※良ければ、先にこちらをどうぞ。
【目次】 淑玲『宮廷浪漫』シリーズ 【作品紹介】
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-253.html
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珠露に案内された俊楽堂の厨房は彼の言ってた通り、大きかった。しかも広くて小奇麗だ。でも、これって…。

「…使ってない奇麗さだわ…」

目の前の厨房は使っては掃除をしてという磨きこんだ奇麗さではなかった。大きな鍋や立派な包丁などの料理器具一式がせっかくそろっているに、それらは所在なさそうにしている。

「しょうがないよ。今ここで暮らしてるのって先生くらいだし。男の一人暮らしなんてそんなものじゃない?料理なんてしないで、どこかで食べてすますんじゃないかな」
「え、男の人ってそういうものなの!?」

と私が驚いていると、

「え、そういうものじゃないの?」

と珠露が逆に驚いて聞き返した。もしかして、みんながみんな、うちのような感じでもないのかしら?私は珠露に我が家の事情を説明した。

「うちの家はね、一応みんな簡単な料理くらいはできるの。父様も兄様もね。うちは八百屋だから、お客さんに野菜を買ってもらわなくちゃいけない。だからお客さんが野菜を買う時に、一緒に野菜料理も紹介できたほうがいいって。そのために、料理ができなくちゃいけないって…」
「へえ~。すごいなあ、淑玲の家は!たぶん、他の家じゃ料理って女の人任せだと思うよ」

と彼は感心しきりだ。…ん?ということは…。

「ここに通うみんなのお弁当って、だいだい母親任せってこと…?」
「まあ、そうだろうね」

そういえば、肉屋の真野の母親に「うちの息子に、お昼の握り飯を届けてほしいの」と頼まれたことを思い出す。そのことがあってここに来れたわけだけど、俊楽堂に通っている男の子の母親は自分のお店のこともあるのに、お弁当作りも頑張ってるってことよね。それって毎朝けっこう大変なんじゃ…?

― お弁当作り? ―

…目の前には使われていないけど、料理器具が一式そろっている大きな厨房…。
…私は決して得意ってわけじゃないけど、料理ができる…。

「…これはいけるんじゃ…?」
「どうしたの、淑玲?」
「…珠露、見つけたかもしれない。私がいたら利点(メリット)ありってアピールできる効果的な方法!」

うまくいけば、俊楽堂に通う男の子だけじゃなくて、彼らの後ろにいるだろう母親たちの心をつかめる。きっと彼女たちは歓迎するんじゃないだろうか?母親の心をつかめれば(母親を味方にできれば)、こっちのものだ。彼女たちの意見に口答えができるほど、ここにいる男の子たちはまだ大人じゃない。

「淑玲、本当に?」
「たぶん商店街組はいけると思う。もしかしたら花街組も…。でもそのためには私、きちんと花街組のことを知らなくちゃいけないわ…」

私は珠露を見つめた。

― きっと花街にも事情があるんだ ―

珠露は観念したように笑った。

「…気づかれるとしたら、まず淑玲だと思ったんだ」

― あそこは男が権力をにぎってるわけじゃないから ― 

彼から女物のお香の香りがしたこと。自分は一人っ子と言っていたこと。でも、彼の家には女の人がいるだろう。それはたぶんお弁当をわざわざ作ってくれるという、おばあさんの他にも…。

― 坊ちゃん風情が調子にのるなよ! ―
― 俺は貴族のボンボンだと思うね ―

彼は坊ちゃんかもしれないけど、たぶん貴族じゃない。

― その坊ちゃん風情に食べさせてもらってるのはどこの人たちだろう? ―

花街の権力を握っているのは、きっと幻影(いりゅう)や菊恭(きっきょう)の家じゃないんだわ。

珠露が言った。

「花街にはね、大きな大きな妓楼があるんだ。富黄楼(ふうきろう)っていうんだけど、知ってる?」

私は首を横に振った。

「富黄楼のおかみは凄い人でね。本当はその人が花街の権力を握ってるんだよ」

先生が私のためにそろえてくれた組分けの面子にはきっと意味がある。

彼は淋しそうに笑いながら、こう教えてくれた。

「僕はその富黄楼の跡取りなんだ」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『相思相愛 』 ×  森薫『乙嫁語り』 ★ 

