※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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あきらかに動揺している私に、宝春(ほうしゅん)はうっとりするような微笑を浮かべた。

…今、この女官は私に何て言った…?男装の麗人??ということは、私の正体が女ってバレてる…!?

じわりと背中に嫌な汗が流れた。宮廷内は王族と女官以外は女子禁制なのだ。だから、私は男装してこの宮廷にやってくるしかなかった。ここまで案内してくれたお使者に全くバレる様子もなかったから安心していた。甘かったのかもしれない。見る人が見たら、簡単に見破れるものだったのかもしれない…。

「それでは参りましょう」

先を促され、止まっているわけにもいかず、私は歩き出した。

明らかに一瞬、動揺したことが表情と態度に出ちゃったな。どうしよう。たぶんバレてる。どうやって、しらをきろう。どうやって切り抜ければいい?

私は前を歩く女官を見つめた。

この人はいったい何を考えてるのだろう?ただ面白がっているだけ…?それとも、このまま役人に突き出すつもり…?

目の前を颯爽と歩く宝春は女官の自信と誇りに満ちていた。すらりと伸びた背もそう見える一因かもしれない。おもての艶やかさとは違うその凛とした後ろ姿に私はため息を漏らした。

いいなあ。私の理想の女性像かもしれない。きっと女官だから頭もいいはずだし…憧れるなあ…っておいおい!この非常時に何を考えてるの、私は!この女官に正体がバレかかってるのに!気を抜いちゃだめ!とりあえず、今はこの女官の様子を見なきゃ!!

私は考えをめぐらせた。
私よりも年上(二十歳くらい?)で落ち着きを払った目の前の宝春の方がきっと何枚もうわてだ。

ただ黙って様子を見ているわけにもいかないだろう。このまま攻められて白旗を振るのがオチ。のらりくらりとうまく交わせればそれでいいんだけど、何か手立ては…?自分の力量を思い知るな。

私は息を吐いた。自分の力で無理なら、他の誰かの手を借りるまで、だ!

私は記憶の中でこういう女性とのやりとりにたけている、慣れている人物を探した。誰か参考になりそうな人物を。すると、一人脳内検索に引っかかった。うまくやれるかはわからないけど、何もしないでただ攻められるよりはいいかもしれない。腹を決めた。

私の覚悟を察したのか宝春はゆっくりと振り返り、また艶やかに笑った。

「そう何度も男装の麗人に、見つめられると照れてしまいますわ」

相変わらず、何て色香だろう。また惑わされないよう、私も隙のない笑顔をみせる。

「こんな美しい方にお会いしたのは初めてです。つい見とれてしまいますね」

自分で言った歯の浮くような台詞に思わずひるんだ。

私には難易度高すぎだ、コレ…。

へこたれそうになる自分に喝を入れ、頭の中で参考にした人物をしっかりと思い描く。私の隣の家に住む女遊びが大好きなお兄さんを。彼はこういう台詞を照れも恥ずかしさも微塵も見せず、言ってしまえる根っからの女たらしだ。色々な女の人が、彼の元に訪れてはなぜかニコニコしながら帰っていく。浮気性のお兄さんを恨みも怒りもしない。私は不思議でたまらなかった。だから一度お兄さんに聞いてみたことがある。すると…

「ただ相手を誉めてるだけなんだけどね。…あ、ちなみに淑玲(すうりん)ちゃんは今いくつ?」
「え、私の年齢(とし)ですか?十五ですけど…」
「じゃあ、お兄さんと遊ばない?そうしたら、もっと詳しく教えてあげるよ」
「は?」
「可愛い子は大歓迎。いつでもおいで」

終始にこやかなお兄さんに私は「可愛くないんで遠慮します」と即座に頭を下げ、我が家に逃げ込んだ。「女の敵!要警戒!!」と自分の頭の中で警鐘を鳴らし、危険人物と認定した。でも、その見方はちょっと改めた方がいいのかもしれない。

「まあ、お口がお上手ですこと」
「とんでもない。本音を言ったまでですよ」

宝春の機嫌は一気に良くなり、なんだか打ち解けたようだった。うそ?使えるじゃん、この手!お兄さん、実はすごい人だった!?彼を今まで過小評価していた私はそれを見直すことにした。

