【目次】 それいけ!美芳(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-420.html

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    パチモンお嬢様、超絶美形男にたかられる! (それいけ!美芳2)
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「こんにちは、美芳(みいふぁん)ちゃん!」

超絶美形男はニッコリと私に微笑んだ。

「なんだー、お兄さんか…。驚かせないでよー」

見知った顔にホッとする。この人は最近商店街に出没し始めた謎の超絶美形男だ。『謎の』っていうのには理由がある。この人の名前や素性は一切不明(年齢もか?)で、詳しいことは誰も知らないから。

パッと見(み)、その麗しい顔と色香で商店街の女という女を虜にし、もてあそぶような危険な男(単に女好きでチャラいとも言える)。でも、なぜか憎めない性格をしていて、彼の信者(ファン)は多いのよね。それも女だけでなく、男にも!(モテる男というカリスマ性ゆえかしら?)商店街のみんなから「お兄さん」と呼ばれて親しまれている。

「何?またたかりに来たの、お兄さん」

私が胡乱な目を向けると、超絶美形男は肩をすくめた。

「たかりにきたなんてヒドイなあ、美芳ちゃん。それじゃ、お兄さんが悪い人…まるで極悪人みたいじゃないか?」
「違うの?」
「ガッツリ違うでしょう!」

超絶美形男は腕を組み、一人何度も頷いている。ガッツリ否定してくれてどうもありがとう。(悪い人は悪い人でも極悪人なんて随分スケールが大きくなっちゃったみたいだけど)でも、まだまだお兄さんには言いたいことがあるらしい。ビシッと人差し指をたてた。

「美芳ちゃん、お金はたかりに来てませんが、今日のおやつは、しっかりたかりに来ました!」
「ダメじゃん」

私は容赦なくツッコんだ。

「モノは違えど、やっぱりたかりに来てるんじゃない!」
「違いますぅー!」

お兄さんは不満そうに口を「3」(←こんな形)にとがらせた。いちいち言い方が癇に障るなあ…。

「美芳ちゃんは何、言っちゃってるのかなー?おやつなんてカワイイうちでしょー?」
「いやいやいや、カワイイうちとかそういう問題じゃないから!『何、言っちゃってるのかなー?』はお兄さんだから!」
「美芳ちゃんは偽物(パチモン)お嬢様をこじらせて、心がちょっとひねちゃったよねえ。変に人のアゲアシをとりたがっちゃうみたいな」

なんで私が悪いみたいになってるんだ…!?

「お兄さんって見た目はすごく素敵なのに、中身はてんで子供ですよね。ホントお子様もいいところだわ」

私があきれたようにそう言うと、超絶美形男はおかしそうに笑った。

「うん、素晴らしい評価だね。誉めてくれているようで、けなしている。ひょいっと持ち上げているようで、ズドンと落とす。浮き沈みの激しい美芳ちゃんらしいや」

この人もなかなか言ってくれるわ…。超絶美形男は続けた。

「まあ、君の言う通りなんだけどね。僕はお子様もいいところなんだ。そう、いつまでも少年の心を忘れない。さようなら、現実。こんにちは、ネ○ーランド!見た目は大人、頭脳は中二!」

…っていうか、それって…。

「ダメな大人の典型例だ!」

お兄さんは片目をつむった。

「そんなダメな大人の典型例のお兄さんが本日も偽物(パチモン)お嬢様の悩みを聞きますよ?ささやかな幸せ(おいしいおやつ)のためにね!」

色々とテキトーで軽いノリがうりのお兄さんだけど、この人は私のことを決して「お嬢様」とは呼ばない。(よんだとしても、「〝偽物(パチモン)”お嬢様」だしね)そのへん、私としてはけっこう評価しているのだ。何よりも「お嬢様」と呼ばれるのが、私は嫌で嫌でたまらないから!

「今日はどうする、美芳ちゃん?キミの話を聞かなくて平気かな?」

それになんだかんだ言いつつも、私の「〝偽物(パチモン)”お嬢様」である日常の愚痴や鬱憤を吐き出すのを手助けしてくれる。そう、悪い人じゃないのはわかってるのよ。警備態勢がわりとしっかりしている我が家に、どうやって忍び込んでいるのかは、いまいちよくわからないけども…。




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【目次】 それいけ!美芳(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      【一覧】 『宮廷浪漫』シリーズ 【関連】
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★淑玲が主人公の本編『宮廷浪漫』シリーズはこちら。
蹊国(架空の国)で繰り広げられる頑張り屋の少女・淑玲のサクセスストーリー。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
★『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編①真夜中の逃避行(仮)はこちら。
花街で権力を握っている影達・梅恭・お蔵の青春時代の物語。
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★『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②時をかけるおやっさん(仮) はこちら。
淑玲父とお兄さん(謎の美男子)の出会い回想記。
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★『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③それいけ!美芳(仮) はこちら。
美芳が淑玲と親友になった話&淑河に恋したきっかけ談。
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【目次】 それいけ!美芳(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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         パチモンお嬢様、逃亡する! (それいけ!美芳1)
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心穏やかな昼下がり。

「お嬢様―!」

そう、心穏やかな昼下がり…のはずだったんだけどなあ。

「お嬢様―、お嬢様―!一体どこにいるんですかあー?」

でも、それは簡単に打ち破られた。誰かが大声で私を呼んでくれたからだ。

「お嬢様―!お嬢様ー!お嬢様―!!」

あ、間違えた。訂正しよう。誰かがしつこく(←強調!)大声で私を呼んでくれたからだ、…の方がよさそう。

「逃げないで出てきてくださーい、お嬢様ー!!」

ああ、うるさいなあ、もう!それで「はいはーい、ここでーす!」なんていう逃亡者がいるわけないでしょう!

