※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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「淑玲(すうりん)ちゃん?」

…誰かが私を揺り動かす。

「こんなところで何をしてるんだい?」

…なんだか瞼が無性に重くて重くてたまらない。

「まさか居眠り?八百屋の店番中っぽいけど?」

…八百屋の店番中…?あれ、そうだったっけ…?私、どこか別の場所にいたような…。

「ほら。早く起きないと、ここにある野菜と果物をたくさん盗んじゃうよ?』

…それは困る…けど、すごく眠いの。お願い、もう少しだけ寝かせて。

「こらこら、起きないとだめじゃないか。ったく、しょうがないなあ。じゃあ、お兄さんが襲っちゃおうかな~」

…え、お兄さん?お兄さんってまさか隣に住む遊び人のお兄さん!?

「それはマジ勘弁っ!!」

私は根性でカッと目を開けた。目の前にはニヤニヤしたお兄さんの顔がすぐ近くにあった。危ない危ない…。

「なーんだ、起きちゃったのか。残念~」

私はあきれた。

「…お兄さんは、本当に女好きですね。女の人なら誰でもいいんですか?」

お兄さんは、ニッコリした。

「女遊びが生きがいの男ですから。でも、誰でもいいってわけじゃないよ?」
「何ですか、その妙な流し目は?私はひっかかりませんよ、そういうの!」
「つれないなあ~」

まったく今までこの人はどれだけ女の人を騙してきたんだろう?
お兄さんはだらしなくおろしていた髪を無造作にかきあげた。彼はそうい仕草もサマになる美男子だ。自堕落で自由人。自分にも他人にも、とことん甘い。もちろん発する言葉も甘々で、コロッといってしまう女の人は数知れず。いつも黄色い歓声と脚光を浴び、軽やかに手を振って我が道をいく。モテモテの遊び人って元来こういう人種なんだろうか?

「ところで淑玲ちゃんが、仕事中に居眠りなんて珍しいね」

お兄さんにそう言われてあたりを見回すと、今日仕入れた野菜や果物が店頭でぴかぴか光っている。本当だ。八百屋の店番中だったんだ。私は苦笑した。誰もいない、来ないことをいいことにうっかりしてしまった。

「本を読んでて、そのまま寝ちゃったみたい」
「何、読んでたの?…って、うわ!これ学問じゃん?」

手に持っていた本をお兄さんに見せると、彼は露骨に嫌な顔をした。私は笑って言った。

「いくら女の子が学問を学べない世の中でも、少しくらいはね」
「ふうん。そういうもんですかねえ」
「そういうもんなんです」

私の暮らす蹊国(けいこく)は学問を学べるのは基本男子のみ。女子は年頃になったら、お嫁に行くのが当たり前の国だ。ただ例外もあって宮廷で働ける女官という道もあるけど、それは貴族の紹介がないと難しい。私みたいな平凡庶民にそんな伝手なんてあるわけないから、家業を継ぐか他の家に嫁ぐしかない。

「淑玲ちゃん家(ち)の八百屋を継ぐのは、お兄ちゃんの淑河(しゅくが)くん?」
「そうですよ」

わたしはあっさり答えた。うちの家業の八百屋を継ぐのは、たぶん双子の兄の淑河だ。父様はそのつもりでみっちり兄に商人の教えを叩きこんでいる。

「じゃあ、将来淑玲ちゃんはお嫁に行っちゃうわけでしょう?そう考えると、学問って必要?」
「…え?」
「別に必要なくない?」

確かに必要があるかと言われればないかもしれない。女官になれるんだったらまだしも(宮廷で働く女官には学問は必要不可欠)、私はそれになれない。将来を見越して考えれば、確かに意味がないのだ。家事手伝いをする方が、よっぽど花嫁修業になって意味があるだろう。

「そうかもしれない。でも…」

心なしか声は小さくなった。お兄さんが面白そうに私を見やる。他の女の人には優しいくせに。自分の思い通りにいかない子はどうもいじめたくなるらしい。大人げないんだから。

「お嫁さんに必要なくても、私には必要なんです」

私は顔を上げ、きっぱりと言った。

「学問が生きがいの女の子ですから」

今度は私がニッコリする番だ。

「ただ、好き。それだけ。お兄さんの女遊びもそうでしょう?」

それを聞いて、お兄さんは吹き出した。

「あはは!いいねえ~、その返し!悪くないね。よしよし、かわいい淑玲ちゃんにお兄さんがいいことを教えてあげようかな」
「え?」
「町はずれに俊楽堂(しゅんらくどう)ってあるだろう?そこで今、庶民に無料で学問を教えているそうだよ。行ってみるといい」
「え、そこは女の子も平気なんですか?」

