※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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お昼のご飯休憩が終わって、午後の講義が始まった。

「それでは、午後の講義を始めましょう。私たちの住む、蹊国(けいこく)の政治・経済についてです」

胸が高鳴る。いよいよ、ずっとやりたかった学問が学べるのだ。席取りは自由らしく、隣りの席になってくれた珠露(しゅろ)が講義で使う本を一緒に見せてくれた。

「ありがとう、珠露」

私がお礼を言うと、珠露はかわいい童顔でニッコリと笑ってくれた。ふと緊張が和らぐ。

「さあ、期限は二日。二日でみんなに認めてもらわないとね」

そう言うと、前に座っていた同じ商店街の仲間が、私のやる気に水を差してくれた

「『淑玲は、失敗する』に、俺は賭けよう!」と、白い歯を見せて笑う魚屋の息子・平勝(へいしょう)。
「じゃあ、俺は『淑玲は、なんだかんだとうまくやる』に、賭けようかな!淑玲は敵を作りやすいけど、案外うまいこと自分を転がすんじゃないか?」と、キツネ目の酒屋の息子・渾沌(こんとん)。

なんか聞き捨てならないセリフを一気に聞いたような…。

「ちょっとちょっと、失敗するって何よ?それと、敵を作りやすいってどういうこと?」

私が聞き返すと、彼らは振り返り、ニヤニヤした。

「ダメだ。淑玲のやつ、無自覚だ!俺、賭けに負けるかも…。なんだあ、この賭け、平勝(へいしょう)の勝ちかあ」
「女に変に甘いんだよ、渾沌(こんとん)は。性格と能力を見抜かないと!まあ、俺の勝利は確実だね!」

…ちょっと、さっきから失礼じゃない?しかも人を勝手に賭け事のネタにしないでよ!

私が頬を膨らますと、人のいい丸顔の肉屋の息子・真野(まの)が盛り上がる2人を小声で注意してくれた。

「もう、みんな淑玲は淑河(しゅくが)の大事な妹なんだよ。僕たちがうまくフォローすればいいじゃん!」

ん?ちょっと待って。それってうまくいかないこと、前提??

「安心してね、淑玲。僕たちがうまくやるからね」
「…あ、ありがとう…」

う~ん。真野は優しいけど、何かと「淑河(しゅくが)が!淑河が!」と私の兄様の名前を出す。兄様と仲良しなのは知ってるし、だからこそ私に良くしてくれるのもわかるんだけど、素直に喜べないのはなぜ…?

そんな私の様子を見ていた珠露が笑って口を挟んだ。

「淑玲、みんな色々言ってるけど、伝えたいことは同じなんだと思うよ。正攻法じゃ難しい。たぶん、みんなそれを淑玲に伝えたいんじゃないかな」
「…え、それってどういう意味?」
「きっと、すぐわかるよ」

珠露(しゅろ)はそんな謎めいた言葉を残して、視線を先生に戻した。平勝(へいしょう)たちもいつの間にか前に向き直っている。今のは一体どういう意味なのだろう?

「蹊国(けいこく)の現国王、朱矜(しゅきん)王は四代目になります。行っている主な政策を説明できる人はいますか?」

先生が早速みんなに質問を出す。私は思い切り手をあげた。

「おや、淑玲一人だけのようですね。それでは淑玲、お願いします」

私は立ち上がり、みんなに聞こえるようにはっきり言った。

「朱矜王(しゅきんおう)が主に行っているのは経済政策です。蹊国初代国王から三代国王まで、戦乱後の国の立て直しに力を入れて来ました。まず法制度、人々が最低限度の生活ができるよう国家としての基盤を築き上げました。次は人々が豊かに暮らせるように、朱矜王は経済の発展に力を入れています。まず、私たちの住む首都・成安をはじめ、地方にも商業都市や経済特区を設けて、それから…」

早くみんなに私の力を認めさせないと!そんな気持ちばかりがせいで、私はまわりの空気の変化に気づかなかった。だから、次に何を言われたのか一瞬わからなかった。

「うぜー」
「何、知ったかぶってんのー」
「知識ひけらかすとか、どうよ?女のくせに」
「男を差し置いて、自分できますアピール?」

その場の空気が凍りついた。いや、違う。空気が凍りついたんじゃない。それを聞いて、凍りついたのは私だ…。

「…淑玲?」

先生が私に声をかけた。

「…あ、その…」

まるで声まで凍りついてしまったのか、私は急にうまくしゃべれなくなった。
今の悪意のある声は何?私、何か間違ったこと、言った…?