「お嬢様―、どこにいるんですかあー!?お嬢様―!!」

私は隠れていた木から庭を見下ろした。うちで働く小間使いの少年がいなくなった私を心配して、どうやら探しに来てくれたらしい。

「お嬢様―!!いい加減に出てきて下さいよー!出て来てくれないと、俺が旦那様と奥様に叱られてしまいますー!!そんなのはイヤダー!!」

………あ、間違えた。訂正しよう。どうやら私というよりも彼は自分の心配をしているようだ。ええい、なんてやつなの!

「あいつの今日のおやつは抜きね!」

私はふんと鼻を鳴らした。うん、そうよ!決定、決定!!小間使いの少年の悲痛な叫びは続く。

「お嬢様あー、出てきて下さいってばー!俺、もう半べそですー!!そろそろ、あれですよ。これ、号泣に変わっちゃいますよ!!」

………なに、その前置き。あいつの情に訴える作戦は大分間違えているような…!?

「俺、マジですから!あと、10秒以内に出てきてくれないと号泣しますからーー!!」

ええー!?

と、あやうく声を上げそうになり、私は急いで手で口を覆った。木の上にいるのをバレるわけにはいかない。

「本気と書いて『マジ』!!大真面目と書いて『大マジ』ですからーー!!10・9・8…」

もうなんなの、あいつは!泣き落とし(?)とみせかけて、ホントは脅迫してるんじゃないの…!?

「まだ出てこない気ですか!?もう!!偽物と書いて『パチモン』!!本物と書いて『マジモン』ですからーーー!!5・4・3…」

…ったく、意味がわからん!私は大きなため息をついた。心穏やかな時間は一体どこへいったのやら…?

「…2・1…!!」

あー、はいはい。わかりました!今そっちに行くから。なんだかバカらしくなってきたしね…。私は観念して、上っていた木から下りようとした。

「おーい、お前!悪いが、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。こっちに来てくれー!」

その時、うちで働く年配の使用人が現れ、小間使いの少年は振り返った。

「今、俺はお嬢様を探さなくちゃいけないんですけど…」
「お嬢様が稽古事が嫌でいなくなるのはいつものことだろう?旦那様から急な仕事を任されたんだ。人手が足りん。だから、手伝え。お前はこっち要員だ!」
「えー!?何ソレ?しかも何要員だよー!?」

年配の使用人にはんば引きずられるように、少年はうちの中へ戻って行った。

「なんだったんだ、いったい…」

私は木の上から呟いた。一人取り残された感もあってか、少し拍子抜けしてしまう。

― お嬢様が稽古事が嫌でいなくなるのはいつものことだろう? ―

さっき年配の使用人が言っていた言葉を思い出して苦笑する。

「はいはい。そうですよ。私がいなくなることなんて、どうせいつものことよね…」

別にお稽古事が嫌なわけじゃない。色々知ることができて楽しいし、自分の成長やその上達っぷりに胸が張れるような気さえする…。

「でも、お稽古ごとなんて貴族のお嬢様がすることじゃない?」

私の家は蹊国の首都・成安で一番大きい米屋を営んでいる。家は裕福で大きいかもしれないけど、決して貴族ではない。一般庶民なのだ。

「そんな私が貴族のお嬢様のまねごとなんて、ちゃんちゃらおかしいわ」

私の暮らす蹊国(けいこく)は身分社会だ。上から順に「王族>貴族>庶民」というふうになっている。そこでは何よりも生まれが大きくモノを言うのだ。私みたいな庶民が何をしようとも高貴な血には決して勝てないし、届くわけがない。

「そもそも私自身、はり合う気なんてまるでないんだけど…」

庶民のくせにお金だけはある。だから貴族のお嬢様のような扱いをされる。まわりからチヤホヤされたり、持ち上げられたり…。そんな「偽物(パチモン)お嬢様」の私にはね、一つだけわかっていることがあるの…。

「お嬢様って、意外と生活が窮屈で不自由だ!」

お稽古事を毎日ぎっしり詰め込まれ、空き時間があまりない。休んだり、息抜きできたりする時間が全然ないのよ。だから、こんなふうに逃げるしかない。で、間抜けに木なんか登る羽目になる。

「それにお金ってあるにこしたことはないけど、持ちすぎるとロクなことがないと思うの」
「へえ。なんでなんで?」
「ごますってくるやつとか、こびへつらうやつとか、いちもつ秘めた野心家とか、やたらめったら近寄って来るしさ…。『いい話がある』って言って、人のお金をいいように使おうとするのよ!」
「ふむふむ」
「そういう人たちって最悪!うざいっていったらないわ!!」
「なるほどね。キミは意外に鋭く人を見ているなあ…」

私がひとり愚痴っていると、いつの間にか誰かの相槌が加わっていた。慌てて振り返ると、同じ木の上に超絶美形の男が座っていた。



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【目次】 それいけ!美芳(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編③/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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【一覧】  『宮廷浪漫』シリーズ 【関連】
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          それいけ!美芳(仮)  
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【内容】

私、美芳(みいふぁん)!蹊国(けいこく)の首都・成安(せいあん)で一番大きい米屋の娘よ。でも、最近困っていることがあるの。家があまりに裕福な商家のせいか、まわりから「お嬢様!」と呼ばれるわ、持ち上げられるわ、生活が窮屈なことこの上ない。別に私は貴族のお嬢様じゃなくて、一般庶民なんですけど!?もう勘弁してほしいわ。…そんな毎日に嫌気がさしていた私の前に超自分調子(マイペース)人間があらわれた…!?

