【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、ぶっちゃける? (時をかけるおやっさん3) 
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「おやっさん、どうする?まだ仕入れる?もう少しこの荷車にのりそうだけど」

お兄さんの言葉に、俺は首を振った。

「いや、もう充分だよ。野菜は新鮮さがウリだから、いつも今日売る分を考えて、毎日仕入れてるんだ」
「そうか。店に残ってるものもあるもんね」
「それもそうだが、天気とかで客足も左右されるからさ。そのへんも考慮しながらかな。だから、あんまり量を多く仕入れるのもよくないんだよ。売れ残って野菜をダメにしちゃうからさ」
「なるほどね。じゃあ、僕…ちょっと多く仕入れちゃったかな?」

「張り切りすぎちゃったね。ゴメンネ!」と謝るお兄さんに、俺は「そんなことないぞ。大丈夫さ」と笑って受け合った。

「どうせ売れ残ったとしても、うちの淑玲がその野菜を何かに使うと思うんだよな。あいつが今、何をやってるのか俺は知らないが、きっと野菜が必要なことなんだろう」

今朝、うちの野菜たちをあれだけ大きな荷車に積んで持って行ったわけだしな。これは勘だが、あいつは明日も同じことをするんじゃないか。今日だけってことではないような気がした。

「…っていうか、お兄さんはそれを見越して、荷車までもらって野菜を積んでたんじゃないのかい?」

俺がさっき淑玲の話題を仕掛けた時に、お兄さんの食いつきが随分と良かった。だから、淑玲が何をやろうとしているか、この人は知ってるんじゃないかと俺は思ったんだ。

お兄さんは「さあ、どうだろう?」と、あのやたらキレイな笑顔を見せるばかり。

「やれやれ」

女たらしで遊び人のこの人だが、実はうちの淑玲をとても大事にしてくれていることを俺は知っている。

「今日、俺が愚痴りかけたこと…淑玲が大きな荷車を勝手に持って行ったことだって、どうせ察しがついてるんだろう?だから、朝市に付き合ってくれたんだよな、お兄さん。あいつのフォローをしてくれたんだろう?」

あのとんだ悪知恵娘に、お兄さんが好意を持ってくれているのか、単に家族的な愛情を感じてくれているのか、そこまで俺はわからないがー。

…まあ、ぶっちゃけね。そんなの俺はどっちでもいいんだ。

「だから、ありがとうな、お兄さん。もし息子の淑河が家を継がなかったら、アンタが淑玲と一緒になって、うちを継いでくれるのもアリなんじゃないかと俺は思ってるよ」
「え?」
「ウン。お兄さんの婿養子、悪くないゾ!」

お兄さんの素性は正直よく知らない。名前すら知らない。本人も多くを語らないし、たぶん俺に語ることはないだろう。そんな気がする。謎多き男だが、俺は優しい彼をなぜか人間的にとても信用をしているんだ。信頼しているんだ。何度も俺が「イイネ!」を連発していると、お兄さんはくすくすと笑った。

「ありがとう、おやっさん。みんなと家族になれるなんて僕はとても嬉しいけど、果たして淑玲ちゃんはどうかな?」
「ん?」
「きっと僕らなんか見向きもせず、どっかに飛んでいっちゃいそうじゃない?」

お兄さんは空を見上げ、優雅に飛ぶ鳥を眺めた。その横顔はなんとも美しく、優しかった。

…そうか。アンタは〝僕らなんか”と言ってしまえる人なんだな。淑玲を思って、そんな優しい顔ができるのか。あいつの可能性をどこまでも信じて、受け入れる覚悟があるんだな。

「だから、こっそり淑玲に学問の本を読ませていたのかい、お兄さん?」

俺は自慢じゃない(?)が、淑玲に本を買ってやったことは一度もない。昔から口が回る子だったから、これに変な知恵が備わっては困ると思い、むしろ遠ざけていたくらいだ。なのに、あいつはいつの間にか自分でそれを手に入れた。そして気付けば、年中読書ばかりする子になってしまった。気になって淑玲本人にどこでそれを手に入れたのか聞いてみると、

「淑河兄様が捨てられていた本を拾ってきてくれたの」

と不思議なことを言う。淑河に問いただしてみても、「そこに落ちていた」というだけで、よくわからない。奇妙なできごとに首をひねっていると、ある日、淑河が隣の薬屋からどっさり本を抱えて出てきた。

見咎めようかと思ったが、淑河に理由を聞いても要領を得ない気がしてやめた。俺は淑河にバレないように隠れ、薬屋の店主に話を聞いてみることにした。でも、店主の爺さんはポカンとして、本など別に淑河にあげていないと言うじゃないか。

「…ってことは、犯人はまさか!」

薬屋には店主とそこで間借りしているお兄さんが住んでいるだけ。俺は薬屋を出て、お兄さんが間借りしている二階の部屋を見上げた。すると、タイミングよく犯人が窓から顔出した。お兄さんは唇の前にそっと人差し指を立てた。一瞬のその仕草になぜか俺は見とれてしまい、お兄さんに問い詰めることができなくなってしまった。以来、お兄さんに聞く機会を今日まで逃してきたわけなんだが…。

「思い出してみると、あれだな。淑玲は別に俺に似たわけじゃなくて、お兄さんに似たのかもしれないよな」
「え?」
「あいつに悪知恵を植え付けた犯人はお兄さん、アンタだったのかー!?って話さ」


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