きっと僕は何度も言い続けるだろう。

僕の夏を心から愛でるために。きっと何度も言い続けるだろう。
僕ら男4人の夏を心から愛でるために。そうさ、何度も何度も言い続けてやるさ。

「お前ら、いったい何しに俺んちに来たんだ!?」

ってね。それでもケイゴとスガッチは、仲良く僕を無視し続けていた。

「うわー、またやられたよ」
「スガッチ、本当ゲーム弱いよね。後は俺に任せろ、ヒーローの出番どす!」

ケイゴに肩をぽんと叩かれたメガネ男子のスガッチは、自分のゲーム機を僕のベッドに放り投げた。そして、ふと思いついたように言った。

「シュウちゃん、悪い。俺さ、喉、乾いちゃった」

それに、自称ヒーローのケイゴも賛同する。

「俺も俺も、なんか飲みたい!ラムネ希望」

ちゃっかり注文してんじゃねー。しかも、ヒーローはラムネ限定かよ?本当お前ら人の話、聞いてねーな!と僕は怒鳴りつけたい気持ちをなんとか抑えた。

「わかった。飲み物、ラムネでもなんでも持ってくるからさー、いい加減に帰ってくれない?」
「えー」
「今、まじでいいところなんだけど…」
「何度も言ってるんだけど、ここ、俺の部屋なんだよね」
「知ってる知ってる」
「わかってるよ、そんなこと。だから、遊びに来てるんじゃん」
「いやいや、そうじゃなくて。来なくていいから!っていうか、誘ってないのに、何でお前ら、うちにいるの?」

僕の疑問に二人は顔を見合わせた。

「え、なんでって…?」
「…なんとなく、だよな?」

フィーリングかよ!

「いいじゃん、シュウちゃんはどうせ部屋に引きこもりだろ?だから、俺らが遊びにきたわけ」
「そうそう」
「いや、別に引きこもりじゃないし。一人で読書したいだけなんだけど…」

夏休みが来たら、一気に読みたいと思っていた小説があったのに…。好きな作家の新作『ハードボイルド少年』を。それが夏休みに入り、三日たった今になっても、まだ読めていない。それは全てこいつらのせいだ。…ってあれ?

「そう言えば、ハルは?今日も一緒じゃないの?」
「知らん!あいつ、声かけても最近挙動不審で、すぐどっかいなくなるし…」

ケイゴは急にぶすっとした。…まあ、ハルの落ち着きのなさはいつものことだけど、ケイゴの親友への固執、仲間意識の強さも相変わらずだ。ふうん。毎年、夏休みになると、真っ先にこの部屋に飛び込んで来るのはハルだったから、確かに変かも。…なんかあったのかな?

「あれ、ふたりとも知らなかったんだ?」

情報通のスガッチは立ち上がり、棚から漫画『MASTER(マスター)キートン』を抜き出して開いた。

「ハルはね、恋をしちゃったんだよ」

今度、顔を見合わせたのは僕とケイゴの番だった。

「は??」
「何ですと??」

ちょうど、その時だった。

「助けてくれーっ!」

と、ハルが慌てた様子でこの部屋に飛び込んできたのは!

ケイゴとスガッチはニヤニヤしていたけど、僕はなんとなく嫌な予感がした。14歳の不穏な夏がここで決定的に始まってしまったような…。僕もフィーリングで申し訳ない。でも、こういう勘って、よくあたるのはなぜだろう…。僕は未だ読めない小説のことを思い、深いため息をついたのだった。


汗をかいたラムネの瓶が、テーブルに並んでいる。

目の前にあるのに、みんな手を付けていない。…ぬるくなるんじゃねえ?と誰もが思っていただろうに、そんな素振りも見せず、みんなこれまでにないほど真剣な面持ちだ。視線はラムネではなく、一人に向けられていた。ハルだ。

「頼みがあるんだ」

ようやく口を開いた。真顔で僕らに迫る親友。

「協力してほしいんだ」

僕らは、息をのんだ。

「一生のお願いになるかもしれない」

ごくり。

「…みんなでSF小説を書こう!」

それぞれの頭の上に一瞬クエスチョンマークが浮かんだような気がした。でも、ハルの表情は崩れない。

…えーっと、えーっと、………えー?