※本編よりも昔の話になります。


【登場人物紹介】

◎美芳(みいふぁん)
蹊国(けいこく)の首都・成安(せいあん)で一番大きい米屋の娘。貴族ではないが、家が裕福なため、お嬢様と呼ばれることも。(しかし、本人はそれを嫌がっている)本来は明るく活発な性格だが、人付き合いが面倒であるため、商店街の女の子の集まりなどでは、本性を偽って大人しくしている模様。後に淑玲と親友になる。

◎お兄さん(名前不明)
美芳(みいふぁん)の暮らす商店街に最近現れた謎の青年。超絶美形男(美男子)。女好きの遊び人のようだが、お世話になっている家の女の子にどうやら入れ込んでいる様子。美芳の悩み相談や愚痴話ににつきあってくれたりする。年齢不詳。

◎淑玲(すうりん)
蹊国(けいこく)の首都・成安(せいあん)に暮らす八百屋の娘。明るく元気なしっかり者。学問に興味があり、最近では読書に夢中。顔がそっくりの双子の兄・淑河がいる。本編の主人公。

マイペース更新で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。

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                  目次
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【第319夜】 パチモンお嬢様、逃亡する!       (それいけ!美芳1)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-421.html
【第320夜】 パチモンお嬢様、超絶美形男にたかられる! (それいけ!美芳2)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-423.html


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★  moumoon『Sunshine Girl』 × 『』 ★

① moumoon『Sunshine Girl』
https://www.youtube.com/watch?v=L-zdKB82Rc4
https://www.youtube.com/watch?v=c1-78DNI4aA

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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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       おやっさん、問題に直面する? (時をかけるおやっさん4)
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名探偵のマネをして、ふざけてお兄さんを指差す。お兄さんは可笑しそうに腹を抱えて笑っていた。俺が憎めないのを知ってるからって笑いすぎだぞ、お兄さん。しばらくしてから、お兄さんは俺に向き直った。

「おやっさんは勘違いしているなあ。だから、一つ教えてあげないとね」
「ん?」
「僕はいらない本を積んで、淑河くんに『欲しかったら、好きな本を持って行っていいよ~』って言っただけなんだ」

…うむ、それのどこが『勘違い』になるんだ?俺の考えを読んだのかお兄さんはくすくすと笑った。

「毎回けっこうな量の本を積んでいるんだけどね。でも、そこから淑玲ちゃんにあげる本を選ぶのは僕じゃないんだよ」
「え?」
「僕じゃなくて、おやっさんの息子が選んでるんだ」

…は?今なんて…?俺の息子って、まさか…?

「もちろん淑河くんに決まってるじゃないか、おやっさん!」

…いやいやいや!「もちろん」って言われても信じられないよ、お兄さん。一体どういうことなんだ…!?

「淑河くんは熱心に本を選んでたよ。淑河くん、妹の淑玲ちゃんが大好きだからね。良いものを淑玲ちゃんに読ませたくて、一冊一冊きちんと開いて自分の目で中身を確認してるぽかったな」
「…一冊一冊きちんと開いて自分の目で中身を確認してる…?」

俺はオウム返しもいいところだった。そんなまさか…。特技→うっかり。持ち味→天然。極めつけ→ドジっ子の淑河だぞ!?そんなの、ありえーん!認めーん!許せーん!

「僕は思うんだけど、本を選ぶってことは、ある程度その本を読んで、内容を理解してなくちゃいけないよね。淑玲ちゃんのレベルに合うものを選ぶ力も必要だし。そうそう。たくさん数があったから、速読力もありそうだよね。淑玲ちゃんの手元に渡ってない分もチェックしていただろうから、彼女以上に本に触れていたとも言える。ねえ、おやっさんはどう思う?」

俺は驚きのあまり声がでなかった。

俺の息子がそんなに優秀なわけがない。

「能ある鷹は爪を隠しているのか、淑玲ちゃんに関わることだけ不思議と能力を発揮するのか、そのへんはまだよくわからないけど…」
「…………」
「う~ん、淑河くんも面白いよね。育て方次第だね」

さらっと息子(淑河)を分析、評価するお兄さんに戸惑う俺だった…。っていうか、お兄さん、もしや教育関係者か何かですか?タスケテ、先生!もう!うちの子たち、ワケワカンナイッ!!

