※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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珠露に案内された俊楽堂の厨房は彼の言ってた通り、大きかった。しかも広くて小奇麗だ。でも、これって…。

「…使ってない奇麗さだわ…」

目の前の厨房は使っては掃除をしてという磨きこんだ奇麗さではなかった。大きな鍋や立派な包丁などの料理器具一式がせっかくそろっているに、それらは所在なさそうにしている。

「しょうがないよ。今ここで暮らしてるのって先生くらいだし。男の一人暮らしなんてそんなものじゃない?料理なんてしないで、どこかで食べてすますんじゃないかな」
「え、男の人ってそういうものなの!?」

と私が驚いていると、

「え、そういうものじゃないの?」

と珠露が逆に驚いて聞き返した。もしかして、みんながみんな、うちのような感じでもないのかしら?私は珠露に我が家の事情を説明した。

「うちの家はね、一応みんな簡単な料理くらいはできるの。父様も兄様もね。うちは八百屋だから、お客さんに野菜を買ってもらわなくちゃいけない。だからお客さんが野菜を買う時に、一緒に野菜料理も紹介できたほうがいいって。そのために、料理ができなくちゃいけないって…」
「へえ~。すごいなあ、淑玲の家は!たぶん、他の家じゃ料理って女の人任せだと思うよ」

と彼は感心しきりだ。…ん?ということは…。

「ここに通うみんなのお弁当って、だいだい母親任せってこと…?」
「まあ、そうだろうね」

そういえば、肉屋の真野の母親に「うちの息子に、お昼の握り飯を届けてほしいの」と頼まれたことを思い出す。そのことがあってここに来れたわけだけど、俊楽堂に通っている男の子の母親は自分のお店のこともあるのに、お弁当作りも頑張ってるってことよね。それって毎朝けっこう大変なんじゃ…?

― お弁当作り? ―

…目の前には使われていないけど、料理器具が一式そろっている大きな厨房…。
…私は決して得意ってわけじゃないけど、料理ができる…。

「…これはいけるんじゃ…?」
「どうしたの、淑玲?」
「…珠露、見つけたかもしれない。私がいたら利点(メリット)ありってアピールできる効果的な方法!」

うまくいけば、俊楽堂に通う男の子だけじゃなくて、彼らの後ろにいるだろう母親たちの心をつかめる。きっと彼女たちは歓迎するんじゃないだろうか?母親の心をつかめれば(母親を味方にできれば)、こっちのものだ。彼女たちの意見に口答えができるほど、ここにいる男の子たちはまだ大人じゃない。

「淑玲、本当に?」
「たぶん商店街組はいけると思う。もしかしたら花街組も…。でもそのためには私、きちんと花街組のことを知らなくちゃいけないわ…」

私は珠露を見つめた。

― きっと花街にも事情があるんだ ―

珠露は観念したように笑った。

「…気づかれるとしたら、まず淑玲だと思ったんだ」

― あそこは男が権力をにぎってるわけじゃないから ― 

彼から女物のお香の香りがしたこと。自分は一人っ子と言っていたこと。でも、彼の家には女の人がいるだろう。それはたぶんお弁当をわざわざ作ってくれるという、おばあさんの他にも…。

― 坊ちゃん風情が調子にのるなよ! ―
― 俺は貴族のボンボンだと思うね ―

彼は坊ちゃんかもしれないけど、たぶん貴族じゃない。

― その坊ちゃん風情に食べさせてもらってるのはどこの人たちだろう? ―

花街の権力を握っているのは、きっと幻影(いりゅう)や菊恭(きっきょう)の家じゃないんだわ。

珠露が言った。

「花街にはね、大きな大きな妓楼があるんだ。富黄楼(ふうきろう)っていうんだけど、知ってる?」

私は首を横に振った。

「富黄楼のおかみは凄い人でね。本当はその人が花街の権力を握ってるんだよ」

先生が私のためにそろえてくれた組分けの面子にはきっと意味がある。

彼は淋しそうに笑いながら、こう教えてくれた。

「僕はその富黄楼の跡取りなんだ」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『相思相愛 』 ×  森薫『乙嫁語り』 ★ 

休みの間に、どれだけ書けるか…。ちなみに富黄楼(ふうきろう)のモデルは日本の富貴楼です。読み方は一緒で漢字だけ変えました。

① YUKI『相思相愛 』
https://www.youtube.com/watch?v=tNT-6iB9I6M
YUKIを聞いていれば、淑玲の物語はなんとかなる!そう思って毎回聞いています。

② 森薫『乙嫁語り』
http://booklive.jp/product/index/title_id/141282/vol_no/001
少年漫画(青年漫画)です。舞台は19世紀の中央アジア。美貌の娘・アミル(20歳)が嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。遊牧民と定住民の日常、歴史、文化などが描かれています。特に民族衣装が細かい細かい。資料を見て描いたじゃなくて、この漫画自体が資料なのではという感じです。気になる8歳差という年の離れたカップルですが、アミルさんがすごくいい子というかできたお嫁さんで応援したくなるんですよ~。


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次回更新まで、しばらくお待ちください。待たれている間に、こちらの物語なんぞどうでしょうか?
【第51夜】 少年の夢(中華風のお話。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
【第57夜】 笠森お仙騒動記
(淑玲に似た気が強いヒロインが登場します。ちなみに舞台は江戸。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-61.html
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コメント

なんとなんと! 珠露、ワケあり・・・?
大人の世界の関係が子どもの世界の関係にどう影響するのか。しないのか。

淑玲ちゃん、それは良い考えかも!
お母さんたちが味方になったら大きいなあ。
胃袋がつかめるのかっ・・・

決して得意ってわけじゃないけど、やる。それ私・・・(-_-;)
けい│URL│05/04 19:10│編集
けいさんへ
いつも本当にありがとうございます!

> なんとなんと! 珠露、ワケあり・・・?大人の世界の関係が子どもの世界の関係にどう影響するのか。しないのか。

そうなんです。珠露、ワケありだったんです。ふう、ようやくここまで書けました。俊楽堂編もやっとこさ、後半戦に突入…なのかな?こんなに長くなるとは思いませんでしたが><。大人の事情が子どもたちにどんなふうに作用しているのか、これから少し花街編を交えてお伝えします…。

> 淑玲ちゃん、それは良い考えかも!お母さんたちが味方になったら大きいなあ。胃袋がつかめるのかっ・・・決して得意ってわけじゃないけど、やる。それ私・・・(-_-;)

おお、ありがとうございます!けいさんにお手伝い頂くなんて心強い!そんなそんな。大丈夫ですよ~けいさんなら。淑玲の料理の腕はこの段階ではまだ自慢できる子ではなくて…。さて、うまくいくやら。一緒に胃袋がつかめますように!^^
rurubu1001│URL│05/04 23:36│編集
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