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★2015/6/16
物語ブログ『1001夜ショートショート』開設・祝2周年となりました。これも応援して下さったみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。マイペース更新ですが、これからも『1001夜ショートショート』をよろしくお願いいたします^^

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↓↓ 【第246夜】 幽玄躰(ゆうげんたい) ↓↓
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その墨を含んだ筆は人々の穢れを祓う。

男の書く文字は“守”となるのか、それとも“呪”となるのか―。

「救いになれば、どちらでも構わない」と誰かが言った。

   *

訪れた山間の里は濃い霧に覆われていた。

「お待ちしていました、僧侶様」

正確に言うと、私は寺に籍をおく僧侶ではない。しがない流れ者に過ぎない。もしかしたら、山伏というものに近いのだろうか。奇妙な力をもつ私を仏門は決して認めなかった。しかし、そんな肩書きなどここの者たちには関係ないだろう。

「助けて下さい」

苦しみから救われれば、私が何者であってもいい。誰であっても構わない。

「どうか娘を助けて下さい」

それは私自身にとっての救いでもあった。

「いったい、どうしたんですか?」

今日も私は人々の希望の光りになるべく、彼らに手をのばす。

   *

「翠(スイ)という里娘の様子がおかしいんです」

里の者の話によると、翠(スイ)という娘がここ最近、夜中に勝手に出歩くようになってしまったという。別に里の男と恋仲になり、こっそり会いに行っているわけではない。翌朝、問い詰めても本人は何も覚えていなかった。出歩いたという記憶すらない。心配した両親が夜中に彼女の後をつけると…。

「娘は得体のしれない者と一緒にいたんです」
「得体のしれない者?」
「…獣の形を装った白い影、のようなものでした」

白い影…?

「…僧侶様、物の怪や怨霊のたぐいでしょうか?」
「娘に会うことはできますか?」

両親に案内さた家に娘がいた。翠(スイ)は瓜実顔の美しい娘だった。

「里の者の前では言えなかったのですが、最近、翠には痣のようなものができてしまいまして…」

両親がそう言うと、娘は恥じることもなく、無表情で腰の帯をゆるめた。着物が床にさっと落ちる。全身にまだらのような痛々しい赤い痣があった。しかし、不思議なことに左の胸だけは無傷だった。

「痛みはありません。ただ全身に痣があるだけ」

娘の声は落ち着いていた。

「僧侶様、これはいったい何なのでしょう…?」

娘よりも両親の方が不安そうだった。私は彼らを安心させるように微笑んだ。

「その白い影…得体のしれない者は、娘さんの命を今晩、奪いに来るかもしれません。左の胸だけ無傷なのはその証拠。間に合って良かった。今、文字を書きましょう。ご存知かと思いますが、私の文字には力がありますので」

背負っていた行李(こうり)を下ろし、その中から硯(すずり)と筆を取り出した。

「父さん、母さん。悪いけど、僧侶様とふたりにさせて」

娘が言った。その言葉に両親は顔を見合わせる。それから私を見、頷くと部屋を出た。

「ごめんなさい。うちの両親は大げさなんです」

娘の声は、やはり落ち着いていた。

「一人娘と聞いたよ。そりゃ、心配だろうさ」

静かに墨をする。黒い液体が、じゅわりと生まれる。

「違うんです。この里で一番の金持ちに嫁ぐことが決まっていて、それが破談になりそうで慌ててるの」

私は筆を持ち、その先を墨につけた。じゅわり、と筆先が闇色に染まっていく。

「それが嫌で、お前は白い影…鬼に自分の躰(からだ)をうったのか…?」

私の言葉に娘はふっと笑った。

「さすが僧侶様、お見通しなんですね。あの白い影の正体は鬼。ある晩、あれがあたしに声をかけてきた。望みを叶えてやるから、躰をうれといって。どうせ無理やり嫁がされるのだもの。誰にこの身をくれてやっても同じ。だから毎晩、鬼に会いに行きました。今日は腕、今日は足、という具合に…躰をうったの」
「最後に命を残してか…?最初から鬼はお前の命を狙っていた。そのことはわかっていただろうに」
「それでも、よかった」

