると、私の家のポストは広告であふれかえっていた。

「本当だ」

うちの両親は共働きだから、家事は私の仕事だった。ここ数日、気力のなかった私のために、両親は家のこともなるべくこなしてくれていたけど、ポストまでは気が回らなかったらしい。

「あ、いきなり開けない方が…」
「え?」

ポストを開けると、バサーッと中に入っていたものが一気に落ちてきた。「やっぱり…」と潤ちゃんが呟くのが聞こえる。情けない。恥ずかしくて急いでしゃがんで拾い始めた。優しい潤ちゃんが手伝ってくれる。

最後の一枚に二人で手を伸ばした。手紙だった。差出人の名前を見て、同時に私たちの呼吸が止まる。

- 田坂 恭平 (たさか きょうへい) -

…恭ちゃんからの…手紙…?

「…うそ」
「麻美ちゃん、あけてもらってもいい?それとも、僕があけても平気?」

私は頷いた。潤ちゃんが急いで手紙を拾い、その封を破いた。

それは確かに恭ちゃんの字だった。懐かしい彼の字。
受験勉強のアドバイスを私のノートにたくさん書き込んでくれた。ちょっとくせのある愛しい字。

先に読み終えた潤ちゃんの反応がなく、心配になって、その顔を覗き込んだ。
彼の頬には、大粒の涙がこぼれていた。

「…潤ちゃん?」

私は、彼から手紙を奪い取っていた。

   *

一通の手紙が、人間の運命を変える。

そんなこと、思いもよらなかった。

一通の手紙が、人間の運命を変える。

そんなこと、思いもよらなかった。 あの頃の、私たちは…。

   *

編入試験は、思っていたより難しくなかった。もしかしたら、恭ちゃんと一緒に勉強しているうちに、私の学力は彼に追いついたのかもしれない。そう錯覚しかけたくらいだ。こんなことなら、最初から同じ高校を受験すれば良かった。

『一人で大丈夫?』
『大丈夫』
『春になったら、僕もすぐ行くから』
『うん、待ってる』

冬枯れの空の下、彼の通った高校の門をくぐる。
コートも着ない時期外れの編入生の制服は真新しくて、生徒から浮いていた。

「あの子、誰?」
「見かけない顔だね」
「転校生?」

すべての言葉が私の前をむなしく通り過ぎていく。ねえ、みんな何を言ってるの…?
好き勝手いう生徒の表情はみんな同じだ。何もなくて、何も見えない。…まるで、のっぺらぼうだ。

『 麻美、大丈夫か? 』

恭ちゃん、私は全然大丈夫じゃないよ。
だから…。

だから、ここに来たの。

白い息に染まる手は震えているけど、私の目に涙はもうなかった。

   *

 麻美へ 

この手紙が届く頃、俺はこの世にいないかもしれない。

約束を守れなくて、ごめん。

俺はもうすぐ殺される…。



=====================================

=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ LOVE PSYCHEDELICO『my last fight』 × ドラマ『人間・失格~たとえばぼくが死んだら~』 ★

【第142夜】でLOVE PSYCHEDELICOの一番好きな曲でいつか物語が書けるといいなあと言っていたのですが、まさかこの物語と結びつくとは。初めてのミステリーになりそう。もともとは【第72夜】の時にイジメを題材にしたドラマを見たのが、きっかけ。
【第142夜】 Your Song
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-165.html
【第72夜】 A Hazy Shade of Winter(冬の散歩道)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-78.html

① LOVE PSYCHEDELICO『my last fight』
彼らの中で一番好きな曲です。
http://nicoviewer.net/nm5935553

② ドラマ『人間・失格~たとえばぼくが死んだら~』
http://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E9%96%93%E3%83%BB%E5%A4%B1%E6%A0%BC-%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%81%88%E3%81%B0%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%8C%E6%AD%BB%E3%82%93%E3%81%A0%E3%82%89-DVD-BOX-%E5%A0%82%E6%9C%AC%E5%89%9B/dp/B000063EF8
衝撃的なドラマ。イジメにあい、突然死した息子。その死の真相を突き止める父親。ドラマの中で、彼の突然死に疑問を抱く恋人が出てきました。その女の子は死の真相の手がかりになる手紙を持ってたんです。結局、父親にそれを託すんですけど…それを見た時、もし私が彼女なら自分で真相を突き止めにいくかもと思い、今回この物語が生まれたのかな。

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みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!


語りべのrurubu1001です。

まず、最初に…次の物語更新が遅れていまして、すみません。

ちょっとプライベートであたふたしているのと(増税前ですしね←理由になってないかも)、自分と物語の距離感が最近どうも近過ぎるような気がして、うまく距離をとって付き合わねば…というのがありまして(謎発言に感じたらすみません←理由は後でわかるかも)

コメントはなるべく返信したいと思っています。

今日はひゃくさんより質問を頂いたこちらをお答えしようかと…。
他に興味のある方がいたら、ぜひ。

私も自分と物語の距離感をはかるにはいいタイミングに質問を頂けました。
(ひゃくさん、ありがとうございます!)


Q:rurubu1001さんの創作のルーツって、誰(何?)なんですか?

特に誰(何)があるわけじゃなく、気づいた時には物語を書き始めていました、学生の頃からかな?授業中とかにも。

どうも自分の中で、勝手に物語を語ってくれる「声」みたいなのがあるようです。物語の文章がそのまま頭に流れる感じ。それを聞きながら、ペンが走り出すというか、タイピングしてるというか…。なので、プロットや設定とかも特にありません。全部聞こえるがまま、感覚的に書いてしまっています。書いているときは、どうも無我の境地?らしく、寝食を忘れてしまいます。(なので、自分と物語との関係・距離感とうまく付き合っていかねば…というのがあるんですよね。しょんぼりです)

最近気づいたのは、その「声」にも種類というかパターンがある…らしいこと。

① 一気に物語の全体像が見渡せる核となる声(物語のラストを飾る文章が多い)があり、それを最初に聞いて書く場合(物語のラストを飾る文章の場合、ラストがどうしてそうなったのか、結→転→承→起の順にイメージ(映像?)が駆け巡り、起に着くと、折り返して声が生まれる。ある意味、プロット的なものかも)
② 最後まで(書き終えるまで)核となる声がわからず、他の(外野的な)声をきいて、なんとなく書き切る場合
③ 核になる声とかそんなの抜きで、ただ「声」があふれて、気づいたら書き終えている場合
④ 自分の中に「こんなものが書きたいなあ…」というリクエストがあって、声が生まれるのを待つ場合

①~④は重なる部分もありますが、今なんとなく整理するとたぶんこの4つかと思います。

参考までに、それで生まれた物語の例やら。

①なら、【第112夜】 BLITZ PRETZ (ブリッツ プリッツ) 、【第16夜】 同窓絵(どうそうかい) など。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-122.html
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-16.html
②なら、「サトシ『雨と誕生日』シリーズ」、「マコト『虹の消えた後』シリーズ」など。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-42.html
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-60.html
③なら、【第116夜】 I am a good girl 、 【第51夜】 少年の夢 など。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-127.html
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
④なら、「淑玲『宮廷浪漫』シリーズ」など。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-category-25.html

「声」の話は超個人的なことでしたので、ちょっと追記を…。
(かなり意味不明でしたよね…。感覚的ですみません><!)

物語が生まれるかどうか別にして、普段からなんとなくやっていた事があります。

映画でも本でも何でもいいんですが、ある作品を見て感動したら、特に心を動かされた場面を突き止め、その周辺をリピート再生し、何度も繰り返し見直します。自分がどうしてここでグッと来たのか、ひきつけられたのか、おさらいし、場面展開、演出、台詞、表情、音楽など、後で自分でこっそり脳内自動再生できるくらい叩き込む!(…とか言ってそれをやっていることに最近気づいたんですが…)

私の物語を読んでくれた方でグッときたなあ~というのがもしあったとしたら(とても恐れ多いですが)、それはたぶん私が昔見た何かの作品のグッときた場面だと思うのです。繰り返し見直したことで、いつの間にか潜在意識レベルに落とし込まれていたそれが私の物語が生まれる時に声を上げ、新しい違う形の物語をつくりあげてくれたんじゃないのかな、と。

で、ここからは物語を書くときに、なんとなく私が自分自身にリクエストしている事などを。

・物語の一番の盛り上がりはできればラストらへん希望!
→単に私の好み。「おおー!」と盛り上がって終了するのが好きなので。
・固い文章の物語の場合、会話文はさらっと軽いノリで。
→単に私の好み。重たくてもっさりするの苦手…。
・R指定にはならないように、よろしく!
→誰でも読めるようにしてほしい…。



Q:私、村上春樹って読んだことないんですけど、もしかしたら村上春樹ってこんな感じなのかなーって思っちゃったり(笑)

なんと恐れ多い!!ややや、全然違いますからね。私にとって春樹さんは難解な物語を書かれる方で、すとんと理解ができるものと、「???」となってしまうものがあるんですよね。未熟者ですみません…。ちかくのハルキストさんに、教えてもらって、いつか作品全制覇できるといいな。


Q:rurubu1001さんて、もしかしてコピーライターだったりします?

なんとまた恐れ多い!! OLさんです。少し司書さんみたいなお仕事をしています。


Q:好きな作家とか本とか。 はたまた、映画は?

どれもそうですが、どこかに青春要素のある作品が好きです。

好きな現代作家は…
・有川浩(ハズレなしってすごい!)
・東野圭吾(わりと最近の作品の方が好きかな)
・恩田陸(「夜のピクニック」以前の作品が好き)

最近気になるのは、河上朔さん。ブログ日記も面白くて^^ この方とは、笑いのツボや読書傾向が同じな気がする。河上さんは自分的小説ブログ大賞2014候補作でも紹介しています(もうプロの作家さんだろうに、ご本人の許可も頂けてとても嬉しかったです。良い方だ~)。読まれた方はわかると思いますが、有川さん好きにはたまらない作家さんかと。

本好き・読書にハマるきっかけをくれたのは、児童文学作家・荻原規子さんの「勾玉3部作」です。

学生時代は文学作品にも手を出してました。
・芥川龍之介(短編の神様!)
・夏目漱石(「夢十夜」第1・3・7夜の衝撃と言ったら…)
・坂口安吾(「桜の森の満開の下」に出会った瞬間、物語が飛び込んできた感覚が忘れられない)
・三島由紀夫(通学電車で美人さんが「金閣寺」を読んでて、すごくカッコ良かった!)
・シェークスピア(子供向けの簡単に書いた物語(入門書)みたいなのを読みました)

現在読書中の小説は…
途中
◎書籍
・多崎礼「夢の上」
・米澤穂信 「満願」
・山崎豊子「大地の子」

現在読書中の小説以外なら…
・菊池京子「KK closet スタイリスト菊池京子の365日 Autumn-Winter 」

これから読みたい本
・柳広司「ジョーカー・ゲーム」
・日本外史
・昆虫はすごい

・うしおととら
・ダイの大冒険


お仕事で漫画に多く接してるせいか、大人になってから漫画をものすごく読んでいます。羽海野チカさん、大好きです。少年漫画もガッツリ読みます。


好きな映画
・洋画
  「ショーシャンクの空に」
  「レオン」
  「バーレスク」
  「ビッグフィッシュ」
  「ロストイントランスレーション」
  「プラダを着た悪魔」
・邦画
  「かもめ食堂」
  「ソラニン」
  「木曜組曲」
  「天空の城ラピュタ」
  「時をかける少女(細田版)」
余談ですが、昔のドラマを見るのも好き。
・好きなドラマ
  「すいか」
  「セクシーボイスアンドロボ」
  「神はサイコロを振らない」
  「恋ノチカラ」
  「世紀末の詩」
  「ケイゾク」
  「踊る大捜査線」シリーズ

他にも影響を受けた作品紹介をその都度、物語更新時に一緒にUPしています。参考までに~^^

良ければ、こちらも参考までにどうぞ。
【予告】 次作の元ネタ作品紹介?
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-164.html


□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 



とりあえず、書いてみましたが、いかがだったでしょうか…? (あくまで現在の時点ですが…)

何かありましたら、また答えられる範囲内で答えられればと思っています。


これからも「1001夜ショートショート」をよろしくお願いします!

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今でも思い出すと、胸がしめつけられる。

もう亡くなってしまった私たちの国。私たちの故郷。そこには私たちの一生分の幸せがつまっていた。

大地を駆けまわる子供たち。それを見守る大人たち。人々は笑顔で、明日は希望の光に満ちていた。

家族は血縁だけではなく、この未開の新天地にやってきた者すべてがそうだった。ともに喜びや悲しみを分かち合い、力を合わせて暮らしてきたのだ。

『 日本という故郷を捨てたのですか? 』

そう言えば誰かに聞かれたことが、…いや、言われたことがある。

思わず、私は笑った。何を言ってるの、と。

『 私たちが日本に捨てられたのだ 』

皮肉ではない。事実だ。

昭和11年、貧しい小作の長女だった私はたくさんいる兄弟のために、身売りしなければならなかった。そんなときに『大陸の花嫁』の話を聞いた。

中国の東北地方にある満州国、日本の領土になったその地に移民として渡った日本人、満蒙開拓団に女手が必要だという。つまり花嫁を探しているとのことだった。

海を渡って満州へ行き、花嫁にならないか…?

それは私にとって悪くない話のように思えた。お腹いっぱい食べることができるなら。それで充分だ。ひもじい思いをすることさえなければ。土地を取られた中国人が反発しているときいたが、それは関東軍が取り締まってくれる。恐れることはない。…中国人と言っても同じ人間だろう。

…花嫁…。

何よりここではないどこかへ行きたかった。毎日、その日の食べ物を気にしながら生きていく暮らしに嫌気がさしていた。いつ言われるかわからない身売り先に怯えるより、ずっといいかもしれない。見たこともない場所、もしかしたら希望さえあるかもしれない新たな故郷…。私は初めて夢を見た。

そして、『大陸の花嫁』になった。

海を渡った花嫁たちは私のような小作の出が多かった。満州に向かう船の中で白いご飯が出た時はみんなで手を取り合って喜んだ。そういう時代だった。

やがて迫りくる不穏な気配に誰も気づきもしなかった。気づいていても、もうどうすることもできなかったのかもしれない。

『 …時代のせいにしてはいませんか? 』

そう言えば、誰かに言われたことがある。

思わず、私は笑った。何を言ってるの、と。

『 じゃあ、私たちの生きた時代を人々は何て呼んでるの? 』

皮肉ではない。事実だ。

生まれて初めて粗末ではない着物に袖を通し、今は亡きあの国で私は花嫁になった。

やがて娘ができた。息子も生まれた。家族は増えたが、豊かで実りの多い土地に作物はどんどん育ち、昔の貧しい生活を忘れさせてくれた。忘れることができるというのはなんと幸福だろう。

私は夢をつかみ、叶え、この幸せは一生続くものだと思っていた。
でも、それは今は亡きあの国の花嫁たちの夢の終わりだった。

戦争が始まり、開拓団は免除とされていたはずの兵役に夫をとられ、家や子供、年寄りは残された女が守らなければならなかった。

中国人とソ連軍の侵攻から逃れるため土地を手放し、荷物を抱え駅に向かったが、線路は関東軍によりすでに爆破されていた。

私たちは、見捨てられた。

中国人が襲撃してきて、武器を持って戦ったあの娘、ソ連軍が女をあさりに来て必死に抵抗したあの娘、逃げ場がなく集団自決したあの娘、何日も歩きどおし、途中で食べ物がなくなってしまい、中国人の民家に子供を置き去りにしたあの娘、命からがらようやく日本人避難所に辿りついた時、腕に抱える我が子の死に気づいたあの娘…。

私たちは、生きたかった。ただ、それだけだった。

日本行きのひきあげ船に乗り、懐かしいはずの生まれた土地に戻っても、もはや居場所はなく、開拓団で集結して新天地を探した。みんな気持ちは同じだった。日本内で根をはやし、土地を耕し、そこで女は夫の帰りを待ち続けた。

私は夫の死の知らせを聞くまで、彼がシベリアで捕虜となり、過酷な労働を強いられていたことを知らなかった。

どうしてか涙は出なかった。きっとそれは今は亡きあの国においてきてしまったのだろう。
ただ残された子供たちを彼の唯一の形見だと思い、必死に懸命に育てることしかできなかった。

私が泣くことができたのは、やがて娘が嫁ぐことになり、その花嫁衣装を見た時だ。

もう亡くなってしまった私たちの国。私たちの故郷。そこには私たちの一生分の幸せがつまっていた。

人々は笑顔で、明日は希望の光に満ちていた。

今でも思い出すと、胸がしめつけられる。



=====================================



=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ ドラマ「開拓者たち」 ★

NHKの戦争を描いたドラマは胸が苦しくなりますが、凄味のある大作ばかりです。山崎豊子さん原作「大地の子」はご存知の方も多いと思いますが、この満島ひかりさん主演の「開拓者たち」もいいです!あと、長谷川京子さんが日本人女性役を演じ、韓国人男性と恋に落ちる「海峡」は後編を見るのを逃してしまい、未だに続きが気になっています。

ドラマ「開拓者たち」
http://www.amazon.co.jp/%E9%96%8B%E6%8B%93%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1-Blu-ray-%E6%BA%80%E5%B3%B6%E3%81%B2%E3%81%8B%E3%82%8A/dp/B007IPPQ22/ref=sr_1_2?s=dvd&ie=UTF8&qid=1438329750&sr=1-2&keywords=%E9%96%8B%E6%8B%93%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1
http://7tv7dorama.blog.fc2.com/blog-entry-1516.html
主人公だけでなく、その兄弟たちにもスポットが当たって色々な人間ドラマあります。家族がバラバラになりながら、それぞれ必死に生きている姿に涙し、胸を打たれます。みなさん演技がうまくてやばかったのですが、特に新井浩文さんに驚きました。今まで悪役のイメージだったんです。口数少ない優しい夫役にぴったりでした。

ドラマ「大地の子」
これは衝撃でした、本当に。
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P200800007100000/
http://www.youtube.com/watch?v=Zck6Uey-760

ドラマ「海峡」
韓国人男性役、日本の方だったんですね!「大地の子」の上川さんといい、いいキャスティングするなあ。
http://www.amazon.co.jp/%E6%B5%B7%E5%B3%A1-DVD-BOX-%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E4%BA%AC%E5%AD%90/dp/B0012PGMTK
http://www.free-douga.jp/drama.php?num=163

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>>名前は?

ヴィンス・ロード

>>年は?

18歳

>>どこから来た?

ラック・アイランド

>>移民か?

はい。グレイブ・シティに居住申請中です。

>>まずは市民病院で精密検査を。許可はそれから。君が『由々(ゆゆ)しき市民』でないことを祈る。

    *

…鐘の音がする。いつからかわからない。ただ、夢の最後でいつも鳴り響くのだ。ずっと前から…。


    *


車の窓ガラスを叩く音がして、ヴィンスは目をこすった。上司のリアだった。慌てて助手席のドアを開ける。

「買い出しをしてきた。寝てたのか?」

リアに問われ、新米刑事のヴィンスは苦笑した。

「気にすることはない。もう張り込みをはじめて3日たつからな」

乗り込んできたリアは特に気にしていないようだ。

「リアさんはタフですね」

さすが女性最年少で刑事課長になった人だ。優秀なキャリア組。彼女がこれまであげた検挙率は群を抜き、目を瞠るものがあった。性別と年下の分、体力だけは負けないと思っていた自分が情けない。

「私を女と思わないことだ」

リアは微笑んだ。目元のブルーのシャドウがきらめく。ヴィンスは自分の心を見透かされたような気がした。

「とにかく食べろ。腹に何か入れておかないと、いざってときに動けないからな」

そう言って、リアは袋から食べ物を取り出した。

「まさかアンパンと牛乳…ですか?」

ヴィンスは声を上げた。

「…嫌いだったか?」

首を傾けたリアの仕草が少し幼く見え、ヴィンスはつい吹き出した。

「前世紀の刑事ドラマでお約束の張り込みグッズですよね、それ?」
「…そうなのか?」
「そうですよ。俺、憧れてたんです!あと、犯人の取り調べの時に『カツ丼、食うか?』とか!」

ヴィンスは根っからの刑事マニアらしい。話を詳しく聞くと、彼の着ているミリタリー風のコートもその影響とのことだった。少年っぽさの残る新米刑事にリアは少しあきれた。

「…で、今夜の動きはあったのか?」

リアが話題を変え、ヴィンスも自分の仕事を思い出す。

「何もありませんよ。っていうか、本当に『由々しき市民』は犯行を起こすんですか?3日もたつのに、まるで音沙汰なしですけど…」
「上はそう睨んでいるが、どうだかな。まあ、備えあれば…というところだろう」

彼らは今グレイブ・シティを脅かす連続殺人鬼を追っている。高級官僚ばかりを狙った犯行で、犯人の目星も未だついていない。だから、次に狙われるだろう官僚宅前に彼らは張り込みを続けていた。

「張り込みってやっぱり地味ですよね…。どうせなら俺、潜入捜査とかしてみたかったなあ」
「潜入捜査…?」
「そうです。麻薬組織やマフィアの内部に潜入して、油断させて捕まえるやつ。まあ、おとり捜査ですよね」

リアはため息をついた。

「ヴィンス…お前、前世紀の負の遺産の見過ぎだ…。グレイブ・シティでそれは違法だぞ」
「そうなんですか?えー、がっかりだな。じゃあ、リアさんと恋人同士や新婚さんって設定でおとり捜査することもないのか…」
「…何を言ってるんだ、お前は…」

思い切り顔をしかめたリアに、ヴィンスは屈託なく笑った。

「密かな俺の夢ですよ。役得来た!!みたいな?」
「あきれてものがいえない…」

アンパンにかぶりつき、牛乳で流し込む。今度はヴィンスがため息をつく番だった。憧れの刑事は本当に地味だ。

「…ところで、うなされていたようだったぞ?大丈夫か?」
「うわー。俺、ここでもやってましたか。すみません、いつものことなんで気にしないで下さい。なんか夢見が悪いんですよね、俺」
「夢見が悪い?」
「何の夢を見てたのか起きたらその辺を忘れてるんですけど、一つだけ覚えてて。最後に必ず鐘の音が聞こえるんです。けっこうガンガン鳴ってくれてるんでそのせいですよ」
「鐘の音か…」
「夢の終焉を告げる鐘の音ですよ…なんてね。『終焉』なんて言って自分の柔肌に鳥肌が立ってます」
「なんだ、それは」