「とりあえず、そうだな…」

場の空気を読んだスガッチが、みんなを仕切り直した。

「まずはラムネ、飲まね?」


ハルの話はこうだった。

ハルが好きになった女子はどうも僕らと同じ中学で図書委員の子らしい。彼女は夏休み中、図書室で資料の貸出など委員の仕事をしているそうだ。お近づきになりたいハルは、図書室に通い始めた。そこで、彼女と話す機会を狙っていた。で、やっとその機会が訪れた。

「あれか!実は貸出カードの名前でお互い意識しちゃってた、とか?」と、ケイゴ。
「それ、ジ○リ映画の天沢○司くんじゃん?」と、僕。
「まさか『コンクリートロードはやめた方がいいと思うぜ?』『何よ!』的な展開が…?」と、スガッチ。

ハルはうんうんと深く頷いて言った。

「…地球屋に行った帰りにふたりは再会するんだよな。俺、おの店のじいさんが好き!『お嬢さんはドワーフを知ってる人なんだね』って登場からカッコ良すぎでしょ!…ってみんなどんだけ『耳を○ませば』好きなの??そうじゃなくて!!…確かにその子とは、本を借りる時、貸出カードをきっかけに話せたんだけど…俺、別に読書好きじゃないじゃんか?」

そら、そうだ。ハルが小説を読んでるところなんて、見たことがない。本と言えば、漫画だろうな。特に『ONEPIECE(ワンピース)』とか。

「テキトーに選んで持って行ったわけ、カウンターに。そしたら、その中に彼女の好きな小説が入っていたらしいんだ」

…なるほど、読めてきた。

「それがSF小説だったわけだな?」
「そそそ。さすが、シュウちゃん。ちなみに本の名前は『夏への扉』です」
「うわ、ベタだなあ~。ジンジャーエールを飲む猫が出てくるやつだ」
「そんなの俺、知らないじゃん?それで…」
「テキトーに話を合わせて、うまいこと自分を印象づけたくて、お前は言っちゃったわけだな?」

僕のセリフにハルは苦笑しながら頷いた。ケイゴとスガッチが口を挟む。

「え、ジンジャーエール?猫?」
「つまり、どういうこと?」

ハルは僕に「シュウちゃ~ん」と助けを求めてきたが、僕は知らないふりをした。しょうがなく、ハルは自分から切り出した。

「…嘘をついちゃったんだよね。俺、実は小説を書いてるんだって。それも君の好きなSF小説をって。そしたら、今度見せてくれない?って話になっちゃって。で、またつい言っちゃったんだ」
「…まさか」
「いいよーって」

僕らはラムネで乾杯しあった。

「ハル、ガンバレ☆」
「応援だけはしてる!」
「書き終わったら、『耳を○ませば』みたいに鍋焼きうどんを食おうぜ。俺、じいさん役!」
「じゃあ俺、バ○ン!」
「えー、なに俺が、○司くん?しょうがないな、ここでもヒーローっていうね…」

ハルは潔く、頭を下げた。

「みんな、お願いします!」

僕ら三人はどうする?と、顔を見合わせた。とりあえず、僕は気になることを聞いてみた。

「そもそも、好きな子って誰なんだ?」

すると、ハルは少し顔を赤くした。純情ボーイめ。

「同じクラスのトキカケさん」

トキカケさん?

「誰それ?」
「え、シュウちゃん、まだクラスメートの名前、覚えてないの??トキカケナツミだよ」

思い出せない。トキカケナツミ…なんていたかな?そんな舌をかみそうな名前の子。

「俺、知らん」
「ケイゴと俺はクラス違うからな。でも、俺は知ってる。カワイイ子だよね。綾瀬はるかっぽい感じ」

ケイゴはさておき、さすが全校女子データが脳内に完全インプットされてるスガッチは違うなあ。へー、ハルはあーいう子が好きだったんだな。ハルの恋愛相談なんて初だもんなーって…え?

