※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
=====================================

淑玲(すうりん)だ。きっとすべては淑玲から始まったんだ…。

戴青(たいせい)は何度もこの先考えることを、初めてこの時考えていた。

兄が気に掛けていた女がどの程度の者か見定めようとした。それは事実だ。
でも、たかが女…無鉄砲な娘の悪あがきだろうと思っていた。

自室に残された桃を眺めながら、戴青はそんな自分を嘲笑った。

でも、淑玲を宮廷に呼び寄せたのは私なんだ。そのことを忘れてはならないんだな。

…戴青、この時まだ十四歳。人生の大きな転機が訪れようとしていた。

    *

事の起こりは…淑玲(すうりん)を妃(妻)として迎えようとしたこと、だった。

    *

蹊国(けいこく)の首都・成安(せいあん)に生まれて十五年…。
一庶民である私、淑玲(すうりん)が宮廷の中にこんなかたちで入ることになるなんて誰が思っただろう。


「淑河(しゅくが)様、そろそろ宮廷ですぞ」

車(くるま/馬車)に揺られていた私は、お使者の声にハッと我に返った。…淑河様…?そうだ、今はもう淑玲ではないのだ。

「淑河様、宮廷の中に入られるのは初めてですか?」
「…いいえ。実家が八百屋ですので、何度か御膳房(ごぜんぼう/宮廷の台所)に野菜を届けに行ったことがあります」

中に入ったこともないくせに、そうすらすらと答えられるのが不思議だ。
私は今わけあって、双子の兄・淑河に変装している。それもこれも戴青のせいだ。

ちなみに淑玲なら宮廷内は初めてですよ。女はそう簡単に宮廷には入れませんからね。働ける官吏(役人)も男のみ、男尊女卑というご時世だ。女で中にいられるのは王族かそのお世話をする女官くらいじゃないかしら。しかも女官だって誰もがなれるわけじゃない。有力貴族の推薦がないと難しいと聞く。だから、戴青の力をあてにしていたのに…。

「でも、こちらから入るのは初めてでしょう?王族の方々の住まう宮殿ですから」
「え?」
「と言っても、王宮殿の裏門ですが」

裏門でも、まさか直接王宮殿に行けるとは思なかった。案内されるのは宮廷内でも別の場所かと思っていたから。王宮殿なら、もしかしたら大好きな暉仁(きじん)さんにも会えるかもしれない。少し胸が躍った。

暉仁さんは第二公子(こうし/王子)という正体を隠し、少し前まで町はずれのお堂で私たち庶民に学問を教えていた。男だけしか学べない学問をこっそり盗み聞こうとしていた私を見つけても追い出さずに混ぜてくれた人格者だ。そんな優しい恩師に私は恋をした。だから、戴青の後宮女官の誘いにまんまとのってしまったのだ。次期立太子となる(皇太子になる)暉仁さんのそばにいたかったから…。

…会えたら嬉しいけど、この姿であまり暉仁さんに会いたくないかも。

女官ではなく、ましてや淑玲としてでもなく、男装した別人(兄様)の姿で宮廷にきてしまった。そんなのいったい誰が予想しただろう。

…遠目でいいから暉仁さんを見られますように。

王宮殿の裏門を抜ける。目の前に広がる美しい光景に、思わず車から身を乗り出した。

「これが朱里城(しゅりじょう)の王宮殿ですよ」
「わあーーーー!」

夏の晴天に映える朱(あか)が見る者の目を奪う。桐油と漆の艶やかな朱塗り。それらが生み出した彩色は、まさに『朱の神獣が降り立った里』という朱里城の名にふさわしかった。輝かしいのは何もそればかりじゃない。柱や屋根瓦の随所に金色の特殊な彫刻や装飾が施されている。あれは生き物だろうか?大蛇みたいな…?

「龍でございますよ」

私の心を読み取ったのか、お使者が続けた。

「龍は王族の権威の象徴、守り神なのです」
「…龍、あれが…」

話に聞いたことはあったけど、間近で見るのは初めてだった。暉仁さんを第二公子と知った時と胸に似た痛みが走った。きっと私の手には恐れ多くて、ふれることのできない神獣なのだろう。

「妹君の淑玲様が王族に迎えられる予定ですから、淑河様も馴染み深いものになるかもしれませんね」

…いやいやいや、それはないですからっ!馴染み深くも王族に加わることもないですからっ!!

私はため息をついた。戴青のせいで本当におかしなことになってしまった。
宮中に行くことを望んでいたと言え、なんで後宮女官になる件が「第八公子様(戴青)とご婚礼」にすり変わってしまったのだろう…。

私はそれをなんとか食い止めるために、戴青に詳しい事情を聞くために、男装してここまでやって来たのだ。ご婚礼と言われちゃ下手に女の淑玲じゃ動けない。だから、淑河兄様に変装して、お使者を上手く丸め込んだのだ。

おのぼりさんしてる場合じゃないのよ。これから戴青に物申すんだから。気合を入れ直さないと!