リアの笑顔にヴィンスも笑った。彼はリアの笑顔が好きだった。彼女の笑顔は素の表情が現われる。濃い化粧でひた隠しにしているようだが、あどけなさの残る少女のような可憐さがあった。化粧はきっと彼女の武装なのだ。まだまだ男社会の警察組織において彼女の存在とそのキャリアは特に煙たがれる。新人の自分と組まされたのも、嫌がらせみたいなものだろう。

「リアさんは、どうして刑事に?」

聞いた後で、しまったと思った。自分ごときが簡単に聞いていいものではないだろう。

「大切な者を守るため」
「…大切な者?」
「ああ」
「それって恋人とかですか?それとも…」

不意に強いライトが車に当たった。ただの通りすがりの乗用車かと思いきや、その車は官僚宅に蛍光塗料を投げつけて去って行った。

「おーおー、派手にやって、さっさと行っちゃって。リアさん、ほっといていいんですか?彼らも『由々しき市民』でしょう?」

ヴィンスの問いに、リアは答える。

「それを決めるのは『正しき市民』だろう?」
「あの家の中にいるような人たちのことですか?なんか官僚様々だな」

鼻で笑いながら、ヴィンスは続けた。

「グレイブ・シティに住む者は、みんな『由々しき市民』になるなと教育される。危険分子あつかいされるその呼び名、どうにかなりませんかね?そんなこと言ったら、人は誰しも『由々しき市民』候補生ですよ。そういう負の感情は誰しもあるものだ。でも、逆に『正しき市民』になれとは言われない。『正しき市民』はみんながなれる者じゃないからだ。決められた特定の者に限られる。だから、あえて言わない。おかしいなあ、それ。俺には市長の考えがわかりません。リアさんは、わかりますか?」

ヴィンスの声は冷たく厳しかった。それでも、リアは答えなかった。

「あなたのような『正しき市民』でも答えられないことがあるんですね。でも、俺はあなたに答えてもらいたかったんだけどな」

ヴィンスはまた屈託なく笑った。

「おとり捜査はいけないはずでしょう、リアさん?」

リアは息を吐いた。それから、ヴィンスを真っ直ぐ見つめた。

「潜入捜査じみたことをしているやつに、言われたくないな」
「刑事になるの、俺の夢だったんですよ。カツ丼も食いたかったし」
「それは私が用意してやる。これから存分に食べられるさ」

それを聞いて、ヴィンスは嬉しそうに笑った。

「あなたとカツ丼が食べられるなんて光栄だな、リア・グレイブ」

ヴィンスの伸ばした手がリアの首元で止まるのと、リアがヴィンスの胸に拳銃を構えたのは、ほぼ同時だった。

「私を狙ったのは市長の娘だからか?」
「市長の一番大事なものを奪おうと思って。俺がそうされたみたいに。知ってますか?グレイブ・シティはまわりのマチやシマを犠牲にして成り立ってることを。俺の故郷も家族もグレイブ・シティの餌食になったんだ。グレイブ・シティの電力支給のためにね」
「原発か…」
「そう。その放射能漏れでね。5年前、俺たちは故郷を捨ててここに来るしかなかった。その時グレイブ・シティは何をしてくれた?『移民』は『由々しき市民』っていうレッテルを貼っただけ。すでに助かる見込みのない者は皆殺し。奪ったのは故郷だけじゃなかったんだな。人間の尊厳ってやつも一緒に奪っていったんだ」

リアは何も言い返せなかった。

「黙らないで下さいよ、リアさん。あなたはただ、守るべきものを守ればいい。市長を、父親を、守ればいいんだ」
「…お前は何を言ってるんだ…?」
「俺は賭けたんだ。あなたはきっと市長とは違う。早いとこ、出世して下さいね」

ヴィンスの手が彼女の首元を掠め頭へ移り、リアを引き寄せて口づけるのと、銃のトリガーがひかれたのは、ほぼ同時だった。


その時、終焉の鐘が鳴り響いた。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ manglobe『Ergo Proxy』 × Monoral『Kiri』★

昔みて忘れられなかった『Ergo Proxy』。哲学的要素や謎が多く、最初中々その世界観に入り込めなかったのですが、3話の終わりから俄然面白くなります。マイナー作品なのがもったいない。それともしかしたら思い切りドラマ『踊る大捜査線』の影響も受けているかもしれません。カツ丼やコート、上司の出世のために部下が自ら犠牲になる、など…。あと『PSYCHO-PASS』もかな。

① manglobe『Ergo Proxy』
SF初心者はアニメなら入りやすいと教えてもらい、おススメ作品を聞きました。でも、たくさんあったので、ざっとOPを見て決めることに。すると、このOPのセンスがハンパなくて…即視聴決定!
http://www.youtube.com/watch?v=oAXrRWLKzko

② Monoral『Kiri』
その主題歌。洋楽と思いきや、まさかの邦楽でした。ちょうどよくMAD編集したものがあったので、作品世界もあわせてどうぞ。(UPした映像はコメントが多いので、吹き出しを押すと消えます)
http://nicoviewer.net/sm1870606
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1870606

③ ドラマ『踊る大捜査線』
https://www.youtube.com/watch?v=xuac-Ot5mnA

④ 劇場版 『PSYCHO-PASS サイコパス』劇場公開後新PV
個人的には断然1期派。どうせやるなら、続編より標本事件をやってもらいたかったなあ。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm19822597?ref=search_key_video&playlist=eyJpZCI6InZpZGVvX3dhdGNoX3BsYXlsaXN0X3NlYXJjaCIsInNlYXJjaFF1ZXJ5Ijp7InR5cGUiOiJrZXl3b3JkIiwicXVlcnkiOiJwc3ljaG8tcGFzcyBNQUQiLCJwYWdlIjoxLCJwZXJQYWdlIjozMiwic29ydCI6IittIn19&ss_pos=20&ss_id=d0f877dd-8cfb-4dbc-8805-fd55fe201cce


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みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

私は半年くらい前から物語ブログを始めたのですが、毎年個人的にお気に入りの小説ブログ様に自分て作った賞を勝手におくりたいと思いまして、こんな賞を作ってしまいました。名付けて…!

★☆自分的小説ブログ大賞☆★

生意気にすみません。賞品なんてありませんが…(苦笑)。

ちなみに、記憶に新しい2013年の記念すべき第1回は!

けいさんの小説ブログ『憩』に好評連載中の青春小説『夢叶』でした!!
おめでとうございます!超個人的な賞を快く受け取ってくれたけいさんに、ただただ感謝です><。

↓詳細記事はこちら↓
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-116.html

けいさんの小説ブログ『憩』
http://meuniverse.blog10.fc2.com/
連載長編小説『夢叶』のあらすじ・目次
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-68.html
連載長編小説『夢叶』第1話
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-57.html

2013年は、けいさんの『夢叶』でしたが、他にも素敵な小説ブログはわんさかあります!

そこで気が早いのですが、早速2014年版の準備をして行こうと思っていまして、ここにその候補作を見つけ次第、勝手に更新&紹介させて頂こうかと思っています。最終的に年末、こちらでUPした候補作の中から、第2回大賞を選ぶ予定です。(惜しくも大賞を逃した作品は、来年度の候補作品としてそのまま残ります)

良ければみなさんも、ちょくちょくこちら覗いてみて下さいね☆
読むものをお探しの方のソムリエ的な役割ができたら嬉しいです。

候補作のブログ様で「気持ちは嬉しいけど、自分は遠慮したいかも…」という方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ削除いたしますので、気にせず、言って下さいね^^


★ 第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)候補作一覧 ★

①お名前  :松原きのこ さん
 ブログ名 :『なついてくれてサンキューな』
 ブロアド :http://neboushitaze.blog.fc2.com/
 小説名  :『はぐれ者のおっさん』(短編小説)
 第1話  :http://neboushitaze.blog.fc2.com/blog-entry-14.html
  選 評 :私が文部科学的な何か or 学校の先生だったら、夏休みの課題図書に推薦したいです☆

②お名前  :lime さん
 ブログ名 :『 小説ブログ「DOOR」 』
 ブロアド :http://yoyolime.blog83.fc2.com/
 小説名1 :『凍える星』(中編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-669.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-671.html
  選 評 :小説ブログってこんなにレベルが高いんだ!私的「このミステリーがすごい!」作品☆
 小説名2 :『KEEP OUT』シリーズ(長編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-304.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-305.html
  選 評 :人間の禁域に触れる時、人は目をそむけたくても、それができず、目が離せなくなる…!lime さん、あなたはなんと恐ろしい(もちろん、いい意味!)ストーリーテラーなんですか!

③お名前  :大海彩洋さん
 ブログ名 :『 コーヒーにスプーン一杯のミステリーを 』
 ブロアド :http://oomisayo.blog.fc2.com/
 小説名1 :『清明の雪』(長編小説/ミステリー)
あらすじ  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E3%80%90%E6%B8%85%E6%98%8E%E3%81%AE%E9%9B%AA%E3%80%91%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%81%AE%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%A8%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%99%E3%81%98
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E2%9D%841%E3%80%80%E5%8F%A4%E3%81%84%E5%AF%BA%E3%80%80%E9%BE%8D%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BA%95%E3%80%80%E5%B9%BD%E9%9C%8A%E3%81%AE%E6%8E%9B%E8%BB%B8%20
  選 評 :このミステリーの一番の謎はブログ小説なのに紙の香りがすることかもしれない!書籍化希望☆
 小説名2 :『天の川で恋をして』(短編小説/恋愛)
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-16.html
  選 評 :長編ミステリーを得意とする大海さんが短編×恋愛モノ!?と聞いたら、飛びつかないわけにはいかない。読んだ感想はもうこの一言しかありませんでした。「お見事!!」

④お名前  :ヒロハルさん
 ブログ名 :『 三流自作小説劇場 』(休止中?)
 ブロアド :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/
 小説名  :『それでも私を愛してくれますか』(長編小説)
あらすじ  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-674.html
 第1話  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-675.html
  選 評 :衝撃のラストに、あなたは『それでも私を愛してくれますか』。SF×恋愛小説の切なさがここに!!

⑤お名前  :ぐりーんすぷらうとさん
 ブログ名 :『修羅の門・刻 夢小説』
 ブロアド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/
 小説名  :『limeさんの絵につけた超SSS』(ショートショート)
 作品アド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/blog-entry-321.html
  選 評 :普段は夢小説を書かれているぐりさんが②でご紹介したlimeさんと物語×絵コラボ。熱望してたオリジナル作品も期待を裏切りません!

⑥お名前  :河上朔さん
 ブログ名 :『therehere』
 ブロアド :http://here.x0.com/
 小説名  :『wonder wonderful』(長編小説)
あらすじ  :http://here.x0.com/text/ww/index.htm
 第1話  :http://here.x0.com/text/ww/0.htm
  選 評 :書籍化もした人気ネット小説。大人もハマる異世界トリップファンタジー。面白すぎてヤバいぞ、これは!第二の有川浩さんかも!

⑦お名前  :葉嶋ナノハさん
 ブログ名 :『はななぬか』
 ブロアド :http://hanananuka.sakura.ne.jp/index.html
あらすじ一覧 :http://hanananuka.sakura.ne.jp/syousetu-okiba.html
 小説名1 :『椅子カフェ堂』(長編小説/恋愛)
 第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0isucafedou-top.html
  選 評 :美味しい物語展開。満腹感の味わえる結末。嬉しい番外編は別腹でまだまだいける!椅子カフェ堂に恋をしたのは作中のお客さんだけではありません。一読者の私もです!
小説名2 :『ななおさん』(中編小説/恋愛)
第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0nanaosan-top.html
選 評 :和菓子屋を営む壮介さんのもとに嫁いだ、ななおさん。わけあり『和』カップルの織り成す日常が優しい雰囲気で描かれています。これを読むと、いざ鎌倉着物デートしたくなります!
なんと『ななおさん』は、ただいまアルファポリス様において書籍化進行中。決定後、2014/11/15にサイトから冒頭数話と番外編を残して 本編を取り下げ予定。 11月15日以降は読むことが出来なくなるため、 みなさんお早めにチェックを!!

⑧お名前  :空野みちさん
 ブログ名 :『 空野みちさんのマイページ 』 (by『 小説家になろう 』)
 ブロアド :http://mypage.syosetu.com/25780/
あらすじ一覧 :http://ncode.syosetu.com/n5126g/
 小説名 :『 夏目さんと私』 (長編小説/恋愛)
 第1話  :http://ncode.syosetu.com/n5126g/1/
選 評 :登場人物が魅力的で名前も素敵!森見登美彦さん(より個人的に好き!)を彷彿させる『和』感覚で小粋な文章。丁寧に紡がれる物語に、ただただ、続きが待ち遠しい。なんていいところで~、くうっ!!

「何でこんなことになったんだ!?」

大みそか、天野(アマノ)家は不測の事態に陥っていた。

「もとはと言えば、マサル兄(にい)がいけなかったんだよ…」
「えー、俺のせい??」

三男スグルの発言に、次男マサルは素っ頓狂な声を上げた。え、何で俺のせいなの!?

「カオルの髪をあんなに笑うからさ」
「髪?」

天野家兄弟を取り仕切る長兄、タケルは変な風に首をひねった。

大学受験を控えた自分が予備校から帰ると、何やら我が家の兄弟が騒がしい。どうしたのか問いただすと、どうも妹のカオルが自分の部屋の押し入れにこもったまま、出てこなくなってしまったという。ちなみにカオルは今年で13歳になる天野家5人兄弟、末の妹である。

「カオルは今日、初めて美容院デビューして髪を切ったんだよ。そしたら、それが…」
「大失敗してんの!マジ、ウケル!もうあれだよ、あれ。ワカメさん!」

思い出したのか、空気の読めないマサルは腹を抱えた。タケルはわけがわからない。
ワカメさん?ワカメさんってなんだ??

「たぶんマサル兄はサ○エさんのワカメちゃんって言いたかったんだと思うよ。カオルはそんなふうに言われて傷ついちゃったんだ」

全てを理解しているスグルが、フォローに入ってくれた。なるほど、某国民的人気アニメのあれか!

「どうやら、それが原因っぽいな」

タケルはため息を漏らした。何もワカメさん…いや、ワカメちゃんはないだろう。(長谷川○子先生、ごめんなさい!)ワカメちゃんは、確かにかわいいが、今流行りの髪型ではない。

「カオルはおかっぱ…いや、カワイイボブに切りたかったのよ。それを女心のわかってないマサルが…」

長女のミチルも、話に加わわる。

「えー、俺だけのせいなの?下手くそな美容院を教えたミチル姉(ねえ)も、悪くね?」
「何よ、私のせいだって言うの?」
「はいはい。そこ、喧嘩しない!今はカオルを押し入れから出すことが先決ね!」

タケルは睨み合う姉と弟の仲裁に入った。頼むから余計な問題をこれ以上、増やさないでくれ。
すでに、3時間以上が経過していた。押し入れで引きこもる妹のカオルはいっこうに出てこなかった。

「そのうち腹減ったとかトイレ行きたくなったとかで、大人しく出てくるんじゃないの?みんな、騒ぎ過ぎだって」

全然反省してないマサルに、みんな唖然とした。元はと言えば、お前のせいだ!

「でも、すでに3時間も経過してるのよ?カオルは本気なのよ!せめてマサル、あんたは謝んな!」

ミチルは女子代表としても、マサルの行いを見過ごすわけにはいかない。というか、教えた美容院の美容師は彼女の年上の恋人だという事情もあるから、なおのこと非難したマサルが許せない。

「そうだね。せめてかたちだけでも、誠意を見せた方がいいよ。マサル兄」

スグルは腕を組みながら言った。それをきいて、タケルは呻った。

「かたちだけでもって…スグル、お前…」

…人としてそれどうよ?
どうも弟のスグルはクールすぎて、人間的な感情がやや欠けているところがある。

「はいはい、わかりましたよ。俺が行きゃいいんでしょう」

マサルは文句をたれながら、カオルの部屋に入ると大きな声で彼女に言った。

「カオル!ワカメさんもよく見りゃ、カワイイゾ☆」

…マサル、それじゃ逆効果だ!

押し入れから、耐え難い泣き声が聞こえてきて、みんないっせいに耳をふさぐはめになった。


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★古事記『天の岩戸』× ドラマ『リーガルハイ』★
★長谷川町子『サザエさん』× うすた京介『すごいよ!!マサルさん』★

古事記の岩戸隠れの話は舞台と設定を置き変えて物語ができそうだな。「ワカメちゃんの友達は中島君じゃなくて堀川君です!」っていう『リーガルハイ』のガッキーかわいいな。『すごいよ!マサル』さんのマサルさんってなんであんなに空気読めない人だったんだろう。うわ!髪、切りすぎた!…というあちこちの思いがMIXされたようです。

①古事記『天の岩戸』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%B2%A9%E6%88%B8
②ドラマ『リーガルハイ』
http://www.fujitv.co.jp/legal-high/index.html
③長谷川町子『サザエさん』
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%82%B6%E3%82%A8%E3%81%95%E3%82%93-1-%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%9D-%E7%94%BA%E5%AD%90/dp/4022609516/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1389548490&sr=1-5&keywords=%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E7%94%BA%E5%AD%90%E3%80%80%E3%82%B5%E3%82%B6%E3%82%A8%E3%81%95%E3%82%93
④うすた京介『すごいよ!!マサルさん』
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%99%E3%81%94%E3%81%84%E3%82%88-%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%81%95%E3%82%93-1-%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BC%E5%A4%96%E4%BC%9D-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/dp/408872271X
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今年最後の更新になります!

『ユリ』の物語が哀しげだったので、なんだか明るく終わらせたくて、こんなのを書いてみました。

パッと思いついたヘンテココメディ?の物語ですが気に入って下さると嬉しいです。

※PC環境から離れるので、しばらくコメント等の返信ができないかと思います。すみません。

今年は本当にお世話になりました!

それでは、みなさまよいお正月をお迎えください~^^



みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

2013年は、『1001夜ショートショート』をはじめた記念の年。
まだはじめて半年ですが、たくさんのご訪問、拍手、コメント等、本当にありがとうございます。

嬉しいことに、ブロとも様&ブロとも様経由で他サイト様ブログでも『1001夜ショートショート』の紹介をして頂きました。ここからもう感謝の念を送ることしかできません。「本当にありがとうございます!!」

自分の物語UPでいっぱいいっぱいで、あまりこちらから訪問ができず、申し訳ありません。よみたいのが、いっぱいあるのに…(来年はじっくり読める時間があるといいのですが、本当にすみません…)

そんな数少ない訪問の中で、毎年個人的にお気に入りのブログ様に自分て作った賞を勝手におくりたいと思いまして…。賞品なんてありませんが…。生意気にすみません。良ければご紹介をさせて下さい。


それでは、発表します!!

(良ければ、脳内でドラムロールのご準備を♪)

2013年、『 第1回 自分的小説ブログ大賞 』はっっ!!

(ドラムロール♪ + じゃじゃーん!!)

けいさんの小説ブログ『憩』です!!

そして、そこで連載中の青春小説『夢叶』です!!!


おめでとうございます~!!

けいさんは私のブログでいつもコメント頂いている方なのですが(恐れ多い)、ちなみにそういうのはいっさい抜きで、選ばせて頂きました!(私の目は結構シビアですよ~^^)

プロの方が実は内緒でネットで小説連載してるんじゃないかと思ったほど!その筆力に圧倒されました!!(ちなみに今でも疑っていますよ、けいさん!!><)

長編小説は読者をあきさせることなく、書き続けるというのが一番難しいはず。私は何より飽きっぽい性格。そんな私が連載更新を心待ちにしている青春小説『夢叶』とは…。ぜひみなさん、けいさんの『夢叶』ご一読を~^^


↓詳細はこちら↓

けいさんの小説ブログ『憩』
http://meuniverse.blog10.fc2.com/

連載長編小説『夢叶』のあらすじ・目次
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-68.html

連載長編小説『夢叶』第1話
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-57.html

今回は、けいさんの『夢叶』でしたが、他にも素敵な小説ブログはわんさかあります!これからもぜひ
みなさまのブログにお邪魔させて下さい。

2013年も残すところ、あとわずか。こちらは『1001夜ショートショート』と銘打っていたのに、後半は怒涛の『ユリ』の連載で終わってしまいました。私は自分の中で『ユリ』は短編小説と思っていたので、たくさん分割したとはいえ、けっこう話数をとったことに正直驚いています…。ってことは、他の長編作品も切り崩せば、わりと早く1001話分いくのかな?でも、それでいいのかな?どうしたもんだろう…という思いがあり、来年はそれらの反省も含め、やっていけたらいいなあと思っています。あくまでここでは短編のUPに徹して、長編はブロともさん限定公開の別枠にするとか…。ちょっと考えてみよう。

今年の物語のUPはもうないかもしれませんが、コメント欄にオススメ作品のUPを更新中です。今のところ、全体公開にしている『ユリ』カテゴリコメント欄でおすすめの青春作品を更新しています。良かったら、お正月休みにでもどうでしょうか。
①『海がきこえる』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-77.html#comment581
②『ソラニン』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-80.html#comment582
③『恋愛寫眞 - Collage of Our Life -』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-81.html#comment584
④『夜のピクニック』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-82.html#comment586
⑤『Love Letter』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-83.html#comment587
⑥『半分の月がのぼる空』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-85.html#comment591
⑦『幸福な食卓』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-86.html#comment594
⑧『時をかける少女』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-87.html#comment596
⑨『秒速5センチメートル』
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-89.html#comment597

おかげさまで、随分体調も良くなりました。あとは微熱が下がれば…。ご心配をおかけしてすみませんでした。あたたかいお言葉を頂きまして、本当に感謝です。ありがとうございました。みなさまもご無理なさらず、いい時にいつでもいらして下さいね。

良ければ、来年も『1001夜ショートショート』をどうぞよろしくお願いします!