「初恋??」

ハルは恥ずかしそうに、頭をかいた。

「なるほど『夏への扉』でなく、どうやらそれは『ハルへの扉』?いやいや、『春への扉』、だったというわけですな。ふふふ」

うまいこと言ったと思って気味悪く笑うケイゴ。せっかく○司くん役もハマるイケメンなのに、どうしてこう中身が残念なんだ、こいつは。そんな彼にハルを預けて、僕とスガッチはこそこそと話し込んだ。

「綾瀬はるか似ってことは、モテる子なんじゃないの?ハルに勝算あるのかな?」
「トキカケさんって性格は割とおとなしい感じだから、恋愛の派手な噂はきかないなあ。まだフリーで、誰が狙ってるってわけでもないんじゃないかな。ハルはパッと見、カワイイ系男子で通ってるから、外見は大丈夫だろう。問題はきっと中身だ。天然というかアホというか…。本好きな子って、そこそこ頭もいいんじゃないの?」
「本好きは頭がいいかと聞かれると、そういうわけでもないと俺は思う。ただ、そういう子ってたぶん男に夢を持ってそう。王子様とまでは言わないけどさ…」

僕とスガッチは「う~ん」と唸って同時に腕を組んだ。ケイゴとハルは「ヤバイ!俺らジンジャーエール飲まなきゃじゃね?」とかなんとか叫んでいた。わかったわかった、勝手に飲んでろよ、お前らは。ついでに猫も探してこい!

僕とスガッチは持っていたラムネで、もう一度乾杯した。

結局、僕らは親友のためにひと肌脱ぐことになるのだろう。なんだかんだ言って、運命共同体なんだろうな。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ スタジオジブリ「耳をすませば」× Supercar「Summer Tune」 ★

最近UPする過去物語がシリアスor暗めが多く、ちょっとコメディタッチも欲しいかなと現在書き途中の長編SFを切り取って短編リメイク?してみました。一部の人しか笑えないかもですが。ちなみに作中に出て来る作品は、「ハードボイルド少年」だけ私ので、後は浦沢直樹「MASTER(マスター)キートン」、尾田栄一郎「ONEPIECE(ワンピース)」、ロバート・A. ハインライン「夏への扉」です。

① スタジオジブリ「耳をすませば」
http://www.amazon.co.jp/%E8%80%B3%E3%82%92%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%81%B0-DVD-%E8%BF%91%E8%97%A4%E5%96%9C%E6%96%87/dp/B00005R5J9
私はジブリといえば「ラピュタ」派なのですが、コレも好き。あと恋愛系なら「海がきこえる」も。マイナーかもですが、名作だと思う!そう言えば昔ジブリ美術館に行った時、バロンの物語の背景画を担当した井上直久さんが丁度作業してらして、生イラスト&サインをもらいました。お話もしてくれて、本当にいい方でした。そんな井上直久さんの作品も紹介を。

井上直久「『バロンのくれた物語』の物語」
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%83%90%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E2%80%95%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8E%E8%80%B3%E3%82%92%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%81%B0%E3%80%8F%E3%82%88%E3%82%8A-%E3%82%B8%E3%83%96%E3%83%AA-THE-ART%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%AE%AE%E5%B4%8E/dp/4198603170/ref=sr_1_15?s=books&ie=UTF8&qid=1376200289&sr=1-15&keywords=%E4%BA%95%E4%B8%8A%E7%9B%B4%E4%B9%85

② Supercar「Summer Tune」
http://www.youtube.com/watch?v=FJD4TwU7V9g
彼らの夏曲!テンションが一気に上がります。途中で一瞬音がパッと消えるところがあって、そこがなぜか好きなんです。同じ歌詞をずっと繰り返してるだけらしく、そこもまた面白いです。夏フェスできいて見たかったなあ…。