どこかあきらめた表情の娘に私は聞いてみた。

「望みは叶ったのか?」

娘はうっとりするような微笑を見せる。

「ええ、僧侶様が来てくれたもの。あなたが、あたしを救ってくれるんでしょう?」

私は言った。

「私の書く文字は“守(しゅ)”となるのか、それとも“呪(しゅ)”となるのか―。わからんぞ?」
「救いになれば、どちらでも構わない」

と、娘が言った。

「わかった」

私は娘にふれた。無傷の左の胸に筆を下ろす。娘が小さな悲鳴をもらした。

「たえろ。今までの心の痛みに比べれば、大した痛みではないだろう?」
「ええ。…でも、意識が遠のきそう。あたしの名前を呼んで下さい、僧侶様…」

私はそっと囁いた。

「翠(スイ)」

娘は苦痛に顔を歪めていたが、どこか幸福そうに見えた。

   *

その晩、鬼が来た。

― 娘がいない ―

白い影はひたすら娘を探していた。しかし娘の姿は今、私の文字の力で鬼には見えないものになっている。

― 娘よ、どこに行った? ―

「娘はお前のものではない」

私がそう言うと、鬼は激高した。

― 異形の者の仕業か!娘をどこに隠した!? ―

「鬼に異形と言われるとは。笑わせてくれる。もう一度言うぞ。娘はお前のものではない」

― なんだと!? ―

「娘…翠の命は、彼女自身のものだからだ」

私の書く文字は“守(しゅ)”となるのか、それとも“呪(しゅ)”となるのか―。翠の胸に記したのは、“私のもの”という文字。

― 異形の者め!覚えていろ ―

やがて夜が明け、鬼は消えた。

   *

昨日までの霧が晴れ、日の光りに包まれた里は活気を戻しつつあった。

「僧侶様。里の娘を救って下さり、ありがとうございました」

娘の痛々しい痣はすっかり消えていた。左の胸にだけ私の書いた文字がまだ残されているが、鬼が彼女の元に訪れることはもうない。徐々にそれも薄れていくだろう。

「すみません。翠のやつ、姿を見せなくて。僧侶様に挨拶をしろと言ったんですけど…」
「気になさらずに。それでは、私はこれで」

人々と別れ、里を後にする。すると、山道に出たところで、先回りをしていたのか娘が待っていた。

「僧侶様、もう行ってしまうんですか?」
「お前はもう大丈夫だ。安心して、自分のこれからことを考えるといい」
「このままここにいても金持ちのところに嫁ぐだけなのに?」

私は笑った。

「お前はもう子供ではないだろう?」
「え?」
「強い生命力で、鬼にも勝てたのだから」

それを聞いて、娘もおかしそうに笑った。

「そうですね。でも、僧侶様があたしに書いた文字がまだ胸に残ってるわ。あれはいただけない」

私が首をひねると、娘は怒ったように腰に手をあてた。

「僧侶様が書いた“私のもの”という字…あれではまるで“あたしは僧侶様のもの”って意味みたいでしょう?」

私の書く文字は“守(しゅ)”となるのか、それとも“呪(しゅ)”となるのか―。

「翠という娘の命はもう僧侶様のものなのに。そんなあたしを置いて行く気ですか?」
「仏門に見放され、鬼にまで異形の者と罵られた私だぞ?それでもついて来れるのか?」

娘が私に飛びついた。

「大丈夫。あたしは強い生命力の持ち主らしいわ」
「やれやれ。とんだじゃじゃ馬…いや、おてんば娘だな」

しっかり抱きとめると、彼女は私に笑顔を向けた。

「ひどい言い草。でもあなたの救いになれば、どちらでも構わない」と翠が言った。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 漆原友紀『蟲師』 × 小泉八雲『耳なし芳一』 ★

『蟲師(むしし)』のアニメが素晴らしくて、その世界観に似た物語が描けないものかと思っていたら、今回の物語のタイトルがなんとなく浮かんできました。(調べたら、元々「幽玄体」って和歌などの歌体なのだそう。その「体」の字をなんとなく「躰」で置き換えたら、声が生まれ、いつの間にかこんな物語に…)体に文字を書くなんて『蟲師』より、なぜか小泉八雲の『耳なし芳一』っぽくなってしまったような…。