休みの間に、どれだけ書けるか…。ちなみに富黄楼(ふうきろう)のモデルは日本の富貴楼です。読み方は一緒で漢字だけ変えました。

① YUKI『相思相愛 』
https://www.youtube.com/watch?v=tNT-6iB9I6M
YUKIを聞いていれば、淑玲の物語はなんとかなる!そう思って毎回聞いています。

② 森薫『乙嫁語り』
http://booklive.jp/product/index/title_id/141282/vol_no/001
少年漫画(青年漫画)です。舞台は19世紀の中央アジア。美貌の娘・アミル(20歳)が嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。遊牧民と定住民の日常、歴史、文化などが描かれています。特に民族衣装が細かい細かい。資料を見て描いたじゃなくて、この漫画自体が資料なのではという感じです。気になる8歳差という年の離れたカップルですが、アミルさんがすごくいい子というかできたお嫁さんで応援したくなるんですよ~。


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次回更新まで、しばらくお待ちください。待たれている間に、こちらの物語なんぞどうでしょうか?
【第51夜】 少年の夢(中華風のお話。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
【第57夜】 笠森お仙騒動記
(淑玲に似た気が強いヒロインが登場します。ちなみに舞台は江戸。1話完結です)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-61.html
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とりあえず、私は状況を整理してみた。

「聞きたかったんだけど、この4人以外の商店街組は、私のことをどう思ってるの?このままじゃ認めてくれないっていうのは平勝がさっきいってたけど。ぶっちゃけ、私に対する商店街組評価はどの程度のものなの?」

4人は顔を見合わせると、苦笑した。…え、苦笑(失笑)?私、へんなことを言ったかしら?

「自分でそれを聞くのがすげえな。まあ、淑玲を毛嫌いしてはないけど、印象はかなり悪い。さっきのでさらに」と平勝(へいしょう)。
「俺らがうまくフォローしてギリ認めてくれそうってとこかな。でも、それじゃあ、淑玲とあいつらは、かりそめの友情ってやつじゃない?」と渾沌(こんとん)

なるほど。

「ってことは最悪みんなの力で、商店街組は私を認めてくれそうなのね」

私があっさりそういうと、すかさず

「おいっ!最初から俺ら(僕ら)頼みかよ(なの)っっ!?」

という総ツッコミがきた。

「っていうか、自分がよく思われてないことを聞いて少しも落ち込まないのが凄いね。さっきまで泣きそうだったのに…」と真野(まの)。

私はにっこりと笑顔で返した。

「さっきまでは一人でどうにかしなくっちゃって全部抱え込んでたから、すーっごく苦しかったのよ。でも、今は違う。みんながこうやって相談にのってくれて一緒にどうすればいいか考えてくれる。助けてくれるじゃない?そういう人たちがいるだけで心強さは全然違うわ。そうでしょう?」

私の発言にみんな一瞬黙り込んでから、また苦笑した。でも、今度は少し照れながら…。

「おまえ、あれだな」と平勝。
「よく恥ずかしいことを堂々と言えるよ」と渾沌。
「淑河(しゅくが)もそういうところがあるけど…」と真野。
「なんか人たらしというか…ね?」と珠露。

…人たらし…?…なんかそれってあんまり、いい意味じゃなさそうな…?気のせい?

「まあいいわ!(←「いいんだ!?」再び総ツッコミ)で、話は戻すけど、最悪みんなの力を借りれば、商店街組はなんとかいけるってことね。もちろん最初からみんなに投げるつもりはないわよ。私もきちんと認めてもらいたいから。でも、地道に時間をかけて仲良くなるって方法は今回はまずないのよね。期限は二日だから」
「期限二日って、明後日の昼までかー」
「短いなー」
「そうなの。何より時間がないのよ。だから、手っ取り早く私がいたら利点(メリット)ありっていうアピールが効果的な気がするんだけど、それを講義中かそれ以外の休み時間でどうやってするかっていう…。講義中ってもう花街組のあの二人に対する防御しか余裕ない気がする…」

あの三白眼と白蛇の顔が忘れられない。あいつらはなんだかんだと小ズルいのだ。

「…でも、防御だけしててもな。結局はあいつらも認めさせないといけないんだろう?全員認めないとダメって先生、いってなかったっけ?」

そう。そこが最大の難点…。でも、さっきの彼らに対する珠露のやり方を見て、ちょっと何か閃きそうになったのだ。まだ具体的にこれだ!とはいえないんだけど…。

「あ、そういえばさっき珠露の…」
「え?」

― 珠露の言ってた花街組の事情ってなに? ―

私は言いかけて慌てて言葉を飲みこんだ。その件は、簡単に聞いてはいけないような気がした。たぶん珠露の素性に関わることだ。これはあの時のやりとりを見て感じたこと。思い当たったこと。まだ確信ではない、勘でしかないけど…。