私が身を乗り出すと、お兄さんは私の頭をなでた。

「それはわからない。でも、きっとキミ次第じゃないかな」
「…私次第?」
「そう。本当にやりたいことをしたいのなら知恵をつかうんだ。それも磨かないとね。結局、学問を生かすのは本人の知恵次第なんだから」



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『JOY』× 雪乃紗衣『彩雲国物語』 ★

淑玲『宮廷浪漫』シリーズ、お待たせしました。ちなみにサブタイトル「下衆の後知恵」は本来「必要なときは知恵も出ないで、事が過ぎたあとに名案が浮かぶ」の意味だそう。今回のこじつけは、遊び人のお兄さん(下衆←扱いひどくてすまん)が、最後に知恵について語った(後知恵)ってな感じで。毎回、本当にこじつけですみません。

① YUKI『JOY』
http://www.youtube.com/watch?v=bj5RSMOct2E
http://www.youtube.com/watch?v=kcD2nmutiSA
カラオケでYUKIを歌うならはコレ。インパクトのあるPVで、みんな面白がって踊ってくれるんですよね。

② 雪乃紗衣『彩雲国物語』
http://www.nicozon.net/watch/sm809192
実は少女小説を読むのが苦手で(書くのは好きなんですけど)、唯一私が読めたのが氷室冴子(「海が聞こえる」)・小野不由美(「十二国記」)・雪乃紗衣(「黒蝶~」からの彩雲国後半展開凄かった)のお三方の作品。UP動画は小説の挿絵とアニメのコラボ編集。こういうのにお約束のイケメン男性キャラが多いですが、女性初の官吏になり、奮闘するヒロイン秀麗が誰よりもカッコ良くて大好きでした。

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次回【第129夜】 徒花に実は生らぬ(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ6)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-154.html
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コメント

お。薬から覚めたのかと思いきや、お隣のお兄さん。
淑玲ちゃんに良いこと言ってるじゃないですか。
遊び人とは実は表向きの只者ではないのか(?)

それにしても、このお兄さんのアドバイスでまなびや(?)に通うようになったのですね。
ああでも淑玲ちゃん、今どうなっちゃっているのでしょうか・・・
けい│URL│05/20 08:22│編集
けいさんへ
けいさんへ

いつも本当にありがとうございます!

> お。薬から覚めたのかと思いきや、お隣のお兄さん。淑玲ちゃんに良いこと言ってるじゃないですか。遊び人とは実は表向きの只者ではないのか(?)

私も最初お兄さんは単なる脇役かと思ってたんですけど、これを書いてたらよくわからなくなってきまして(すみません。作者なのに…)もしかしたらけっこう活躍する人なのかも…。どうなんだろう?まだ続きを書けてないので、なんとも言えないのですが、とりあえず今はお楽しみ、とだけ^^

> それにしても、このお兄さんのアドバイスでまなびや(?)に通うようになったのですね。ああでも淑玲ちゃん、今どうなっちゃっているのでしょうか・・・

なんだか回想シーンのようになっていましたよね。そうそう。たぶんまなびや^^もうちょっと回想が続きそうですが、本筋に戻るまで少しお待ち下さいませ~。本筋に戻ったら、淑玲の反撃が始まるかもしれません。
rurubu1001│URL│05/20 21:24│編集

お隣のお兄さん、いい男ですな。
調子だけいい色男、どストライクです(笑)

しばらく回想になるんでしょうか。
暉仁さんとの出会いも見られるのかしら。

楽しみです。
椿│URL│10/08 18:15│編集
椿さんへ
コメントありがとうございます!

返信が遅くなってしまい、申し訳ありません><!

> お隣のお兄さん、いい男ですな。調子だけいい色男、どストライクです(笑)

そう言って頂けてとても嬉しいです!私もわりと好きなタイプなんですけど、こういうタイプの人を苦手な方もいるんじゃないなあと心配していたので安心しました~。ほ。^^

> しばらく回想になるんでしょうか。暉仁さんとの出会いも見られるのかしら。楽しみです。

最初はすぐ回想は終わるだろうなと自分で思ってたんですけど、全然そうじゃなかった!(汗)…ながく続いてしまうかもしれません。良ければ、気長に見て下さいませ。暉仁も出てくるかと思いますので。
rurubu1001│URL│10/11 13:05│編集
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