① 漆原友紀『蟲師』
この総集編、良ければぜひ!本編みたくなりますよ。
http://nicotter.net/watch/sm4447492
誰かが言ってたけど、確かにこの物語が「日本昔話」でもいいかもしれない。
本編https://www.youtube.com/watch?v=UiZEGolYP0g&list=PLQh9jj6F4ecDsPDO7x86V9Yf8VY0V4sYg
本編続章https://www.youtube.com/watch?v=g-7OexTRYbg&list=PLaIQLmYfp3nk62kbXsPUrh0GXstyrGtHJ

② 蟲師Soundtrack『蟲音』
作り手も演じ手も素晴らしい映像化作品でしたが、音楽が「蟲師」の世界観に物凄く貢献していたのではないでしょうか。これを聞きながら今回の物語を書きました。
【作業用BGM】 蟲師 Sound track 1 (蟲音 前)
http://nico.ayakaze.com/player/sm/sm2515295
【作業用BGM】 蟲師 Sound Track 2 (蟲音 後)
http://nico.ayakaze.com/player/sm/sm2809974

③ 小泉八雲『耳なし芳一』
http://www.amazon.co.jp/%E8%80%B3%E3%81%AA%E3%81%97%E8%8A%B3%E4%B8%80-%E5%B0%8F%E6%B3%89-%E5%85%AB%E9%9B%B2/dp/4097278525
私のトラウマ怪談。小学生の頃、図書室で読んだ時の恐怖は呪い級でした…。でも、自分の中で今回物語の元ネタになってくれたっぽいから少しは克服できたのかな。

こちらの物語は後に続編化になりました。準備中のためショートショート版をこちらにあげておきます


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★2015/6/16
物語ブログ『1001夜ショートショート』開設・祝2周年となりました。これも応援して下さったみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。マイペース更新ですが、これからも『1001夜ショートショート』をよろしくお願いいたします^^

最終更新(2015/06/22)
予約投稿の関係でアルファポリス様の方が若干更新が早くなっています(一日ほど)。お急ぎの方はアルファポリス様をチェックしてみて下さいね。申し訳ありません。
※パスワード入力が必要と表示されるものはアルファポリス様限定公開作品ですので、ここでは閲覧できません。お手数ですが、アルファポリス様(無料)をご利用ください。予約投稿中の作品もあり。詳細は下記。
【アルファポリス様限定公開】  長編作品紹介
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-256.html
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【第245夜】 亡き王女のためのパヴァーヌ  ジャンル:友情/ショートショート 
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― ねえ、私の“美しい”はあなたにどう響く? ―

   *

放課後、誰もいない音楽室でピアノを弾いていると、一人の少女が私に声をかけてきた。

「あなた、絵のモデルになってくれない?」

確か隣のクラスの子だ…。顔は覚えているのに、名前が思い出せなかった。

「…私のこと、知らない?カセイよ。カセイジュンコ。美術部なの」

眉の上で切りそろえた前髪が似合う整った顔立ち。自らがモデルと名乗ってもいいような美少女。それがカセイジュンコだった。

「どうして私なんかをモデルに…?」

そんな彼女に比べ、私は麗しい美貌には程遠い。戸惑う私を見て、目の前の美少女はおかしそうに笑った。

「あなた、とても素敵よ」

そんなことを言われたのは初めてだった。つい顔が赤くなる。

「あなたのピアノ、素敵だったわ」
「…なんだ、ピアノか…」

勘違いした自分が恥ずかしくて、赤くなった頬を両手で隠そうとすると、彼女のひんやりした手がそれをとめた。

「そう。あなたのピアノが素敵。…こう言えば安心する?」

人を試すような表情。聡明さを感じさせる瞳。先に美しさにとらわれたのはどっちだったのだろう…?

「今度コンクールで弾く曲なの。ありがとう、誉めてくれて。えーっと、カセイ…さんだっけ?」
「ジュンコでいいわ、ミナガワさん。私もヒデコって呼ばせてもらうから」
「…どうして、私の名前を知っているの…?」

