夜半。

一人の男が都で騒ぎを起こした。彼は盗みに関して一流の技術を持つ男である。

人を欺くその手口は実に鮮やかで、後に駆け付けた衛士の者は皆、頭をかくしかなかった。しかし、それがこの男の唯一の取り柄でしかなかったとしたら、人々は果たしてどう思ったであろうか。

今宵男が盗んだ獲物は、ある有名貴族が唐渡りより取り寄せた美しい宝玉である。闇も深まる夜の中で、それはいっそう秘めた輝きを放った。男は歪んだ笑みを浮かべる。その笑みは、今の己の仕事に大いに満足している事を意味していた。

月が男の頬を照らす。男の鋭い眼が光り、普段以上の獰猛さが見て取れた。今宵はいつもと何かが違う…、男はそう感じていた。いつものように衛士を振り払い、逃げ延びたはずであるのに、なぜか落ち着かなかった。

しかし、それは突然わかった。

流れ行く風に運ばれる空気が、微かに震えているのである。

 空気が震えている…なぜ?

男は息をひそめ、異変を見極めようとした。それは、音だった。低い、低い楽の音。男は吸い寄せられるように、その方角に進んでいった。

やがて川辺に出た。

色濃い闇に侵食された川辺は実に妖しく、流水の濁音が辺りを不気味に支配していた。楽の音は続いていた。そして、もう一つの低い声音が重なり始めた。

「この世は闇。行き場のない閉ざされた闇」

朧げながら、付近に確かな人影があった。声は続いた。

「闇の中に生きる者は、孤独とともに滅び行く」

男は思い出していた。確か都で琵琶を片手に、盲目の法師がこの世の慣わしをうたっていることを。そして、そのうたを訊いたものは奇妙な事に、己の道が開かれるという…。

男は醜い笑みを漏らした。あわよくば、その琵琶を奪おうと思ったのである。法師に気づかれぬよう背後に近づく。

「近頃都では、盗人が頻繁に出没しているという…」

男は動きを止めた。己の存在が法師に悟られたのか…。

「しかし、盗人よ。そなたは何を彷徨っているというのか。真に求めているものは、決して物ではなかろうに…」

男はうろたえていた。この法師は一体何をうたっているのか…。背中に冷たいものが、じわりと流れ落ちていく。気づけば、手の中にひそむ宝玉を強く握りしめていた。次に湧き出たのは凄まじい怒り―。男は法師に問いただしてやりたかった。それでは、俺が求めているのは一体何だというのか…。

男は法師の前に走りこみ、次の瞬間、男は眼前の法師に心を打たれたのである。

そこにいたのは、この世の全てを拒絶した哀しい人間の姿であった。


( ※ 申し訳ありません。只今、このあたり書き直し中です。法師の人物描写が入るようです… ※ )

 
 男の手が法師の頬に触れた。その頬はとても冷たかった。かたく閉ざされた眼が開く。そこにあるのは…絶望に近いまでの虚無…

 …これは俺だ。 俺自身、なのだ。

 男は叫んでいた。その声が、男を鋭く切り裂いていた。
何が男を誘ったのか、法師を泣きながら抱きかかえると、男は忽然と姿を消したのである。

  明け方。

 すでに川辺には昨夜のような不気味な気配はない。ただ、あたたかな陽光が水面を煌めかせ、流水は穏やかにせせらいでいる。その近くで、あの宝玉だけがひっそりと取り残されていた。

それから都で、盗人と法師の名を訊いた者はいない。



=====================================

=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 黒沢明「羅生門」× 芥川龍之介「薮の中」★

今思うと、昔の方が固くて暗いor重い物語をよく書いてたみたい。背伸びしてたのか、思春期だったからか。…いや、どっちもかな。その時、生まれた物語です。読み直してみたら、法師の人物描写がなんか変で、未完になってしまいました。すみません…いつか必ず。