育て方次第なんて同時に『おやっさん次第だよ』とも言われているような気がして困るんだが…!やめてくれ、お兄さん。俺自身、そんなデキのいい方じゃないんだ。並大抵。中の中。優良可なら限りなく可に近い良!かなしいかな、そこそこレベルの男なんだよ!俺はお兄さんにしがみついた。

「そこそこ親父を苛めないでくれよ、お兄さん…!」
「え、そこそこ親父…?(って何!?なんかのキャラクター?)」

「俺は別に淑河や淑玲にデキのよさなんて求めてねーんだ!デキが悪くても困るけど、うちを継げるだけのそこそこの器量があれば、それでもう充分なんだよー!!そこそこ万歳!!俺万歳なんだー!!(?)」
「うんうん、それがおやっさんの望みなんだよね。大丈夫だよ。大丈夫だよ。おやっさんの望みは(たぶん)叶うよ~」

半泣き状態の俺を「よーしよーし」と慰めてくれたのは、もちろんその場にいたお兄さんだった。(ついでに、「わしゃしゃしゃしゃ」と楽しそうに俺の頭を撫でていた)

「ううううう…!別に俺は高望みなんてしてねーんだ。器のちっちぇえ俺には平凡な幸せで満足なんだよ。それでお腹いっぱいのはずなんだ!……そ、そりゃ、淑玲の前に金持ちの坊ちゃんが現れたと聞いた時にゃ、目が眩んだりしたけども…!!」
「え?」
「でもでも、たいていの父親だったら娘がいいところに嫁いで苦労せずにやっていけると思ったら、気持ちが傾くだろう?欲張りになるだろう?悪魔の囁きにのっちゃうだろう!(?)」
「……金持ちの坊ちゃん……?」

この時、お兄さんの眉がぴくっと動いたのは、俺の気のせいだったのだろうか?

「…お兄さん…?」
「…そっかー。淑玲ちゃんにお金持ちの坊ちゃんかー」
「あ、あー…」
「それは、おめでたいネ!」

お兄さんは俺にニッコリと微笑んだ。そして、パチパチと祝福の拍手までしてくれた。さっきのはやっぱり俺の気のせいだったのだろうか?

「オメデタイ!オメデタイ!ねえ、おやっさん?」
「お、おう…」

でも、なんだろう。そのキレイな笑顔に少し凄味を感じるような…?お兄さんの後ろに何か不穏な空気が見え隠れしているような…?俺の野性的な勘が「オニイサン、チョット怒ッテルネ!コレ、モシカシテ、ヤキモチヨ。ヤキモチ、ヤイテルネ!」とそう告げている。

「いやいやいや、そんなお兄さん、まだその坊ちゃんとうちの淑玲がどうなるかなんてわからねえんだからさ」
「…ふうん。わからないんだ?」

お兄さんは変わらぬ笑顔で、俺に「で?」と話の続きを促す。あれ、お兄さん?今までの俺への優しさはどこへ行っちゃったんだい…?

とりあえず、知っていることは全部話した方がよさそう(身のため)だな…。俺はお兄さんの顔色をうかがいながら、自分の知っていることを話した。

「昨日さ、淑玲がその坊ちゃん家に行ったみたいなんだよ。かなりいい車で送り迎えしてもらったようでさ。まあ、それで俺はどこかの金持ちじゃないかと思ったわけなんだ」
「…で?(どんなやつだったの?)」

無言の圧力って言うのは聞いたことがあるが、もしかしたら、笑顔もそういう力があるんじゃないだろうか。笑顔の圧力…いや、脅迫か…?

「…そのー、俺は坊ちゃんの顔を見てないんだけど。えっと、淑河の話じゃ、けっこうカワイイ顔…」
「ふうん。淑玲ちゃんって意外と面食いなんだ(僕の顔には興味をしめさないのに…)」

しまった!

「いやいやいやいや!カワイイ顔って童顔って意味だよ、お兄さん!嫌だなあ。そんなお兄さんに顔で勝てるやつなんているわけないよ!」
「…そうかな?」
「ソウダヨ!」
「うん、実は僕もそう思ってるんだ!」

お兄さんは満面の笑みでこたえる。相変わらず、自分の見た目に関して、スゲー自信だな、オイ。

っていうか、危ねー危ねー。お兄さんのご立腹、なんとか回避だぜ!俺は汗を拭き拭き、大きく息を吐いてから続けた。

「今朝、淑玲にその坊ちゃんについて聞き出そうとしたんだが、無理だったんだ。あいつは『違う!』の一点張りで、さっさと野菜を積んだ大きな荷車を持って逃走しちまうしさ。だから、詳しいことは俺にもよくわからいんだよ!」

お兄さんはチラッと俺を見る。俺は選手宣誓をするようなスポーツマンの面持ちで、裁判の証言台で宣誓書を読み上げるような証人の気持ちで、お兄さんに「俺の知っていることは全部話しました!嘘なんてついてません!(正々堂々と誓うぞ、この野郎!)」と猛アピールした。

「ナルホドネー」

お兄さんは腕を組んで、何やら考えをめぐらせている。あれ、納得して頂けなかったのかな。後半、お兄さんの顔を誉めて持ち直したと思ったんだが…。

っていうか、お兄さんって本当にその坊ちゃんに対して、ヤキモチをやいているんだろうか?そんなに淑玲のことを思ってくれているのだろうか?

さっきも言ったかもしれないが、お兄さんが淑玲を大事にしてくれていることを俺は知っている。

女好きで遊び人のお兄さんはあいつ(淑玲)をからかいはしても、簡単に手を出さないでいてくれることを。見えないところで、あいつのために色々と手を貸してやっていたり、行動派のあいつがしでかした騒動(事件?)をフォローしてくれていたり…。

それが好意でも家族愛でも俺はどっちでもいいと思っていたんだが…。

実のところ、家族愛よりも、やや好意がまさっていたりするのかい?そのへん、ちょっと教えてくれよ、お兄さん。


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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、ぶっちゃける? (時をかけるおやっさん3) 
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「おやっさん、どうする?まだ仕入れる?もう少しこの荷車にのりそうだけど」

