にほんブログ村「そろそろバレンタインだぞトーナメント」で5位を頂いた記念にこちらをUPしてみました。
http://love.blogmura.com/tmt_rankall6911.html
こちらは以前UPした『【第5夜】砂糖とスパイス』をバレンタイン版に書き直したものです。
(といっても、サトシの誕生日を梅雨時期からバレンタインに変更しただけですが…)

良ければ、どうぞ~^^ 

=====================================



いつのまにか夜中の十二時になっていた。

深夜零時。明日が今日になる瞬間。外でしとしと降り続けていた雨も昨日のものから今日のものへと様変わり。きっと私たちの目には見えない微妙な変化があって、雨に付きまとう匂いや気配も、そっと別の姿に変わってるんだろう…。

窓に近づいて、雨とついでに隣家の様子もうかがった。馴染み深い二階の部屋の明かりはまだ灯っている。

 …あいつ、まだ眠れないのかな?

 こんな風に夜中にあいつの部屋を気にするようになって、どれぐらいが経つんだろう。特に最近が一番ひどい。部屋の明かりが消えることの方が少ないと思う。ずーっと見ているわけではないから、はっきりとは言えないけど、たぶんそうだ。一体何をしてるんだろう?

 私はまた、ため息をついた。

私のため息もひどくなる、多くなる一方だ。しかも雨ってどうしてこんなにため息と似合っちゃうのかな?憂鬱とかもそう。気だるい感じ。じめじめした空気がまとわりつく感じ。これじゃ、あいつも簡単に陰鬱なものにのまれてしまう。

 私は考えを振り払うように軽く頭を振って、意識をキッチンのオーブンに戻した。うっとりするような甘い匂いに包まれ、心と体がふと楽になる。ほぐれていく。つい顔がほころんでしまった。今はため息つくようなことを考える時間ではなかったはずだ。オーブンの中には、今日の主役である、あいつにプレゼントするための、とっておきのお菓子があるんだから。

「チョコが一番好きな食べ物なんて。お子様よね、サトシも」

 お父さんもお母さんも寝室でぐっすりと眠っているから、誰もいないことをいいことに、一人呟いた。サトシ本人が聞いたら、機嫌をそこねるセリフだろう。オーブンの中には、こっそり自分で考えたレシピのケーキが焼かれていた。スポンジがふっくらと型の中から顔を出している。そろそろ焼きあがりそうだ。

 時間になって、中から取り出し、スポンジの中央を軽く押してみた。弾力がある。一応、竹串でさして焼けているかを確認。…よし、大丈夫そうだ。ケーキクーラーにのせて冷まさないと。ここまでは順調、順調。後はスポンジを3段に切って、ラム酒をきかせたチョコレートクリームをハケでそれぞれ塗って重ねればいい。そして、表面の飾り付けをして完成だ。

 お菓子作りをしていると、なぜか小さい頃に覚えたマザーグースのうたを思い出す。

――女の子は砂糖とスパイスで、できているの――

 なんだか身をもって証明しているような気がする。全然そんな意味のうたじゃなかったと思うんだけど…。ただ、なんとなく、そんな感じ。しかも大事なのは、男の子に作っている。そこが肝心!

 幼馴染のサトシとは家族ぐるみの付き合いで仲が良い。気づけば、私たちは誕生日が来るとお互いプレゼントを用意するようになっていた。サトシはバレンタインデーと誕生日が同じでちょっとかわいそうだけど、本人的にはチョコが大好きだから毎年プレゼントはチョコだけで充分らしい。

ちなみに去年、私が彼からもらったプレゼントは、かわいい空色の傘だった。

『似合うよな、トウコは』

軽く眉を下げ、優しい瞳をして笑う男の子。

『その空色の傘、買って正解。雨が降ってても、トウコだけはいつも晴れてる感じがするもんな。お似合いだよ』
『何それ、ノーテンキってこと?』
『ちげーよ。ほめてんの』

あの時、言ってくれた言葉。憎まれ口をたたきながらも、私はちょっと嬉しかった。うっかり指についてしまったチョコレートクリームをペロっと舐める。サトシは覚えているだろうか?

「…いや、きっと忘れてるな。そういうやつだもの」

 甘いはずのチョコレートクリームの味があっさり変わってしまった。些細なできごとを大好きな物語のように、繰り返し、繰り返し夢を見る。それは女の子の苦い特権のような気がした。

「…う~ん、なんか悔しい。クリームに、からしでも混ぜとこうかなあ?」

夜中のラブレターは危険って聞いたことがあるけど、夜中のお菓子作りもある意味、負けてないかもしれない。

――女の子は砂糖とスパイスで、できているの――

………からし、いっとくべき?


=====================================


※ こちらは以前UPした『【第5夜】砂糖とスパイス』をバレンタイン版に書き直したものです。
(といっても、サトシの誕生日を梅雨時期からバレンタインに変更しただけですが…)
にほんブログ村「そろそろバレンタインだぞトーナメント」で5位を頂いたのでこちらをUPしてみました。
(新しい物語ができてないからUPしたわけではないですよ…実はそうだけど)

良ければ、元々の『【第5夜】砂糖とスパイス』もお楽しみ下さい。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-5.html

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □  ■ □ ■ □

以下のランキングに参加中です。

■ NEWVEL ランキング
http://www.newvel.jp/nt/nt.cgi?links=2014-03-1-35262

■ アルファポリス ランキング


■ 人気ブログ ランキング

人気ブログランキングへ

■ にほんブログ村 ランキング
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

スポンサーサイト
  
コメント

こんばんわ
読んでいて甘酸っぱさが伝わってきました。
ネリム│URL│02/18 22:11│編集
ネリム さんへ
コメントありがとうございます!

> 読んでいて甘酸っぱさが伝わってきました。

嬉しい感想、ありがとうございます。甘酸っぱさの残る物語になっていて良かったです^^
rurubu1001│URL│02/19 01:08│編集

バレンタインという季語(?)が入っただけで、雰囲気が変わるものなのですね。

このお話(5夜の方)を読むまで、
rurubuさんは男性かも、と迷ってましたが、
ケーキ作りの手際の良さから、いや、女性だな、
と確信したお話でもあります。
けい│URL│02/21 16:41│編集
けい さんへ
いつも本当にありがとうございます!

> バレンタインという季語(?)が入っただけで、雰囲気が変わるものなのですね。このお話(5夜の方)を読むまで、rurubuさんは男性かも、と迷ってましたが、ケーキ作りの手際の良さから、いや、女性だな、と確信したお話でもあります。

rurubu男性説、懐かしい!!><まだ半年ちょっと過ぎただけなのに、けいさんとはもっと長いお付き合いをして頂いてる気がしますよ!!本当に大感謝です><でも、実際は全然手際よく料理なんてできないんですけどね。これも確か書く寸前で、今回ケーキ作りそうな予感がすると、急いでお菓子の本を開き、作り方を丸暗記したような^^
rurubu1001│URL│02/22 03:36│編集
コメントする












 管理者にだけ表示を許可する?