「…そう言えばさっき珠露の…お弁当、おいしかったわね!」

私がそう言い直すと、

「なんだよー、淑玲。腹が減ったのかよー」

と他の三人が笑った。さすがにちょっと無理やりすぎただろうか?苦笑していると、当の珠露が私にあたたかな笑顔を向けてくれた。

「そういえば、おやつの胡麻団子がたくさんあったんだ。みんなで食べようよ。おいしいお茶も飲みたくない?淑玲、一緒にお茶を淹れに行こうよ。まだ案内してなかったよね?ここには御膳房(ごぜんぼう/宮廷の台所)とまで言えないだろうけど、わりと大きな厨房があるんだよ」
「そうなんだ。私もお茶を淹れるの手伝うわ」

私たちは一緒に立ち上がった。

― そこでさっきのことを話すよ ―

なんとなく珠露にそう言われたような気がした。


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『ひみつ』 ×  原泰久『キングダム』 ★ 

休みの間に、どれだけ書けるか…。書いては寝て、書いては寝て…を繰り返してて、あんまり休みの感覚がありません。曜日の感覚も。30日は出社日なので、忘れないようにしないと。

① YUKI『ひみつ』
https://www.youtube.com/watch?v=6AgspVD_ozg
YUKIを聞いていれば、淑玲の物語はなんとかなる!そう思って毎回聞いています。

② 原泰久『キングダム』
https://www.youtube.com/watch?v=Zeu8uPUoxwM
少女漫画系が続いたので、このあたりで少年漫画系を。孤児で奴隷の信(しん)と漂(ひょう)の将来の夢は武功を上げ、大将軍になること。そんなある日、漂が皇帝の影武者に選ばれ、戦乱の犠牲になってしまう。漂と最後に交わした約束を果たすべく信は皇帝(後の始皇帝)を助けようとするが…。奴隷→歩兵→小隊長→部隊長そして…。と上り詰めていく信があついです。しかも女性キャラも軍師や剣豪だったりして、カッコいいんですよ。私は信の才能をいち早く見抜いた王騎(おうき)将軍が好きでした。一見オカマさんっぽいんですけど、超強いんですよ。


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「おいおい、淑玲!なんだったんだよ、さっきの講義は…」

講義があっけなく終わって、何もできなかった私がしょんぼりしていると、商店街仲間の魚屋の息子の平勝(へいしょう)が、自慢の白い歯をしまい、厳しい口調で言った。

「なんだ、あれ。お前らの組はいいかもしんないけど、こっちはさっぱり得点取れなくて大迷惑だったわ!…つうか結局、場を制したのも、淑玲じゃなくて珠露っぽかったじゃん。お前、何やってんの?」

その通り過ぎて、何も言えない…。

「花街組どうこうっていうより、このままだと俺ら商店街組もお前を認めらんねえぞ?」

平勝は仲間の中で一番失礼な物言いをするけど、嘘は言わない。彼の意見はそのまま商店街組の意見なのだろう。

「まあ、俺は『淑玲は、失敗する』に賭けたからさ。ぶっちゃけ知ったこっちゃないんだけど、俺以外のやつはズバッと本音を言わないだろうから、とりあえず俺が言っとくわ。…お前、何しにここに来たんだよ!」

私は顔を上げられなかった。悔しさでいっぱいだった。本当そのとおりだ。

― お前、何しにここに来たんだよ! ―

「平勝、ちょっと言い過ぎ!」

キツネ目の酒屋の息子・渾沌(こんとん)が間に入り、平勝を軽く小突いた。

「お前はただでさえ口が悪いんだ。もう少しうまくやれよ。あ、この『もう少しうまくやれ』は淑玲にも言えるかな?俺は『淑玲は、うまくやる』にかけたからさ。こいつよりは優しくアドバイスするからね」

渾沌の口調は優しいけど、もちろんそれだけじゃない。言いたいことはきちんと伝える。

― もう少しうまくやれ ―

悔しさを通り越して少し泣きたくなっていると、渾沌は今度、私の頭を小突いた。

「涙に逃げんなよ。『だから女は…』って言われるのがオチだ」
「そうだよ。これからじゃん、淑玲」

人のいい肉屋の息子の真野(まの)が明るい声で私を励ます。

「僕らがこんなふうに淑玲に色々言うのはさ、淑玲(すうりん)が淑河(しゅくが)の妹ってだけじゃないんだよ。なんだかんだと僕らは淑玲に期待してるんだ」
「え?」

意外なことを言われて、私は顔を上げた。

「淑河(しゅくが)がね、よく言うんだよ。淑玲は見ててあきない。とても面白いんだって。いつも思ってもみないことをやってみせるから。次は何をするんだろうってワクワクするんだってさ!」

…兄様がそんなことを…?