それでは、みなさま良いお年を!!
僕がユリと初めて会ったのは高二の秋だった。

どこの学校でもそうだと思うが、僕らの高校も、もちろん学校行事というものが存在していて、それを仕切る実行委員は二年がやると決まっていた。都内でも有名な進学校だったから、受験シーズンともなる三年は、もっぱら勉強に専念せよということだったのだろう。

困ったことに、僕らの高校は勉強だけではなく、部活動もかなり盛んだった。さすが教育理念に文武両道をかかげているだけはある。でも、正直なところ、学生たちは勉強と部活でいっぱいいっぱい。だから、僕に限らず、みんな学校行事の実行委員なんて度外視していたと思う。

春の体育祭実行委員はうまく逃げのびた僕だったが、秋の文化祭のそれには見事につかまってしまった。何て事はない。僕が風邪で学校を休んだ日に、これ幸いとクラスメートが文化祭実行委員を僕に押し付けたのだ。

「まあ、不運だと思ってさー」

僕はクラスメートの友情なんてこんなものかと少しかなしくなったが、男らしく腹をくくったのだった。

その日の放課後に、早速集まりがあるときいて、生徒会室の隣りにある学生会議室に向かった。ドアを開けるとそこは、賑やかで楽しそうな雰囲気に満ちていた。

一人の女の子がみんなにからかわれ、場を和ませているらしい。その明るく澄んだ笑顔が眩しくて、僕は目を細めて彼女を見つめた。

「あ、ラスボスが来たぜ。中に入れよ」

女の子をからかっていたメガネ男が僕に気づき、手招きをする。女の子も振り返って、僕を見つめた。つぶらな瞳が僕をとらえると、小さく会釈した。

「ラスボス、名前は?」

メガネ男が臆面もなく、僕に向かってきいてくる。ラストのボス、通称ラスボスとは、どうやら僕のことらしい。

「サイトウ。サイトウコウタ…です」

僕がそう名乗ると、みんながいっせいに拍手をする。何事かと思って、目を見開くと、

「おめでとう、サイトウくん。君はなんと今年の文化祭実行委員長に選ばれましたあー!!」

と喜び、騒いでいるじゃないか。

「―― はあ!?」

慌てて聞き返すと、さっきの女の子が僕に近づいてきて、同情するようなまなざしでこう教えてくれた。

「毎年、最初の集まりで一番最後に来た人が委員長をやるらしいの。ちなみに最後から二番目の私が副委員長みたい」

僕はすぐには物が言えず、唖然としてしまった。

―― まじか!?

みんながニヤニヤと僕らを見つめている。そうか、さっき女の子がみんなにからかわれていたのはこれか!と、今さらながら気付いた。

「ちなみにラストから三番目の俺が、副委員長補佐でーす」

とメガネ男が抜群のタイミングで立ち上がり、みんなの笑いを誘った。委員長でなく、副委員長補佐ってなんだ!?委員長の立場は…?

「うそうそ。本当は書記と会計、兼任役ね。俺、マエダタカシ。よろしくな」

そう笑うメガネ男の名前に、俺は聞き覚えがあった。

「ん?マエダタカシって…あ!もしや毎回テストで学年一位の!?」

タカシは最初きょとんとしていたが、しばらくしてから、ぷっと吹き出した。

「っていうかお前、自己紹介した人間にいきなりそれかよ。まあ、今のところは学年一位だけどね」

さらりと嫌味なく受け流すタカシを見て、僕は思った。きっと恨みや妬みをあまりもたれないタイプだろうし、もしそうだとしても、今みたいにうまく流せる奴なんだろう。

タカシは僕のことがどうもツボにはまったらしく、ニヤリと笑った。僕もタカシという人間が気に入って同じように笑い返した。

「…あ、あのー」

声が下の方から聞こえてきて、視線を下げると、さっきの女の子がはにかみながら訴えている。

「あ、ごめん。忘れてた!お前、ちっちゃいし」

タカシが女の子の頭を勢いよく撫でると、ショートの髪がボサボサになった彼女は少しぶすっとした。

「ほら、そんな顔してないで、ラスボス委員長にあいさつしなきゃだろ?」

タカシが宥め、彼女はこくりと頷いた。それから、さっと髪を整えてから僕に向き直り、

「ミサワユリです。よろしくね」

と、あの眩しい笑顔で僕を迎えてくれたのだった。



=====================================

=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 青春作品特集① ★

確かユリの第1回で影響を受けた作品紹介をすでにしたので、こちらで私の大好きな他の青春作品の紹介をさせてもらおうかなと。

①  氷室冴子『海がきこえる』
http://www.nicozon.net/watch/sm4492876
氷室冴子の原作小説。後にジブリの若手集団によりアニメ化。どちらもおすすめ。UPしたアドはジブリ版を誰かが予告風にMAD編集したものかな。舞台は高知。そこで平凡に暮らしていた高校生たちは東京から来た転校生の女の子に振り回されることに…。

兄に借りたまま、未だに私の手元にある小説(兄、ごめん!)。今は亡き氷室冴子さんを知った作品。氷室さんは私にかなり影響を与えてくれた作家で、彼女が少女小説家と知った時は衝撃でした…。それまで私はその手のジャンルをなめてかかってたんですよね。そう言う偏見を壊してくれたのも彼女でした。『海がきこえる』は彼女自身そういう思いもあったのか、男性読者が多いんです。みんなきっと里伽子みたいな女の子に振り回されて、杜崎拓に共感したんだろうな。彼と松野との出会いや友情も見どころの一つ。土佐弁もいいんですよね。

つづき【第74夜】 僕らの朝(『ユリ』シリーズ3)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-80.html

戻る【第2夜】 イヴの訪問者(『ユリ』シリーズ1)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-2.html

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前回UPした【第67夜】知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)には、もう一つ違った結末がありました。せっかくなので、UPを。もし、興味のある方がいたらどうぞ~。

↓もう一つの結末ver.です(ラストだけ少し違います。*が目印です)↓


=====================================

「おや、ムハンマド。また来たのかい?」

ムハンマドと呼ばれた少年は、豊かな髭をたくわえた男に大きな声で挨拶をした。

「こんにちは、館長さん!今日も物語を聞きに来ました」

館長と呼ばれた男は笑顔で少年を迎えた。

「お入り、ムハンマド。ようこそ、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』へ」

ここは今から約1100年前のイラク、バグダッド。

当時、この地はユーラシア最大の都市として栄えていた。カリフ(※王または指導者の称号)と呼ばれるイスラム最高権威者のもと大きな争いもなく、人々は明るく豊かに暮らしていた。

チグリス・ユーフラテス両河が生んだ肥沃な土地は陸路・水路ともに他民族との交易を盛んにし、北東はイラン、北西はシリア、南西はメッカの方向、南東はチグリス川へと繋がり、その中心であるバグダッドは莫大な富を手に入れ、大いに繁栄した。この地が「世界の十字路」または「平和の都(マディーナト・アッサラーム)」と呼ばれるゆえんである。

交易が運ぶのは何も金や名声、食料や物だけではなかった。知識や文化も運んきた。

時のカリフはそこに目を付け、国の知識・文化レベルを上げるため、古今東西の文献をイスラムの言語であるアラビア語に翻訳することを国家事業とした。

その担い手となった場所が、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』である。
世界の知識の宝庫として、世界の大図書館として、何十万という蔵書が収蔵された。

そこに毎日のように通いつめる少年がいた。先ほどの少年、ムハンマドである。

「妹はすっかりシンドバッドの虜なんです。いっぱい笑うようになって、これも館長さんのおかげです」

ムハンマドはある日、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の扉を叩いた。

館長が事情をきくと、病で伏せている妹のために面白い物語を聞かせてやりたいと言う。自分が覚えた昔話や童話は底をつき、途方に暮れてしまった。そこで『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の噂を聞いた。

なんでも『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちに知らないものなどないらしい。彼らに聞けば、面白い物語を教えてくれるにちがいない。そう信じて、ムハンマドはここにやって来たのだ。

「さて、昨日はどこまで話したかな?」

館長は翻訳作業部屋にムハンマドを案内すると、腰を下ろした。ムハンマドもそれにならう。

「シンドバッドが深い谷底に落ちたところです」

作業部屋では『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちがそれぞれの翻訳作業に没頭していた。最初は彼らの邪魔になるのではないかとおそれたムハンマドだったが、自分など眼中にないことをすぐに知ることとなった。彼らの集中力は高く、こちらが息をのむほどの凄まじい速さで筆を走らせていた。もしかしたら、自分の存在すら気づいてないのかもしれない。

「おお、そうだったな。航海に出たシンドバッドは、上陸した無人島に置き去りにされてしまった。島には巨大な鳥がいて、その足に自分自身を結びつけて脱出するが、ついた先はダイアモンド鉱石で構成された峻険な山に囲まれた谷間だった…ここまでだったかな?」
「はい。とても気になるところで終わってしまって、妹に続きをせがまれて大変でした。僕もまだ続きを知らないんですから、話すことなんてできませんし…」

館長はふっと笑った。

「それは少し気の毒なことをしたね。でも、物語は昔から気になるところで終わり、次回に続くものなんだよ。その方が、より楽しみが増すだろう?」
「そうか、それもそうですね」

ムハンマドはにっこりした。しかし、その目は妹に負けないくらい輝いている。兄妹そろって好奇心旺盛なのだろう。館長は立派な髭を軽く整えると、口を開けた。

「さあ、続きを話そう。シンドバッドの落ちた谷底には大蛇がうようよしていた」

それを聞いてムハンマドの顔は青くなった。

「…大蛇って、蛇のことですか?」
「そうだよ。巨大な蛇だ。とても怖いだろう?だから、シンドバッドは逃げ場を探したんだ。すると、骨付き肉が落ちていた」
「骨付き肉?」
「…ムハンマドは骨付き肉を知らないのかい?」

頷くムハンマドに館長は咳払いをして訂正した。

「骨付き肉ではないな。確か…あれはそう、切り落とされた羊の生肉だったな」

ムハンマドの納得した様子に安心して館長は続けた。

「それは、こういう険しい場所でダイアモンドを採取するための仕掛けだったんだよ。付近の住人は羊の生肉を崖から落として鉱石を肉に食い込ませ、それを巨大な鳥たちが運び上げるのを待って奪い、肉からダイアモンドを取り出したんだ」
「頭がいいなあ。ダイヤモンドってきれいな石ですよね?」
「そうだよ。もっとも固い鉱石と言われている」

妹に見せてやりたい、ムハンマドは自分も見たことのない石に思いを馳せているのかもしれない。

「話を戻そう。シンドバッドは落ちているダイアモンドを掻き集めると、肉に自分自身を縛りつけた」
「え?まさかシンドバッドは…」
「そう、巨大な鳥がその肉を、取りにくるのを待ったんだね。やがて鳥が飛んできた…」

館長の絶妙の間に、ムハンマドの鼓動は高鳴った。ごくりと息をのむ音がはっきりと聞こえてくる。

「でも、恐怖は一瞬だった。気づけば、シンドバッドは宙に浮いていたんだ。彼は崖にいた住人たちの手を借りて、鳥の手を逃れ、こうして脱出を果たしたんだ。もちろん、住人たちにお礼としてダイヤモンドを渡したよ。でも、自分の分もちゃっかりポケットにしまっていただろうね」

手に汗を握っていたムハンマドは大きく息を吐いた。それから、拍手をして感動を伝えた。

「シンドバッドは、すごいなあ!いつも絶体絶命の危機を乗り越えて、笑っているんだから!!」

その感想に、館長は満足げに微笑んだ。

「さあ、今日はここまでだよ。家に帰って妹に聞かせてやるといい。続きはまた来た時にしよう」

ムハンマドはまた大きな声で挨拶をすると、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』を元気よく後にした。

ムハンマドを見送った館長が作業部屋に戻ると、翻訳に没頭していた住人たちが急に筆を止め、顔を上げた。

「帰ったな」
「帰りましたね」
「行ったようだな」
「行っちゃいましたね」

そして住人たちは同時に、安堵のため息をもらした。

「だから、言ったじゃないですか!骨付き肉なんて、最近の若い子は知らないって!」

住人の中でも一番年の若い男が声をあげた。

「何を言うんだ!若いたって、お前は30代だろう?肉っていったら、骨付き肉!あれは、先祖代々わしらのロマンだったんじゃ!」

一番年長者である老人も負けじと声を張り上げ、反論した。

「何がロマンだ!イスラムは肉がほとんど禁止じゃないか。とっさに館長が僕らのよく食べる羊の肉にかえてくれたけど、超不自然でしたね!僕はムハンマドにあやしまれないか、ヒヤヒヤしっぱなしでしたよ…」

老人もそこは素直に反省をしているようで、小さい体をより小さくさせた。そこをとりなすのが館長の役目だった。

「まあまあ、スリリングなのは面白い物語の醍醐味だろう?」
「語り部がスリリングで、どうするんですかっ!?」

30代男の容赦ないつっこみに、館長も他の翻訳者たちも、愉快そうに笑った。

「いいじゃないか。ムハンマドのおかげで、こうして私たちも笑顔になれるんだから」

本当は物語なんて、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』には、まだ存在しない。彼らは膨大な数の文献、主に哲学や医学、天文学などと格闘していたのである。

しかし、思いつめた少年が訪れたあの日、その事情をきいた住人たちは、とっさに頷いてしまった。「面白い物語が、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』にある」と。

「私はよく覚えているよ。私がムハンマドの事情をここできいていると、みんな鼻をすすったり、目頭をおさえたり、無言の圧力をかけてきてくれたことを…」

恥ずかしそうに頭を下げる住人たちに、館長は面白がって笑顔で続けた。

「それに、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちに知らないものはないと言われたら、期待にこたえないわけにはいかない。そうだろう?」

館長の絶妙の間は、ここでも健在だった。

「さあ、心優しい少年のために物語の続きを一緒に考えてくれ。みんな一緒なら、より素敵な物語ができるだろう」

住人たちは観念したように笑った。
今夜も残業になるな。まあ、それも悪くないか、と思いながら…。


   *


ムハンマドと呼ばれていた少年は、街一番活気のあるバザール(市場)を目指して走っていた。

「あ、いたいた!王子、どこに行かれてたんですか?」

王子と呼ばれ、少年は馴染み深い顔に手を振った。

「悪い。ちょっとまた近くを散歩していた」
「バザールの中を探してもいないから、焦りましたよ」

少年は優雅に笑った。平民の装いをしていても、どこか品の良さが香る。声をかけた男はあきれた。

「毎日、王宮を抜け出して…全く!少しは私の身にもなって下さいよ」
「すまんすまん、実は面白い場所を見つけてな」
「…面白い場所?」
「ああ。知恵者が住むというから、どんなところか気になって訪ねてみたのだ。すると、これが中々面白くてな。…私がカリフになったら、王宮に招いてやってもいい。その前に私の正体に気づけばの話だが…」

思い出し笑いをする王子に、世話係の男は肩をすくめた。

「はいはい。よくわかりませんが、ハールーン王子が楽しかったことだけはわかりましたよ。さあ、早く妹君のお土産を買って帰りましょう」
「アッバーサは物語があれば充分だろう」
「は?」
「いやいや、早く元気になるよう精のつくものを買っていくか」

王子は少し思案してから、手を叩いた。

「そうだ!骨付き肉とやらはどうだろう?」

著者不明の『アラビアンナイト(千一夜物語)』はここバクダッドで生まれ、長く語り継がれることになる。その物語の中で一人、実在の人物がいた。度々王宮を抜け出して、街に繰り出す風流な王…。

彼の名は、ハールーン・アッ=ラシード。アッバース朝全盛期のカリフである。

もしかしたら、『アラビアンナイト(千一夜物語)』は、彼と『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちとの出会いが生んた物語だったのかもしれない。

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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ NHKスペシャル『文明の道⑥バグダッド大いなる知恵の都』×the guitar plus me『highway through desert』★

私が書く物語は、半分フィクション感覚でお読みになって下さると嬉しいです^^

① NHKスペシャル『文明の道⑥バグダッド大いなる知恵の都』
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2003/1012/
【第63夜】往復書簡と今回ので、初めて世界史に挑戦しましたが、どうだったでしょうか?私は知らない歴史だったんですけど、世界史の授業ではふれるところだったのかな?ちょっとふざけすぎたかも。

② the guitar plus me『highway through desert』
http://www.youtube.com/watch?v=a93AVCDfqn0
前にUPした【第63夜】往復書簡 も彼らを聞いていたのですが、なんとなく今回もこれを聞いてました。優しい物語を書きたくなる音楽なのかな?

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「おや、ムハンマド。また来たのかい?」

ムハンマドと呼ばれた少年は、豊かな髭をたくわえた男に大きな声で挨拶をした。

「こんにちは、館長さん!今日も物語を聞きに来ました」

館長と呼ばれた男は笑顔で少年を迎えた。

「お入り、ムハンマド。ようこそ、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』へ」

ここは今から約1100年前のイラク、バグダッド。

当時、この地はユーラシア最大の都市として栄えていた。カリフ(※王または指導者の称号)と呼ばれるイスラム最高権威者のもと大きな争いもなく、人々は明るく豊かに暮らしていた。

チグリス・ユーフラテス両河が生んだ肥沃な土地は陸路・水路ともに他民族との交易を盛んにし、北東はイラン、北西はシリア、南西はメッカの方向、南東はチグリス川へと繋がり、その中心であるバグダッドは莫大な富を手に入れ、大いに繁栄した。この地が「世界の十字路」または「平和の都(マディーナト・アッサラーム)」と呼ばれるゆえんである。

交易が運ぶのは何も金や名声、食料や物だけではなかった。知識や文化も運んきた。

時のカリフはそこに目を付け、国の知識・文化レベルを上げるため、古今東西の文献をイスラムの言語であるアラビア語に翻訳することを国家事業とした。

その担い手となった場所が、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』である。
世界の知識の宝庫として、世界の大図書館として、何十万という蔵書が収蔵された。

そこに毎日のように通いつめる少年がいた。先ほどの少年、ムハンマドである。

「妹はすっかりシンドバッドの虜なんです。いっぱい笑うようになって、これも館長さんのおかげです」

ムハンマドはある日、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の扉を叩いた。

館長が事情をきくと、病で伏せている妹のために面白い物語を聞かせてやりたいと言う。自分が覚えた昔話や童話は底をつき、途方に暮れてしまった。そこで『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の噂を聞いた。

なんでも『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちに知らないものなどないらしい。彼らに聞けば、面白い物語を教えてくれるにちがいない。そう信じて、ムハンマドはここにやって来たのだ。

「さて、昨日はどこまで話したかな?」

館長は翻訳作業部屋にムハンマドを案内すると、腰を下ろした。ムハンマドもそれにならう。

「シンドバッドが深い谷底に落ちたところです」

作業部屋では『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちがそれぞれの翻訳作業に没頭していた。最初は彼らの邪魔になるのではないかとおそれたムハンマドだったが、自分など眼中にないことをすぐに知ることとなった。彼らの集中力は高く、こちらが息をのむほどの凄まじい速さで筆を走らせていた。もしかしたら、自分の存在すら気づいてないのかもしれない。

「おお、そうだったな。航海に出たシンドバッドは、上陸した無人島に置き去りにされてしまった。島には巨大な鳥がいて、その足に自分自身を結びつけて脱出するが、ついた先はダイアモンド鉱石で構成された峻険な山に囲まれた谷間だった…ここまでだったかな?」
「はい。とても気になるところで終わってしまって、妹に続きをせがまれて大変でした。僕もまだ続きを知らないんですから、話すことなんてできませんし…」

館長はふっと笑った。

「それは少し気の毒なことをしたね。でも、物語は昔から気になるところで終わり、次回に続くものなんだよ。その方が、より楽しみが増すだろう?」
「そうか、それもそうですね」

ムハンマドはにっこりした。しかし、その目は妹に負けないくらい輝いている。兄妹そろって好奇心旺盛なのだろう。館長は立派な髭を軽く整えると、口を開けた。

「さあ、続きを話そう。シンドバッドの落ちた谷底には大蛇がうようよしていた」

それを聞いてムハンマドの顔は青くなった。

「…大蛇って、蛇のことですか?」
「そうだよ。巨大な蛇だ。とても怖いだろう?だから、シンドバッドは逃げ場を探したんだ。すると、骨付き肉が落ちていた」
「骨付き肉?」
「…ムハンマドは骨付き肉を知らないのかい?」

頷くムハンマドに館長は咳払いをして訂正した。

「骨付き肉ではないな。確か…あれはそう、切り落とされた羊の生肉だったな」

ムハンマドの納得した様子に安心して館長は続けた。

「それは、こういう険しい場所でダイアモンドを採取するための仕掛けだったんだよ。付近の住人は羊の生肉を崖から落として鉱石を肉に食い込ませ、それを巨大な鳥たちが運び上げるのを待って奪い、肉からダイアモンドを取り出したんだ」
「頭がいいなあ。ダイヤモンドってきれいな石ですよね?」
「そうだよ。もっとも固い鉱石と言われている」

妹に見せてやりたい、ムハンマドは自分も見たことのない石に思いを馳せた。

「話を戻そう。シンドバッドは落ちているダイアモンドを掻き集めると、肉に自分自身を縛りつけた」
「え?まさかシンドバッドは…」
「そう、巨大な鳥がその肉を、取りにくるのを待ったんだね。やがて鳥が飛んできた…」

館長の絶妙の間に、ムハンマドの鼓動は高鳴った。ごくりと息をのむ音がはっきりと聞こえてくる。

「でも、恐怖は一瞬だった。気づけば、シンドバッドは宙に浮いていたんだ。彼は崖にいた住人たちの手を借りて、鳥の手を逃れ、こうして脱出を果たしたんだ。もちろん、住人たちにお礼としてダイヤモンドを渡したよ。でも、自分の分もちゃっかりポケットにしまっていただろうね」