「…淑玲、どうしましたか?」

先生も今の声は聞こえていたはずだ。でも、助けてはくれない。それは最初に言われていたことだ。鋭い視線ならまだしも、言葉の攻撃、その鋭い切れ味に驚く。心臓がひやりとする。

その時だった。

「嫌だなあ、淑玲。僕が今、教えたことをそのまま言ってー。まるで自分の意見っぽく言うんだもん」

珠露(しゅろ)が冗談めかした声で空気を氷解させる。それに便乗するように、平勝(へいしょう)たちが続いた。

「みんな驚いた顔してるじゃん」
「知識とか特にあるわけじゃないのに、無理して頑張っちゃってさ。途中でわからなくなったんだろ―?」
「淑玲は、目立ちたがりなんだよなー。女の子がいるってだけで、充分目立ってるって」

そう言って、最後に真野が私の腕を引っ張って、腰を下ろさせる。

え、どういうこと…?

「なんだ。あいつらが仕込んだのか」
「あやうく騙されかけた…」
「女のくせに、学問できるとかありえねーだろ?」

どこかで好き勝手いう声がまた聞こえる。腰を下ろしたことで、隣りに仲間たちがいることで、私は落ち着きを取り戻していた。

『淑玲、みんな色々言ってるけど、伝えたいことは同じなんだと思うよ。正攻法じゃ難しい。たぶん、みんなそれを淑玲に伝えたいんじゃないかな』

そうか。正攻法じゃ難しいってそういうことか…。私は自分の能力を見せつけて、みんなを納得させればいいと思っていた。先生の質問にはたくさん答えられるし、難しい問題だって解ける。それがみんなを『認めさせる』ことにつながるって。でも、そういうことをしてもダメなんだ。それをすると、逆に今みたいに女の私はまわりの反感や顰蹙(ひんしゅく)をかうだけ。『認めさせる』ことにはつながらない。先生の言葉を思い出した。

『あなたの力でみんなを納得させて下さい。それは学問以外の方法でも構いません』

先生はわかっていたから、あの時、ああ言ったのね。うわ~、初対面なのに私ってば行動、よまれてる…。でもそれは先生に限ってのことじゃない。

『ダメだ。淑玲のやつ、無自覚だ!俺、賭けに負けるかも…』
『女に変に甘いんだよ、渾沌は。性格と能力を見抜かないと!』
『もう!みんな淑玲は僕たちがうまくフォローすればいいじゃん!』

私は呻るように呟いた。

「珠露(しゅろ)の言ってた『正攻法じゃ難しい』の意味がわかったわ…。でも女じゃなかったら、たぶんここまでされなかったような気がする…」

やっぱり女というハンデは大きいのだろう。男尊女卑。この国では、それが色濃く、根深くまだ残っている。私が女じゃなかったら、もう少し正攻法でうまくやれたかもしれない。珠露が笑った。

「学問塾って不思議だよね。僕は今まで家庭教師と一対一だったから、ここは全然違くてびっくりしたんだ。人が多くなると、環境って激変するんだね。でもきっとさ、こういうところだからこそ、うまくやれることもあると思うんだ」

珠露の言葉と先生の助言が重なる。

『淑玲、自分の能力を過信しないこと。人を頼ることを覚えなさい。謙虚でありなさい。そうすれば、あなたは自分が思っている以上の力を発揮できるでしょう。期待していますよ』

「…珠露と先生の言った通りだったわ。でも…」
「え?」

珠露が私を見つめるのがわかった。私は彼に笑顔を向ける。正攻法は難しい。自分の能力を過信しないこと…。そうね。確かに珠露と先生の言った通りかもしれない。でもだからって、さっきみたいに仲間に助けてもらってばかりじゃいけない。まわりの悪意を気にして、自分の意見や発言を我慢し続けるなんて無理だし、嫌だ。何もせずに埋もれたくない。もし、ここで学べるのが二日間だけだとしても、それまでは私もみんなと同じ生徒のはずよ。

「先生!」

私はまた勢いよく手を上げて、立ち上がった。鋭い視線が集まる。急速に。ピリピリと空気が張り詰める。…でも、知ってる?人間って慣れるものなのよ!

「提案があります。私、まだみんなの知識についていけなくて、一人だと不安なんです。なので、良かったら質問の受け答えなんですけど、何人かに組分けて、組ごとで競い合いませんか?誰か一緒だったら、私、頑張れると思うんです」

少し俯きがちの、か弱い女の子っぽい演技をして、そう提案してみた。前の席の二人が

「誰だ、お前!?」
「淑玲、キャラ変(キャラクター変更の略←性格変更の意味)??マジうけるんだけど!」

と小声で突っ込むのがわかった。

何よ。うるさいわね。こっちは必死なんだから…。これだったら、私が正解をあてても、私だけの評価にはならない。私と一緒の組になった人はもれなく同じ評価がつく。私を良いように思っていない人が私と組んだとしても、メリットになるんじゃないかしら?

両隣りの優しい二人が不安げに私を見上げている。私は先生を見つめていた。まさか『人を頼りなさい』と言った本人が反対したりはしませんよね?