「淑河は一見うっかり者でとろいけど、俺らのこと、人のことを、よく見てる。だから、あいつは友達が多いんだ。お前、妹のくせに知らないだろう?」

平勝はそう言って、自慢の白い歯を見せた。渾沌も腕を組んで頷く。

「俺らだけじゃなくて、あいつの期待も裏切んなよ。俺らもできることはするから」
「もちろん、僕もね」

今まで私たちをあたたかく見守っていた珠露も手を上げ、人なつっこい笑顔を見せてくれた。私は大きく息を吐き、意識を切りかえる。このまま、落ち込んでても無駄に時間が過ぎていくだけだわ…!

「みんな、ありがとう!私、自信過剰だったかもしれない。一人でなんとかできるって心の中でちょっと思ってた。でも、実際は全然ダメだった。…良ければ、みんなの力を貸してくれない?」

それを聞いて平勝、渾沌、真野、珠露の4人が力強く笑ってこう言った。

「そうこなきゃ!」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ YUKI『クライマー・クライマー』 × 可歌まと『狼陛下の花嫁』 ★

休みの間に、どれだけ書けるか…。とりあえず淑玲、今日は二作UPいけるかな?

① YUKI『クライマー・クライマー』
https://www.youtube.com/watch?v=FTneJBdwouk&list=RDY_C1tlM6DkE&index=11
YUKIを聞いていれば、淑玲の物語はなんとかなる!そう思って毎回聞いています。

② 可歌まと『狼陛下の花嫁』
http://booklive.jp/product/index/title_id/200984/vol_no/001
貧乏庶民の主人公はある日、国王のニセ妃というアルバイトをやることに。それは王様がたくさんある縁談話を断るためでした。なので、偽物カップルが本物カップルになるまでのお話かな?と思うのですが、けっこうじれじれ展開です。ちょっと天然だけど、頑張り屋の女の子が庶民目線で様々な宮廷のもめ事を解決する姿がかわいい。


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席替え後、講義が再開したのはいいんだけど…。

「では、次の問題を…」
「はいはいはーい!」

先生の出す問題に、私と同じ組になった俺様気質の三白眼・幻影(いりゅう)が勢いよく手を上げる。

「おや?また幻影だけですか?では幻影、答えて下さい」
「―――です!」
「はい、正解です。それでは次の問題を…」
「はいはいはーい!」

得意げにまた幻影が手を上げた。一瞬他の組の人たちも手を上げようとするんだけど、みんな幻影に怯えて、すぐ手をおろしてしまうのだ。幻影が間違ってくれればまた違う展開に行きそうなものなんだけど、彼がずっと正解を当ててしまうのもよくない。それもそのはず、だってさっきから彼の答えは私が隣りでこっそり教えているんだから…。

「んで、次の問題の答えは何なんだよ?女!」
「……」
「お前が答えても、みんなの反感をかうだけだろう?だから、俺が代わりに答えてやるって言ってんだ!同じ組になってやったの感謝しろよ。ありがたく思え、女!」
「……はあ」

白蛇に似た風貌の菊恭(きっきょう)がそれを見て可笑しそうにくすくす笑っている。

「案外使えてよかったじゃん、その女の子。女の子にしてみれば、また『やられた!』ってとこだと思うけど…」

幻影も相当たちが悪いけど、そういう菊恭も充分たちが悪いわよ。…でも今は、ただただ、そう言いかえせない自分が悔しい。とりあえず、下手(したて)にでて様子をみようと思ったのが間違いだった。ご機嫌取りのつもりで答えを教えたのも。まさか、いいように使われるとは…。さっきからずっとこんな調子で講義が続いているのだ。

