【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、哀愁を漂わせる? (時をかけるおやっさん1)
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残された小さな荷車を引いて、とぼとぼと朝市に向かう。そんな俺の背中から哀愁が漂っていないか不安なところだ。

「淑玲のやつ、古典的な手を使いおって…!」

これというのも我が娘(こ)・淑玲に仕入れ用の大きな荷車を取られたからだ。俺は歯ぎしりをして、やり場のない怒りを抑えた。…淑玲め、父親になんてことを!日に日に悪知恵をつけおって、一体誰に似たというのだろう!?

「俺か?女房か?それとも双子の兄の淑河か!?」

家族を思い浮かべて、そう叫んでみたものの、俺は一つ一つ考えを消していった。

「う~ん。でも、淑河はないか?うっかり者で妙な知恵なんて働かないしな。女房も割とのんびりしていて、策を弄すタイプじゃないしなあ…」

俺は荷車を引く手をとめた。…え?…ってことはなんだ…?

「じゃあ、俺か!淑玲は、俺に似たのか?犯人(?)は俺なのかーっっ!?」

消去法で導かれた答えに、思わず俺は絶叫した。

「そんなの、ありえーん!認めーん!許せ―ん!」

淑玲ときたら、うちのかわいい野菜たちまで、ちゃっかり持って行きやがって!

「ぐぬぬ…。こりゃ後でお仕置き決定だー!!」

怒りに震える俺の肩に、ふと優しい手が触れた。

「朝っぱらから絶叫しちゃって。どうしたの、おやっさん?」
「うわっ、眩(まぶ)しっっ!!」

振り返ると、美男子がお天道様にも負けない目が眩むような笑顔を向けていた。

「お、お兄さんじゃないか!今日、曇りなのに一瞬晴れ間が見えたぞ…!?」

目をこすって、目の前の人物をよく観察する。そこにいるのは紛れもなく、この商店街で一番の美男子様だった。老若男女うっとり見惚れる顔の良さは、もう国宝級じゃなかろうかと俺は密かに思っている。

「あはは!嫌だなあ、おやっさん。まるで御来光だなんて!(←そこまで言ってない)そんなこと言われて僕も太陽もビックリだよ~」

お兄さんは隣の薬屋で間借りしていて、しょっちゅう、我が家に顔を出す。どうも貧乏一人暮らしで腹を空かせていたらしい。一度餌付けしたら、うちにご飯を食べに来るようになった。

「何コレ、超うまいんだけど!宮廷料理人にも負けてないんじゃない?」

そんなふうに俺の手料理を褒めてくれたもんだから、悪い気がしなくて「じゃあ、お兄さん。腹すかしたら、そのー、いつでもうちに食べに来ても…いいぞ?」とつい声をかけてしまった。

まあ、うちは4人家族で1人増えたところで作る手間なんてそう変わらないしな。特に問題ない。それに美男子っていうのは、いてくれるだけで目の保養になる。場だって華やぐしな。家族みんな、喜んで彼を歓迎したわけさ。(淑玲だけは「なんか胡散臭くない、あの人?」と微妙な顔をしていたが…)

それなりに恩義を感じているのか、お兄さんは気が向いたら、八百屋の店番もしてくれるようになった。美男子が店先にいるだけで商売繁盛。願ったり叶ったり(?)ってなもんで、ありがたいこった。そうそう。それと、お兄さんは俺の晩酌にも付き合ってくれるんだよ。小言や愚痴も嫌な顔せずに聞いてくれる、笑い飛ばしてくれる貴重な酒飲み仲間にもなってくれた。

顔のいい男はいけすかない野郎が多いと思っていたが、そんな俺の偏見をお兄さんは見事にぶち壊してくれた。うん。憎めない、なかなか良い奴なんだよな。俺はお兄さんのことをけっこう気に入っている。

「え、御来光!?そこまで俺は言ってないんだが…う~ん、まあ、いいや」
「あはは!いいんだ?」
「それより何だい、お兄さん。こんな時間にこんなところで会うなんてさ。びっくりしたよ。もしや朝帰りかい?」

俺の問いにお兄さんは変わらぬ笑顔で頷いた。自称・遊び人だから、下手にいいわけもしない。それがかえって清々しくもある。なんかある意味、お兄さんって潔い男なんだよな。

「色男はいいねえ!楽しそうだ!」

別に厭味ではなく、心からそう言うと、お兄さんは首を傾げた。

「おやっさんは、元気ないみたいだねー。さっきの絶叫といい、何かあった?」
「いや~、それがうちの淑玲がさ…」
「なになに、淑玲ちゃんがどうしたの?」
「そんな食いつくような面白い話じゃないんだけどなあ」

俺はため息をついた。もう親不孝もいいところなんだよ…と言いかけ、慌てて口を噤む。晩酌時ならまだしも、朝っぱらから愚痴をこぼすなんてよくないよな。いかん、いかん。俺は笑ってごまかした。

「なーに、大したことじゃないんだ」

そうだ。大したことじゃない。本当に大したことじゃないんだ。自分にもそう言い聞かせていると、お兄さんが「おやおや」と目を細めた。

「もしかして、おやっさんは今から朝市に行くの?」

急に話題が変わったもんだから、俺は戸惑った。

「…ああ、そうだが」

何でいきなり朝市の話になったんだ?不思議に思っていると、お兄さんは俺を見て優しく微笑んだ。

「じゃあ、今日は僕も付き合おうかな」
「え?」
「朝市に一緒に行こう。野菜の仕入れ、手伝うよ」

曇っていた心に、ふと晴れ間が差し込む。

「おやっさんの背中、なんか哀愁が漂ってて放っておけないんだよね」



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