手に汗を握っていたムハンマドは大きく息を吐いた。それから、拍手をして感動を伝えた。

「シンドバッドは、すごいなあ!いつも絶体絶命の危機を乗り越えて、笑っているんだから!!」

その感想に、館長は満足げに微笑んだ。

「さあ、今日はここまでだよ。家に帰って妹に聞かせてやるといい。続きはまた来た時にしよう」

ムハンマドはまた大きな声で挨拶をすると、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』を元気よく後にした。

ムハンマドを見送った館長が作業部屋に戻ると、翻訳に没頭していた住人たちが急に筆を止め、顔を上げた。

「帰ったな」
「帰りましたね」
「行ったようだな」
「行っちゃいましたね」

そして住人たちは同時に、安堵のため息をもらした。

「だから、言ったじゃないですか!骨付き肉なんて、最近の若い子は知らないって!」

住人の中でも一番年の若い男が声をあげた。

「何を言うんだ!若いたって、お前は30代だろう?肉っていったら、骨付き肉!あれは、先祖代々わしらのロマンだったんじゃ!」

一番年長者である老人も負けじと声を張り上げ、反論した。

「何がロマンだ!イスラムは肉がほとんど禁止じゃないか。とっさに館長が僕らのよく食べる羊の肉にかえてくれたけど、超不自然でしたね!僕はムハンマドにあやしまれないか、ヒヤヒヤしっぱなしでしたよ…」

老人もそこは素直に反省をしているようで、小さい体をより小さくさせた。そこをとりなすのが館長の役目だった。

「まあまあ、スリリングなのは面白い物語の醍醐味だろう?」
「語り部がスリリングで、どうするんですかっ!?」

30代男の容赦ないつっこみに、館長も他の翻訳者たちも、愉快そうに笑った。

「いいじゃないか。ムハンマドのおかげで、こうして私たちも笑顔になれるんだから」

本当は物語なんて、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』には、まだ存在しない。彼らは膨大な数の文献、主に哲学や医学、天文学などと格闘していたのである。

しかし、思いつめた少年が訪れたあの日、その事情をきいた住人たちは、とっさに頷いてしまった。「面白い物語が、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』にある」と。

「私はよく覚えているよ。私がムハンマドの事情をここできいていると、みんな鼻をすすったり、目頭をおさえたり、無言の圧力をかけてきてくれたことを…」

恥ずかしそうに頭を下げる住人たちに、館長は面白がって笑顔で続けた。

「それに、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちに知らないものはないと言われたら、期待にこたえないわけにはいかない。そうだろう?」

館長の絶妙の間は、ここでも健在だった。

「さあ、心優しい少年のために物語の続きを一緒に考えてくれ。みんな一緒なら、より素敵な物語ができるだろう」

住人たちは観念したように笑った。
今夜も残業になるな。まあ、それも悪くないか、と思いながら…。

長く語り継がれる『アラビアンナイト(千一夜物語)』はここバクダッドで生まれたが、著者は不明である。

もしかしたら、それは『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』の住人たちが、一人の少年のために創り上げた物語だったのかもしれない。

少年は明日もきっと、住人たちに笑顔で迎えられるだろう。

「ようこそ、『知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』へ」、と―。


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ NHKスペシャル『文明の道⑥バグダッド大いなる知恵の都』×the guitar plus me『highway through desert』★

私が書く物語は、半分フィクション感覚でお読みになって下さると嬉しいです^^「知恵の館」を書きたくて書けなくて今週悶々としていました。本当はもう一つ結末があったんですけど、それはまた今度書き直すか、新しい物語にできたらと思います。円城都市についても書きたかったしなあ。

けいさんリクエストの友情モノを目指したつもりですが、微妙にそれたような気もしなくもないです…大丈夫かな?

① NHKスペシャル『文明の道⑥バグダッド大いなる知恵の都』
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2003/1012/
【第63夜】往復書簡と今回ので、初めて世界史に挑戦しましたが、どうだったでしょうか?私は知らない歴史だったんですけど、世界史の授業ではふれるところだったのかな?ちょっとふざけすぎたかも。

② the guitar plus me『highway through desert』
http://www.youtube.com/watch?v=a93AVCDfqn0
前にUPした【第63夜】往復書簡 も彼らを聞いていたのですが、なんとなく今回もこれを聞いてました。優しい物語を書きたくなる音楽なのかな?

良ければ、こちらもよろしくお願いします。ラストが少し違います。
【第68夜】 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ) もう一つの結末
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-74.html

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アルへ。

書簡、ありがとう。

まさかこんなにも君と気が合うなんて思わなかったよ。

国も人種も違う僕らだけど、共通の趣味があって嬉しいな。

ちなみに今、僕も天体観測にハマってる。

星はいいよね~!男のロマンだよね~!

僕の故郷、シチリアは星が結構よく見えるんだ。そちらはどうだい?

何気にロマンチストだったフリッツより。

  *

フリッツへ。

書簡をありがとう!

まさか君が俺らの言語、アラビア語で返事をしてくれるなんて思わなかったよ。

語学が堪能なんて中々やってくれるじゃん!と正直おじさんは驚いた。

最近の若者は~!と色々説教してやるつもりだったのに調子が狂っちまったぜ。

そんな君に敬意を表して、いいものをプレゼントしてやろうじゃないか。

さあ、受け取れ!このロマンチスト!

星なんてこっちは降るほどあるわ!がはは!

ただ、老眼が始まって遠くの星がよく見えてるだけかもしれないアルより。

  *

アルへ。

書簡、ありがとう!っていうか、プレゼントがまじヤバいんだけど!!

だって、これ天体観測儀じゃん!!

星好きっていったのが、まさかの展開!こんな嬉しい仕打ちが待ってたなんて…。

おっさん、すげー。やってくれるぜ!

息子の次に超大事にします!ありがとうございます!

ちなみに語学はね、そこそこできるよ。でも、個人的にアラビア語はしっかりやったつもり。

だって今のところ、一番学問の知識が豊富なのはイスラムじゃん。

医学も科学もそっちが抜きんでてる。すげーよ、星の知識も含めてさ。

いつかアルのいるイスラムにも行けるといいな。

でも、お互い立場が微妙だからね…。夢の話か。

でも、アルとこうして書簡のやりとりをしてると、

夢が実現しそうというか、叶いそうな気がするんだよね。

変だよね。星の見過ぎかな?

目の疲れにはブルーベリーが良いって聞いたフリッツより。

  *

フリッツへ。

書簡をありがとう!プレゼント、気に入ってくれて何より。

っていうか、息子の次にかよ!って思ったけどな。

まあ、子供は宝だ。当然だ。大事にしろ。

なんせ世界に誇る大図書館があるからな、こちとら。学問知識ハンパないね。

今日もきっとそこに世界の知識が届いてる。イスラムの自慢さ。

フリッツの息子が喜びそうな面白い物語だってある。

確か名前はそう「アラビアンナイト(千一夜物語)」っていったかな。

まだ読んでないから、内容は知らん。

お互い立場が微妙だからね…ってフリッツ、真正面から切り込むとかさ。

どんだけ向こう見ずなの!?ってなったわ!まだまだ青いぞ。

でも、友よ。

俺はそんな君が嫌いじゃない。

だから、あのことをどうにかできないかと日々考えてる。

シチリアや君に興味津々なアルより。

  *

アルへ。

書簡、ありがとう!

イスラムや君にこちらが興味津々。

大図書館の話には、胸が躍ったね。息子にもその物語を聞かせたいものだよ。

アルは学問のよき導き手だな。いい王だと思う。僕なんて比べものにならないほど。

哀しい知らせをしなくちゃいけない。

もたもたしている僕に、ついにローマ法王がキレまして

十字軍を引き連れてそちらに出兵することになった。

キリストとイスラムの聖地の取り合いって、永遠に続くのかな。

血のたくさん流れている場所が本当に僕らの、君らの、聖地なのかな?

最近さっぱりわからない。

だから、出兵すると見せかけて仮病になって早々と帰国する予定。

やっぱり青いかもしれないフリッツより。

  *

フリッツへ。

書簡をありがとう!

君はとんだ役者だな。仮病ってチフスかよ。たまげたわ!

一応、不安だから俺の薬剤師アルバイタールに頼んで、薬を作ったので送ります。

噂じゃ、法王が出兵失敗に激怒し、君はキリスト教から破門されたと聞いたよ…。

本当に仮病だよな?大丈夫だよな?ちょっと心配。いや、かなり心配なアルより。

  *

アルへ。

書簡、ありがとう。僕は元気になりました。君の薬のおかげだね。

仮病とか言ってた矢先、本当にチフスになるんだもんな。びっくりしたぜ。

まあ、破門は予想外だけど、これで堂々と君と本題に入れるんじゃないかな?

僕が今の立場を守れるのも、時間の問題だ。

だから、言おう。

アル・カーミル、僕の友よ。イスラムの王よ。

エルサレムは僕らキリスト教、君らイスラム教の聖地がある。

武力で支配するのではなく、互いの手をとろう。

よく理解している僕らなら、きっとそれができるはずだ。

ここに和平を申し出る。

きっとまわりから強い反発もあるだろう。

でも、君となら一緒に戦えると信じている。

友よ。

寛大なる者よ。

誠実なる者よ。

知恵に富める者よ。

一緒に悪役になってはくれないか?

僕の眺める星空が、君の空と繋がっていることを願う。

神聖ローマ帝国皇帝 フリードリッヒ2世

  *

フリッツへ。

奇跡の和平締結、お互いお疲れ様。

君の夢もようやく叶ったな。

本当に俺らの聖地『神殿の丘』に足を運んでくれるとは思わなかった。

しかも、礼拝の時を告げる祈りの声、アザーンを聞きたいと言うんだからね。

たまげたわ!でも、本当に嬉しかったよ。

反発は相変わらず、今日も俺たちを苦しめている。

でも、友よ。

ロマンチストよ。

俺はそんな君との悪役が嫌いじゃない。

今宵眺める星空も、君の空と繋がっていることを誇りに思うアルより。

  *


神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ2世とアイユーブ朝(イスラム系の王朝)アル・カーミルは書簡の交流を続け、1229年2月11日にヤッファ条約を締結、聖地エルサレムに平和をもたらした。それはアル・カーミルが亡くなるまでの、およそ10年間続いた。

彼の死から12年後フリードリッヒもこの世を去る。棺の中で眠るフリードリッヒはイスラム風の衣装を身にまとい、シャツの袖にはアラビア文字の刺繍が施されていたという。それはアル・カーミルからの贈り物だった。

友よ。

寛大なる者よ。

誠実なる者よ。

知恵に富める者よ。

勝利者よ!

いつかフリードリッヒがアル・カーミルに送った書簡の言葉。それに対する彼の返事だったのかもしれない。


2013年現在、聖地エルサレムでは未だ平和的解決は進まず、殺伐とした混乱が続いている。




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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ NHKスペシャル『文明の道⑦エルサレム若き皇帝の決断』×the guitar plus me『New Year』★

私の書く歴史物語は、半分フィクション感覚で読んで下さると嬉しいです^^学生時代は日本史選択だったので、世界史に憧れてました。今回初めて世界史の物語に挑みましたが、何から手をつければいいかわからなかったので、会社の図書室にあったNHKスペシャル文明シリーズより。当時の再現VTRがリアルで面白い。この回の2人の条約内容は実は凄いことになってるんです。私の筆力ではそこの交渉は無理そうだから、交流重視でやらせてもらいました。

一応、史実と違う点、私の物語上のフィクションを挙げておくと…。
・書簡にブルーベリー、大図書館、アラビアンナイト、薬剤師が登場。
・「友よ。寛大なる者よ…」のくだりはフリードリッヒ2世のミイラ(遺体)の衣服には残されていたが、書簡のやりとりでは出てきていない。ちなみに、その衣服がアル・カーミルからのプレゼントかは不明。
他にもあるかもしれません。気になった方は、 NHKスペシャル『文明の道⑦エルサレム若き皇帝の決断』をどうぞ。面白いぞ。

① NHKスペシャル『文明の道⑦エルサレム若き皇帝の決断』
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2003/1116/
この文明の道シリーズのおかげで初めてアラビアンナイト(千一夜物語)がバクダッド生まれと知りました。いつかきちんと物語の舞台にしてみたいです。たぶん近々書くと思います。「知恵の館」と呼ばれた大図書館の話はぜひやりたい。
物語になりました。
【第67夜】 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-73.html
【第68夜】 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ) もう一つの結末
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-74.html

② the guitar plus me『New Year』
http://www.youtube.com/watch?v=1naArtxVVBc
聞いてた音楽です。全然時代とあってませんが…どこかしっくりきたのかな。

余談ですが、ある作品をみてからずっと男子ふたりの固い友情モノを書きたいと思っていて。なので今回書けて良かったです。まあ、私のはかなりふざけてますけど…。ちなみにある作品とはこれ。
青い文学シリーズ「走れメロス」
http://www.youtube.com/watch?v=KulqQ7Wui5E(前編)
http://www.youtube.com/watch?v=pFggSOgrH0c(後編)
『青い文学シリーズ』は俳優の堺雅人さんをナビゲーターと声優にむかえ、日本の文学作品を期待の新人アニメクリエーターたちが少しアレンジしてお届けするというもの。他作品は個人的に「?」だったのですが、この「走れメロス」は感動しまして。お話作った人、凄い!と思って。このアレンジはいい!おかげで、友情モノを書きたくなりました。


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私には見ていられないものが三つある。

一つは宝の持ち腐れ。例えば、そう…目の前にいるお仙(せん)姉さんとかね。
お仙姉さんといえば、ここ江戸谷中(やなか※現在の東京都台東区あたり)の笠森稲荷門前(かさもりいなりもんぜん※笠森稲荷神社前)の水茶屋(みずちゃや※休憩所)鍵屋(かぎや)の娘で、それはもうたいそうな美人なのに、なぜか色恋沙汰には無縁ときている。しかも、水茶屋もそこまで繁盛していない。

おかしい!これは絶対におかしいわ!だって、美人がいれば、それ目当ての客とかでいっぱいになりそうなものよ。お店の売り上げだって、その分、跳ね上がるはずだわ。でも、ここ最近の水茶屋「鍵屋」の閑古鳥はなんだというの。お仙姉さんのおじいさんが作るお茶もお団子も普通においしいのに。これはおかしい!絶対おかしい!水茶屋「鍵屋」には疫病神でも住み着いているのかしら?

「おつうちゃん、何をまた一人でぶつぶつ言ってるの?」

お仙姉さんは今日も笑顔で私に声をかけてくれた。美人が笑うと、どうしてこうも幸せで得したような気分になるのだろう。だからこそ、思うのよ。

「宝の持ち腐れだわ…」

お仙姉さんは聞き取れなかった私の言葉に、「また一人の世界に入っちゃったのね」とくすくす笑った。違う!違うわ、姉さん!…まあ、ちょっとだけそうだけど、そうじゃないのよ!私はあなたを憂いているのよ。

「私はおつうちゃんがそうしてると、なぜか見ていられなくなるのよね。初めて会った時もそうだったからかしら?ほら、お団子でも食べて。こっちに帰ってきなさい」

姉さんは優しい。でも、もったいない。美人で気立ても良いのに、姉さんはなんか本来いるべき場所にいないという気がする。姉さん自身はそのへんのところ、いったいどう思ってるんだろう?せっかくだから、さりげなく本人の意見もきいてみないと。

「あら、お団子食べたら、すぐ戻ってきたのね。安心したわ。え?私?私は今のままの静かな茶屋でもいいんだけど…。そうねえ、たぶん最近ここに人が来なくなったのはあの人のせいじゃないかしらね」

そういって、向こうの方を指さした。私は顔をそちらに向けた。すると、鳥居の影から変な男がこちらを見ている。

「誰あれ??」

見るからにあやしい一人の男。

「さあ、誰なのかしらね。私も知らないの」

古汚い着物に乱れた長い髪。そのせいで顔の半分が隠れ、とても不気味だった。男は月代(さかやき)をして髷(まげ)結いをする今の江戸のご時世にあの姿はあやしい!あやしすぎるわ!

「ここ最近ずっとあそこからこちらを眺めているのよ」

疫病神はお前かー!!

「私が話をつけてくるわ!」
「おつうちゃん、やめて。いいの。ほっとけばいいのよ。何かあったら、言ってくるわよ」
「姉さん、のん気すぎるわ!何かがあってからじゃ遅いのよ!」
「え?…あら、やだ。考えてみれば、それもそうねえ」

姉さんはくすくすとまた笑った。「あら、やだ」じゃないわよ。もう!姉さんはこれだから!!私は自分の決心が鈍らないうちに、男に勇ましく、向かっていった。

「ちょっとあんた!そこで何してるの!?」

仁王立ちの私の剣幕に男は驚き、後ずさった。

「…別に」
「別にじゃないわよ。営業妨害よ。あんたのおかげで最近そこの水茶屋に全然客が入らないじゃない!」
「俺はただ…」
「ただ、何よ?」
「ただ…絵を描いていただけで」
「絵?」

よく見ると、男は絵筆と紙を大事そうに抱えていた。

「ちょっと見せなさいよ!」

本当に絵なんて描いていたのか気になって、私は男から紙を奪い取った。

「…うわ!何するんだよ!返せよ!」

男はとりかえそうと向かってくる。でも、私はそれを無視。というか本当は、ただ絵を見て驚いていただけなんだけど…。

「…あんた絵師なの?」
「…まあ、そんなとこ」

それは見事な墨絵だった。お仙姉さんの笑顔が品よく、穏やかに描かれていた。姉さんの美しさはこんなふうに、本当はもっと気高いんだって思わせてくれるような…。

「あんた…」
「なんだよ?」
「お仙姉さんに惚れてるの?」

長い髪のせいでよくはわからなかったけど、男は半分見える頬を真っ赤にして、固まっている。どうやら図星らしい。意外とうぶなのね。…ん?ちょっと待って…。……この絵は、使えるんじゃないの…?この時、私は閃いてしまった。

「…いける!…いけるかもしれないわ!」
「は?」
「ねえ、私がその恋、協力してあげてもいいわよ?」
「え?」
「あんた、お仙姉さんをもっと描きたいんでしょう?仲良くなりたいんでしょう?」

男は私を不思議そうに眺めていた。考えあぐねていたのだろう。それから、ついに観念したようだった。

「…そうだけど」

よし、きた!

「あんた、錦絵(にしきえ※浮世絵)はできるの?」
「は?」
「最近、江戸に出回っている錦絵!…確か版画だったはず。それはできるの?」
「…できるけど…」
「じゃあ、お仙姉さんの錦絵を作ってちょうだい!もう江戸中の誰もが手にとるくらいすごいのを。引き受けてくれたら、私の古い知り合いってことでお仙姉さんにあんたを紹介するわ」
「…本当か??」
「ええ。でも、その機会を生かすのはあんた次第よ!頑張ってね!」

私はにっこりした。私の提案に男は何度も頷いた。よし、交渉成立ね。

「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったわ。私は、つう。あんたは?」
「穂積(ほづみ)だ」
「よろしくね、穂積」

その時、穂積のお腹が大きな音をたてた。穂積はさらに顔を赤くする。私はつい笑ってしまった。

「あんた、何も食べてないの?しょうがないわね。私、ひもじい思いをしている人も見てられないものの一つなの。私のお団子、わけてあげるわ」

そう言って、私は水茶屋「鍵屋」に穂積を招き、彼にお仙姉さんを紹介したのだった。

錦絵は最近ここ江戸で少しずつ流行り出した版画だった。まず絵師が下絵を描き、下絵のとおりに彫り師が版木を彫る。その後、摺り師が絵の具をつけて紙に摺る。この三工程。

だから、一概に絵師の力量だけが問われるわけじゃない。彫り師や摺り師の職人技術が大きくものをいう。錦絵ができるのか穂積に聞いたとき、頷いたのは少し驚きだった。彫り師や摺り師との伝手や繋がりがあるということだから。

「いつもお仙さんの絵をこっそり描いて、知り合いの彫り師や摺り師の奴らに見せてたんだ。みんな凄く喜ぶんだよね。お仙さん、俺たちのあいだで超アイドルだから!」

どうも穂積とよく似た仲間らしい。…っていうか、超アイドルって何??新語かしら?

「本格的に描くことになったって聞いたら、みんな驚くだろうな」

とにかく錦絵作りに関しては、穂積に任せれば大丈夫そうだ。私は下絵作りが順調にできるようお仙姉さんと穂積の仲をとり持って、絵が出来上がった後のことを考えればいい。版画だったら、同じ絵が何枚も速く摺れる、つまり大量生産可能!それを江戸中に配りまくって、「この美人はどこにいる!?」と世間の注目をかっさらい、水茶屋に客が殺到する…!

「これぞ水茶屋鍵屋、復活のシナリオよ!」
「…人のこと言えないけど、シナリオって何だよ??新語?…まあ、いいけど」

穂積がぼそっと隣りで呟いた。私はそれをきいて、はっと我に返った。

「何、言ってるの?ほら、穂積、ちゃんと描いて。お仙姉さんの働いてる姿を!もっと激しく美しく!」
「…へいへい、わかってますよ。しっかり描いてますよ。っていうか、激しく美しくって意味わからん」

そんな私たちをお仙姉さんは笑いながら、時たま優しく声をかけてくれる。

「もう、おつうちゃんはまた穂積さんをせかして。穂積さん。ずっと集中して描いていたら、疲れるでしょう?お茶、飲まれます?」
「…え、いや。…だ、大丈夫…です…」

穂積はお仙姉さんに声をかけられると、真っ赤になって俯いた。そうとう惚れてるのね。惚れると、みんなこうなるものなのかしら?