「結局、これじゃ得点をとれないまわりの組の反感をかっちゃうね…」

この面子の中で、唯一の仲間である珠露(しゅろ)のまっとうな意見に私はうなずいた。

「…組分けてやろうって提案した私が一番恨まれそうだわ…」

私たちの会話が聞こえたのか、菊恭がまた可笑しそうにくすくす笑った。

「こんなところに女の子一人で飛び込んでくるのが、そもそも間違いだったんよ。俺たちはただでさえ、君みたいなタイプの子を目の敵にしてるのに…」
「…どういうこと?」
「気付いてないの?まあ、気付いてたらここには来ないよね…」

彼はもったいぶって、なかなか言おうとしない。すると、幻影がバッサリと切れ味たっぷりに言ってくれた。

「でしゃばりなところに決まってんだろ!女は家で大人しくしてりゃいいんだ!足でも広げて、待ってりゃいいんだよ。ほら、さっさと答えを言えよ、女!」

彼らを見かねた珠露が止めに入ってくれた。

「淑玲、気にすることないよ。きっと花街にも事情があるんだ。あそこは男が権力をにぎってるわけじゃないから」

珠露が一瞬凄味を込めて言うと、幻影はすごい形相で彼を睨み返した。

「…坊ちゃん風情が調子にのるなよ!」

それを聞いて、今度は珠露が可笑しそうに笑った。

「その坊ちゃん風情に食べさせてもらってるのはどこの人たちだろう?」
「…こいつ!」
「幻影!もうやめた方がいい。そいつはだめだ」

菊恭が幻影を慌てて止めた。私が戸惑っていると、珠露がいつもの笑顔に戻って言った。

「ごめんね、淑玲」
「…珠露、今のやりとりって…」
「きっと彼らも冗談が過ぎたんだ。ちょっとたちが悪かったよね。さあ、今はこの講義の状況をなんとかしないと。とりあえず、次は僕が答えようかな」

そういうと彼は手を上げ、見事に問題の答えをはずし、まわりに得点の機会を与えたのだった。


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=影響を受けた作品のご紹介=
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★ YUKI『キスをしようよ』 × 鈴木ジュリエッタ『神様はじめました』 ★

淑玲、お待たせしました。早いとこ、彼女を宮廷に戻せればいいなあ。…今年中には(ぼそっ)。

① YUKI『キスをしようよ』
https://www.youtube.com/watch?v=hWWDVhmxmHA&index=1&list=RDSapdRxiz0xc
YUKIを聞いていれば、淑玲の物語はなんとかなる!そう思って毎回聞いています。

② 鈴木ジュリエッタ『神様はじめました』
https://www.youtube.com/watch?v=4r34cbGPpRs&list=PLA9bofQeBB_trR0KPoB76eUnEsGrQCYrg
ある日、突然謎の人物に頼まれて土地神になってしまった貧乏女子高生。最初は戸惑いつつも、頑張り屋の彼女は徐々に神使たちに認められるようになります。神様やら妖怪やら出てきますが、ラブコメ要素もあって、きちんと少女漫画。過去編は泣けました。天狗の鞍馬と「おじさんおばさんおじさん」と呼ばれているオカマの神様は出てくるだけでなんか笑えるんですよね。

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【目次】 『或るアプレ記者の回想(仮)』シリーズ 【作品紹介】
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『 …うちは苦労はなれとります。うちはあの人が、元気出してくれはって、世の中を明るう思わはる日ィまで、つきおうていたげよ思うてますだけどす。あの人にはこの世の中に友だちは一人もおへん。あの人に相談してあげる人はどこにもおへん。ほんまに孤独なひとどっせ。……あの人は時間花とらはっても、あたいとげんつけはったことおへんえ。あの人は、うちのおふとんの中で、何にもせんと、ただ寝ていかはるだけどすえ 』

    *

昭和二五年、七月二日午後。

鹿苑寺(ろくおんじ/通称・金閣寺)は衣笠山(きぬがさやま)と左大文字山に囲まれている。ワカギ警部見習いの話によると、金閣寺を放火した疑いのある若い修行僧は山に逃げた可能性が高いとのことだった。

「放火犯は現場から簡単に離れられないといわれています。自分の起こした火事の大きさ、騒ぎを楽しむ傾向がある。だからと言って、今回の場合は野次馬に紛れているとも考えにくい。坊主頭はやはり目立ちますよ」

ワカギ警部見習いの言葉を、凄腕女性記者のスエツグさんが引き継いだ。

「もし変装するようなやつなら、現場に自分の身元を明かすものを残さないでしょうね。この放火犯は世間に自分が火を放ったことを知ってもらいたいんだと思うわ。ワカギさんの言うとおり、金閣寺をよく見渡せる山の中に隠れてそうね」
「だから、これから山狩りなんですね!」

