※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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俊楽堂(しゅんらくどう)は街はずれの静かなところにある。
現王の息子である第一公子様(次期王候補)の発案で、使われなくなった小さな古堂を国が維持し、無料開放しているのだ。そこで今、庶民のためにこれまた無料で学問を教えてくれる先生がいるとのことだった。

私の住む蹊国(けいこく)では学問を学べるのは基本男子のみ。お兄さんのくれた情報によると、もしかしたら、俊楽堂でなら女子もそれが学べるかもしれないという。こうしちゃいられないと、以前から学問に興味のあった私は走り出していた。

「あれ、淑玲(すうりん)ちゃん?おつかいかい?急いでどこ行くの?」
「あ、金物屋のおじさん!こんにちは!ちょっと俊楽堂まで!」
「あー、無料の学問塾か。あそこには、とても良い先生がいるみたいだね」

それを聞いて、私はふとあることに気づき、走る速度を落とした。

「そうなんだ!それでそれで?」
「何でも、まだ若い先生らしいよ。二十歳(はたち)前後だったかな?確かそこの酒屋の息子が通ってるよ」
「え、本当、酒屋のおじさん?」

金物屋のとなりにある、ノリのいい酒屋さんも話に加わってくれた。

「そうそう。うちのバカ息子も通ってるんだよ、淑玲(すうりん)ちゃん。その先生ってのはな、教えるのが上手ってだけじゃなくて、凄い人らしいぞ。なんでも、みんなで一斉に質問を浴びせても、全部ちゃんと聞こえてて、見事に答えられるというじゃないか!」
「なんだ、それ!どっかの偉い太子様みてえじゃねえか!」
「おうよ!立派な先生様々ってこった!」
「お前とは全然違うな」
「なんだと、こら!」

金物屋さんと酒屋さんがいつものように喧嘩を始めた。それを聞いていた常連客も私もつい笑ってしまう。

顔なじみの商店街面子は仲間意識が高いから、いつも気さくに声をかけてくれる。本当なら俊楽堂まで、人通りの少ない裏道(近道でもある)を抜けるべきだけど、この道を選んで正解だった。ここはうちの八百屋と同じような商店がたくさん並ぶ大きな通り。食べ物や日用品を求めて、日々人が集まり、様々な噂や情報が手に入れられる。

…二十歳くらいの優秀な先生か…。
能力に関しては噂の尾ひれがついてるかもしれないから、耳半分で聞いておこうかな。

俊楽堂で、簡単に女の私を受け入れてくれるとは思えない。あくまで女子でも学べる可能性があるってだけ。『キミ次第』ってお兄さんも言ってたしね。なら、知恵が必要なのだろう。そのために、事前にある程度の情報収集をしていった方がいい。…でも、私もね。はやる気持ちは抑えられないから、気持ち速度を落として小走りでいきますよ。

「金物屋に酒屋!お前ら、何してるんだ!お客がドン引いてるじゃないか!やめな、やめな!」

ふたりをなだめ、間に入ってくれたのは、ねじり鉢巻きをした威勢のいい魚屋さんだ。

「淑玲ちゃん、うちの悪がき坊主もそこに通ってるんだ。先生ってのはな、見た目は青白くてひょろっとしてるらしいが、なかなかの好青年なんだとよ」
「好青年って本当?魚屋さん」
「そうらしいぜ。そういうの、今どきの若者言葉でなんていうんだっけなあ…。いけすかねえ野郎共(メンズ)を略したみたいな言葉でさ~」
「…いけすかねえ野郎共(メンズ)を略す…?」

…もしやそれって、まさか…。

「イケメンって言いたいのかしら?」
「そうそう、それだよ!いや~、喉の小骨がとれたようにスッキリしたぜ、魚屋だけにな。がはは!」

本当に言いたかったのは、そっちかい!

「やっだー、おじさんったら!」

私は一応、笑顔で返した。…おいおい。いけすかねえ野郎共(メンズ)の略がイケメンってどうなの?良く思いついたわね。むしろ関心するわ…。金物屋さんと酒屋さんも「お前の方がドン引かれるわ!!」と魚屋さんを突っ込んでいた。

「あー、淑玲ちゃん、ちょっと待っとくれ!!」

きれいな高い声がして振り向いた。ふくよかなおばさんが、小さな包みを持って、通りに出てくる。

「淑玲ちゃん、俊楽堂に行くんだって?なら、頼みがあるのよ」
「お肉屋のおばさん、どうしたの?頼みって?」
「うちの息子も俊楽堂に通ってるんだけど、昼に食べる握り飯を忘れていったんだ!悪いんだけど、行くついでに届けてくれないかい?今いけば、間に合うと思うのよ。私も亭主も店が忙しくて、手が離せなくてね。もちろん、タダとは言わないよ。帰りにうちによってくれたら、お肉をおまけするからさ」

いつもの私なら、お肉のおまけに飛びつくところ。でも、今日の私は違った。

「…お昼の握り飯を…届ける…?」

つまり情報だけじゃなく、堂々と俊楽堂に行ける口実も、ここで手に入れられたってこと…!?