お兄さんの言葉に、俺は首を振った。

「いや、もう充分だよ。野菜は新鮮さがウリだから、いつも今日売る分を考えて、毎日仕入れてるんだ」
「そうか。店に残ってるものもあるもんね」
「それもそうだが、天気とかで客足も左右されるからさ。そのへんも考慮しながらかな。だから、あんまり量を多く仕入れるのもよくないんだよ。売れ残って野菜をダメにしちゃうからさ」
「なるほどね。じゃあ、僕…ちょっと多く仕入れちゃったかな?」

「張り切りすぎちゃったね。ゴメンネ!」と謝るお兄さんに、俺は「そんなことないぞ。大丈夫さ」と笑って受け合った。

「どうせ売れ残ったとしても、うちの淑玲がその野菜を何かに使うと思うんだよな。あいつが今、何をやってるのか俺は知らないが、きっと野菜が必要なことなんだろう」

今朝、うちの野菜たちをあれだけ大きな荷車に積んで持って行ったわけだしな。これは勘だが、あいつは明日も同じことをするんじゃないか。今日だけってことではないような気がした。

「…っていうか、お兄さんはそれを見越して、荷車までもらって野菜を積んでたんじゃないのかい?」

俺がさっき淑玲の話題を仕掛けた時に、お兄さんの食いつきが随分と良かった。だから、淑玲が何をやろうとしているか、この人は知ってるんじゃないかと俺は思ったんだ。

お兄さんは「さあ、どうだろう?」と、あのやたらキレイな笑顔を見せるばかり。

「やれやれ」

女たらしで遊び人のこの人だが、実はうちの淑玲をとても大事にしてくれていることを俺は知っている。

「今日、俺が愚痴りかけたこと…淑玲が大きな荷車を勝手に持って行ったことだって、どうせ察しがついてるんだろう?だから、朝市に付き合ってくれたんだよな、お兄さん。あいつのフォローをしてくれたんだろう?」

あのとんだ悪知恵娘に、お兄さんが好意を持ってくれているのか、単に家族的な愛情を感じてくれているのか、そこまで俺はわからないがー。

…まあ、ぶっちゃけね。そんなの俺はどっちでもいいんだ。

「だから、ありがとうな、お兄さん。もし息子の淑河が家を継がなかったら、アンタが淑玲と一緒になって、うちを継いでくれるのもアリなんじゃないかと俺は思ってるよ」
「え?」
「ウン。お兄さんの婿養子、悪くないゾ!」

お兄さんの素性は正直よく知らない。名前すら知らない。本人も多くを語らないし、たぶん俺に語ることはないだろう。そんな気がする。謎多き男だが、俺は優しい彼をなぜか人間的にとても信用をしているんだ。信頼しているんだ。何度も俺が「イイネ!」を連発していると、お兄さんはくすくすと笑った。

「ありがとう、おやっさん。みんなと家族になれるなんて僕はとても嬉しいけど、果たして淑玲ちゃんはどうかな?」
「ん?」
「きっと僕らなんか見向きもせず、どっかに飛んでいっちゃいそうじゃない?」

お兄さんは空を見上げ、優雅に飛ぶ鳥を眺めた。その横顔はなんとも美しく、優しかった。

…そうか。アンタは〝僕らなんか”と言ってしまえる人なんだな。淑玲を思って、そんな優しい顔ができるのか。あいつの可能性をどこまでも信じて、受け入れる覚悟があるんだな。

「だから、こっそり淑玲に学問の本を読ませていたのかい、お兄さん?」

俺は自慢じゃない(?)が、淑玲に本を買ってやったことは一度もない。昔から口が回る子だったから、これに変な知恵が備わっては困ると思い、むしろ遠ざけていたくらいだ。なのに、あいつはいつの間にか自分でそれを手に入れた。そして気付けば、年中読書ばかりする子になってしまった。気になって淑玲本人にどこでそれを手に入れたのか聞いてみると、

「淑河兄様が捨てられていた本を拾ってきてくれたの」

と不思議なことを言う。淑河に問いただしてみても、「そこに落ちていた」というだけで、よくわからない。奇妙なできごとに首をひねっていると、ある日、淑河が隣の薬屋からどっさり本を抱えて出てきた。

見咎めようかと思ったが、淑河に理由を聞いても要領を得ない気がしてやめた。俺は淑河にバレないように隠れ、薬屋の店主に話を聞いてみることにした。でも、店主の爺さんはポカンとして、本など別に淑河にあげていないと言うじゃないか。

「…ってことは、犯人はまさか!」

薬屋には店主とそこで間借りしているお兄さんが住んでいるだけ。俺は薬屋を出て、お兄さんが間借りしている二階の部屋を見上げた。すると、タイミングよく犯人が窓から顔出した。お兄さんは唇の前にそっと人差し指を立てた。一瞬のその仕草になぜか俺は見とれてしまい、お兄さんに問い詰めることができなくなってしまった。以来、お兄さんに聞く機会を今日まで逃してきたわけなんだが…。

「思い出してみると、あれだな。淑玲は別に俺に似たわけじゃなくて、お兄さんに似たのかもしれないよな」
「え?」
「あいつに悪知恵を植え付けた犯人はお兄さん、アンタだったのかー!?って話さ」


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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、あっけにとられる? (時をかけるおやっさん2)
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今日の朝市はいつもと違っていた。

それは訪れていた人々、みんなが感じたことではないだろうか。そう、慌ただしい忙しない賑わいを見せる中、なぜか一際甲高い声…歓声もまじっていたからだ。

「きゃー!美男子のお兄さーん、こっちも寄ってってー!」
「お兄さん、うちの野菜もためしてちょうだい。良かったら、ついでに私もー!」
「お兄さん、こっちが先よ。もうためさなくていいから、この果物と私一緒にお持ち帰りで!」