「私も誰かに絵を描いてもらうなんて初めてだから、緊張しちゃうわ。ちゃんと、できてるかしら?」
「…な、何を言ってるんですかっ!もうバッチリですよっっ!!」

穂積がすかさずそうこたえると、お仙姉さんはほっとしたようだった。

「なら、良かったわ。穂積さん、無理せず、休憩しながらやって下さいね」

そう言うと、お仙姉さんは稲荷神社の参拝帰りの客の注文を取りに行った。

「お仙さんは、人柄もいいんだなあ」

穂積の言葉に、私も深く頷いた。

「そうなのよ。私ね、お仙姉さんのおかげで、ここにおいてもらってるんだ」
「へえ。そうなんだ…」
「あ、政之助さんだ!」

私はのれんをくぐる見慣れた顔に嬉しくなって立ち上がった。水茶屋をご贔屓にしてくれる常連客。ここ一帯の土地主である旗本(はたもと※武士)倉地家のご嫡男、倉地政之助(くらちまさのすけ)様だ。

「やあ、おつうちゃん。今日の鍵屋はちょっと混んでるね」
「はい!疫病神を追っ払ったというか、うまく丸め込みましたから!」

「は?お前、何言っちゃってるの?…っていうか、俺、丸め込まれてたの…?」と言う穂積を無視して、私は政之助さんのもとへ駆け寄った。

「疫病神を?ははは!おつうちゃんのやることは相変わらず豪快で面白いなあ」

政之助さんはとても人がいい好青年だ。私たち町人にも分け隔てなく、接してくれる。士農工商という身分が確立したこのご時世に貴重な方かもしれない。

「政之助さん、こちらがその疫病神だった絵師の穂積さんよ。政之助さんはいつものお茶とお団子ですよね?」

私は政之助さんの分のお茶とお団子を取りにいった。

「…初めまして。もと疫病神だったらしい穂積です」
「初めまして、倉地政之助です。君も人がいいなあ、穂積さん。おつうちゃんの話に合わせてくれて。彼女はあれでも人見知りで、出会ったころは誰とも口を聞かなかったんだよ」
「へえ、全然そんなふうには見えませんけどね。いつも威勢がいいというか…」
「今はね。男が惚れ惚れするくらい、たくましくなっちゃったけど。ちょっと前に家が火事にあってね。大変だったんだ。一人逃げのびて、ここの前で倒れていたところを私とお仙さんが見つけてね」
「…そうだったんですか」
「ずっと、ぶつぶつひとり言ばかりでね。町医者に預けた方がいいんじゃないかってみんな心配してたんだけど、お仙さんが大丈夫よ。一人の時間が必要なだけよって笑って止めてね。そしたら、しばらくしてようやく人と話ができるようになったんだ」

私がお茶とお団子の準備をしていると、政之助さんが笑顔でこっちに手を振っていた。私も手を振りかえす。

「…知りませんでした。そんなことがあったなんて」
「女のほうがずっと男らしいかもしれないなあ。いざって時に男は怯んでだめだね。お仙さんを見てて、私はそう思ったんだ」
「……それって…」
「政之助さん、お待たせしました!」

私はお茶とお団子を政之助さんに渡すと、隣に座らせてもらった。

「ねえ、政之助さんはもう見た?穂積の描いた絵」
「あ、まだ見てないね。私も見せてもらおうかな?いいかな、穂積さん?」

穂積がなぜか少しむすっとしていた。でも、催促されて、しぶしぶ紙を渡す。

「これは美しい。働いているお仙さんだね?」
「そうよ!これを錦絵にして江戸中に配るの!ここの水茶屋が繁盛するように!政之助さん、いい案でしょう?」

政之助さんは少し顔を曇らせた。

「う~ん、ちょっと嫌な予感がするなあ」
「え?」
「いや、なんでもない。何事もやってみないことにはね。杞憂かもしれないし。お仙さんがいいのなら、私がとやかく言うのも…」
「どうもお仙さんはおつうの言うことだったら、なんでも叶えてやりたいって感じなんですよね。おつうの案は悪くないと思うけど、そんなにうまく行くもんかねえ…」

集中して肩が凝っていたのか、穂積が伸びをしながら口をはさんだ。みんなして何よ。そんなこと、ないわよ!姉さんだって、今の状況を憂いでいたのよ。私は勢いよく、啖呵を切った。

「もうみんな心配性なんだから。私はいい予感しかしないわ!大丈夫よ!きっとうまく行く。私に任せて」

ところが、事態は思わぬ展開を見せることになる。なんと、三人みんなの予感が的中してしまったのだ。

穂積が作った錦絵は大評判となり、江戸中に急速に広まって、『笠森お仙』は一躍、時の人となった。有名な看板娘に一目会おうと、あちこちから江戸谷中の笠森稲荷神社に人が殺到し、その前にある水茶屋鍵屋は大繁盛となった。

「すげー。本当に繁盛してる」

長蛇の列になっている鍵屋を目の当たりにして、驚きを隠せないでいる穂積。私は鼻高々だった。ついでに、手に腰をあてて言ってやった。

「ほら、ごらんなさい!私の言った通りでしょう?ふふん!」
「…まあ、実際は俺と仲間の渾身の力作のおかげなんだけどな」

そのとおりだけど、啖呵を切った分くらいは、ほめてもらいたかったのに…。でも、完成した錦絵を見て驚いたことがある。

「錦絵ってあんなに派手な版画だったのね!三色くらいしか色がないと思ってたから、もっと地味なのかと思ってた」
「そこが俺たちの渾身の力作だぜ。おつうの言うとおり、今までは三色しかない紅摺絵(べにずりえ)ってやつが主流だったんだけど、俺たちのお仙さんは三色なんかじゃおさまらねえ!と俺の仲間たちが本気を出してくれてな。で、この通り、もっと何色も足して激しくも美しい出来栄えになったというわけ」
「なるほどね。あ、それと気になったんだけど、ここに書いてある『春信』って何?」
「ああ、これね。これは俺の名前」
「名前って、穂積じゃないの?」
「穂積は本姓。名前は春信。ちなみに絵師名だと鈴木春信ね」

鈴木春信…?どこかできいたことがあるような、ないような…。

「まあ、これで俺の役目も果たしたかな」

満足げに立ち去ろうとする穂積に「ちょっと待った!」と私は声をかける。

「何、言ってるの?まだ始まったばかりよ。ここからが稼ぎ時なの!あの長蛇の列、暇そうにしてるじゃない?あれを狙わなきゃ」
「え?」
「お仙姉さんのグッズを売るにはうってつけね!手ぬぐいや絵草紙、双六でしょう。姉さんの絵が入った物をとにかく売ってしまうの。来た人の記念になるような、また来たいなあって思えるような物をね!」
「嘘だろ…?」
「稀代の絵師、鈴木春信様にはまだまだお仕事が待ってます!頑張って頂かないと!」

私は片目をつむってみせた。「もしかして、俺、本当に丸め込まれてた…?っていうか、グッズって何?また新語??」と青くなる穂積を無視して、私は次の新作を何にするか思案していたのだった。


新作も大当たりで向かうところ敵なしかと思っていた。

でも、いつの時代もそうなのかもしれないけど、一つ流行れば、二番煎じというものが必ず出てくる。この看板娘もそうで、浅草寺奥山の楊枝屋「柳屋」の看板娘柳屋お藤(やなぎや おふじ)、また二十軒茶屋の水茶屋「蔦屋」の看板娘蔦屋およし(つたや およし)など、多くの娘たちが登場し始めていた。そして、これがちょっとした騒動に発展してしまうことになる。

「江戸看板娘決定戦…?何だ、それは?」

胡散臭そうな顔をしてたずねる穂積に私は説明した。

「だから、江戸で一番人気の看板娘を決めるんですって。最近ごろごろ似たような看板娘が出てきたから、これはもう一番を決めるしかないだろうって」
「どっかの時代の総選挙かよ?ばからしい!」
「そう?町人のちょっとした娯楽じゃない?私は別にいいと思うけど。物が売れれば…」
「お前もちょっと調子のりすぎじゃないか?金の亡者になりつつあるぞ?」
「失礼ね!稼がないと、お給金が払えないでしょう?私は穂積やその仲間たちに、ちゃんと払いたいだけよ!」
「…お前、そんなことを考えてたのか…」
「何よ!」
「はいはい!ふたりとも、そこまでにして。今日は水茶屋がお休みだから、静かに休ませてね」

顔色の悪いお仙姉さんが、私たちの止めに入る。

「姉さん、具合が悪いの?」
「大丈夫よ。一日休めば、すぐ元気になるわ。お店も繁盛、おつうちゃんも笑顔、私は幸せよ」

姉さんは儚げに笑った。働きすぎだ。聞かないでも、本当はわかってるのに…。

少し前、人手が足りない水茶屋の手伝いをしようとしたら、私の顔を見た客は騙されたと変に騒ぎ始め、ゴタゴタしたことがあった。それ以来、私は水茶屋の外でお仙姉さんの関連物品の販売に専念している。だから、水茶屋の接客は全部姉さんが引き受けていた。毎日、あの長蛇の列だ。疲れるに決まっている。

「おつうの言い分はわかった。俺や仲間のことは気にしなくていい。好きでやってるんだ。でも、お前はこのままだと大事なものを失うかもしれないぞ。それは肝に銘じとけ」

わかってる。本当は潮時なのかもしれない。だから、穂積の言葉が鋭く突き刺さった。

「もう穂積さんったら、大げさに言いすぎよ。私は大丈夫。おつうちゃん、そんな顔をしないで。私はおつうちゃんには笑っててもらいたいのよ」

私も姉さんには笑っててもらいたいのに…。

「大丈夫。私はわかってるわ」

言葉にできない思いをなぜか姉さんはいつも汲み取ってくれる。出会ったころから、そうだった。私が頷くと、姉さんが安心したように、奥の自分の部屋に戻っていく。その時だった。

「お仙、覚悟!!」

茶屋の扉が勢いよく開いて、誰かが駆け込んでくる。頭巾をかぶった小柄な人物が、合口(あいくち※短刀)を持ってお仙姉さんを狙っていた。背中を向けている姉さんは、反応が遅れてしまった。

「姉さん、危ない!」

私は姉さんを守ろうと前に飛び出した。刃の掠れる音がして、私はおそるおそる閉じていた目を開いた。

「間に合ってよかった!」

私の前には大きな背中があった。政之助さんだった。自分の刀で応戦している。それから、いとも簡単に合口を飛ばし、相手の喉元に剣先を向けた。格が違いすぎた。相手はへなへなと腰をおとした。

「こんなことになるんじゃないかと思ってだんだ。さて、誰の差し金だ?」

すると、頭巾をとった相手はきっとこちらを睨んだ。

「誰の差し金でもないわ!私はここに自分の意志で来たのよ!」

頭巾の下はきれいな娘だった。年はお仙姉さんと同じくらいだろうか。お仙姉さんにおとりはするけど、この子もまた美人の部類だった。

「お仙!あんたが邪魔だったのよ!あんたがいると江戸看板娘決定戦で優勝できない!」

…そんなことで、姉さんの命を狙ったの…?

「優勝しないと、私、私…好きな人と結婚ができない…!」

そう言って泣き崩れた。呆然とする私たちの中で、一人冷静だった政之助さんが間に入る。

「この娘さんにも何か事情があったみたいだね。お仙さん、どうします?奉行所に引き渡します?」

お仙姉さんは、首を振った。

「…あら、何かあったの?私、熱で朦朧としていたから何も覚えてないわ」

…姉さん。

「どこのどなたか知らないけど、安心して。私は江戸看板娘決定戦には出ないわ。私、嫁ぐことにしたのよ」
「え?」
「相手はこの方、倉地政之助さん。政之助さん、求婚の返事が今になってしまって申し訳ないですけど、私をもらってくれますか?」
「え?いや、はい!もちろんですよ!」
「ふつつかものですが、これからよろしくお願いします」

思いがけない展開に、私たちは言葉が出なかった。政之助さんだけは、とても嬉しそうに笑っている。そう政之助さんは、ずっと前からお仙姉さんを思い続けていたのだ。私はそれを知っていたし、もしかしたら、お仙姉さんもそうなんじゃないかと思っていた。

「決定戦に出られなくてごめんね、おつうちゃん」

最後まで私に優しいお仙姉さんに、私は怒るなんてとてもできなかった。だからこそ、潮時だった。

「ほら、あなたも泣いていないで立ち上がって。良かったら、お茶でも飲んでってよ。ここのお茶とお団子は中々なのよ」


  *


具合の悪いお仙姉さんを政之助さんにお願いして、私と穂積は泣き止んだ美人を途中まで見送りにいくことにした。その帰り道、穂積がしゅんとしてる私の背中を軽くたたいた。

「何、しょぼくれてんのさ。当初の望みは叶ったわけだろう?」
「え?」
「人をだしにしておいて、本当はお仙さんと政之助さんをくっつけたかったんだろう?違うのか?」

私は、息を吐いた。ばれてたんじゃしょうがない。

「でも、別にだしにしたわけじゃないわ。最初に言ったでしょう?『あなた次第』って。政之助さんの気持ちは知ってたけど、お仙姉さんまではちょっとわからなかったの。だから、男が一人絡めば、何かしら動くかな?とは思ったけど」
「なるほどね」
「旗本と町人の結婚も難しいじゃない?身分があるから。ある程度、評判の高い娘ってなれば、倉地のお家も認めてくれるかなって」
「で、お前はうまいこと、やったわけだな」
「結果的にね。でも、姉さんが命を狙われるとまでは思わなかった。…誤算というか、痛恨の極みよね…」
「なんか言ってることが、武士っぽいなあ」

笑う穂積に、私は続けた。

「私ね、自分の中で見ていられないものが三つあるの。一つがひもじい思いをしてる人、一つが宝の持ち腐れ。だから、あんたの絵を見たとき、この人もそうだと思ったわ。せっかくの絵の才を生かしきれてないんだって。で、閃いたの。お仙姉さんの美貌と水茶屋の繁盛とあなたの絵の評判で、一石三鳥できないかしら?って。ごめんね。私、強欲なのよ」

穂積はふっと笑った。確かに強欲すぎる。でも、自分はそっちのけで、すべて他人のことばかりだった。

「で、最後の一つはね。大切な人が、幸せをつかみそこなっていること」

そう言って涙ぐむ私に、穂積は言ってくれた。

「強がってないで、認めればいいんだ。自分だって政之助さんに惚れてたんだろう?」
「ううう…、そんなの気づかなかったわよ」
「…まさか、ふたりがうまくいった後で気づいたクチ??うわ、面倒くせー!」
「しょうがないじゃない…ううう…」

穂積はため息をつきながらも、私に優しく言ってくれた。

「俺さ、ずっと美しさって外から見えるものとばかり思ってたんだけど、おつうを見ていたら、考えが少し変わった」
「え?」
「今のお前は美しいと思う。とびっきりの美人だってね。絵師が言うんだから、間違いない!」

一七七〇年(明和七年)、一人の娘が江戸で起こした珍騒動がこうして幕を閉じた。おつうという彼女の名は後世にはもちろん残されていない。

「…ううう…、そんなうまいこと言ったって、あんたなんかに惚れないわよー!」
「誰も頼んでねーわ、そんなことっ!!」

しかし、錦絵改め浮世絵の創始者・鈴木春信が『笠森お仙』という美女を描き、一世を風靡したのは紛れもない歴史的事実である。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ タイムスクープハンターseason5 第8回「誕生!水茶屋アイドル」 ★

書いててあれですが、浮世絵など今回初めて調べました。本当は文献をあさってきちんとやりたかったんですけど、働いてる私にはちょっと難しかった。参考にした番組とネット知識なので、全て正しい情報と言えません。おつうは私が作ったキャラですが、鈴木春信と笠森お仙、その相手の倉地政之助(名前が違うかも)は本当にいたようです。春信さんはもしかしたら、お仙を描いたころは、ご高齢だったかもしれないのですが、私の中では若者になってます。タイムスクープハンターで笠森お仙を知って、その裏で何があったのかを考えていたら、一人の女の子が騒ぎ出して、みんなの人生をまとめて変えていく物語が生まれました。

タイムスクープハンター
http://www.nhk.or.jp/timescoop/
最近ハマっている歴史番組。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤さん)がその時代をドキュメンタリータッチでお届けするというもの。面白いのが有名な歴史人物ではなく、名もなき人々にスポットを当てているところ。毎回ちゃんとそのドラマに見せ場があって、ちょっとグッとくるんです。これを見てると、色んな歴史モノを書きたくなります。闘茶、忍者なども書きたい。みんなが知らないような歴史の裏側を書いてみたいなあって。古代史なら秦氏とか。学生時代は日本史選択だったから、世界史もやってみたいなあ。歴女ではないので、一から調べなきゃですが。ちょっと難しそうなものを興味が持てるように、簡単に面白く書かけるのが理想かな。書きたいものと書けるものは違うかもしれませんが…。


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曹騰(そうとう)は最近頻繁に自分の元へ訪れる孫を面白そうに眺めていた。

少し前までこの孫は、祖父が生殖能力を喪失した男性である宦官(かんがん)ということから、まわりに侮蔑の目で見られ、曹騰やその養子になった父に深い憤りをあらわにしていたものだ。しかし、今ではそれが落ち着き、明るい顔をするようになった。

「俺は征西(せいせい)将軍になって、西にいる異民族を倒し、名をはせるんだ」

なるほど夢を見つけたのか、と曹騰は思った。

曹騰は宦官であるが、高官である。思慮深く、学問にも優れ、何より人の才を見抜く目にたけていた。彼の推薦により、様々な人物が高官や将軍になっている。今日も彼の元には多くの者が集まっていた。征西将軍なども、もちろん顔を出している。

彼らに会いたくて、孫は祖父の元へ訪れたのだろう。征西将軍とは西にいる異民族を征伐にいく隊の将である。この時代の中国においては花形職であり、憧れるものが数多くいた。

「俺、思ったんだ。出自がどうであれ、最終的には能力のあるやつが生き延びるに決まっている」

世を悟ったような孫の物言いに、曹騰は笑った。しかし、その目は節穴ではない。今、王朝は静かに腐敗し始めている。それは官たちの間で賄賂が横行していることが大きい。曹騰の目には王朝が傾くのも時間の問題に見えた。

「俺は自分の能力でそれを証明してみせるんだ」

孫の目には迷いがない。吹っ切れたなと曹騰は思った。この少年はまっすぐ自分の運命を見据え、それをばねとし、これからおおいに羽ばたいていくだろう。

「そんなことより、じいさん。喉が渇いた。茶が飲みたい」

しかし、我がままで生意気な性格はまだ直っていないと見える。

「自分でやれ!」

曹騰は孫の頭を叩いた。この時、曹騰はふと孫はもしかしたら王の器かもしれないと思った。しかし、すぐにその考えを振り払う。自分の目もついに曇ったか…。

「クソじじい!早く、くたばれ!!」

孫は暴言を吐きながらも、おとなしく茶を淹れに行った。

「やれやれ」

そんな孫を曹騰は面白そうに眺めていた。

……しかし、曹騰の目はまだ曇ってもいなければ、節穴でもなかった。

この孫は後に、三国時代の王朝『 魏(ぎ) 』の基礎を作ることになる。

少年の名は曹操(そうそう)。字(あざな)は孟徳(もうとく)。

古代中国史に多大な影響を及ぼし、名をはせることになる。

彼らはもちろんそれをまだ知らない。


=====================================


=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★NHK『BS歴史館~「三国志」時代を超えた男の魅力 』★

他の物語を書いていた時、なんとなくBGMがわりに流していた歴史番組。「三国志の曹操の幼少期は?」みたいな話があって。2分くらいの解説者の解説だったんですが、妙に心に残り、そこだけ巻き戻して何度も見ました。曹操って悪人のように描かれているけど、子供時代は案外知られていませんよね。ふつうの少年像を書きたかったのかな。半分フィクション感覚で楽しんで下さると嬉しいです。

NHK『BS歴史館「三国志」時代を超えた男の魅力』
いつの間にか番組、終了していたんですね。
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P201100075800000/


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「…俺、好きな子ができたんだよね」

放課後サッカー部の練習が終わって、汗臭い部室で制服に着替えていると、隣のロッカーのタドコロが俺に打ち明けた。

「まじで?」

とりあえず、驚く素振りをする。どうりで最近、髪型や制服の着方に気合が入ってると思った。今もロッカーに備え付けの鏡で、タドコロは短い髪をやたらといじっていた。

「中学入学して早一ヶ月。ついにきたよ、遅れた俺の春!」
「おめでとー」
「なあなあ、誰だと思う?」
「…さあ?」

申し訳ないけど、正直あまりタドコロの恋愛事情に興味がなかった。そんなに仲がいいわけでもない。でも、タドコロ自身は俺のことをけっこう気に入っているようで、何かと絡んでくることが多い。話好きでお調子者のタドコロは、サッカー部のムードメーカー。目立ちたがりのプレイさえ控えれば、それなりにいい奴だった。

「もう可愛くてさー」
「へー」
「他の女子が霞んじまって困っちまうよー」
「ほー」

返事が棒読みになってしまったけど、タドコロは気付くような男じゃないから平気だろう。俺は素早く着替えて、話を打ち切ることにした。

「じゃんけんで負けて体育祭実行委員になったときは最悪って思ったけど、今は最高だね。人生わからんね」
「彼女、体育祭実行委員なんだ?」
「そうそう」
「良かったじゃん。じゃ、俺、急ぐから」

着替えもすみ、ロッカーの鍵を閉めて、自分のナイキのスポーツバックを肩にかけた。しつこいタドコロは俺を引きとめにかかった。

「スギヤマ、待てよ!腹、減ってるだろう?ラーメン、おごるからさ」
「いや、いいよ」
「デザートも付けるぜ」
「次の機会で」
「スギヤマー!」
「タドコロ、しつこい男は嫌われるぞ?」

一瞬ひるんだ隙に俺は部室を後にした。汗ばんだ体に外の風が心地いい。夕闇に染まっていくグラデーションの空が目の前に広がる。大きく伸びをして、ため息をついた。人の恋愛相談ほど、時間が無駄になることは無い。所詮は他人事なのだ。面倒なことに巻き込まれかねないし、スルーするのがよし。視界に入ったグラウンドの時計に目をやる。晩飯までまだ少し時間があった。自転車に乗って駅前の本屋にでも立ち寄ろうか。バッグから自転車の鍵を探ろうとすると、ぼそっと後ろで嫌な声がした。

「マコトくん、お探しのものはこれかい?」

にんまりとしたタドコロが、見覚えのある鍵をぶら下げてそこに立っていた。


「その子、本当にいい子なんだよねー」

結局タドコロに付き合う羽目になった俺は、学校近くのラーメン屋に立ち寄り、不機嫌そうにラーメンを食っていた。

「塩ラーメン、うまいだろう?半ライスも付けるか?」
「けっこうです」
「けっこうですって、イエス・ノーどっちにもとれるんだぜ。知ってた?」

麺を勢いよくすする。スープが飛び散って、軽く被害を受けたタドコロは苦笑した。

「悪かったよー。でも、こうでもしないとお前、話をきいてくんないじゃん?俺はお前に聞いてもらいたいんだよ」
「何で?」
「親友だからさ」

親友だったんだ!?