私の指に彼女は自分の指をからめた。

「あなた、自分の魅力に全然気づいてないのね」
「え?」

そして、静かに微笑んだ。パッと、からめた指を離す。

「じゃあ、明日またここで会いましょう」

少し強引で神秘的な少女。彼女はまだ自分に自信のなかった私を見つけてくれた。

「よろしくね、モデルさん」

   *

カセイ ジュンコ。

その名を学校で知らない者はいなかった。

翌日、同じクラスの美術部の子に彼女のことをたずねると、唾を飛ばすような勢いで彼女のことを力説された。史上最年少で美術展に入選した少女画家だということ。彼女の絵は人物や風景を描きながらも現実を越えた表現力があること。凄味のある色彩感覚に圧倒されること。高校の美術部に籍を置いてはいるが、自分の作品作りのため、ほとんど参加することはできず、幽霊部員に近いこと。でも、顧問も部員も彼女をとがめることはないこと。それはみんな彼女の才能にほれているからだということ…。

北国で花開いた孤高の芸術家。時の人。天才画家という名の美少女。結局、放課後の音楽室で私が彼女のモデルを引き受けることにしたのは、そんな彼女が自分に興味を持った理由を知りたかったからかもしれない。

「ジュンコって凄い人だったのね…」

私が呟くと、カセイジュンコは笑った。

「でも、そんな私をヒデコはよく知らなかったじゃない?」
「…ごめんなさい」
「いいのよ、知らなくて。名声なんてうっとうしいだけよ」

ジュンコはどこか客観的で冷めたところがあった。

「そういうものなの?」
「そういうものよ。私は絵を自由に描ければいいの。こんなふうに、誰かさんをモデルにしたりしてね」

いったい私の何が彼女をひきつけたのだろうか…?照れくさくなって、私はジュンコに話題を戻した。

「学校に飾ってあるジュンコの絵を見たの。とても感動したわ」
「そう?ありがとう」
「あれって自画像なの?」
「そうよ、私なの」
「目が離せなくて…なんて言えばいいのかしら?…ただもう、美しかった」

その感想にジュンコは笑った。私は恥ずかしくなった。

「…いやね。“美しい”なんて感想。私が使うと、その言葉はなんとも陳腐な響きになってしまうわ」
「ヒデコ?」
「きっと、私自身が陳腐なせいね。ごめんなさい」

自分で言ってて情けなくなる。それを聞いたジュンコはデッサンする手をとめた。スケッチブックを閉じ、私に優しく訴えた。

「ねえ、ヒデコ。私、音楽なんてこれまで全然興味がなかったの。特にクラシック。古くさくて、かたっくるしくてね。でも、ヒデコのピアノをきいて好きになったわ」
「え?」
「ヒデコのおかげで気づいたの。クラシックは演奏する人を選ぶのね。人によって音の響きが全然違う。生み出す世界が違うのよ。私はあなたのピアノ演奏をとても美しいと思った。そんなヒデコは陳腐なのかしら?ねえ、私の“美しい”はあなたにどう響く?」

人を試すような表情。聡明さを感じさせる瞳。先に美しさにとらわれたのはどっちだったのだろう…?

「…こう言えば安心する?」

私だったのだろうか?ジュンコだったのだろうか?

「あなたのピアノをきかせて、ヒデコ。私たちが初めて出会った時に弾いていた曲がいいな」

放課後の音楽室に西日がさしこんでいた。その光りが眩しくて、瞬きを繰り返す。

「もしかして、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ 』?」
「うん。それ!」
「しょうがないなあ。じゃあ、私の王女様のために一曲、弾きましょうか!」
「…ちょっと、私は死んでないわよ!」

ふたりで笑った。あふれる涙を振り払うように、私は彼女に語り出した。

「ラヴェルはね。晩年、記憶障害になってしまうの。かつて自分で作曲した『亡き王女のためのパヴァーヌ 』を聞いて、こう言ったらしいわ。『とても美しい曲ですね。どなたが作ったんですか?』って。彼は自分が作曲したことを忘れてしまったけど、美しいと感じたことは忘れなかったのよ」

自分のピアノ演奏にのせて、好きなラヴェルのエピソードを語る。それが彼女のくれた言葉に対する返事になればいいと思った。感謝の言葉になってくれるといい、と。彼女はそれをどう受けとめてくれたのだろうか?