その歓声は黄色というか…それを通りこして、クラクラと眩暈を覚える金色というか…いやいや、ギラギラと獲物を狙う銀色というか…う~ん、もう早い話、魅惑の桃色でいいじゃね?というか…。

「朝市ってこんなんだっけ?」

といった様子だった。若い娘から熟女、はたまた婆さんまでもがお兄さんに釘付け。その見つめるまなざしは熱いのなんのって、正直まわりの男性陣はあっけにとられていた。

でも、はっと我に返り、とりあえず自分の嫁や娘の手(手綱?)はしっかり握っておかないといかん!と危険を察知したようだ。これも男の自己防衛本能ってやつかな。

「お兄さーん、うちの野菜と果物、これだけ安くしてやるから。頼むよ、嫁と娘に手を出さないでくれ!」

といった具合に、お兄さんに頼み込む始末さ。…うむ。今日の朝市は、ちょっとしたカオスだったかもしれん。

「ふふふ、大漁、大漁!」

そんな中、当のお兄さんはホクホク顔で嬉しそうだった。声が弾んでいる。

「見て見て、おやっさん!この野菜の多さ!質の高さ!見惚れる輝かしさを!!」
「…驚いたよ、ホント。野菜というよりアンタにね…」

お兄さんは取引上手なのか、ここでも美男子が物を言わせたのか(?)、安値やタダ同然で野菜を仕入れていた。予定だった仕入れ量を何倍も上回っている。

「土が少しついてるのもあるけど、新鮮そのものだよね。洗えば問題ナーシ!さあ、おやっさん。荷車に積んだこの野菜たちを見てよ。いや~、絶景かな、絶景かな!」

お兄さんはいつの間にか朝市に来ていた人に大きな荷車までもらっていたらしい。楽しそうに口笛を吹きながら、それに野菜を積んでいたのだった。

「美男子最強だろ、コレ…」

思わず、俺は呟かずにはいられなかった。

なんだろう。この敗北感にも似た思いは…。野菜のプロと言っていい俺が、八百屋家業に生涯をかけるこの俺が難しいと感じる仕入れの仕事も、この人は華やかなその才能でサクッとやり遂げてしまうんだな。

「うむむ…」

じゃっかん苦い思いがこみ上げる。野菜一筋で生きてきた俺は一体なんだったんだろう。なんだか少し馬鹿らしくなるというか、面白くないというか…。う~ん、なんつうか…そのあれだな。自信がそげるな。俺が肩を落としていると、野菜を見ていたお兄さんが満足そうに笑って言った。

「ねえ、おやっさん!」
「ん?」
「この野菜たちがおやっさんの作ってくれる美味しいご飯につながるんだね!!」

いつもは美しさが際立つ、色気が香る、どこかすましたお兄さんの笑みも、今はなぜか少年のように初々しかった。にんまりと歯を見せて笑っている。初めて見たな、この人のこんな顔…。

「そんなに楽しかったかい、お兄さん?」

貴重なものを見たような気がして俺は目を見開いた。

「楽しかったよ~!いい野菜をいっぱい仕入れたし、朝市の人はみんな優しかったしね」
「そうかい」
「あ!でも、僕的に何より一番楽しみなのは…」
「…楽しみなのは?」
「今日の朝ご飯は何ってことかな。この野菜で作ってくれるんだろう?ねえ、おやっさん?」

お兄さんはどこまでもご機嫌で鼻歌を歌い出し、愛おしそうに野菜を撫でていた。それを見ていたら、俺は可笑しくなってしまった。

「ーったく、憎めねえなあ、お兄さんは!」

俺は声を上げて笑っていた。お兄さんが不思議そうに俺を見つめ返す。

「なあ、お兄さん。いつものやたらキレイな笑顔もいいけど、アンタはもっとそんなふうに元気に笑った方がいいよ」
「へ?」

お兄さんはこれまた子供のような無垢な瞳を俺に向ける。だもんで、見ているこっちが、くすぐったくなってしまった。

「いやいや、何でもない。お兄さんが楽しかったんなら俺も何よりさ」

俺は目をそらして、鼻の頭をかいた。


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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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      おやっさん、哀愁を漂わせる? (時をかけるおやっさん1)
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残された小さな荷車を引いて、とぼとぼと朝市に向かう。そんな俺の背中から哀愁が漂っていないか不安なところだ。

「淑玲のやつ、古典的な手を使いおって…!」

これというのも我が娘(こ)・淑玲に仕入れ用の大きな荷車を取られたからだ。俺は歯ぎしりをして、やり場のない怒りを抑えた。…淑玲め、父親になんてことを!日に日に悪知恵をつけおって、一体誰に似たというのだろう!?

「俺か?女房か?それとも双子の兄の淑河か!?」

家族を思い浮かべて、そう叫んでみたものの、俺は一つ一つ考えを消していった。

「う~ん。でも、淑河はないか?うっかり者で妙な知恵なんて働かないしな。女房も割とのんびりしていて、策を弄すタイプじゃないしなあ…」

俺は荷車を引く手をとめた。…え?…ってことはなんだ…?

「じゃあ、俺か!淑玲は、俺に似たのか?犯人(?)は俺なのかーっっ!?」

消去法で導かれた答えに、思わず俺は絶叫した。

「そんなの、ありえーん!認めーん!許せ―ん!」

淑玲ときたら、うちのかわいい野菜たちまで、ちゃっかり持って行きやがって!