「マコトくん、俺のチャーシューもどうぞ」
「…お気になさらず」
「もう、悪かったって。ほら」

そう言って、タドコロはポケットから俺の自転車の鍵を取り出した。それを静かに机の上におく。

「本当に嫌なら帰っていいよ。悪かった」

タドコロは申し訳なさそうに頭を下げた。きちんと反省ができる奴らしい。自分勝手でも、相手の許容限度ラインは察せられるのだろう。救いようのない奴ではないのかもしれない。やれやれ、だな。

「食い終わるまでに、話し終えろよ」
「スギヤマー」

男に泣きつかれて肩をすくめる。俺はこういう役回りなのかもしれない。

「その子、サワキトウコって言うんだ」
「サワキ…って、あの可愛いって評判の?」
「そうそう」

入学式で新入生代表をつとめた子。ショートボブの小柄な女子。美人ってわけじゃないのに人目を引く愛らしい顔立ちをしていた。ひとなつっこい笑顔が魅力的で一気に男子の間で話題になった。

「俺、また運悪くじゃんけんに負けて、体育祭実行委員の学年リーダーになっちゃってさ。でも、彼女が気にかけてフォローしてくれるんだよ」
「へー、良かったじゃん」
「サワキも俺のこと思ってくれてんのかなーって自惚れてたんだけど、甘かったわ」
「甘かった?」
「いるんだよ、変なのが」

妙に語尾らへんに力がこもっていた。タドコロは思い出したのか、まずそうにチャーシューを俺によこした。

「変なのって?」
「変な男がいるんだよ、サワキには。どうやら幼馴染らしい」
「でも、付き合ってるってわけじゃないんだろう?」
「そうなんだけど…」

タドコロはため息をついた。コップの水が終わりかけていて、近くにあったやかんでつぎ足す。

「そいつは体育祭実行委員じゃないんだけど、やたらとサワキと一緒にいて目に付くんだ。最初ウザイ奴だなって思ってたんだけど、サワキの方からそいつによく声をかけるのに気づいてさ…」
「そっか。サワキが好きなんだな、そいつのこと」

タドコロは大きくため息をついた。

「やっぱそうなるよねぇ」

がくっと肩を落とすタドコロが少し不憫だった。

「そいつ、なんて言うの?サワキの話題に一緒に名前が挙がっても良さそうなのに」
「それが何だっけなー。名前を聞いても忘れちまって。目立つ奴じゃないのは確かなんだけど。特に顔がいいってわけでもないし。だからって、不細工ってわけでもないし。見た目なんて本当普通なんだよ。勉強やスポーツができるわけでもないらしくて、どこにでもいる感じ」
「…ふうん。変なの」
「だろ?」
「ごちそうさまでした」
「え、もう食い終わったの?」
「うん、うまかった」

サワキの男の好みは少し変わっているのかもしれない。

「でも、そいつがサワキのこと好きかはわからないんだろう?だったら様子を見ればいいじゃないか、しばらく」
「そうだよな。俺にもまだチャンスはあるよな?」
「あ、デザートの杏仁豆腐はテイクアウトでよろしくね」
「スギヤマー」

なんだかんだと恋愛相談はそこで終了し、その後サッカーの話で盛り上がってお互い熱く語っていたような気がする。タドコロはそこまで悪い奴じゃないから恋愛もうまくいくといいな、と思った。でも、評判になっている女子は、たいがい他にも思いを寄せている奴らがたくさんいる。見込みがないかもしれないな。

この時、友達の恋愛相談の登場人物に過ぎなかったふたりが、後になって俺に深く関わってくるとは思いもよらなかった。タドコロじゃないけど、人生ってわからないものだ。


あいつは、ノーマークだった。

俺がふたりと知り合ったのは、それからすぐの新緑が眩しい五月中旬。タドコロが学年リーダーとして頑張った体育祭でのことだった。俺は学年別クラス対抗リレーの選手で、自身の一年A組のアンカーだった。だいたいアンカーになるやつは、運動部のエースが推薦される。俺はまだ膝を故障する前で、サッカー部のエースと目されていた。他クラスの代表たちもどこか見たことのある面子ばかりで、そろったアンカー六人を眺めて、俺は素早く自分の妥当な順位を計算して、勝算があるかを考えていたと思う。

その中で一人、見覚えのない顔があった。運動部にしてはやけに長いぼさぼさの黒髪。それが風にゆったりとなびいていた。どこかぼんやりとした目元。体格も他の奴と比べてほっそりとしていて、屋内の運動部の奴にしても肌が異様に白かった。とても運動部員には見えなかった。

「F組のお前、部活どこ?」

他の奴も気になったのだろう。B組のアンカー(陸上部エース)がそいつに声をかけていた。そいつは自分に問いかけられたことに気づかなかったようで、ワンテンポ遅れてから返事をした。

「…え、俺?特に何も」
「何だよ、よくアンカーに抜擢されたな。罰ゲームかよ?」
「似たようなもんさ。体育祭実行委員にはめられた」

困ったように眉を下げて、そいつは苦笑した。B組のアンカーは大声で笑い、そいつの肩をたたいた。

「ははは!まあ、元気だせよ!ビリかもしれないけどさ。一生懸命は走れば、クラスの奴らもそれなりに同情してくれるって」

その様子を見ていた他のアンカーたちも、おかしそうに笑った。ふうん。見るからにとろそうな、いじられキャラだね、こいつは。ノーマークでOK。そう誰もが思っていた。

でも、リレーは予想外の展開になった。F組は裏をかき、アンカー以外のメンバーを運動部のエース次候補選手でそろえていたのだ。そんな奴らがうまくF組に集まっていたのも凄かったけど、そのことを見抜いた目に正直驚いていた。あえて奴らをアンカーからはずしたのも俺たちの油断を誘う作戦だったのだろう。F組の体育祭実行委員は中々やるらしい。俺も迂闊だったな、とこっそり舌打ちした。

「F組の実行委員は優秀だな。俺のクラス、ずっと二位なんだけど」

F組のアンカーに俺は声をかけてみた。そいつは相変わらずのんびりと答えた。

「あーこういうの、うまいんだよね、あいつ。今、走ってるよ」

グラウンドの円形トラックを小柄な女子がきれいなカーブを描いて走っていた。真剣なまなざしときゅっと引き結んだ口がバトンパスゾーンに近づくに連れて徐々にほころび、可愛い笑顔になる。

「へー、サワキトウコか」

つくづくタドコロの望みが薄くなるじゃないか。

「トウコは有名なんだねえ」

そいつはそう呟いて、うーんと伸びをした。うっかり出そうになったあくびをかみころす。

「そんな余裕でいいのかよ。アンカーは他の走者と比べて、走る距離が50M長くなるんだぞ?一位をキープできるのか?」
「え、そうなの?」
「おい!」

思わず突っ込んでしまった。どこまでもマイペースな奴だった。

「まあ、うまく走れればいいさ」
「え?」
「あ、こけた」

視線を戻すと、F組の走者が勢いよく転んでいた。サワキの後の走者だった。どうやらうまく結べていなかった自分の靴紐を踏んづけたらしい。一気に順位を下げてしまっていた。

「ラッキー。これでA組が一位じゃん」
「げ!もう、あとアンカーの俺だけなのに…」
「ドンマイ。じゃ、俺は先にスタンバるわ」

俺はにこやかにその場を離れ、スタート地点につく。一位は確実になりそうだった。F組は4位まで順位を落としていた。残念だね、サワキ。本番は何が起こるかわからないんだ。そうウマいこと簡単に優勝なんてできないって。俺は前走者から余裕でバトンを受け取ると、白いテープが揺れるゴールを目指して走りだした。

――うまく走れればいいさ。

うまく走る…、か。どうやってうまく走るんだよ、こんな状況で。

「マコト、ぬかれるぞ!」

残り50Mきったところで、誰かの声がした。

「え?」

気づけば、さっきまで話していたあいつが俺に迫ってきていた。ぼさぼさの髪を振り乱して突進してくる。驚いた俺は、慌ててペースを上げた。でも、速さが全然違った。ザッという風の音を耳元ではっきりときいた。それから白いテープが空にはためくのがわかった。俺はそれにかすりもせず、先にゴールした相手をまじまじと見つめた。膝に手をついた前屈体勢で、そいつは激しく息をしていた。

――なあ、信じるか?

「お前…」
「やったー!」

女子の甲高い声に遮られた。サワキトウコが笑顔で近づいてくる。そいつは体勢を変えずに、ちらっと彼女を見上げた。

「すごいよ、一位だよ!」
「トウコか。はあ。はあ。なあ、俺うまく走った…ろう?」
「うん!転んじゃったアイカワくんなんて、感激して向こうで泣いちゃってるよ」
「はあ。はあ。そっかぁ」

――うまく走れればいいさ。

…こんな状況だからこそ、こいつはうまく走ったのだろうか…?F組は最初からアンカーを捨ててなんかいなかったのだ。

「やっぱりサトシをアンカーにして良かったー。さすが私!」
「はあ。はあ。…え、お前の手柄…なの?」

サワキはふざけて、サトシの頭をくしゃくしゃと勢いよく撫でた。ふたりの仲の良さが伝わってくる。そうか、こいつがタドコロの言ってたサワキの変な幼馴染か…。

「はあ。はあ。やめろ、トウコ。吐きそう…それに目が回って…」
「え?」

ドサ…。人が倒れる音がして、急いで駆け寄った。サトシは顔が真っ青だった。

「ちょっとサトシ、どうしたの?」

動かない体を大きく揺さぶろうとするサワキを見て、俺は慌てて止めた。

「落ち着いて。保健医を呼んでくるんだ。あと担架もいるって伝えてくれる?」

はっとしてサワキは頷くと、急いで駆け出した。あの勢いなら、すぐ保健医を連れてくるだろう。

「おい、意識はあるか?」

かがみこんで、俺はサトシに声をかけた。のんびりとした返事を待つ。

「ああ…」
「頭は打ってないか?」
「だいじょ…ぶ」
「持病とかある?まあ、あったらリレーなんかやったりしないよな?」
「…ない…」
「お前、久しぶりに走ったろ?だから、体が驚いたんだよ」
「…へへへ…」
「…俺、こんな奴に負けたのか」
――にやり。
「顔、真っ青で笑うなよ。怖いから」

無理だよ、タドコロ。きっとこいつにはかなわない。

それから、すぐにサワキが保健医を連れて戻って来た。俺は軽くサトシの容態を伝え、担架で保健室まで運ぶのを手伝った。サトシは貧血だったようだ。あと、寝坊して朝飯を抜いてきたらしい。保健室のベッドでぐっすり眠った後の第一声が「腹、減った」で、サワキに何度も「バカ!」と怒鳴られていた。でも、なんだかんだと自分の弁当をサトシに差し出すあたりが優しいサワキらしかった。

「ありがとう、スギヤマくん」

弁当をがつがつ食べるサトシを見て、やっとほっとしたのだろう。少し潤んだ目で、サワキが俺に言った。驚いた。

「どうして名前…?」
「A組のスギヤママコトくんでしょう?サッカー部のエースで秀才。女子の間じゃ有名だよ」

俺は苦笑した。男女とも似たような評判を立てあうものらしい。

「でも、サトシが勝っちゃったね」

俺はまた苦笑した。なぜだか悔しさはなかった。あったのは新鮮な感動みたいなもの。

――なあ、信じるか?

サワキは俺の苦笑を違う意味にとったのだろう。慌てて語りだした。

「サトシはね、もともと足が速いわけじゃないんだ。ただ変な奴で、ピンチになると自分の本領を極端に発揮しちゃうみたいなの」
「極端に…?」
「そう。…うまく説明できないんだけど。たぶん前の走者が転ばなかったら、サトシはあんなに早く走れなかった。クラスの代表って手前、表彰台を狙って、それなりに頑張ったのかもしれないけど…。なんだろう。自分じゃなくて他人のピンチに敏感なんだよね。困ってる人を見過ごせないの。転んじゃった子をなんとか助けたくて、今回もっと頑張っちゃったんだよ」

――うまく走れればいいさ。

俺は改めてサトシをまじまじと見つめた。ぼさぼさの黒髪はさらに寝癖のせいで所々はね、外見なんておかまいなしだ。今はただ猛然と弁当を食べることに集中している。マイペースでお人よし…か。

「スギヤマくんは信じる?今の話」

いきなりサワキが俺の顔を覗き込んだ。

「え?」

不意打ちだった。

――なあ、信じるか?

どこまでも透明で澄んだ優しい瞳。

「…どうかな」
「だよね」

サワキはふっと笑った。それからサトシを見つめる。あまりの瞳の優しさに、いじらしささえ感じた。

「もしかして、わざと転んでもらった?」

俺の意地悪な問いに動揺することもなく、サワキの瞳にさした光りは踊った。

「…どうかな」

彼女はさっきの俺と同じ言葉を返しただけなのに、どうしてだろう。違う響きにあっさり変わってしまう。俺はため息をついた。

無理だよ、タドコロ。きっとこいつらにはかなわない。

「ダメだ、全然足りねー」

サワキの弁当をきれいにたいらげて、サトシはまた咆哮した。

「えー、まだ足りないの?」
「お前の弁当は小さいんだよな」
「女子はこんなもんよ…って、あ!デザートのフルーツまで食べてるじゃない」
「うん」
「私がグレープフルーツ好きなの、知ってるでしょう?何でそれまで食べちゃうのよ」
「え?全部くれたんじゃないのかよ」
「ちっがーう!」

同じような表情をして、二人はやりあっていた。…幼馴染か。

「なあ」

どこか羨ましかったのかもしれない。だから、このとき、俺から声をかけてしまったのかもしれない。

「実は俺、今日、弁当忘れてさ。これから近くのうまいラーメン屋に行こうと思ってたんだけど、良ければ三人で一緒に行かない?」

二人は同時に振り向いた。そして、声をそろえた。

「――行く!」

笑顔も一緒で、なんだか双子みたいだった。




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【1001夜ショートショート】へようこそ。

おいでませ。語りべのrurubu1001です。

目次全話UPまで時間がかかりそうなので、しばらくこちらなんぞどうでしょうか?


★☆★ 拍手の多かったものベストランキング ★☆★ 

みなさまの拍手でこのベストランキングの変動にご協力下さい。
(もちろん、もし良ければで全然構いませんので^^)
意外な物語が並んで個人的にびっくりです。まあ、アリなのかな。

はじめての訪問者様にも、これが参考になることを祈りつつ…。


★ 第①位 『【第112夜】 BLITZ PRETZ (ブリッツ プリッツ)』 こちらから
私は、誘拐される。帰宅途中だった。一人暮らしの自分の家まで、あと少しのところで。「動くな!おとなしく車に乗れ!」それをあえて狙っていたのだろう。あっさり覆面男たちに取り囲まれてしまった…。(青春)

★ 第②位 『【第146夜】 ジェネラル・イシイ』こちらから
お前は何も知らずに来たんだな。 マルタとは、人体実験用の捕虜のことだ…。(歴史)

★ 第③位 『【第181夜】 或るアプレ記者の回想④  』 こちらから
昭和25年7月。就職活動がうまくいかない京大生・ヨシダは歴史を揺るがす或る事件に遭遇する。世に言う、金閣寺炎上。新聞記者に扮し、現場に忍び込んだヨシダは徐々に事件の真相に近づいていくが…。(ミステリ)

★ 第③位『【第16夜】 同窓絵(どうそうかい)』 こちらから
個展を開くから来いと親友から誘いが来た。『お前はたぶん、ずっと引きずるタイプだな』主人公は20年ぶりに親友に会いに行くが…。(青春)

★ 第③位 『【第21夜】 ガリガリ君の陰謀 』 こちらから
放課後、僕は公園でこっそり一人バスケットの練習をしていた。そこをたまたま通りかかったクラスメートに見つかってしまう…。(青春)

★ 第③位 『【第115夜】 グレイブ・シティ』 こちらから
…鐘の音がする。いつからかわからない。ただ、夢の最後でいつも鳴り響くのだ。ずっと前から…。(SF)

★ 第③位 『【第301夜】 嵐を呼ぶ女』こちらから
電話のベルが鳴り響く。またかと思った。耳障りな事をこの上ない。いい加減、家の電話線を抜いてしまおうかとも考えたが、そうもいかない。担当編集者とのやりとりもある…。(歴史)

★ 第③位 『【第179夜】 音花 』 こちらから
彼女は後ろから飛びついて、自分の細腕を俺の首に絡めた。彼女が外から連れてきたのだろう。一緒に春の香りがした…。(青春)

★ 第③位 『【第38夜】  兄の帰省 』 こちらから
中三の一学期の終業式を終え、通知表をもらって家に帰ると、兄が帰省していた。何かと派手な兄に僕はまた振り回されることに…。(家族)

★ 第③位 『【第121夜】 パラレルサイン 』 こちらから
朝、目覚めたらベッドに知らない女といた。戸惑うに俺に彼女が言った。「あなたはタイムトラベラーなの」俺と彼女はいったい何者なのか…?(SF)

★ 第③位 『【第62夜】 幸せの香り』 こちらから
妻は、パンが大好きだ。彼女はきっと、パンを愛しているのだ。もう常人の僕が想像できないほどに。もしかしたら、旦那である僕への愛情以上に…。(家族)

★ 第③位 『【第245夜】 亡き王女のためのパヴァーヌ 』 こちらから
「あなた、絵のモデルになってくれない?」放課後、誰もいない音楽室でピアノを弾いていると、一人の少女が私に声をかけてきた眉の上で切りそろえた前髪が似合う整った顔立ち。自らがモデルと名乗ってもいいような美少女だった…(友情)。

★ 第③位 『【第149夜】 過去世話(むかしばなし)』 こちらから
過去世が、押し寄せる。人の記憶のさらに奥底。根深く、根強く、巣食う過去世がある。先生は前世とか過去世とか信じますか…?(SF)

★ 第③位 『【第143夜】 らしさ 』 こちらから
放課後、担任のミヤザワに進路指導室に呼び出されて、早や10分。気まずい。何、この空気。逃げ出したい… 。まあ、もとはと言えば、進路調査票を白紙で提出した俺が悪いんだけどさ…。(青春)

★ 第③位 『【第113夜】 ネバーランド 』 こちらから
「ようこそ、ネバーランドへ」№511の少年が言った。「ここは特別な場所、『選ばれた子ども』しか来れないんだ。きみは選ばれたんだよ」(サスペンス)

★ 第③位 『【第116夜】 I am a good girl 』 こちらから
『誰しも自分の幕引きを決めることなんてできないわ。だから、せめて自分の幕開けくらいは自分で決めたいじゃない?』ねえ、伯母さん。そのことをあなたはまだ覚えてる?(家族)

★ 第③位 『【第60夜】 桜の時 』 こちらから
私は立ち止まって、ゆうに十分は、ひらひらと舞い落ちる桜の花びらを眺めていた。声がして振り向くと、そこには何度見ても見飽きない、もう一つの優しい顔があった…。(青春)

★ 第③位 『【第51夜】 少年の夢 』 こちらから
曹騰(そうとう)は最近頻繁に自分の元へ訪れる孫を面白そうに眺めていた。「俺は征西(せいせい)将軍になって名をはせるんだ」そう夢を語る孫に曹騰は思うところがあった。(歴史)

★ 第③位 『【第24夜】 ハードボイルド少年 』 こちらから
「貧しい人の味方で、そのために銃を片手に一人闘うなんて素敵ですよ。刑事さん、彼はどんな人なんですか?」ハードボイルド少年なる者を追っている刑事は今日もあるBarにいた…。(ハードボイルド)

★ 第③位 『【第63夜】 往復書簡 』 こちらから
フリッツとアルの趣味を通じて始まった書簡のやりとり。何往復も続いた彼らの交流は、やがて大きな奇跡を生む…。(友情)




みなさまの拍手やコメントがとても励みになりました。いつも本当にありがとうございます!
今後とも【1001夜ショートショート】をよろしくお願いいたします。




=== 目次 === 


★ 『【第1夜】 千一夜の幕開け 』 こちらから
王妃を失い、悲しみにくれる王のもとへある女が訪ねてくる…。(ファンタジー)

★ 『【第2夜】 クリスマスの恋人(ユリ1) 』 こちらから
クリスマスイヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。(青春)

★ 『【第3夜】 いちごばあさん 』 こちらから
小学生の私は母のお見舞いに行く途中、魔女に出会い、秘密の楽園に連れて行かれ…。(ファンタジー)

★ 『【第4夜】 琵琶法師(※未完※)』 こちらから
都を騒がす盗人が盲目の法師から琵琶を盗もうとして…。(ファンタジー)

★『【第5夜】 砂糖とスパイス  こちらから
幼馴染の男の子のために、女の子が夜中にこっそりお菓子作りに励み…。(青春)

★『【第6夜】ロックフェスティバルの人々 オーディエンス編』 こちらから
★『【第7夜】ロックフェスティバルの人々 アーティスト編』 こちらから
★『【第8夜】ロックフェスティバルの人々 主催者編』 こちらから
毎年夏に行われる、とあるロックフェスティバル。それに関わる人々の思いとは…?立場の違う3人の視点でそれぞれ書いてみました。(ロックフェスティバル)

★『【第9夜】 神様の寝室 』 こちらから
彼女は夜眠れないと、僕の寝室にやって来る。あることを『鑑賞』するために…。(ファンタジー)

★『【第10夜】 桜の森 』 こちらから
桜の森の満開の下、男が女を背負って歩いている。女との約束を果たすために…。(和風)