① 黒沢明「羅生門」
http://www.youtube.com/watch?v=xCZ9TguVOIA
父が黒沢明監督の大ファンで「これを見ろ」「あれも見ろ」ってよく一緒に見てました。まあ、結局「全部見ろ」ってことだったんですが…。中でも「七人の侍」・「隠し砦の三悪人」・「天国と地獄」は父と私のおススメです。「羅生門」は私には難解で答えを知りたくて、映画のベースになったという芥川龍之介の「薮の中」を読むきっかけに。

② 芥川龍之介「薮の中」
http://www.amazon.co.jp/%E8%97%AA%E3%81%AE%E4%B8%AD-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8A%A5%E5%B7%9D-%E9%BE%8D%E4%B9%8B%E4%BB%8B/dp/4062764598
何気に文学作品好きです。文学作品に限らず、いい作品にあうと、刺激をうけて一気に自分の中で物語のイメージが広がります。芥川龍之介の「薮の中」もそうでした。文字は少ないのに、なんかガツンときて。読了後、創作意欲が湧いてきて、図書館から走って家に帰ったような…。私の物語の法師はどうも美僧らしいんですが、たぶんそれは氷室冴子さんの「ジャパネスク」シリーズの登場人物、吉野の君がモデルになった気がします。あれを読んでから、私の中のお坊さんはどうも美僧になってしまいました。

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コメント
=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 黒沢明「羅生門」× 芥川龍之介「薮の中」★

今思うと、昔の方が固くて暗いor重い物語をよく書いてたみたい。背伸びしてたのか、思春期だったからか。…いや、どっちもかな。その時、生まれた物語です。読み直してみたら、法師の人物描写がなんか変で、未完になってしまいました。すみません…いつか必ず。

① 黒沢明「羅生門」
http://www.youtube.com/watch?v=xCZ9TguVOIA
父が黒沢明監督の大ファンで「これを見ろ」「あれも見ろ」ってよく一緒に見てました。まあ、結局「全部見ろ」ってことだったんですが…。中でも「七人の侍」・「隠し砦の三悪人」・「天国と地獄」は父と私のおススメです。「羅生門」は私には難解で答えを知りたくて、映画のベースになったという芥川龍之介の「薮の中」を読むきっかけに。

② 芥川龍之介「薮の中」
http://www.amazon.co.jp/%E8%97%AA%E3%81%AE%E4%B8%AD-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8A%A5%E5%B7%9D-%E9%BE%8D%E4%B9%8B%E4%BB%8B/dp/4062764598
何気に文学作品好きです。文学作品に限らず、いい作品にあうと、刺激をうけて一気に自分の中で物語のイメージが広がります。芥川龍之介の「薮の中」もそうでした。文字は少ないのに、なんかガツンときて。読了後、創作意欲が湧いてきて、図書館から走って家に帰ったような…。私の物語の法師はどうも美僧らしいんですが、たぶんそれは氷室冴子さんの「ジャパネスク」シリーズの登場人物、吉野の君がモデルになった気がします。あれを読んでから、私の中のお坊さんはどうも美僧になってしまいました。
rurubu1001│URL│07/20 22:17│編集

闇の中で俺を見つけた男。
残された煌きにその先を少しだけ想像します。

え、これを書かれたのは思春期の頃? 中学生でこれを? 凄い(@@)

ところで。書き直し、終了しましたかぁ。
法師の描写と男の心情とが超気になりますよ。
けい│URL│07/27 19:36│編集
Re: タイトルなし
>けいさん

いつも本当にありがとうございます!

> え、これを書かれたのは思春期の頃? 中学生でこれを? 凄い(@@)

私は思春期が長くて、学生時代全般(小学生~大学生まで)がもしやそうなのかもと自分で思っていて(ある意味、今でもそうな気もしますが…)、これは確か20歳前後で書いたものだったと記憶してます。

> ところで。書き直し、終了しましたかぁ。法師の描写と男の心情とが超気になりますよ。

それが…何度も読み返してみてはいるんですが、ここでいつもなぜかきこえてくる登場人物の声がつまずくんですよね。先生、すみません!もう少しお待ちくださいね><

あ、それとこんなところで伺うのもあれなんですが、けいさんの憩のリンクを私のブログに貼らせてもらっても大丈夫でしょうか?私のリンク場所って下の方にあってあまり目立たないかもなんですが、けいさんが良ければぜひ貼らせて頂けると嬉しいです^^
rurubu1001│URL│07/27 20:53│編集

この先、盗み続けて、最後に辿りつくのは「空しさ」ということでしょうか。
深いですね。

「うまくはないな」と自分で感じたところは、その後、何度読み直しても、描き直しても、なかなか納得がいかないもんなんですよね。不思議と。
私も経験あります。

そのうち、スキルアップしたころにまた書かれてみたほうがいいんでしょうね。きっと。
ヒロハル│URL│01/08 22:57│編集
ヒロハルさんへ
コメントありがとうございます!