私は両手を叩いた。ナイス、おばさん!

「喜んで!!」

私の返事に、なぜか商店街のみんなはどっと笑った。



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★余談
・「なんでも、みんなで一斉に質問を浴びせても、全部ちゃんと聞こえてて、見事に答えられるというじゃないか!」「なんだ、それ!どっかの偉い太子様みてえじゃねえか!」のモデルは、たぶん聖徳太子(日本/飛鳥時代)。

・商店街の街並みのイメージは、中国の歴史文化名街にも選ばれた屯渓老街(安微省黄山市)。あーいう落ち着いた雰囲気もいいけど、台湾の九ふんのような雰囲気もいいなあと悩んでいる。決まってから、このあたりの描写を書き足したいなと思っています。
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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI 『嬉しくって抱き合うよ』×和泉かねよし『女王の花』 ★

淑玲『宮廷浪漫』シリーズ、お待たせしました。逆に、ショートショートor短編を待っている方ごめんなさい。もしかしたら、きりのいいところまで、一気に淑玲の話を書いてしまうかもしれません。私の予告は外れるから、なんとも言えませんが。

ちなみにサブタイトル「人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する 」は「広く世間の人びとにもてはやされ、評判になること」が本来の意味だそう。今回のこじつけは、商店街のみんなから俊楽堂(主に先生)に関する評判をきいてた淑玲のもとへお肉屋のおばさんがさらにおいしい話をもってきた(膾炙はあぶり肉などの肉のうまみ部分のこと)、~っというところで。

① YUKI 『うれしくって抱きあうよ』
https://www.youtube.com/watch?v=OwlPrxF1lZg
なんとなくこれを聞いてました。思いのほか、自分の中でYUKIの曲のストックがないことに気づきました。この先、どうしよう。

②  和泉かねよし『女王の花』
http://sokuyomi.jp/product/joounohana_001/CO/1/
進行形でハマっている中華風モノです。ヒロイン亜姫が頭が良くてカッコよくて。胡人の薄星との主従関係も目が離せなくて。でも、一番は隻眼の青徹の話。あれは泣く!試し読みできるみたい。
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【第133夜】 合縁奇縁(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ8)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-158.html
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コメント

ぷぷぷ。
急がば回れとはよく言ったもので、情報と口実とおまけは大事ですよね。

商店街の息子たちは意外とお勉強が好きなのか、それともイケメンつまりいけしゃあしゃあ男(メンズ)の先生様々に惹かれているのか・・・
これは一刻も早く、おにぎり持参で駆けつけなくてはっ!

いや~、どうなるどうなる。
喉の小骨はまだとれないぜ。魚屋じゃないからなっ!^^
けい│URL│06/29 17:22│編集
けいさんへ
いつも本当にありがとうございます!

> ぷぷぷ。急がば回れとはよく言ったもので、情報と口実とおまけは大事ですよね。

そうだ!「急がば回れ」です!!私、ずーっとこんな感じの諺あったよなあ。なんだっけなあ?って思ってたんです。でも、思い出せなくて。他の故事成語を使ってしまったんですけど。それだ!いや~、スッキリした私も喉の小骨がとれましたよ…(笑)。けいさん、ありがとうございます!

> 商店街の息子たちは意外とお勉強が好きなのか、それともイケメンつまりいけしゃあしゃあ男(メンズ)の先生様々に惹かれているのか・・・これは一刻も早く、おにぎり持参で駆けつけなくてはっ!

なんだかんだと、通ってる子が多くなってしまいましたよね。こんなはずじゃ…。いざ書いてみたらこんな展開に…。たぶん親御さんたちは商人なので無料というのに飛びついたんだと思います^^おにぎりをもって次回ようやく先生である彼と会える…かも!?

> いや~、どうなるどうなる。喉の小骨はまだとれないぜ。魚屋じゃないからなっ!^^

けいさんのほうが面白いな(笑)。勢いでヘンテコな物語にかいてしまいましたけど、少し笑える話になってくれてたらいいな^^
rurubu1001│URL│06/30 00:58│編集

淑玲のご近所、みんな仲が良く個性豊かで楽しそうですね。

こういう環境で、淑玲の性格も育まれたんですね。

また続きを読みにまいります。
椿│URL│10/19 16:32│編集
椿 さんへ
コメントありがとうございます!

> 淑玲のご近所、みんな仲が良く個性豊かで楽しそうですね。こういう環境で、淑玲の性格も育まれたんですね。また続きを読みにまいります。

ここで淑玲の性格や彼女のまわりの環境を知ることができたらと思っています。後々それがどう絡んでくるのかも…。ちょっと回想が続きますが、よろしくお付き合いください^^
rurubu1001│URL│10/20 23:31│編集
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