★『【第11夜】 ノスタルジア』 こちらから
私は海に向かう途中、「海にかえる人は人魚なんだよ」という不思議な少年と出会う…。(ファンタジー)

★『【第12夜】 ピザパーティー』 こちらから
★『【第13夜】 ポラロイド 』 こちらから
★『【第14夜】 金曜日の占い師 』 こちらから
今日も僕らはこの街で泣いたり、怒ったり、笑ったりしている。大切な誰かと一緒に…。舞台は東京の吉祥寺、井の頭公園。『くるり』の『ワンダーフォーゲル』という音楽を題材にして書いてみました。(ワンダーフォーゲル)

★『【第15夜】 朝顔のはなし』 こちらから
「物語をかいてください」ケンジ先生が夏やすみに出した宿題に困ってしまったぼくは、先生に相談しにいくが…。(ファンタジー)

★『【第16夜】 同窓絵(どうそうかい)』 こちらから
個展を開くから来いと親友から誘いが来た。男は20年ぶりに彼に会いに行くが…。(青春)

★『【第17夜】 西瓜』 こちらから
夢の中で恋人が突然いなくなり、探す旅にでた私。しかし、彼は見つからず、私は倒れてしまう。そこを助けてくれたのは…。(ファンタジー)

★『【第18夜】 読書ノート 』 こちらから
僕は国語の教科担任に呼び出しをくらい、ある秘密をあばかれてしまう…。(青春)

★『【第19夜】 世界の終点駅 』 こちらから
私は列車である場所を目指す。そこは「世界の終点駅」と呼ばれていた…。(ファンタジー)

★『【第20夜】 モダンガール事件手帖 』 こちらから
「それはとても奇妙な怪物でした」カフェーで働くモダンガールと英国かぶれの探偵が遭遇した事件。(ファンタジー)

★『【第21夜】 ガリガリ君の陰謀 』 こちらから
放課後、僕は公園でこっそり一人バスケットの練習をしていた。そこをたまたま通りかかったクラスメートに見つかってしまう…。(青春)

★『【第22夜】 織姫と彦星 』 こちらから
「会わなければならない人がいる!」私とは違う意志が、私の意識の中で強く訴えている。どうやら他人の意志が私の中に住み着いてしまったようなのだ。意志に従い、私はある場所を目指すが…(SF)

★『【第23夜】 砂漠のロックフェスティバル 』 こちらから
砂漠の中でくたばりかけていた僕は男に救われる。その男はギターを託して、姿を消した。男を追いかけ、僕はロックフェスティバルへ向かう…。(ロックフェスティバル)

★『【第24夜】 ハードボイルド少年 』 こちらから
「貧しい人の味方で、そのために銃を片手に一人闘うなんて素敵ですよ。刑事さん、彼はどんな人なんですか?」ハードボイルド少年なる者を追っている刑事は、今日もあるBarにいた。(ハードボイルド)

★『【第25夜】 蹊(こみち)を成す 』 こちらから
全ては彼女が宮廷に桃を届けに行ったことから始まった…。桃からたどりついた憧れの公子の正体とは…?真実を知ったことで彼女は宮廷事情に巻き込まれてしまう…。(ファンタジー)

★『【第26夜】 PLANET(プラネット) 』 こちらから
「ここは遠い夜の海。そして、あなたは私のボートの中にいます」気がつくと、目の前に見知らぬ男がいた。男は自ら星を作っているというが…(ファンタジー)

★『【第27夜】 夜を駆ける 』 こちらから
幼馴染と夏祭りにいった僕は「ずっと言いたかったことがあるんだ」と彼女にあることを告げようとする…。(SF)

★『【第28夜】 忘れものの沼 』 こちらから
森の中にある〈忘れものの沼〉には、人間たちの忘れものが沈んでいるという。そこには一匹の蛙が暮らしていた。ある日、一人の少年が自分の忘れものを探しにやってくるが…。(童話)

★『【第29夜】 森の結婚式 』 こちらから
黒い犬のワクワクと白い犬のフワフワが結婚することをきいた森の仲間たち。彼らは素敵な結婚式をしようと相談し、それぞれ準備をしますが…。(童話)

★『【第30夜】 水魚 』 こちらから
私はある晩、いたたまれなくなって家を飛び出した。その途中「…私を海に連れてってくれない?」という不思議な女性に出会う…。(友情)

★『【第31夜】 ノーマーク(虹の消えた後1) 』 こちらから
「…俺、好きな子ができたんだよね」放課後、隣のロッカーのタドコロが俺に打ち明けた。友達の恋愛相談の登場人物に過ぎなかったふたりが、後になって俺に深く関わってくる…。(青春)

★『【第32夜】 遠い砂漠の物語 』 こちらから
今までこの地には、誰一人として訪れたことなどなかった。ここはあらゆる生命を枯らせた大地だったから…。死の大地、砂漠。そこに、一人の老女が現れるが…。(ファンタジー)

★『 【第33夜】 悪夢 』 こちらから
自分という人間の位置づけについて考えることがある。俺は一体どこに立っているのだろうと…。(ファンタジー)

★『 【第34夜】 銀の羽 』 こちらから
その腕の中は心地よく、私はまるで赤ん坊のように小さく丸くおさまっていた。「迎えに来たよ」私は、その声に導かれるようにあるものを発見する…。(ファンタジー)

★『【第35夜】 SF小説を書こう!』 こちらから
「あれ、知らなかったんだ?ハルはね、恋をしちゃったんだよ」ケイゴ・スガッチ・ハル・シュウちゃんの仲良し4人組は、14歳の夏、一人の不純な動機のため、あることをすることに…。(友情)

★『【第36夜】 月の満ちる夜に』 こちらから
いらっしゃい。あなたの名前は?自分の名前を覚えてないの?でも、気にすることはないわ。私も自分の名前なんて知らない。そんなのあるだけむなしいだけよ…。月の満ちる夜に出会ったふたりが織り成す物語とは…(ファンタジー)

★『【第37夜】  20 』 こちらから
午前0時。日付が自分の誕生日に重なると、二十年間今まで生きてきて事が、断片的だけれど、鮮やかにあっという間に駆け抜けていった。私は呆然とこれが死ぬ間際に見るあれか、と別に死ぬわけでもないのに、考えてしまった…(友情)

★『【第38夜】  兄の帰省 』 こちらから
中三の一学期の終業式を終え、通知表をもらって家に帰ると、兄が帰省していた。何かと派手な兄に僕はまた振り回されることに…。(家族)

★『【第39夜】  冬ノチ春。』 こちらから
「受験番号0986」その数字はどこをどう探しても、目の前にある大学の掲示板には記されていなかった。その場を去ろうとすると…。(青春)

★『【第40夜】  雨と誕生日(バースデイ)(雨と誕生日1)』 こちらから
言っとくけど、俺は雨男じゃない。誰だって、好きで自分の誕生日を雨にしないだろう。雨は嫌いだ。俺から、いろんなものを奪ったから…。(青春)

★『【第41夜】  ロックフェスティバルの人々(オーディエンス編2)』 こちらから
★『【第42夜】  ロックフェスティバルの人々(オーディエンス編3) 』 こちらから
★『【第43夜】  ロックフェスティバルの人々(アーティスト編2)』 こちらから
毎年夏に行われる、とあるロックフェスティバル。それに関わる人々の思いとは…?立場の違う視点でそれぞれ書いてみました。お好きなところからどうぞ。(ロックフェスティバル)

☆カテゴリの「ロックフェスティバル」について こちらから

★『【第44夜】  消えない虹 (虹の消えた後2) 』 こちらから
「消えない虹が欲しいんだ」そう言うと、テツオはにこにこと身をのりだした。「消えない虹が欲しいのか?見ててごらん」そして俺は彼の手を借りて、消えない虹を手に入れるが…(青春)

★『【第45夜】  サクラハマダカ 』 こちらから
今日もあなたの声がする。「サクラハマダカ、サクラハマダカ」私はいつもその声で目覚め、桜がまだ咲いていないことにがっかりするの…。(ファンタジー)

★『【第46夜】 半分フィクション 』 こちらから
半分くらいのフィクションがちょうどいいと思うんだ。フィクションなんて言葉に愛がない?本当にそうなのかな?(青春)

★『【第47夜】  俺様路線テスト 』 こちらから
終業式の後、担任に言われた「抜き打ちテストって素敵だと思うんだよね」の一言にクラス中が騒然となる。でも、たぶんみんなどこかでわかっている。この抜き打ちの本当の意味を…。(青春)

★『【第48夜】  赤い傘と転校生(雨と誕生日2) 』 こちらから
振り向くと、赤い傘をさした知らない女の子が立っていた。「このままだと学校に遅れます。一緒にどうですか?」俺はきれいな彼女と学校まで一緒に向かうことに…。(青春)

★『【第49夜】  神様の結婚 』 こちらから
神様、あなたはこの娘さんを妻とすることを望みますか。順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、夫として生涯、愛と忠実を尽くすことを誓いますか。神様は果たして無事に結婚できるのか…?(ファンタジー)

★『【第50夜】  箱庭 』 こちらから
「これは箱庭といってね、箱の中にただ砂が入っているだけのものなんだ」クマ先生のお手本になるような完璧な笑顔が苦手な私は…。(未分類)

★『【第51夜】 少年の夢 』 こちらから
曹騰(そうとう)は最近頻繁に自分の元へ訪れる孫を面白そうに眺めていた。「俺は征西(せいせい)将軍になって名をはせるんだ」そう夢を語る孫に曹騰は思うところがあった。(中華風)

★『【第52夜】 セツナイ (虹の消えた後3)』 こちらから
入院生活に慣れ始めた頃、俺は病院の屋上でサワキと再会する。彼女はサトシの見舞いに来ていた。サトシは事故にあい、意識不明になっているという…。(青春)

★『【第53夜】 光の洪水 (虹の消えた後4)』 こちらから
「ありがとう」彼女はにっこりと俺を見上げた。俺はなんとか笑顔を返すので精一杯だった。ついにある人を思い出し、胸がつまって泣きそうになっていたのだ…。(青春)

★『【第54夜】 幸福の国 』 こちらから
ある人から、聞いたことがある。幸福の国に住む者は、誰でも幸福を味わうことができる。しかし、それは彼らにとっての本当の幸福ではない。では、本当の幸福とはなんなのだろうか…?(ファンタジー)

★『【第55夜】 瞳の記憶 』 こちらから
誰かに二の腕をしっかりとつかまれた。水たまりに落ちずにすんで、ほっとして顔を上げる。「いい瞳をしてる」私はある男の人に出会う…。(未分類)

★『【第56夜】 世界の入口(虹の消えた後5) 』 こちらから
「…きっとサトシが世界の入口になって見せてくれるよ」どこまでもサトシを信じて揺るがない。その姿に過去の自分がだぶってしまい…。(青春)

☆カテゴリの「マコト(虹の消えた後)」について こちらから

★『【第57夜】 笠森お仙騒動記 』 こちらから
私には見ていられないものが三つある。一つは宝の持ち腐れ。例えば、そう…目の前にいるお仙姉さんとかね…。江戸中期を舞台に一人の娘が起こしたある騒動とは…。(和風)

★『【第58夜】 烏と男 』  こちらから
その墓前で、男は膝をついて泣き崩れた。「泣いてても無駄だよ」一羽の烏(からす)が男に告げた真実とは…?(SF)

★『【第59夜】 鬼事(おにごと) 』 こちらから
「鬼は、あなたね」そう言われ、私は目隠しをする。「さあ、私をつかまえて」鬼ごっこのことを古くは、鬼事と呼んだ。どうして、私はあなたをつかまえられないの…?(ファンタジー)

★『【第60夜】 桜の時 』 こちらから
私は立ち止まって、ひらひらと舞い落ちる桜の花びらを眺めていた。声がして振り向くと、そこには何度見ても見飽きない、もう一つの優しい顔があった…。(青春)

★『【第61夜】 悪ふざけと昼掃除(雨と誕生日3) 』 こちらから
どうして、あいつは俺の名前を知っていたんだろう?『雨、嫌いですか?』掃除時間中、遠くから小さく見える彼女の姿は、俺と変わらずのんびりとしたものだったが…。(青春)

★『【第62夜】 幸せの香り』 こちらから
妻は、パンが大好きだ。彼女はきっと、パンを愛しているのだ。もう常人の僕が想像できないほどに。もしかしたら、旦那である僕への愛情以上に…。(家族)

★『【第63夜】 往復書簡 』 こちらから
フリッツとアルの趣味を通じて始まった書簡のやりとり。何往復も続いた彼らの交流は、やがて大きな奇跡を生む…。(友情)

★『【第64夜】 返却本と有意義な息抜き(雨と誕生日4)』 こちらから
「俺が図書室で借りた本、返しといてくれない?」成績優秀で何でもそつなくこなす友人。でも、彼に手渡された本は意外なものだった…。(青春)

★『【第65夜】 帰還者 』 こちらから
この街に帰ってきたのは、一体どれぐらいぶりだろう。家族全員が避けるように、逃げ出すように、昔この街からいなくなった。ここは私たちにとって、辛くてたまらない街になってしまったから…。(未分類)

★『【第66夜】 不思議めがね 』 こちらから
僕は手に入れたい。世界が薔薇色に見えるという、『不思議めがね』を…。(青春)

★『【第67夜】 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)』 こちらから
今から約1100年前のイラク、バグダッド。当時、この地はユーラシア最大の都市として栄えていた。国の知識・文化レベルを上げるため、時の指導者は古今東西の文献をアラビア語に翻訳する施設をつくるが…。(友情)

★『【第68夜】 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)もう一つの結末』 こちらから
第68夜 知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)のもう一つの結末…。(友情)

★『【第69夜】 横顔と放課後の図書室(雨と誕生日5)』 こちらから
俺の放課後の日課は、主に図書室だった。友人は俺を本好きとぬかしたけど、別に俺は読書家じゃなかった。ただ、図書室の空間が好きなだけだった…。(青春)

★『【第70夜】 出立(鬼舞1)』 こちらから
「そなたに頼みがある。おもてをあげよ」抑揚のあまりない帝の声に、少女はゆっくりと顔を上げた。この世のものと思えぬ美しさに、御前に居合わせた少数の臣下はみな息をのんだ…。(和風)

★『【第71夜】 ラスボスたち(ユリ2)』 こちらから
僕がユリと初めて会ったのは高二の秋だった。一人の女の子がみんなにからかわれ、場を和ませている。その明るく澄んだ笑顔が眩しくて、僕は目を細めて彼女を見つめた…。(青春)

★『【第72夜】 A Hazy Shade of Winter(冬の散歩道)』 こちらから
この道を何度も君と通った気がする。「…ちょっと違う女(ひと)と間違ってるんじゃないの?」いやいや、そうじゃない。「じゃあ、本当に私なんだ。教えてよ。私はここでどうしてたの?」(ファンタジー)

★『【第73夜】 骨とり』 こちらから
「“骨とり”は立派な仕事だ。しっかりやんな!」女が子供を産めなくなってどのくらいたつだろう。科学だけでなく、遺伝子工学も大きな進歩を遂げた近未来。人類滅亡を阻止すべく、私たち“骨とり”は今日も骨を拾う…。(SF)

★『【第74夜】 僕らの朝(ユリ3)』 こちらから
クリスマス・イヴの夜、僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕にユリは…。(青春)

★『【第75夜】 足音(ユリ4)』 こちらから
クリスマス・イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってきた…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは高校時代、僕とユリ、それと表向きは優等生のタカシが初めて出会ったときのこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは夢で見た場所。懐かしの母校へ向かう…。(青春)

★『【第76夜】 許せない親友(ユリ5)』 こちらから
クリスマス・イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってきた…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは高校時代、僕とユリ、それと表向きは優等生のタカシが初めて出会ったときのこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは夢で見た場所。懐かしの母校へ向かう…。(青春)

★『【第77夜】 彼女の似合うもの(ユリ6)』 こちらから
イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは一緒に懐かしの母校へ向かう…。(青春)

★『【第78夜】 もう一つの顔』 こちらから
イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは一緒に懐かしの母校へ向かう…。その途中、ユリにねだられ、彼女に安物の指輪を買ってやった…。(青春)

★『【第79夜】 アオハルカラー』こちらから
イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは一緒に懐かしの母校へ向かう。その途中の電車の中で…。(青春)

★『【第80夜】 仲介業、はじめました』こちらから
イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは一緒に懐かしの母校へ向かう。その途中の電車の中で、僕とユリ、親友のタカシが実行委員として活躍した文化祭を思い出す。一体感にかける学生たちを盛り上げるため、当時の僕らがとった秘策とは…。(青春)

★『【第81夜】 通学路』こちらから
イヴの夜、1人淋しく過ごしていた僕のところに高校時代の友人ユリがやってくる…。僕は酔っぱらった挙句、いつの間にか眠りこけ、懐かしい夢を見ていた。それは僕がユリと初めて出会った高二の秋のこと…。翌朝、眠りから覚めた僕とユリは一緒に懐かしの母校へ向かう…。(青春)



1001夜までまだまだですが、これからもよろしくお付き合い下さいませ^^

「お目覚めですか?」

気がつくと、目の前に見知らぬ男がいた。

「…ここは?」
「ここは遠い夜の海。そして、あなたは私のボートの中にいます」

横たわっていた体を起こし、辺りを見渡すと、黒い海がどこまでも果てしなく広がっていた。

…なんなのだろう、ここは…。

一体どこまでが海なのか空なのか、まるでわからない。全てが濃い闇に覆われているせいで、境界が見定められないのだ。私は恐怖に怯え、自分の腕で自分の体を抱きしめた。このまま自分も、このおぞましい闇に染まっていく…そんな気がしたからだ。すると、男は優しく微笑んで、こう言った。

「何も恐れることはありませんよ。目に見えるものばかりに気を取られなければいいんです。ここは波も穏やかで、汐の匂いも優しい」

確かにボートに打ち寄せる波は弱く、汐の匂いもそこまできつくなかった。少し落ち着くと思考がゆっくりと動き出す。…そうだ。どうして私はここにいるのだろう…。

「どうやら乗っていた舟が難破したようですね。あなたは筏につかまって、夜の海を一人で漂っていましたよ」

…あぁ、そうだったのかもしれない。何かの衝撃で舟が突然壊れ、私は海に投げ出されたのだ。

「夜が明けるまでの辛抱です。夜が明ければ、大きな舟か陸が見つかるでしょう。それまで狭いところですが、ゆっくりなさってください」

足元に灯っていた微かなランプの光りを頼りに、私は男の顔を見つめた。

彫りの深い美しい顔が私を見つめ返していた。
頬は疲れのためか少しこけていたが、秀でた額には若さの光りがあった。鼻筋はすっと伸びて高く、目元には深い陰影が刻まれている。そして、その中で何よりもどこか遠くを見つめるまなざしが私の心を強く打った。その目は昔どこかで見たことがあるような気がしたのだ。
首から下はくすんだ白いローブのようなもので身を包んでいる。そこから覗く手の仕草や振る舞いには品の良さがあった。外見やそれらが男を年かさに見せてしまってはいるが、本当の年は私とそんなに変わらないのかもしれない。

「あなたは、ここで何をしているの?」

いくら何でもここに一人でいるのは、おかしかった。男は表情をさらに和らげた。

「私は、夜空に星を送っているんですよ」

私がうまく理解できないでいると、男はそばにあった小さな袋を取り出して、その口を縛っていた縄をといた。そして、そこから手のひらに納まるくらいの石を取り出したのだ。

「それが、星…?」

私は思わず笑ってしまった。こんなところで変な冗談を飛ばすなんて。どう見たって、ただの石ころだった。おかげで緊張の糸がほどけていったが。

すると男は両手で石を包み込み、何かを唱える。しばらくすると、そこからゆっくりと白い光りがこぼれた。私が驚いて目を見開くと、男は優しく声を立てて笑い、その手を空に大切に掲げた。光りは夜空に向かってまっすぐ上り、やがて一つの美しい星になった。

「私はこうやって、夜空に星を送っているんですよ」
「…素敵ね」

あふれ出た言葉は、感嘆の他の何ものでもなかった。その言葉に男は笑った。少年のような無邪気な笑顔で。

「私も星を送れるかしら?」

男は頷いて、私の手のひらにそっと石をのせてくれた。その時なんとなくこの石は死んでいるなと思った。男は私が石を包み込むのを待つと、軽く自分の手を添えて、また何かを唱える。やがて、あたたかな感触とともに、あの白い光りが現れた。私は空にそれを掲げ、星となる光りを見送った。

私は微笑んだ。男も愛しそうにその星を眺め、ゆっくりと口を開いた。

「きっと、あの星の光りを頼りに誰かが生きるでしょう」

私は男を見た。

「生きることにもがく人は、星を眺めます。そして、その光りを頼りに思う…」

男が見つめているのがわかったが、私は気づかないふりをした。

「生きたい、と」

男は、はっきりとそう告げた。私は、笑った。淋しい声の響きが汐風とともに、運ばれていく。

「…何もかもお見通しなのね」

彼は、ずっと私を待っていたのだろう。

「あなたは必死に、筏にしがみついていましたよ」

私は納得して自ら海に飛び込んだのだ。そのはずなのに…。

最期に感じたのは決して楽になれる安堵ではなく、哀しい後悔だけだった。

「私は、生きたかったのかもしれない…」

でも、自分で自分が良くわからないのだ。今は生きたいと思っていても、今度はただ死にたいと本当は思っているだけなのかもしれなかった…。

男は空を指差すと、静かに語り始めた。

「あの星は、ただの星ではないんですよ。美しい物語をのせて輝いている」
「物語?」
「そう。あなたの物語です」
「…私の?」
「そうですよ。あのままでも充分美しい。でも…」

