【目次】 それいけ!美芳(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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         パチモンお嬢様、逃亡する! (それいけ!美芳1)
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心穏やかな昼下がり。

「お嬢様―!」

そう、心穏やかな昼下がり…のはずだったんだけどなあ。

「お嬢様―、お嬢様―!一体どこにいるんですかあー?」

でも、それは簡単に打ち破られた。誰かが大声で私を呼んでくれたからだ。

「お嬢様―!お嬢様ー!お嬢様―!!」

あ、間違えた。訂正しよう。誰かがしつこく(←強調!)大声で私を呼んでくれたからだ、…の方がよさそう。

「逃げないで出てきてくださーい、お嬢様ー!!」

ああ、うるさいなあ、もう!それで「はいはーい、ここでーす!」なんていう逃亡者がいるわけないでしょう!

「お嬢様―、どこにいるんですかあー!?お嬢様―!!」

私は隠れていた木から庭を見下ろした。うちで働く小間使いの少年がいなくなった私を心配して、どうやら探しに来てくれたらしい。

「お嬢様―!!いい加減に出てきて下さいよー!出て来てくれないと、俺が旦那様と奥様に叱られてしまいますー!!そんなのはイヤダー!!」

………あ、間違えた。訂正しよう。どうやら私というよりも彼は自分の心配をしているようだ。ええい、なんてやつなの!

「あいつの今日のおやつは抜きね!」

私はふんと鼻を鳴らした。うん、そうよ!決定、決定!!小間使いの少年の悲痛な叫びは続く。

「お嬢様あー、出てきて下さいってばー!俺、もう半べそですー!!そろそろ、あれですよ。これ、号泣に変わっちゃいますよ!!」

………なに、その前置き。あいつの情に訴える作戦は大分間違えているような…!?

「俺、マジですから!あと、10秒以内に出てきてくれないと号泣しますからーー!!」

ええー!?

と、あやうく声を上げそうになり、私は急いで手で口を覆った。木の上にいるのをバレるわけにはいかない。

「本気と書いて『マジ』!!大真面目と書いて『大マジ』ですからーー!!10・9・8…」

もうなんなの、あいつは!泣き落とし(?)とみせかけて、ホントは脅迫してるんじゃないの…!?

「まだ出てこない気ですか!?もう!!偽物と書いて『パチモン』!!本物と書いて『マジモン』ですからーーー!!5・4・3…」

…ったく、意味がわからん!私は大きなため息をついた。心穏やかな時間は一体どこへいったのやら…?

「…2・1…!!」

あー、はいはい。わかりました!今そっちに行くから。なんだかバカらしくなってきたしね…。私は観念して、上っていた木から下りようとした。

「おーい、お前!悪いが、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。こっちに来てくれー!」

その時、うちで働く年配の使用人が現れ、小間使いの少年は振り返った。

「今、俺はお嬢様を探さなくちゃいけないんですけど…」
「お嬢様が稽古事が嫌でいなくなるのはいつものことだろう?旦那様から急な仕事を任されたんだ。人手が足りん。だから、手伝え。お前はこっち要員だ!」
「えー!?何ソレ?しかも何要員だよー!?」

年配の使用人にはんば引きずられるように、少年はうちの中へ戻って行った。

「なんだったんだ、いったい…」

私は木の上から呟いた。一人取り残された感もあってか、少し拍子抜けしてしまう。

― お嬢様が稽古事が嫌でいなくなるのはいつものことだろう? ―

さっき年配の使用人が言っていた言葉を思い出して苦笑する。

「はいはい。そうですよ。私がいなくなることなんて、どうせいつものことよね…」

別にお稽古事が嫌なわけじゃない。色々知ることができて楽しいし、自分の成長やその上達っぷりに胸が張れるような気さえする…。

「でも、お稽古ごとなんて貴族のお嬢様がすることじゃない?」

私の家は蹊国の首都・成安で一番大きい米屋を営んでいる。家は裕福で大きいかもしれないけど、決して貴族ではない。一般庶民なのだ。

「そんな私が貴族のお嬢様のまねごとなんて、ちゃんちゃらおかしいわ」

私の暮らす蹊国(けいこく)は身分社会だ。上から順に「王族>貴族>庶民」というふうになっている。そこでは何よりも生まれが大きくモノを言うのだ。私みたいな庶民が何をしようとも高貴な血には決して勝てないし、届くわけがない。

「そもそも私自身、はり合う気なんてまるでないんだけど…」

庶民のくせにお金だけはある。だから貴族のお嬢様のような扱いをされる。まわりからチヤホヤされたり、持ち上げられたり…。そんな「偽物(パチモン)お嬢様」の私にはね、一つだけわかっていることがあるの…。

「お嬢様って、意外と生活が窮屈で不自由だ!」

お稽古事を毎日ぎっしり詰め込まれ、空き時間があまりない。休んだり、息抜きできたりする時間が全然ないのよ。だから、こんなふうに逃げるしかない。で、間抜けに木なんか登る羽目になる。

「それにお金ってあるにこしたことはないけど、持ちすぎるとロクなことがないと思うの」
「へえ。なんでなんで?」
「ごますってくるやつとか、こびへつらうやつとか、いちもつ秘めた野心家とか、やたらめったら近寄って来るしさ…。『いい話がある』って言って、人のお金をいいように使おうとするのよ!」
「ふむふむ」
「そういう人たちって最悪!うざいっていったらないわ!!」
「なるほどね。キミは意外に鋭く人を見ているなあ…」

私がひとり愚痴っていると、いつの間にか誰かの相槌が加わっていた。慌てて振り返ると、同じ木の上に超絶美形の男が座っていた。



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