― ねえ、私の“美しい”はあなたにどう響く? ―

「もしかしたらこの世で一番美しいのは、誰かの記憶に“美しい”と残せることかもしれないわね」

そう言ったジュンコが忘れられなかった。

   *

カセイジュンコが湖畔のホテルで消息を絶ち、阿寒で凍死体となって発見されたのは、それからしばらくたってからだ。

自殺の可能性が高いと聞き、私はショックからかピアノが弾けなくなってしまった。あの音楽室に近づくこともできなくなった。彼女の死は謎に包まれたまま月日は流れ、ようやく忘れかけた頃、彼女のお姉さんが私の元に訪れた。実家を整理していたら、ジュンコの描いた一枚の絵が見つかったという。それをわざわざ持ってきてくれたのだ。

「妹はあなたをモデルに絵を描いてたみたいなんですよ」

スケッチブックにデッサンをしていたことは覚えている。でも、きちんと絵に仕上げていたとは知らなかった。お姉さんが見せてくれたジュンコの絵に私は息をのんだ。そこには、ピアノ演奏をするあの頃の私の姿が描かれていた。

― あなたのピアノをきかせて ―

音楽室にさしこむ西日が眩しい。

自分に自信のなかった私をジュンコはみつけてくれた。優しくしてくれた。彼女と過ごした時間はとても短かったが、輝かしいものだった。…ねえ、ジュンコ。あなたもそう思ってくれていたの…?

「ヒデコさん?」

お姉さんが心配そうに私を見つめていた。

「すみません。いろいろ思い出してしまって…」

あふれる涙を振り払うように、私はお姉さんに語り出した。

「ジュンコさん、私のピアノをとても気に入ってくれてたんですよ。良ければお姉さん、私のピアノを聞いてくれませんか?あの頃みたいに弾けるかわかりませんが…」

お姉さんは静かに微笑んだ。それに勇気づけられるように、私はずっと弾いていなかったピアノの前に座った。調律は大丈夫のようだ。

― こう言えば安心する? ―

人を試すような表情。聡明さを感じさせる瞳。私の弾くラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ 』が好きだと言ってくれた。記憶の中の美しい王女様に私は語りかける。

― ねえ、私の“美しい”はあなたにどう響く? ―


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ドキュメンタリー『もう一つの阿寒に果つ』×ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』★

ちょっと前に女優の宝生舞さんの行方がわからないと言ったニュースが流れていて、それで思い出したのが昔見た加清純子(画家)のドキュメンタリー。阿寒で謎の死を遂げた少女画家を宝生舞さんが演じていました。その動画を発見。もう一度見たいと思ってたから嬉しかったな。私が実在の人物を描く場合は(歴史モノも含め)勝手な虚飾がいっぱい。半分フィクション感覚でお読み下さると嬉しいです。(というわけで作中の登場人物名は片仮名表記。主人公はドキュメンタリーに出ていたご友人ふたりの名前から)

① ドキュメンタリー『もう一つの阿寒に果つ』
宝生舞さんが加清純子を演じ、雪の中を歩く姿がとても印象的でした。企画考えた人、ナイスキャスティング!
前編http://www.nicozon.net/watch/sm11818123
後編http://www.nicozon.net/watch/sm11818227

② ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』
クラシックは私の中でラヴェルかな。
ピアノ版http://nicotter.net/watch/sm3792526
管弦楽版https://www.youtube.com/watch?v=IcVTq4FnSVc

良ければ、こちらもどうぞ。ラヴェルは『水の戯れ』が一番好き。
辻井伸行/水の戯れ(ラヴェル)
http://nicotter.net/watch/nm8385632

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※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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私は幻影(いりゅう)の父親の前に座った。これから自分がやることは、彼が一番効果的だと踏んで。

「お前はお淑(とし)だっけ?俺のお酌でもしてくるのかい?」

いい感じに酔いもまわっているのだろう。幻影の父親は陽気で、顔も赤くなっていた。これならうまくやれるかもしれない。素面(しらふ)だと警戒されるだろうから。私はニッコリした。

「お酌の前に、旦那様のお顔をよく見せて下さいな」
「え?」
「失礼いたします」

私は彼の顎をクイッと扇子で持ち上げた。さっきお蔵さんに自分がされたように。今度はそれを同じようにこの人に…。

「何をするかと思えば…」

すぐそばで、お蔵さんの笑う気配がした。

そう。私には大した特技なんてない。でも、要は人の心をつかめばいいんでしょう?お蔵さん、あなたを見て感じたこと、学んだことを早速やらせて…、いや、真似させて頂きます。私は無遠慮に、彼の顔を覗き込んだ。

「おおー、最近の子は大胆だねえ。おじさん、照れちゃうじゃないか」

幻影の父親は息子そっくりの三白眼をぱちくりさせていた。顔も心なしか、さらに赤くなっている。珠露にお化粧してもらってよかった~。そうでなきゃ、この顔でひきつけられる魅力なんて微々たるものだったろう。よし、あとは私の演技次第だ。(ちょうどこの時、遠くの三弦が奇妙な音色を奏でた。どうも音が外れたらしい。←こちらの異変に気づき、珠露動揺中!)