先生はふっと笑った。まるで「よくできました」とでもいうように-。

「それは、面白そうですね。いいでしょう。淑玲、あなたのいる、この二日間はそれでやりましょう」

私は「ありがとうございます」と答え、ゆっくりと腰を下ろした。

「淑玲、驚いたよ!」
「面白いこと、考えたねー」

真野は肝が冷えたといい、珠露は楽しそうに笑った。私も微笑んだ。

「これなら、みんなに迷惑をかけないでしょう?私、足手まといになりたくないんだ。できれば、みんなと最初から同じ土俵にたちたい」

とりあえず、講義はこの方法で乗り切ろう。でも、これではまだみんなに私は認められないだろうな。学問以外の手も打たなきゃ…。

「『正攻法は成功法ではない』かー」

私の呟きに、珠露が反応した。

「淑玲、今なんて?」
「同じ言い方でも、私に必要なのはこっちだったのかもしれない。知恵を絞って、成功法を見つけ出さないとね」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI 『誰でもロンリー』 × 草凪みずほ『暁のヨナ』 ★

ちなみにサブタイトル「正攻法は成功法ではない」は、故事成語(または諺)ではありません。今回は私が考えたものです。時間がなくて、仮タイトルです。いつも故事~を探すのにけっこう時間をとられるんですよね。余裕のある時に直しますね。

① YUKI 『誰でもロンリー』
http://music21-pv.seesaa.net/article/404432220.html
今回はこれをきいてました。曲調も歌い方もカワイイ。

②  草凪みずほ『暁のヨナ』
試し読みhttp://www.cmoa.jp/title/58131/
大人になっても楽しめる、脇役まで大事にしてるファンタジーってあまりないから貴重だなあ。弱々しい箱入りお姫様だった主人公がある事情で国を追われますが、仲間たちの助けを借りて、どんどん逞しく成長していきます。もう弓も引くし、剣も握る。そんな闘うヒロインがカッコいい。個人的にはみんながひたすらボケる中、一人でみんなをつっこむユンが好き。
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次回
【第154夜】 講義の合間のちょっとした小噺(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ番外編)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-161.html
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コメント
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││10/02 23:39│編集
鍵コメ様
コメントありがとうございます!

いえいえ、そんな。覚えてますよ~(笑)。いつもあたたかいお言葉や素敵な応援ありがとうございます。恐縮&光栄です><。

こちらこそ、あまり訪問できず、申し訳ないです。お互い忙しいですが、無理せずやりましょうね。私も鍵コメ様応援しております!それでは、お時間のある時にいつでもいらして下さいね^^
rurubu1001│URL│10/03 23:57│編集

rurubuさんからご紹介された「ばらかもん」の第1話。
見てしまったら、12話まで行ってしまったあげくに寝落ち・・・
今ならrurubuさんと「ばらかもん」談義できる自信あり(キリリ)

って、ことではなく、淑玲ちゃんです(-_-;)
早速、アイデアを出してきましたね。グッドです。
頭が良く、賢いだけでは人の心はつかめないのですよね。
人とどう関われるか。
周りのサポーターたちも良くわかっているようで。
今後の淑玲ちゃんの立ち居振る舞いが楽しみです。


けい│URL│10/26 09:31│編集
けいさんへ
いつも本当にありがとうございます!

> rurubuさんからご紹介された「ばらかもん」の第1話。見てしまったら、12話まで行ってしまったあげくに寝落ち・・・今ならrurubuさんと「ばらかもん」談義できる自信あり(キリリ)

おお、「ばらかもん」ご覧になりましたか。面白いですよね!なるが可愛くて、癒されました。私は続きが気になって漫画も読もうか悩んでます。それと番外編で「はんだくん」という高校時代の半田先生の漫画もあるそうで、それも気になっていたり。きっと、あつくけいさんと「ばらかもん」について語れますね。私は見た目は、のび太君なのに中身はハイスペックのたまの弟のあっきーが好きです^^

> って、ことではなく、淑玲ちゃんです(-_-;)早速、アイデアを出してきましたね。グッドです。頭が良く、賢いだけでは人の心はつかめないのですよね。人とどう関われるか。周りのサポーターたちも良くわかっているようで。今後の淑玲ちゃんの立ち居振る舞いが楽しみです。

最初、淑玲は頭のいい超できる子を想像していたんですけど、私が書くせいかどうもそういう子にならなくて…。なので人間味のある失敗や反省もしつつ、柔軟に動ける子。面白い発想で乗り切る子になるといいなあと思うようになりました。う~ん、そうなるといいけどなあ。
rurubu1001│URL│10/26 21:42│編集

正攻法は成功法ではない。いいですね。
淑玲がんばれ!
続きもお待ちしております(^o^)
椿│URL│11/24 18:32│編集
椿さんへ
返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。
PC環境から離れておりました><。

> 正攻法は成功法ではない。いいですね。淑玲がんばれ!続きもお待ちしております(^o^)

応援ありがとうございます!淑玲がこの先、どうするのか、どうなるのか、一緒に見届けてやってくれると嬉しいです。続き、もう少しお待ちくださいね^^
rurubu1001│URL│11/25 21:01│編集
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