私は男を見つめた。その遠い目には今、優しい光りが灯っている。

「見せて下さい、あなたの物語の続きを。その道標となるように、私は何度もあなたのもとへ星を送るでしょう」

男が美しい手を伸ばし、私の頭を撫でた。尊いその手のひらは大きくてあたたかで、まるで心が洗われていく。涙がこぼれた。

生きられると思った。どこまでかはわからない。どこへいけるかもわからない。
全てはこの夜の海と同じなのかもしれない。

でも、私は星を知っている。

それを送り届ける男の存在も知っているのだ。きっと生きる糧になるだろう。切り札になるだろう。そして、いつか素敵な物語となって男のもとに現れてみせよう。

「約束するわ」

私の言葉に、男は嬉しそうに笑った。それは今までに見たことのない忘れられない笑顔だった。

目を閉じて、私は男の唱えていたあの言葉を静かに待った。

『幾千の星が夜空に美しい彩りをそえているかのように―。
今宵はこの私が愛すべき物語によって、新たな彩りをそえてごらんにいれましょう 』



□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □  ■ □ ■ □ 

=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 夏目漱石「夢十夜 第七夜」× supercar「PLANET」 ★

「夢十夜」の第七夜を読んだ夜でしょうか。私自身も夢を見ました。それが今回の物語です。覚えているうちに書き出して保管してたみたい。今思うと、第七夜を読んで主人公と一緒に沈んだ気分になっていたので、きっと救いに来てくれたのだと思います。私の忘れられない夢になりました。

① 夏目漱石「夢十夜 第七夜」
http://www.amazon.co.jp/%E6%96%87%E9%B3%A5%E3%83%BB%E5%A4%A2%E5%8D%81%E5%A4%9C-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%A4%8F%E7%9B%AE-%E6%BC%B1%E7%9F%B3/dp/4101010188/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1374152070&sr=1-3&keywords=%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E6%BC%B1%E7%9F%B3%E3%80%80%E5%A4%A2%E5%8D%81%E5%A4%9C
夏目漱石では「夢十夜」が一番好き。高校の教科書で長編の「こころ」を中途半端にやるより絶対短編のこっちをやるべきだ!ってなんかあの頃強く思っていたような…。「こんな夢を見た」で始まるそれぞれ雰囲気の違った10種類の短編。特に一、三、七夜が好きで、一夜で恋に落ち、三夜で愕然とし、七夜で一緒に沈みました…。お札になる人はやっぱり偉大なんですね。

② supercar「PLANET」
https://www.youtube.com/watch?v=DzKi3BMCMAc
歌詞は物語とあってないんですが、この曲をよく聞いてました。私が彼らで一番好きな曲です。メロディがとてもきれいで、これを10代でつくるとかすごいなあって。「PLANET」って調べてみたら、星のほかに「彷徨い歩く者」とか「放浪者」って意味もあることを知り、当時とても感動しました。

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こちらの物語は、にほんブログ村記事トーナメントで優勝することができたものです。

20歳くらいの時に書いたものなので、まだ青いというか…でも、最後の終わらせ方とか今と変わらない感じも見受けられたり。じゃあ、今も青いままなのかなとも思ったり。

みなさま、その節は応援して頂き、本当にありがとうございました!
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 大学時代の友人が、個展を開くから来いと連絡してきたのは、一週間も前のことだ。

仕事が忙しくて、すっかり忘れていた。友情とは、時にこんなものである。彼とは実に卒業してから二十年ぐらいあっていなかった。根っからの芸術肌にして変人。彼という人間に、これ以上もこれ以下の説明もいらないだろう。実に的確で安易な説明である。

その日は仕事が早く片付いたが、なぜかまっすぐ家に帰る気がしなかった。まだ時間も充分にある。どこかにでも立ち寄ろうか。そこで彼のことを思い出し、急遽個展に訪れることにしたのだった。本当に何の気なしに行くことにしたのである。

『―お前はたぶん、ずっと引きずるタイプだな…』

彼が悟ったようによく言っていた台詞をふと思い出す。芸術家に必要な感性はもちろんのこと、彼には鋭い洞察力があった。その度に私はとぼけ、笑い流していた。若かった、としか他にいいようがない。

恵比寿の落ち着いた一角に、彼の個展が行われている小さなギャラリーがあった。

『 同窓絵(どうそうかい)・ハラ シュウゴ 』

入り口にこの個展のタイトルと彼の名がシンプルに飾られていた。

― 同窓絵(どうそうかい)―

そういえば、彼はいつも人の度肝を抜くのを楽しんでいた。きっと今回も何かをしかけているに違いない。さて、一体どんな作品が並んでいるか拝ませてもらおうじゃないか。久しぶりに高鳴る胸を抑えながら、私はゆっくりとギャラリーの扉を開けた。

「お、やっと来てくれたのか」

久しぶりにあった友人を前にしての、彼の第一声がこれだった。変わらずの皮肉交じり。だが、下手に再会の挨拶なんかされるよりずっといい。あの頃のまま変わりなく接してくれる方が、むしろ嬉しいものだ。外見も恰好も、彼は昔とあまりかわらないようである。若さにあふれた精悍な顔つき。私たちの年代で白シャツにジーンズがいまだに爽やかに着こなせるのも彼ぐらいだろう。なんともうらやましい限りだった。

「変人のお前がやっと個展を出すに至ったからな。来なきゃいかんだろ」

彼も私の言葉を素直に喜んでいた。

「とにかくお前が来てくれて助かった。今なら誰もいないから、俺の絵を大いに堪能できるぞ。ちなみに俺は、ちょっと出かけないといけないから、しばらく留守番を頼む」

彼はそれだけ言うと、引き止める私を無視して、そそくさと行ってしまったのである。私はしばらく唖然としていたが、実に彼らしいと思ってつい吹き出し、一人で笑ってしまった。

取り残された私は人がいないことをいいことに、せっかくだからと友の力作を一つ一つ拝見させてもらうことにした。

 一枚目の作品。『桜並木』

桜が永遠と遠くまで続いている。淡い薄紅色の花弁は満開をうたっていた。その木の下を行く人は、さも幸福に続く道を歩いているかに見える。これは見たことのある風景だった。…ああ、そうだ。これは私たちの大学の桜並木だ。

―ねぇ、ここの桜は特別だと思わない?

いつもこういうのは不意打ちだ。ずっと忘れていたのに、些細なことで簡単に記憶というのは蘇ってしまうものだ。

―そうかな。まあ、わからなくもないけど。
―冷めてるわね。

彼女は若く美しくて男連中に人気だった。私は彼女と学籍番号が近かったおかげで、親しくなれたのだ。

―自然を愛でる心がないと、自分なんてすぐ枯れちゃうわよ?早々とおじさんになっちゃうわ。

彼女は桜を眩しそうに見つめていた。細めた目元には、かわいらしい泣きぼくろがあった。

―そんなもんかな?
―そんなもんよ。

確かにあっという間の二十年だった。自然を愛でる心のなかった私にとっては。…あの彼女はどう過ごしてきたのだろうか?


 二枚目の作品。『夏祭り』

 大学近くの商店街での祭り。その様子が色濃いタッチでいきいきと描写されている。風車がいっぱい並んだ夜店を背景に浴衣を着た子供たちが楽しそうにはしゃいでいた。普通の人ならこの絵を見て、それで終わるのかもしれない。でもこの光景にも、私は見覚えがあった。

…あいつ、もしや盗み見ていたのか?

―子供たち、かわいいでしょう?

彼女に誘われ、ともに夏祭りにでかけたことがある。

―子供は好き?

最初はデートかと思っていたが、いかんせん、それは勘違いであった。

―う、うん。まあね…。君は?
―好きよ。だって、真っ直ぐだもの。

 大学のボランティアサークルに入っていた彼女は事情があって親元を離れて暮らす子供たちの世話をしていた。その子たちを連れての祭りだったのある。私は彼女にいいところを見せようと奮闘したが、なぜか邪魔が入り、中々彼女に近づけなかった。今にして思えば、勘の鋭い子供たちにしっかりガードされていたのだろう。彼らにあれがしたい、これがしたい、とせがまれ、ひきまわされた記憶しかない。これは私の苦い思い出である。子供嫌いになった原因といってもいい。

なるほど、あいつは私たちをつけていたんだな。彼から見たら、私の青臭い姿なぞ、実に滑稽だったろう。

 三枚目の作品。『落日』

夕日が沈む。暮れゆく場所は淋しげであった。季節は秋。心苦しい光景だった。そこは病院の入り口だった。気のせいか、片隅にひっそり捨てられているものがある。それは私だけしか知らないものだった。

…ストーカーもほどほどにしとけよ…。

 私は顔を覆いたくなった。あいつ、いったいどこまで見ていたのだ。悪趣味すぎるぞ。その病院は私が彼女にふられた場所であった。彼女が盲腸で入院したと聞いて、私は花束を片手に見舞いに行った。しかし、彼女の病室には先客がいて、私は会うことができなかった。いたのは知らない男だった。その男と彼女は抱き合っていた。それを目の当たりにして、私は声をかけることもできず、足早にそこを後にしたのである。無意識に玄関に花束を投げ捨てていた。

 そういえば、学生寮に帰ってすぐに酒をあおり、彼に散々愚痴った気もする。女々しいことも言ってしまったかもしれない。それを憶えていて描いたのだろうか。それにしても、私の記憶そのままだった。

『―お前はたぶん、ずっと引きずるタイプだな…』

お前は正しいよ、シュウゴ。二十年たっても俺は覚えている。この絵を見て胸が痛くなっている。成長していない自分にあきれるな。私は自嘲した。仕事に追われた結果、それなりの社会的地位も手に入れた。結婚もした。過去のあの因縁のせいか子供には恵まれず、結局妻とはそれが原因で別れたが…。それなりの自分の人生に満足していたはずである。…だのに、なぜこんなにも今、胸が苦しくなっているのだろう。

『―俺がどうしてか教えてやるよ…その時がきたらな』

「シュウゴ君、ごめんなさい!遅れてしまって。渋滞がすごくて」

いきなりギャラリーの扉が開き、声高な女性が入ってきた。

私は彼女を見つめ、立ち尽くした。髪を束ね、品のいいグレーのスーツを着た女性。年を重ねて皺が多くなってはいたが、目元には覚えのある、かわいらしい泣きぼくろがあった。

彼女は一人しかいない私に気づくと、その細い手で、はっと口元を抑えた。その指に指輪はなかった。

私たちのあいだにあったのは二十年という時間でもなかったのかもしれない。

あったのは四枚目の作品…。

「元気?」

どちらからともなく、声をかけ、笑いあった。

…タイトルは『再会』。

私があの時投げ捨て、彼女に渡せなかった花束。それが鮮やかに描かれていた。


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 男は女を背におぶって、人目を避けるように先を急いでいた。

結ばれることのできなかった男と女の末路。それを語るのは何とも心苦しいが、話さなくてはならない。

 春はその身をゆっくりと追い立てられていた。そこは桜の森。

ふたりはそう呼んでいた。すでに満開の時分は過ぎ去り、薄紅色の花弁が夜風にはらはらと散っていた。

 まるで何かの夢の中に迷い込んだようだ―、ぼんやりと男はそう思った。
おぶされた女の意識はとうになく、すでに事切れていた。男は女に別れを告げるため、ここを訪れたのだ。

 男は一本の桜の木の下で女をおろし、静かに地に寝かせた。
そして、丁寧に女の両手を胸の上で組ませると、懐かしそうに桜を見上げた。

 約束を果たしにきたのだ。

この桜の木の下で男と女は出会い、愛を誓ったのだった。男はそのふたりの姿を今も容易に思い描くことができた。しかし、それはもう痛ましい光景でしかない。

 …私が死んだら、あの桜の木の下に埋めてください…

男は頷くことしかできなかった。それまで女は、男に決して頼みごとなどしなかったのだ。

ここでかつて大切に抱きかかえられた赤子がいた。その赤子はとても愛らしく、目が合うと嬉しそうに無邪気に男に微笑みかけた。

 妹だった。その日から男の目に映る女は、この妹の他にはいなかったのだ。

女にとっても、それは同じだった。物心ついた頃には、すでに兄だけが女の特別な男だったのだ。

女の顔が月の光りにさらされると、なおいっそう白く優美に輝いた。
男は女に最後の抱擁と口づけを交わすと、一粒涙をこぼし、その顔を土で汚した。

…どうして桜がこんなにも美しく咲いているか、兄上はご存知ですか?それは桜が人の血を吸って、生きているからだそうですよ。

 土を掘り、女の亡骸を埋めた。

…なら、お前の言うように、私たちの最期はここがいいのかもしれぬ。きっと血が濃ければ濃いほど、見事な桜が咲くのだろう…。

 ふさわしいと思った。それだけだ。

男は静かに決意を固めると、胸に秘めていた小刀で自分の喉もとを掻っ切った。
勢いよく血は溢れ出した。辺りを赤々と染め上げ、桜の木をその鮮やかな色で濡らした。

桜はふたりの最期を看取ると、風の中で大きくその身を奮わせた。渡る夜風は、さも歓喜に笑いざわめくようだった。




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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 坂口安吾「桜の森の満開の下」× 友人の話 ★
http://www.amazon.co.jp/%E6%A1%9C%E3%81%AE%E6%A3%AE%E3%81%AE%E6%BA%80%E9%96%8B%E3%81%AE%E4%B8%8B-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E8%8A%B8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%9D%82%E5%8F%A3-%E5%AE%89%E5%90%BE/dp/4061960423
これは確か20歳前後くらいに書いた気が…。遊べる本屋さんのポップが面白くて、何気に好きなんですけど、中で「美しくて儚い…」という凄くシンプルなポップを見つけて。本の名前は「桜の森の満開の下」。それを見た瞬間、一気にイメージが飛び込んできたんです。タイトルを見てそんな風になったのは初めてで。タイトルだけで惚れてしまったというか…。とにかく、これはまず自分の物語を書いてから読もうと思いました。

① 坂口安吾「桜の森の満開の下」

坂口安吾は「桜の森の満開の下」が一番好きです。私が書いた物語なんかと全然比べ物にならないほど素敵な作品です!でも、ちょっと嬉しかった共通点がありまして。私の物語も女を背負って歩いてましたが、彼の作品でも、女を背負って桜の森の中を歩いている場面があったんです。ちょっとだけ重なった気がしてそれがすごく嬉しかった記憶があります。特に好きな場面は、主人公が女にどうして桜の森が好きなのかたずねられ、それを答える場面。それと、あのしんとするラストでしょうか。そうそう。書き終えて購入しようとしたら、文庫でこのお値段とはさすがに驚きました。

② 友人の話
「桜の森の満開の下」と出会った衝撃を友人に伝えたら、「そう言えば、桜の木の下には死体が…っていう話をきいたことがあるなあ」と言っていて、ちょうど書いた後だったから、すごくびっくりしたんです。今、調べてみたら、梶井基次郎の短編小説「櫻の樹の下」という本があるようで、もしやこのことを言っていたのかな?気になったので、今度読んでみようと思います!って青空文庫に「桜の森の満開の下」もあってネットで読めるじゃん!なんてこったい…。

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 ユリが突然僕の家に押しかけてきたのは、十二月二十四日の夜―つまり、クリスマスイブの夜だった。遅い時間にチャイムを鳴らされ、もしやと一縷の望みをかけてドアを開けると、そこにはユリが立っていた。的は外れたが、よもやなぜユリが…?と驚いている僕以上に彼女は驚いたらしく、
 
「何でいるの?」

と開口一番に言ってくれた。つい僕はその言葉にムッときてしまって、

「それは、俺のセリフだ」

と睨みをきかせて言うと、ユリは少しすまなそうにしてから、笑ってごまかした。そんな彼女に変わってねぇな、と僕もつられて笑ってしまった。とにかくあがれよ、と僕は言い、ユリは大人しく一人暮らしの手狭な僕の家に上がった。

「へぇ。けっこういい部屋だね」

ユリはコタツに入ると、ぐるりと僕の部屋を見渡した。

「コーヒーでいい?インスタントだけど」

キッチンに向かう僕がそう訊ねるとユリはお構いなく、と返事をしてから

「あ、ミルクは…」
「たっぷりだろ?」
「さすが。わかってらっしゃる」

と嬉しそうに微笑んだ。ミルクたっぷりのコーヒー(っていうより、カフェ・オレ?)を作りながら、こいつとはもうどのくらいあっていなかったんだろう、と考えた。電話はちょくちょくしていたが、確か最後にあったのは…。

「高校の卒業式以来ね」

いきなりユリが話しかけて、そう教えてくれた。ということは、もう半年以上あっていないことになる…。女は大学に入ると変わるというが、ユリは見たところ、さっぱり変わっていない様子だった。美人ではないが、可愛げのある顔に黒髪のショートがよく似合っているのも。本人は気にしてはいるが、小さくて白い細い体も。どこか小動物めいていた彼女は、高校時代とにかく皆に愛される不思議な子だった。制服を着せれば、まだまだ高校生でいけるんじゃないか、と一瞬あやしげな思考に向かったが、慌ててそれを遮って、僕は彼女に訊ねた。

「どうしたんだよ?急に来て」

ユリは来るだろうと予期していた質問に、やっぱりため息をもらした。

「ほら、イブでしょ?一人じゃ淋しいなぁと思って。それに…」
「それに?」

少し気まずそうに僕を見てから、

「もしかしたら、いるかなぁと思って。…期待してたわけじゃないの。きたらいたで、こっちがびっくり」

おいおい。その言い方だと、まるでいる僕が悪いみたいじゃないか…。今度は僕がため息をつく番だった。

「何かあった?っていうか、私はここにいて平気なのかしら?」

ユリは少し不安そうに僕に問いかけた。本当はもうわかっているはずだった。待っていても来ないということを。でも、微かな望みを持ち続けていた。ユリがきたところで、潮時のような気がした。

「ケーキ食う?苺と生クリームたっぷりの」

そう僕は言って、笑った。ユリはそれで全てを理解してくれたようだった。そして、僕の弱い心を吹き飛ばすような変わらない自慢の笑顔で、

「うん、『食う!』」

と元気よく、こたえてくれたのだった。

冷蔵庫からケーキを運んでくると、ユリがバッグの中からゴソゴソと小さいシャンパンのボトルを取り出していた。

「ごめん。やっぱり少し期待してたの。…安っちいのですが」

そうはにかんで笑うユリが懐かしく、僕を微笑ませた。

ふたりでホールケーキをナイフで切らず、フォークで摘んで食べ、シャンパンを飲む。いい感じに酔いがまわってくると、饒舌になり、お互いの近況報告をした。大学のこと。バイトのこと。最近あった面白かったこと…など。テレビではイブの夜にお馴染みの明石家サンタが、僕らのような淋しげでいたいけな子羊たちに、笑いを振りまいていた。

「さんまさん、いいよねぇ」

顔をほんのり赤くさせたユリが呟いた。

「決めた!私、さんまさんと結婚するっ!」
「バーカ。お前じゃ無理だ。さんまさんはな、俺と結婚するんだよ!」
「何それー?」
「だっはっは」

僕も随分酔いがまわっているようだった。思考が定まらないまま、つい口が滑ってしまった。

「…今日、本当は待ってた子がいたんだ」

僕は情けない顔をしていたと思う。ユリは少し驚いた表情を見せたが、しばらくしてから、

「そっか」

と、ぽつりと呟いた。一度切り出したら、僕はもう止められなかった。

「凄く良い子だったんだ。でも、俺のせいで笑わなくなってきちゃって…辛いって。それで別れた。二日前だぜ?あ、もう二十五日だから、三日前か…」

どこか自嘲するような僕に、ユリは何も言わないで、ただ優しく見つめていた。そして、小さい柔らかな手のひらで、昔のように僕の頭を撫でた。それが合図のように、僕はつい彼女を抱き寄せていた。ユリは決して物怖じせず、僕が離すまでそのままでいてくれた。そのおかげで僕はやっと心が安らいでいくのがわかった。ここ二、三日バカみたく沈んでいたのだ。やがて耳元でユリが囁いた。

「前にも思ったんだけど、これじゃ、私たち恋人同士みたいね」
「…うん」
「いっそのこと本当の恋人にでもなる?」
「え?」
「クリスマスの本番は、イブじゃなくて今日だしさ」

僕はユリの顔を覗き込んだ。ユリは悪戯っぽく微笑んでいたが、その顔はどこまでもあたたかなものに満ちていた。

「…それも、ありかな」

ついその優しさに甘えそうになる僕にユリは、

「バーカ。冗談よ!」

そう舌を出して笑った。本当に変わらねぇな、と僕もまた笑った。


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一応つづきもありますが、ここで終わるのが個人的には好きだったりします。


つづき 【第71夜】 ラスボスたち(ユリ2)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-77.html
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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★村山由佳「夜明けまで1マイル」× 宮澤賢治「銀河鉄道の夜」★

もともと「ユリ」はもう少し長い短編作品でした。書いたのは高校生~大学生のとき。

宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」を読み、ジョバンニとカムパネルラが男女だったら、また違った展開になっていたんじゃないのかな?と思ったことがあり、それが生まれるきっかけだったような。(書いた後、保存していたファイルが壊れるとは思わなかったけど)授業中、ノートに手書きで最初書いてたような気もするので(不真面目な学生でした…)、もし当時のノートが見つかって、短編として抜き出せそうな部分があったら、またここでUPさせてもらおうかと思います。

① 村山由佳「夜明けまで1マイル」
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%9C%E6%98%8E%E3%81%91%E3%81%BE%E3%81%A71%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB-somebody-loves-you-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB/dp/4087477746
村山由佳さんの初期作品は青春モノが多くて私好み。中でも一番好きなのが「夜明けまで1マイル」。幼馴染の男女の微妙な距離感がとても好きでした。お互い違う恋愛をしているんだけど、うまくいかなくて、支えあうお話。ふたりでやる「お葬式」と呼ばれる場面が大好きでした。女の子が突然前ぶれなく男の子の家を訪ねに行ってしまうところや二人の微妙な感じはこれの影響を大きく受けたのかもしれません。


② 宮澤賢治「銀河鉄道の夜」
http://www.youtube.com/watch?v=ZfjurHz2vrA
私は小説より先に小さい頃アニメ映画で知りました。猫の絵で描かれている彼らです。名作だから知っている人も多いかと。主人公と親友の男の子が一緒に銀河鉄道と呼ばれる不思議な列車に乗り、旅をする話。

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