二十歳の誕生日が来て、まず始めにやったことは、涙を流して泣いたことだった。

午前0時。
日付が自分の誕生日に重なると、二十年間今まで生きてきて事が、断片的だけれど、鮮やかにあっという間に駆け抜けていった。
私は呆然とこれが死ぬ間際に見るあれか、と別に死ぬわけでもないのに、考えてしまった。

次に思ったことが、ああ、私はこんなに生きてしまったんだなという思いで、そうなるとなぜか苦しくなってしまい、涙がこぼれてしまった。そういうわけだ。

まだ夜中だったから、一応朝まで眠ることにした。夢は何もみなかった。

目覚めると、携帯に一通のメールが届いていた。

それは仲のいい友達からで、私の誕生日を一緒に祝おう、というものだった。

覚えている人がいるのは、とても嬉しい。思わず顔がほころんでしまった。

誕生日だから、二十歳だからと、どこか特別に意識が変わるものではないだろう。
服も細身のジーンズにパーカー。その上にマフラーをぐるぐると巻きつけるという定番の格好。

鍵を閉めて、外に出る。振り向いたときに当たる冷たい風が、どこか穏やかで甘い。澄み切った空に目を細める。

変わらない、変わらない。

でも、私の中の何かが変わるんだ、変わっていくんだ、と誰かが叫ぶ。

駅前の本屋で友達と待ち合わせ。おいしいと評判のお店でケーキを食べてお茶を飲む。

ああだ、こうだと繰り返す、似たような話。終わることの知らないような他愛もない話を、私たちは何が面白くて、繰り返し、繰り返し、話し続けるのだろう。
考えると不思議なことだけれど、その時間が後でとても愛しくなることを、私はこの二十年で学んだのだ。

今日は一緒に夕飯も食べよう、と一人暮らしの私を気遣ってくれる友達。そんな彼女のお勧めのお店に行くことにした。

すっかりあたりは暗くなっていて、太陽の変わりにいくつもの星が点々と顔を出し、きらきらと瞬いている。

今日は星がよく見えるね。私たちは空を見上げながら、夜道を急いだ。

着いたところは、アメリカンダイニングバーだった。堂々とお酒が飲める年齢になったんだとふと気づく。オールドアメリカンを意識した店内は古いハリウッド映画の世界に迷い込んだかのようだった。

でも、そこは私たちと同じ大学であろうたくさんの学生であふれていた。ほろ酔い加減のせいか、みんなのテンションは高く、ノリもいい。通りすがりの知らない人に、いきなり頭を撫でられる始末だ。そんな熱気に押されながら、友達の後をついていく。照明も程よくおとしてあったので、まわりに気を配りながら階段を上っていった。

席に案内されると、おかしなことに目の前には、見覚えのある顔ぶれが並んでいた。

思わず彼らに声をかけようとすると、先に歩いていた友達が笑顔で振り向き、「せーの!」と言った。
すると、目の前に並ぶみんなが「誕生日おめでとう!」と声をそろえて、向かえてくれたのだった。

私はすぐには理解できず、戸惑い、後ずさってから友達の顔を見、やっと自分がはめられたことに気がついた。

そのときの恥ずかしさ、悔しさ、嬉しさ―なんだろう…そういう類の感情の波が一気に押し寄せてきて、なぜか泣きそうになったけれど、なんとかこらえて見せた。

その食事の席は楽しさにあふれていて、お酒もたっぷり飲んでしまった。人一倍の幸福感もプラスされて、酔いのまわりも速かったから、少し変になっていたと思う。

帰り道。

「みんなで手をつないで帰ろう」と騒ぎ、そうして帰ってもらった。ほてった頬に夜風が心地よかった。なんとなくどこまでも歩いていける気がした。それは一人ではなくて、このみんなと。どこまでも、どこまでも歩いて行けるさ、という感じで。