「私は人の顔を見て占うことができるのです」

私の台詞に幻影の父親は興味深そうな顔つきになった。

「へー、占いかい?本当に当たるのかねえ?」
「私の占いは、おかみ直伝なんですよ!(ウソ)」

そう言ってお蔵さんをちらっと見やる。これで彼女は下手に私をいじれないんじゃないかしら?お蔵さんの小さな舌打ちが聞こえたような気がした。

「まあ、いいさ。お手並み拝見といこうじゃないか」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

しばらく影響を受けた作品紹介を省略します。

★ YUKI ★
『鳴いてる怪獣』
https://www.youtube.com/watch?v=RKhOk-Ym-yg
『ランデヴー』
https://www.youtube.com/watch?v=r55074Ici6c

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次回更新まで、しばらくお待ちください。待たれている間に、こちらの物語なんぞどうでしょうか?
【第51夜】 少年の夢(中華風のお話。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
【第57夜】 笠森お仙騒動記
(淑玲に似た気が強いヒロインが登場します。ちなみに舞台は江戸。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-61.html
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【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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「おかみ、ちょっとこれを貸して下さいな」

私は離れていくお蔵さんの扇子の先を軽くつまんだ。

「お、何だい?舞でも見せてくれるのかい?」
「いいえ」

舞ね。できたら良かったんだけど、残念ながら私に芸才なんてこれっぽっちもない。楽器も弾けないし、歌も特別上手いわけじゃない。舞や踊りなんてもってのほか…。

「?」顔になるお蔵さんに私は微笑んだ。

「実は特技っていう特技がないのが私なんですよ。だから、ない頭をフル回転させるしかないんです」
「どういうことだい?」
「じゃあ、これをお借りしますね?」

私は彼女の手からすっと扇子をひき抜いた。きっと私ができることは自分が今まで見たこと、学んできたことを生かすことくらいだ。

ここですべきことは、客である幻影と菊恭の父親たちをうまく接待すること。でも、それだけで終わらせたくないのが本音だ。せっかく幻影と菊恭の父親がいるなら、息子たちに関する情報も手に入れたい。

それらをひっくるめて、私がここでできることは何だろう…?

知恵を絞らなきゃ。

お蔵さんがやっていたように、私は自分の口元を隠しながら扇子を広げた。それからある人物に狙いを定め、目だけで微笑んでみせる。

「そちらの旦那様、ちょっとよろしいですか?」

そう言って私は彼に近づいた。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

しばらく影響を受けた作品紹介を省略します。

★ YUKI ★
『鳴いてる怪獣』
https://www.youtube.com/watch?v=RKhOk-Ym-yg
『ランデヴー』
https://www.youtube.com/watch?v=r55074Ici6c

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【第51夜】 少年の夢(中華風のお話。1話完結です)
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【第57夜】 笠森お仙騒動記
(淑玲に似た気が強いヒロインが登場します。ちなみに舞台は江戸。1話完結です)
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最終更新(2015/06/04)
予約投稿の関係でアルファポリス様の方が若干更新が早くなっています(一日ほど)。お急ぎの方はアルファポリス様をチェックしてみて下さいね。申し訳ありません。
※パスワード入力が必要と表示されるものはアルファポリス様限定公開作品ですので、ここでは閲覧できません。お手数ですが、アルファポリス様(無料)をご利用ください。予約投稿中の作品もあり。詳細は下記。
【アルファポリス様限定公開】  長編作品紹介
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-256.html
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こちらの長編「或るアプレ記者の回想(仮)」のみ、アルファポリス様から引きあげました。申し訳ありません。