「私はここまでです、淑河様。この先はあの女官が案内致します」

車から下り、お使者に深く礼をして別れた。

「この先は私がご案内いたします」

顔を上げると、目の前にはこれまた今まで見たことのないような美人が立っていた。

「女官の宝春(ほうしゅん)と申します。どうぞ、こちらへ」

宝春という女官は、女の私でさえ見とれるほどの美人だった。年は二十歳くらいだろうか。透き通るような白い肌、大きく潤んだ瞳、紅(べに)をひいた唇は、恐れ多くも王宮殿の朱色にも負けない、また違う艶やかさだった。その色香に目が離せなくなる。

「お使者も行かれましたし、私たちも参りましょう」
「…あ、は、はい!」

見とれていた私がおかしかったのか、宝春はくすくすと笑った。

「男装の麗人に、そう見つめられると照れてしまいますわ」
「す、すみません!………え?」

今、何て言った…?男装の麗人??

「それでは参りましょう」

あきらかに動揺している私に、宝春はうっとりするような微笑を浮かべた。



=====================================
★余談
・車(くるま/馬車)…貴族や高級官吏、お金持ち専用の乗り物。車輪の上に屋根と格子付きの車体があり、御者が馬をひく。お金や権力がある人ほど、車体が豪華。
・御膳房(ごぜんぼう/宮廷の台所)…王族や宮廷で働く人々のご飯を作る場所。
・公子(こうし/王子)…王の息子または王族関係の男性。

・朱里城の外観モデルは、琉球王国の首里城(沖縄県那覇市)。
=====================================

=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『世界はただ、輝いて』× 人形劇『三国志』 ★

お待たせしました“淑玲『宮廷浪漫』シリーズ”開幕です。
サブタイトル「女は氏(うじ)無くて玉の輿に乗る」は「生まれがよくなくても、容姿や運しだいで金持ちや貴人の妻になることもできる」という皆さんよくご存知の意味かもですが、字面を生かした勝手な解釈もありかなと前回「蹊を成す」から学んだので、この場合こんな意味合いでいこうかと。女の氏(性別)をなくして玉の輿(王族の車)に乗ってしまったという淑玲の行動そのままの意味で。ちなみに朱里城のモデルは言わずもがな、首里城.。あの朱色が大好きなんです。

さて、なんかもう中国・李氏朝鮮・琉球・日本という私の好きな王朝要素の詰め合わせ的な作品になりそうです。時代考証も何もないですが、勝手な一つのファンタジーとして楽しんで頂ければ幸いです。

ちなみに設定を微妙に変えているところがあります。名前とか…。すでに読まれた方、すみません><。

① YUKI『世界はただ、輝いて』
http://www.youtube.com/watch?v=1kOAhVFr77M
http://nicoviewer.net/sm16710011
前回も聞いていたYUKIを。10周年記念のこの歌はファンには嬉しい歌詞になっているんです。なんだかたくさん聞いているうちに、淑玲のイメージがYUKIになってきました。実は40歳を越えているなんて信じられない。

② 人形劇『三国志』
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P201100076600000/
http://nicoviewer.net/sm19003475
淑玲の名前はコレから。私がみたのは再放送かも。健気なヒロイン淑玲が大好きでした。でも、物語中盤で彼女は悲劇的な死を迎え、私はそれ以降、見るのをやめてしまいました。美しい人形を見るだけでも価値があったのにもったいないことを…。淑玲の死がずっと心に残り、それがこの物語をかくきっかけに。何があってもあきらめない。死に急がない。なんだか笑える機転を利かせ、うまく立ち回るそんなヒロインを書ければいいな。

次回(第3回)【第118夜】人真似すれば過ちする(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ3)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-133.html
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □  ■ □ ■ □

以下のランキングに参加中です。

■ NEWVEL ランキング
http://www.newvel.jp/nt/nt.cgi?links=2014-03-1-35262

■ アルファポリス ランキング


■ 人気ブログ ランキング

人気ブログランキングへ

■ にほんブログ村 ランキング
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

スポンサーサイト
  
コメント

そうそう。男装の麗人ですね。
見る人が見ればバレバレなのでしょう。
艶やか美女の宝春さん、気になりますね。

さてさて、淑玲ちゃん、戴青くんにどんな啖呵、いや、機転(?)を語るのかな。
けい│URL│02/04 15:00│編集
けいさんへ
いつも本当にありがとうございます!

> 男装の麗人ですね。見る人が見ればバレバレなのでしょう。艶やか美女の宝春さん、気になりますね。 さてさて、淑玲ちゃん、戴青くんにどんな啖呵、いや、機転(?)を語るのかな。

本当に見る人が見ればバレバレなのでしょうね、こういうのは^^なぜ宝春が見破ったかも後々明かされと思います。淑玲と戴青がこれからどうなるのか、意外な展開にできたらと思っています。ゆっくり更新かもしれませんがよろしくお願いします~^^
rurubu1001│URL│02/04 22:58│編集
コメントする












 管理者にだけ表示を許可する?