「私はどちらでお呼びすればいいでしょう?淑河(しゅくが)様?それとも淑玲(すうりん)様?」

本当は淑玲だけど、わけがあって今は双子の兄・淑河に変装している。私はただ笑顔で返し、どちらとも言わなかった。肯定も否定もしない。ここは大事なところだ。相手に多くしゃべらせて、手の内を知りたかった。

宝春は私の意図をよんだのか、

「人の目もありますから、ここでは淑河様とお呼びしましょう」

と微笑んだ。淑河としての見た目を尊重してくれるなら、役人に突き出すつもりはないだろう。最悪な事態は回避できたようで、ほっとした。

王宮殿の中に入ると、途端に外と比べ、人が少なくなった。人気のないことを確認してから宝春は立ち止まり、私の顔を覗き込んだ。少し潤んだその瞳に見つめられると、なんだかそわそわしてしまう。

「私はあなたにずっとお会いしたかったのですよ、淑河様」
「へ?」

…私に、会いたかった…?

「ずっとあなたに会いたかった」

その瞳の奥に隠されていた鋭さに気づけなかったのは、私の大きな過ちだったのかもしれない。
宝春は手を伸ばし、私の頬にふれた。

「公子(王子)たちの心をつかむあなたに」


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★余談
・男女ともに服装イメージは、中国の唐時代(618~907年)くらい。中国は、この時代の服装が一番ゆるくて自由そうなんですよね。他国の影響を受けたり、女子はだんだん露出度が高めになっていったり…。
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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『鳴いてる怪獣』× 『雲のように風のように』 ★

サブタイトル「人真似すれば過ちする」は本来「自分の能力をよく考えないで、人のまねをすると失敗する」の意味だそう。そのままの意味でいいかとも思ったんですけど、毎回こじつけをしているので、今回は遊び人のお兄さんの真似をした淑玲がその場をうまくしのげたつもりでも、気づかないところで過ちを犯していたかもしれないと予感する、という感じでってあんまり変わらないかな。

① YUKI『鳴いてる怪獣』
https://www.youtube.com/watch?v=Y_C1tlM6DkE
YUKIで今一番好きな曲。怪獣の手をまねしながら歌うYUKIがかわいいんです。

②『雲のように風のように』
http://www.youtube.com/watch?v=Px8KttCdnQ8
http://video.fc2.com/content/201209174H75Z0Ax/
小さい頃、これと人形劇「三国志」どっちを先に見たんだろう。懐かしい名作。たるとばあさんが面白い。ちなみに淑河の名はこちらの主人公「銀河」を少しまねてみました。大好きなヒロインです。原作もあるそうですがそちらは未読。せっかく今これを書いてるんだから読んでみようかな。
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次回【第122夜】 傾城(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ4)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-140.html
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コメント

隣のお兄さん、なかなかお口が達者。
けど、この女官さまの方が、それでも上手のよう。

淑玲ちゃんに会いたかったとは、一体何者なのでしょう。
敵なのか味方なのか。
とりあえず、ただの女官ではないと見た。
けい│URL│02/25 17:55│編集
けいさんへ
いつも本当にありがとうございます!

> 隣のお兄さん、なかなかお口が達者。 けど、この女官さまの方が、それでも上手のよう。淑玲ちゃんに会いたかったとは、一体何者なのでしょう。敵なのか味方なのか。とりあえず、ただの女官ではないと見た。

宝春さんが何者なのか、だんだんと明らかになって来るとお思います。予想を裏切る展開になるといいのですが…!果たして、どうなることやら。

どうなることやらには、私が書ききれるのかという不安もありますが…頑張らなければ!^^
rurubu1001│URL│02/26 00:57│編集

やっぱり、この女官さんにはバレバレなのですね。
しかも、かなり淑玲のことを知ってる様子。

気になりますね!
椿│URL│10/04 16:09│編集
椿さんへ
コメントありがとうございます!

> やっぱり、この女官さんにはバレバレなのですね。しかも、かなり淑玲のことを知ってる様子。気になりますね!

そうなんですよ~。謎の美人女官さんは淑玲のことを何やら知っているご様子。果たして…。

深く関わってくることになるかはネタバレになるから詳しく言えませんが、良ければふたりの女の戦い?にもご注目下さいませ^^
rurubu1001│URL│10/05 15:47│編集
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