家に戻り、そろそろ自分の誕生日の終わりが近づいてきたのを知る。

今日一日を振り返ってみた。
実にいい誕生日で、いい二十歳を迎えられたなと思う。

誰に感謝していいのかわからなくて、祝ってくれたみんな、私を生んで育ててくれた両親や家族、最後にここまで生きてきた自分に感謝した。

そして、ついにこらえきれなくなって、また一気に涙がこぼれ落ちた。でも、最初に流したものとは全然違う。

私は涙の重みを知っている―。

今までの二十年、これからの二十年、二十年後よりも、ずっとずっと先のすべての私に伝えたい、とこのとき心から思った。

『今の私は、確かに幸せだよ』

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コメント

20歳の誕生日…

はて…

全く覚えていないですねぇw

何年も前だから、っていうよりも印象に残るような出来事がなかった、っていう感じですねw

まあ、そのあたりは自分の小説から察してくださいw
blackout│URL│08/17 00:01│編集

わ。サプライズ。良いお友達ですね。
こんな風に一日が過ごせると思い出深いですね。

誕生日は1年のカレンダーの中でも特別な日ですね。
20歳の誕生日は人生の中で特別な日。
私は、バイトしていたはず。うろ覚え~(^^;)
けい│URL│08/17 11:36│編集

誕生日が来たからといって突然変わるわけではなく、そういうのは徐々に変わっていくものですからね。区切りにはなると思いますが。誕生日を祝ってくれるのはいくつになっても嬉しいものです。
LandM│URL│08/17 17:05│編集
Re: タイトルなし
>blackoutさん

いつも本当にありがとうございます!

私もけっこう前なのであんまり覚えてなかったんですが、当時記念に書いてたようで、
今回UPさせてもらいました。(1001まで全然足りないと思い、穴埋め的なかんじで)

印象に残る出来事って誕生日にかぎらず、ずっと心に残ってたりしますもんね~。
私も大事にせんと^^
rurubu1001│URL│08/17 20:48│編集
Re: タイトルなし
>けいさん

いつも本当にありがとうございます!

けいさんはバイトの達人という気がします!
(たぶん書かれる小説のイメージで接客系と予想^^)

ここではみんなに誕生日を祝ってもらえてますが、数年後になると、みんなに忘れられた時もあったり…。
その年々でじゃっかん変動があるのが笑えます。
rurubu1001│URL│08/17 20:53│編集
Re: タイトルなし
>LandM さん

コメントありがとうございます!

突然ではなく、徐々にかわっていくのわかります!
誕生日を祝ってくれるのは、本当にいくつになっても嬉しいものですよね^^
祝うのも祝われるのも、続けられる関係って素敵だと思います。
rurubu1001│URL│08/17 21:01│編集

私の誕生日は12月26日で、昔からクリスマスケーキと誕生日ケーキが一緒でした。
「メリークリスマス!(あと私の誕生日!)」と自分で自分を密かに祝っていました。
ちゃんとした誕生日のお祝いをされたことがないので、こういうサプライズはうらやましいです。
松原きのこ│URL│08/23 22:37│編集
Re: タイトルなし
> 松原きのこさん

コメントありがとうございます!
返信遅くなってすみません。所用で、PC環境から離れてました!><

> 私の誕生日は12月26日で、昔からクリスマスケーキと誕生日ケーキが一緒でした。
> 「メリークリスマス!(あと私の誕生日!)」と自分で自分を密かに祝っていました。
> ちゃんとした誕生日のお祝いをされたことがないので、こういうサプライズはうらやましいです。

私もいつからか冬生まれということで誕生日とクリスマスをまとめられ、プレゼントが一緒になってましたよー><
rurubu1001│URL│08/25 18:43│編集

こちらから失礼します
こんばんわネリムです

二十歳の誕生日はよく覚えていませんが
大人になったなという事は感じました。

話を変えますが
リンクの方貼っても良いですか?
ネリム│URL│08/27 23:09│編集
Re: タイトルなし
> ネリムさん

コメントありがとうございます!

リンクの件、了解です。私ので良ければ、よろしくお願いします。
私もネリムさんのブログのリンクを貼っても大丈夫でしょうか?

ちょっと今、バタバタしてまして頻繁にお邪魔できないかもしれませんが><
散文というのは初めてなので、楽しみです^^
rurubu1001│URL│08/28 00:36│編集

またまた失礼します
おはようございます。ネリムです。

リンクは貼って頂いて構いません。
こちらからも後に貼らせて頂きます。

今後とも
宜しくお願いします
ネリム│URL│08/28 08:40│編集
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