> この先、盗み続けて、最後に辿りつくのは「空しさ」ということでしょうか。深いですね。「うまくはないな」と自分で感じたところは、その後、何度読み直しても、描き直しても、なかなか納得がいかないもんなんですよね。不思議と。私も経験あります。そのうち、スキルアップしたころにまた書かれてみたほうがいいんでしょうね。きっと。

そうなんです。中々納得できなくて…。物語の声が躓くというか、リズムが悪くなるというか…。感覚的な意見でお恥ずかしいのです。スキルアップできたらしたいのですが、書いても書いても、こればかりは難しいものですね(遠い目)なので、ヒロハルさんのあたたかいお言葉に感謝です><
rurubu1001│URL│01/08 23:41│編集

『羅生門』だぁ、と思っていたら。コメント欄に羅生門。
そうか、何だか世代の近さを感じたのは気のせいでしょうか。
でも、rurubu1001さんは私よりもずっとお若いような気がするのですけれど。
それはともかく、この平安を感じさせるシーンの妖しさ。いいですね。私もこんな世界を書いてみたいわぁ。
そう言えば、大河ドラマ『平清盛』で我が県の知事が画面が汚いと言っていましたが、その世界がふと目に浮かびました。
そんな小奇麗な世界ではなかったはずですよね、あの頃って。盗人も野たれ死にも、特別なことではなかった時代の世界観。書ききるのは難しいかもしれませんが、ぜひ完成させてくださいませ。
もちろん、機は熟した!って時に(*^_^*)

余談ですが、低視聴率を誇った『平清盛』、実は後から録画で全部見たら、かなり面白かったんだけどなぁ……
大海彩洋│URL│01/25 09:55│編集
大海彩洋さんへ
コメントありがとうございます!

返信が遅くなってしまい、すみません。PC環境から離れていました><!

> 『羅生門』だぁ、と思っていたら。コメント欄に羅生門。そうか、何だか世代の近さを感じたのは気のせいでしょうか。でも、rurubu1001さんは私よりもずっとお若いような気がするのですけれど。

私もてっきり大海さんは年上の方かと思っていました。しっかりした文章の感じからそんなふうに思っていました。!…あれ、もしや同じ世代なのでしょうか^^『羅生門』気づいてくださって、とても嬉しいです。あれがもとねただったんです。

> それはともかく、この平安を感じさせるシーンの妖しさ。いいですね。私もこんな世界を書いてみたいわぁ。

ややや!大海さんなら絶対書けると思います!というか、絶対もっといいものを生み出しそうです。ぜひ私、読んでみたいです!!><

> そう言えば、大河ドラマ『平清盛』で我が県の知事が画面が汚いと言っていましたが、その世界がふと目に浮かびました。そんな小奇麗な世界ではなかったはずですよね、あの頃って。盗人も野たれ死にも、特別なことではなかった時代の世界観。書ききるのは難しいかもしれませんが、ぜひ完成させてくださいませ。もちろん、機は熟した!って時に(*^_^*)余談ですが、低視聴率を誇った『平清盛』、実は後から録画で全部見たら、かなり面白かったんだけどなぁ……

ありがとうございます!マイペースなので時間がかかるかと思いますが、ゆっくり仕上げていけたらと思います^^『平清盛』ですが、私も面白かったと思うんですけど、評価があまり高くなくて残念ですよね。私は第一話で速攻泣いてしまったんですがね(笑)。白拍子のお母さんが身を挺して清盛をたくすところとか…。
rurubu1001│URL│01/26 22:44│編集
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