【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、あっけにとられる? (時をかけるおやっさん2)
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今日の朝市はいつもと違っていた。

それは訪れていた人々、みんなが感じたことではないだろうか。そう、慌ただしい忙しない賑わいを見せる中、なぜか一際甲高い声…歓声もまじっていたからだ。

「きゃー!美男子のお兄さーん、こっちも寄ってってー!」
「お兄さん、うちの野菜もためしてちょうだい。良かったら、ついでに私もー!」
「お兄さん、こっちが先よ。もうためさなくていいから、この果物と私一緒にお持ち帰りで!」

その歓声は黄色というか…それを通りこして、クラクラと眩暈を覚える金色というか…いやいや、ギラギラと獲物を狙う銀色というか…う~ん、もう早い話、魅惑の桃色でいいじゃね?というか…。

「朝市ってこんなんだっけ?」

といった様子だった。若い娘から熟女、はたまた婆さんまでもがお兄さんに釘付け。その見つめるまなざしは熱いのなんのって、正直まわりの男性陣はあっけにとられていた。

でも、はっと我に返り、とりあえず自分の嫁や娘の手(手綱?)はしっかり握っておかないといかん!と危険を察知したようだ。これも男の自己防衛本能ってやつかな。

「お兄さーん、うちの野菜と果物、これだけ安くしてやるから。頼むよ、嫁と娘に手を出さないでくれ!」

といった具合に、お兄さんに頼み込む始末さ。…うむ。今日の朝市は、ちょっとしたカオスだったかもしれん。

「ふふふ、大漁、大漁!」

そんな中、当のお兄さんはホクホク顔で嬉しそうだった。声が弾んでいる。

「見て見て、おやっさん!この野菜の多さ!質の高さ!見惚れる輝かしさを!!」
「…驚いたよ、ホント。野菜というよりアンタにね…」

お兄さんは取引上手なのか、ここでも美男子が物を言わせたのか(?)、安値やタダ同然で野菜を仕入れていた。予定だった仕入れ量を何倍も上回っている。

「土が少しついてるのもあるけど、新鮮そのものだよね。洗えば問題ナーシ!さあ、おやっさん。荷車に積んだこの野菜たちを見てよ。いや~、絶景かな、絶景かな!」

お兄さんはいつの間にか朝市に来ていた人に大きな荷車までもらっていたらしい。楽しそうに口笛を吹きながら、それに野菜を積んでいたのだった。

「美男子最強だろ、コレ…」

思わず、俺は呟かずにはいられなかった。

なんだろう。この敗北感にも似た思いは…。野菜のプロと言っていい俺が、八百屋家業に生涯をかけるこの俺が難しいと感じる仕入れの仕事も、この人は華やかなその才能でサクッとやり遂げてしまうんだな。

「うむむ…」

じゃっかん苦い思いがこみ上げる。野菜一筋で生きてきた俺は一体なんだったんだろう。なんだか少し馬鹿らしくなるというか、面白くないというか…。う~ん、なんつうか…そのあれだな。自信がそげるな。俺が肩を落としていると、野菜を見ていたお兄さんが満足そうに笑って言った。

「ねえ、おやっさん!」
「ん?」
「この野菜たちがおやっさんの作ってくれる美味しいご飯につながるんだね!!」

いつもは美しさが際立つ、色気が香る、どこかすましたお兄さんの笑みも、今はなぜか少年のように初々しかった。にんまりと歯を見せて笑っている。初めて見たな、この人のこんな顔…。

「そんなに楽しかったかい、お兄さん?」

貴重なものを見たような気がして俺は目を見開いた。

「楽しかったよ~!いい野菜をいっぱい仕入れたし、朝市の人はみんな優しかったしね」
「そうかい」
「あ!でも、僕的に何より一番楽しみなのは…」
「…楽しみなのは?」
「今日の朝ご飯は何ってことかな。この野菜で作ってくれるんだろう?ねえ、おやっさん?」

お兄さんはどこまでもご機嫌で鼻歌を歌い出し、愛おしそうに野菜を撫でていた。それを見ていたら、俺は可笑しくなってしまった。

「ーったく、憎めねえなあ、お兄さんは!」

俺は声を上げて笑っていた。お兄さんが不思議そうに俺を見つめ返す。

「なあ、お兄さん。いつものやたらキレイな笑顔もいいけど、アンタはもっとそんなふうに元気に笑った方がいいよ」
「へ?」

お兄さんはこれまた子供のような無垢な瞳を俺に向ける。だもんで、見ているこっちが、くすぐったくなってしまった。

「いやいや、何でもない。お兄さんが楽しかったんなら俺も何よりさ」

俺は目をそらして、鼻の頭をかいた。


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