「ぐぬぬ…。こりゃ後でお仕置き決定だー!!」

怒りに震える俺の肩に、ふと優しい手が触れた。

「朝っぱらから絶叫しちゃって。どうしたの、おやっさん?」
「うわっ、眩(まぶ)しっっ!!」

振り返ると、美男子がお天道様にも負けない目が眩むような笑顔を向けていた。

「お、お兄さんじゃないか!今日、曇りなのに一瞬晴れ間が見えたぞ…!?」

目をこすって、目の前の人物をよく観察する。そこにいるのは紛れもなく、この商店街で一番の美男子様だった。老若男女うっとり見惚れる顔の良さは、もう国宝級じゃなかろうかと俺は密かに思っている。

「あはは!嫌だなあ、おやっさん。まるで御来光だなんて!(←そこまで言ってない)そんなこと言われて僕も太陽もビックリだよ~」

お兄さんは隣の薬屋で間借りしていて、しょっちゅう、我が家に顔を出す。どうも貧乏一人暮らしで腹を空かせていたらしい。一度餌付けしたら、うちにご飯を食べに来るようになった。

「何コレ、超うまいんだけど!宮廷料理人にも負けてないんじゃない?」

そんなふうに俺の手料理を褒めてくれたもんだから、悪い気がしなくて「じゃあ、お兄さん。腹すかしたら、そのー、いつでもうちに食べに来ても…いいぞ?」とつい声をかけてしまった。

まあ、うちは4人家族で1人増えたところで作る手間なんてそう変わらないしな。特に問題ない。それに美男子っていうのは、いてくれるだけで目の保養になる。場だって華やぐしな。家族みんな、喜んで彼を歓迎したわけさ。(淑玲だけは「なんか胡散臭くない、あの人?」と微妙な顔をしていたが…)

それなりに恩義を感じているのか、お兄さんは気が向いたら、八百屋の店番もしてくれるようになった。美男子が店先にいるだけで商売繁盛。願ったり叶ったり(?)ってなもんで、ありがたいこった。そうそう。それと、お兄さんは俺の晩酌にも付き合ってくれるんだよ。小言や愚痴も嫌な顔せずに聞いてくれる、笑い飛ばしてくれる貴重な酒飲み仲間にもなってくれた。

顔のいい男はいけすかない野郎が多いと思っていたが、そんな俺の偏見をお兄さんは見事にぶち壊してくれた。うん。憎めない、なかなか良い奴なんだよな。俺はお兄さんのことをけっこう気に入っている。

「え、御来光!?そこまで俺は言ってないんだが…う~ん、まあ、いいや」
「あはは!いいんだ?」
「それより何だい、お兄さん。こんな時間にこんなところで会うなんてさ。びっくりしたよ。もしや朝帰りかい?」

俺の問いにお兄さんは変わらぬ笑顔で頷いた。自称・遊び人だから、下手にいいわけもしない。それがかえって清々しくもある。なんかある意味、お兄さんって潔い男なんだよな。

「色男はいいねえ!楽しそうだ!」

別に厭味ではなく、心からそう言うと、お兄さんは首を傾げた。

「おやっさんは、元気ないみたいだねー。さっきの絶叫といい、何かあった?」
「いや~、それがうちの淑玲がさ…」
「なになに、淑玲ちゃんがどうしたの?」
「そんな食いつくような面白い話じゃないんだけどなあ」

俺はため息をついた。もう親不孝もいいところなんだよ…と言いかけ、慌てて口を噤む。晩酌時ならまだしも、朝っぱらから愚痴をこぼすなんてよくないよな。いかん、いかん。俺は笑ってごまかした。

「なーに、大したことじゃないんだ」

そうだ。大したことじゃない。本当に大したことじゃないんだ。自分にもそう言い聞かせていると、お兄さんが「おやおや」と目を細めた。

「もしかして、おやっさんは今から朝市に行くの?」

急に話題が変わったもんだから、俺は戸惑った。

「…ああ、そうだが」

何でいきなり朝市の話になったんだ?不思議に思っていると、お兄さんは俺を見て優しく微笑んだ。

「じゃあ、今日は僕も付き合おうかな」
「え?」
「朝市に一緒に行こう。野菜の仕入れ、手伝うよ」

曇っていた心に、ふと晴れ間が差し込む。

「おやっさんの背中、なんか哀愁が漂ってて放っておけないんだよね」



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【目次】 時をかけるおやっさん(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編②/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
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【一覧】 『宮廷浪漫』シリーズ 【関連】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-422.html
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          時をかけるおやっさん(仮)  
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【内容】

オッス!俺、淑玲父(すうりんパパ)。名前はまだ(作者が考えて)ない。隣りに住むお兄さんからは『おやっさん』と呼ばれている。これでも商店街で(割と)繁盛している八百屋の親父だ。今日も俺は家族のために仕事に精を出す…ハズだったのだが、娘の淑玲に朝市の仕入れで使う大事な荷車を奪われてしまった!そんな俺を助けてくれたのは、とんだイケメンヒーロー様で…!?