ちょっと自分にとって特別な物語になりそうだったので、きちんと本家のこちらでUPしたいなあと思い直しまして。まあ、アルファさん向きじゃなかったし、ひきあげても大丈夫かなと。正直、私的にこれ書ければもう物語かけなくてもいいってくらいに思ってて。その理由が自分でもよくわからないのですが、だからこそ特別な物語なのかな?書き終わる頃には、その謎も解けてくれることを願って。

★或るアプレ記者の回想(仮)
内容:「フクダさん、俺に言いましたよね?アプレ記者の資質があるって。なら見定めて下さいよ。俺が本当にそう なのかどうか…」昭和25年7月。就職活動がうまくいかない京大生・ヨシダは歴史を揺るがす或る事件(金閣寺炎上)に遭遇する。知り合いの手を借り、新聞記者に扮して現場に忍び込んだヨシダは徐々に事件の真相に近づいていくが…。 *聞いてた音楽* サカナクション (長編/歴史/青春/文学/ミステリ)

良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 『或るアプレ記者の回想(仮)』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-314.html
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或る警部見習いの筆記より


以下、取り調べ中に被疑者が残した走り書きの文章である。



『 …生とは如何?


   死とは如何?


   生死なんて全く無意味だ… 』



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引用文献
・水上勉『金閣炎上』
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今回、短くてすみません。アルファさんにUPしていたのがここまでだったので、一応ここまでUPしときますね。続きは7月以降に書く予定です。会社を辞めた後、この物語はじっーくり書きたいと思っています。本当はこれ今一番書きたくて書きたくてたまらないんですけども!しばらくサカナクション聞くの禁止だな。続きの物語が、声が、勝手にはじまってしまう…。うっかり『 さよならはエモーション』聞くんじゃなかった。うおー、早く書きたいよー!我慢だー!

内容のネタバレの可能性があるかもしれないので影響を受けた作品の詳しい紹介はラストに。同じ理由から、コメント欄も閉じさせて頂きました。申し訳ありません。1話で全ておさえたかったんですけど、やっぱり長くなりそうなので。さあ、頑張って続きを書かねば!あ、これくらいは紹介できるかな。

★ サカナクション『 さよならはエモーション』
https://www.youtube.com/watch?v=87wf45zW5NA&list=PLEMtQqMXOVVH3ObKIVv9kzdSk_T6g7rdH&index=4

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※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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「お珠(たま)はしばらく演奏。あそこから動けないし、動かす気もない。あんたは一人でここを乗り切らなきゃならなくなったねえ」

お蔵さんは試すように私をみて微笑んだ。

「ただ黙ってここにいるだけかい?みてるだけなんてつまらないだろう、お淑(とし)?」

そう言って、持っている扇子で私の顎をまたクイッと持ち上げた。前言撤回!この人、私をいじめる気満々でした。

「さあ、どうする?嬢ちゃん」

嬢ちゃんに呼び方も逆戻りだ。俊楽堂で男の子たちに認められる前に、私はここでこの人に、蹊国(けいこく)の女傑に、認められなくちゃいけなかった。

一生懸命、みんなの前で三弦をひく珠露に心の中であやまる。守るっていってくれたのにごめんね、珠露。でもね…。

「…私はここに女だからって守られに来たんじゃないわ」

珠露、あなたが変わろうとしているように私も自分のことを変えにきたのよ。俊楽堂で学問を学ぶために!

「そうこないとねえ。じゃあ、お前の特技でも披露してもらおうか?」

お蔵さんがみんなに聞こえるように大きな声で言った。幻影(いりゅう)と菊恭(きっきょう)の父親もこちらに視線を向ける。お蔵さんは私の顎からゆっくりと扇子を離した…。

ー さあ、お前の力をみせておくれ ー

私は大きく息を吐いた。

のぞむところだ!



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

しばらく影響を受けた作品紹介を省略します。

★ YUKI ★
『鳴いてる怪獣』
https://www.youtube.com/watch?v=RKhOk-Ym-yg
『ランデヴー』
https://www.youtube.com/watch?v=r55074Ici6c

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次回更新まで、しばらくお待ちください。待たれている間に、こちらの物語なんぞどうでしょうか?
【第51夜】 少年の夢(中華風のお話。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
【第57夜】 笠森お仙騒動記
(淑玲に似た気が強いヒロインが登場します。ちなみに舞台は江戸。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-61.html
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