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コメント

SFを複数で作る場合は、結構大変ですよね。世界観の共有が結構難しいですからね。けど、こういう友達どうしでやるのはすごく楽しいと思います。
私も複数でファンタジー小説作っていますが。どうも、初めましてです。場末でファンタジー小説を書いているLandMです。LandMは団体名なのですが。また読ませていただきますね。
LandM│URL│08/10 09:42│編集
Re: タイトルなし
> LandM さん

はじめまして。コメントありがとうございます!

>こういう友達どうしでやるのはすごく楽しいと思います。
彼らは書く前に話が終わってしまってますが…(苦笑)。ちょっとみんなで書くって楽しそうですよね!

> 私も複数でファンタジー小説作っていますが。どうも、初めましてです。場末でファンタジー小説を書いているLandMです。LandMは団体名なのですが。

おお、すごい!私もお邪魔してます。これからも応援しています^^
rurubu1001│URL│08/10 17:30│編集

しまった。「ハードボイルド少年」をまだ読んでいない。
シュウちゃんちにもあるのか。じゃあ、遊びに^^

みんなでSF小説、楽しそうですね。
好きな女の子のため、っていうモチベーションがほほえましい^^

4人でどんなふうに書くのでしょうか。
トキカケさんが読むところを見てみたい。
そして、ハルの扉がどうなるのかも。

そそそ。これにはまった^^
けい│URL│08/11 18:08│編集
Re: タイトルなし
>けいさん

いつも本当にありがとうございます!

そそそ。って私の口癖なのか、周りの口癖なのか、
ここでも使っちゃってましたね(苦笑)。
なんかおバカなノリのお話で、お恥ずかしい…。
シュウちゃんちよかったらぜひぜひです^^
rurubu1001│URL│08/11 23:29│編集

こんにちは。
おもしろーい!
男の子四人の普段が浮かび上がる楽しいお話ですね♪

「耳をすませば」は私もすっごく好きです。
青春の塊のような物語ですよね。
何かよくわからないエネルギーに突き動かされるって感じが大好きでした。

きっかけはかなり不純ですが、やっぱり同じように小説を書こうとする彼らがどんな物語を紡ぐのか、彼ら自身の物語と同時に楽しみですね♪

ちなみにrurubuさんの好きなものも少しわかってしまうような(笑)

お好きで書かれたのかどうかはわかりませんが、私はキートン先生大好きです♪
ぐりーんすぷらうと│URL│08/12 11:39│編集
Re: タイトルなし
>ぐりーんすぷらうとさん

いつも本当にありがとうございます!
楽しんで頂けたようで良かったです。こんなノリの物語に付き合ってくれて逆に感謝というか^^

>「耳をすませば」は青春の塊のような物語ですよね。 何かよくわからないエネルギーに突き動かされるって感じが大好きでした。
わかります!わかります!確かにそんな感じですよね!

>お好きで書かれたのかどうかはわかりませんが、私はキートン先生大好きです♪
なんとなくパッと出てきた作品を書いてたんですが、キートン先生は浦沢作品の中でも大好きで^^
カッコいいですよね!見た目とのギャップが素敵です。
rurubu1001│URL│08/12 22:16│編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
││06/28 01:29│編集
鍵コメ様へ
こちらこそ、はじめまして。

お越し頂き、ありがとうございます。色々なジャンルがあるので、お好きなものをジャンル別カテゴリから見つけて頂くか、目次&拍手ランキングというものもあるので、そちらを参考にして頂くのもありかなと思います。

目次&拍手ランキング
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-30.html

「SF小説を書こう!」に出てきた「ハードボイルド少年(ショートショート)」も、良ければ、お楽しみ下さいね^^
ハードボイルド少年
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-24.html

お時間のいい時にいつでもいらして下さいね。
rurubu1001│URL│06/28 07:15│編集
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