と私は納得した。生意気にも私は学生の分際で、ある人の手を借り、新聞記者に扮し、現場(金閣寺)に忍び込んでいた。

「でもワカギ警部見習い、山狩りは急いだ方がいいと思いますよ」

と、誰かが口を挟んだ。私に手を貸してくれた知り合いの新聞記者フクダさんである。

「僕の勘ですが、修行僧は自分の身のまわりの物をかたして犯行に及んだと思われます。寝具を燃やして火をつけたこともそう。たぶん修行僧は金閣寺炎上を見届けた後…」

ワカギ警部見習いはフクダさんにその先を言わせなかった。

「……まさか自殺する気か!?」

そのことに気づくと、彼は走り出していた。

「…はやっ!背中がもうあんなに小さい…」

彼の素早さに私が驚いていると、スエツグさんが笑った。

「ワカギさん、いいでしょう?まだ警部見習いだけど、真っ直ぐで、熱くて、お人よしなのよ。これで頂いた情報のお礼はできたかしら?出世してもらわないとね~」
「最後、僕に言わすまでもなかったんじゃないですか。スエツグさんなら、わかっていたでしょう?」

フクダさんが苦笑すると、スエツグさんは可愛らしく舌を出した。

「ごめんなさい。でも一番いいところは男性に譲らないと。まだまだ女の立場って弱いですから」
「ちゃんと恩をきせるあたりがうまいなあ」

フクダさんは愉快そうに笑った。それを見て、スエツグさんも満足げだ。新聞社や性別が違っても、ふたりのあいだには同志という強い絆があるのかもしれない。

「あら、やだ。こんな時間!号外を出すか確認しないと。私、ちょっと社に連絡してきますね」

自分の腕時計に目をやると、スエツグさんも急いでどこかに行ってしまった。

「慌ただしい人たちだなあ」

私がそう呟くと、フクダさんは言った。

「彼女は優秀ですよ。処世術をみにつけているし、適度にしたたかだ。記者には必要なものです」
「俺と彼女は全然違うタイプじゃないですか?なのに、フクダさんは、俺も記者に向いてると思うんですか?」

いつものえくぼを忘れず、フクダさんは笑った。

「ヨシダくんはそうですねえ。君は誰に対しても、それがどんな相手でも、たとえ目上の者でも、自分の思ったことをはっきり言うでしょう?」
「……はあ」
「そこがいいんですよ」

さっぱり意味がわからない。

「物怖じしないのは大きな強みですよ。先輩記者に言われたことですが、記者はどこか勝負師でなければいけないそうです。君は今まさにそうですね。本当は学生なのに、私をうまく使い、記者に扮してここ(金閣寺)に忍び込んだ」
「うまく使いってそんな…。人聞きの悪い」

フクダさんはふっと笑った。

「一見、失礼な言動でもなぜかそれを面白いと思わせる不思議な人間がいます」
「……それが俺だと?」
「さあ、どうでしょうか?ヨシダ君の言ってた通り、僕も見定めようと思いますよ」

― フクダさん、俺に言いましたよね?アプレ記者の資質があるって。なら、見定めて下さいよ。俺が本当にそうなのかどうか ―

「さて、スエツグさんとはここでお別れです。僕たちは僕たちで動きますよ。ようやく迎えも来てくれましたしね」
「え?」

フクダさんの視線をたどり、私は目をみはった。

「お待ちしていました」

そこには若い修行僧が一人、不敵な笑みを浮かべて立っていた。


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引用文献(冒頭)
・水上勉『五番町夕霧楼』 
=====================================

ああ、やっぱり長くなった…。上中下で終わらなそうなので、シリーズ化し、数字表記に変えました。すみません。物語はもう少し続きます。

内容のネタバレの可能性があるかもしれないので影響を受けた作品の詳しい紹介はラストに。同じ理由から、コメント欄も閉じさせて頂きました。申し訳ありません。1話で全ておさえたかったんですけど、やっぱり長くなりそうなので。さあ、頑張って続きを書かねば!あ、これくらいは紹介できるかな。

★ サカナクション『ミュージック』
https://www.youtube.com/watch?v=iVstp5Ozw2o
聞いてた音楽です。サカナクションを聞いてれば、『或るアプレ~』シリーズはなんとかなるなる。

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