【登場人物紹介】

◎淑玲父(すうりんパパ)
「そんなのありえーん!!認めーん!!許せーん!!」
蹊国(けいこく)の首都・成安(せいあん)にある商店街の八百屋の親父。本編の主人公・淑玲と淑河(しゅくが)の父親。デキがいいのか悪いのかよくわからない子供たち(双子の兄妹)に振り回されながら、奥さんに慰められたり、ダメだしされたりする日々を送っている。特技は思い込みと記憶をプレイバック(回想)すること。趣味は俺的七不思議集め。40代くらい。

◎お兄さん(名前不明)
「キミは、僕を助けてくれる?」
おやっさんの八百屋の隣に住む青年。国宝級の美男子(←おやっさん調べ)。女好きの遊び人だが、どうもおやっさんの娘の淑玲を気に入っている様子。そのせいか、何かとおやっさんのことも気にかけてくれる。年齢不詳。

マイペース更新で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。

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                  目次
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【第315夜】 おやっさん、哀愁を漂わせる?  (時をかけるおやっさん1) 
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-416.html
【第316夜】 おやっさん、あっけにとられる? (時をかけるおやっさん2)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-417.html
【第317夜】 おやっさん、ぶっちゃける?    (時をかけるおやっさん3)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-418.html
【第318夜】 おやっさん、問題に直面する?  (時をかけるおやっさん4)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-419.html


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★  ASIAN KUNG-FU GENERATION『Re:Re:』 × 『』 ★

① ASIAN KUNG-FU GENERATION『Re:Re:』 
https://www.youtube.com/watch?v=Y9G20wV0KHE


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【目次】 真夜中の逃避行(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編①/中華風ファンタジー) 【作品紹介】 
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-411.html
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     逃げてばっかの次男曰く② (真夜中の逃避行3)
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帰ろうとする私を、兄の竹恭(ちっきょう)は無理やり妓楼へ引っ張って行きました。

竹恭の通っている妓女の部屋に案内されましたが、とても粗末な部屋でした。美しいとは言い難いケバイ化粧をした女、いつ干したのかどうかわからない布団が敷いてあるだけの部屋。花街一の妓楼が聞いてあきれる…。私は思わず吐き気がしました。生理的に受け付けなかったのかもしれません。

「あら、今日はふたりで来てくれたのかい?」
「こいつ、俺の弟なんだよ…」

妓女の膝に、竹恭は甘えるように頭をのせて、横たわりました。

「世話のかかる弟なんだ」
「あらあら。お兄さんがこんなんじゃ、弟さんも大変よねえ」

安い紅を塗った唇をにいっと歪ませて笑う女に、嫌悪感すら抱きました。

「どうした、梅恭?」
「ちょっと厠(かわや)に行ってきます」

私は立ち上がり、そのまま帰ろうと思っていた。でも、竹恭は見抜いていました。

「そのまま逃げんなよ、梅恭。お前、逃げてばっかの人生になるぞ?」

竹恭は人を煽るようなことを平気で言いました。人の傷ついた顔や血がのぼる姿を見るのがたまらなく好きだったのでしょう。

「逃げている人にそんなことを言われても困るだけですよ、兄様」

部屋を出る時、私は冷たくそう言い放ちました。

私が妓楼の廊下を歩いていると、窓辺でぼんやりと月を見上げる女の姿がありました。

先ほどの醜い妓女とは打って変わって、その女は化粧をしていないのに、はっとするほど美しい横顔をしていました。でも、それ以上に彼女が私を強くひきつけたのは、その瞳から静かに涙を流していたことー。

なぜか…それはとても胸が痛む光景でした。その時、私はある有名な漢詩を思い出したのです。そう、あれは確か…月を見上げ、故郷を懐かしむ詩…。

「あなたは、望郷の念にでもかられているのですか?」

私は彼女に声をかけていました。特に理由もなく、誰かに声をかけるなど、生まれて初めてのことでした。

彼女は振り返り、私の存在を認めると、涙を拭おうとすらせず、きれいな唇で漢詩を諳(そら)んじました。

「 床前明月光 (床前(しょうぜん)月光(げっこう)明らかなり)

 疑是地上霜 (疑(うたご)うらくは、これ地上の霜かと)

 挙頭明月望 (頭(こうべ)を挙げて明月(めいげつ)を望み)

 低頭思故郷 (頭を下げて故郷を思う) 」

それはまさに私が思い出した漢詩…。学のない妓楼の女がその漢詩を知っているとは思わず、私はとても驚きました。

「あなたは、漢詩を知っているんですか?」

彼女は静かに笑いました。

「妓楼にいる女は学(がく)がないから、漢詩を知らないとでも思ったのかい?」
「ええ」
「正直で失礼なお兄さんだ」

彼女はまた笑いましたが、やはり涙を拭おうとはしなかった。見てられなかった私は自分の手巾を彼女に貸すことにしました。

「あなたの涙は美しいですが、人の目にさらしていいものじゃない。もったいないですよ」

でも、彼女はそれを受け取らなかった。

「悪いけど、男の優しさなんていらないよ」

妓楼の女に自分の行為を拒否されるとは思わず、私は戸惑いました。そんな私を彼女は面白そうに見やってから、こう言いました。

「それに私は泣いてなんかない。自分のための涙ほど、見苦しいものはないからね。これは通りすがりの男の涙さ」
「え?」
「泣きたくても、泣ける場所がない。だから、自由にそうできる場所を探し求めている。ある意味、望郷の念にかられた淋しい男の涙さ」



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引用漢詩 李白「静夜思(せいやし)」
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【目次】 真夜中の逃避行(淑玲『宮廷浪漫』シリーズ特別番外編①/中華風ファンタジー) 【作品紹介】
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