「ようこそ、ネバーランドへ」

№511の少年が言った。

「ここは特別な場所、『選ばれた子ども』しか来れないんだ」

生気を失った少年少女たちのたまり場。

「きみは選ばれたんだよ」

どこが特別な場所なんだろう?どこが選ばれた子どもなんだろう?

「おめでとう!」

№511の少年が言った。

「もう大人たちの飼い殺しにあうことはない」

飼い殺し?

「あー、そうか。きみは親を殺してきたんだっけ?」

№511の少年が言った。

「親に虐げられた僕らにとって最高の復讐をしてきたんだね。僕らはきみを歓迎するよ!」

血みどろの手。ひび割れた酒瓶。

「そんな、きみの勇気に乾杯!」

№511の少年が言った。

「さあ、新しい門出だ。きみは何を望む?何でも叶えよう!」

何でも…?

「そうさ!望みを言ってごらん?」

№511の少年が言った。

「了解、きみも名前を消したいんだね。じゃあ、今からきみは、№512だ!」

ようやく胸がすうっと楽になった。

「№512!ようこそ、ネバーランドへ」




=====================================


=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ Fightstar『?』× 浦沢直樹『MONSTER』★

次回作の予告しといて、すみません!どうやらそちらはもう少し時間を頂くことになりそう。なので、先に出来上がったこちらをUPします。青春モノを書いた後ってやっぱりちょっとブラックなものを書きたくなる…のかも。No.511は浦沢直樹『MONSTER』の511キンダーハイムより。本当はそういう特殊な施設の話を書きたかった…のかも。

① Fightstar『?』
http://www.youtube.com/watch?v=x1VkbB4bzDI
アーティストも曲名も不明だった音楽。ずっと探してました。探しまくって今回ようやくアーティストはわかったんですけど、曲名が『Shinji Ikari』って…さすがにこれは違いますよね…?だってこれ某人気アニメのキャラクターですよね…?どなたか、もしこの曲名をご存知でしたら教えて下さると嬉しいです。切ないメロディがなんかグッとくるんです。暗い物語にはもってこいでした。

② 浦沢直樹『MONSTER』
http://matome.naver.jp/odai/2136689426451579801/2136689481251704503
以前UPしたものですが、せっかくなので。「511キンダーハイム」のような話はちょっと私も書いてみたい。浦沢作品の凄さって「コレってもしかしたら実在したの…?」というリアル感にあるのでしょうか。これもラストは驚いた…。(UPした映像はコメントが多いので、吹き出しを押すと消えます)

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みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

なんと!いつの間にか拍手合計が1000をずいぶんと越えていました。

たぶんそれに貢献したらしい前作の『【第112夜】 BLITZ PRETZ (ブリッツ プリッツ)』が35拍手以上を越えてました。

…なんてこったい。
いや、嬉しいんですけど、なんで気づかなかったんだろう。。PC環境から離れていたからかな。

物語ブログを初めて半年ちょっとでしょうか。
これもみなさまのおかげです。本当にありがとうございます!!

とても嬉しいです^^

にしても、『【第112夜】 BLITZ PRETZ (ブリッツ プリッツ)』の拍手の多さにびっくり。
たぶん今のところ、拍手ランキング第1位作品です。
音楽の力でかけたようなものだから、これからもたくさん音楽を聞こうと思いました。
それと、ドライブに連れて行ってくれた仲間たちにも、こっそり感謝しとこう。プリッツも食べよう。

本当だったら、そろそろ次回作の更新をする頃なのですが、PC環境から離れていたため、次の物語を全く書けてません。なので、もう少しお時間を頂くことになるかと思います。

…なんてこったい。
でも、ある作品の続きを書きたいなあとちょっと思っていて、いきなり続編を見て頂くよりも前作であるそちらを読んで待っていてもらうのもありなんじゃないかと思いました。

良ければ、以下作品を読んで待って頂けると嬉しいです^^
(もしかしたら、都合によっては別作品のUPが先になってしまうかもしれませんが…気長にお待ち下さい)

次回作は、こちらの続編予定☆
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-25.html

元々、これは後宮のお話を書きたかったのですが、そこを書く前に終わってしまったという…。初めて中華風のお話を書いたこともあって色々と反省も多く、続きはあきらめていたのですが。。。

私、見てしまったんですよ、アレを…。

お正月休み体調が万全ではなくて外に出られなかったから、一気におうちでアレを見まくったんですね。

アレっていうのは、韓国の歴史大河ドラマ三作品のことなんです!

今まで韓国ドラマを私なめてました。(好きな方、すみません!!大反省!!)
『トンイ』→『イ・サン』→『宮廷女官チャングムの誓い』の順に見たのですが、とにかくすっごく面白い!!!

最近の日本の大河ドラマにはあまりない「続きが気になる!!」「次が早くみたい!!」というストーリー展開。たぶん向こうは史実とフィクションの混ぜ方がうまいんだと思います。あと、ヒロインがとにかくカッコ良いんです。

私が中華風作品が好きなのは、ヒロインがカッコいいのが多いからなんですが、韓国の歴史ドラマも負けてないんです。見てたら、私も書きたくなってしまいましてね。で、自分で書けるとしたらなんだろう。…そう言えば、なんか断念した桃の話があったなあと思い出し…。もしかしたら、次回作ってわけでもないかもしれませんが、『~蹊を成す』こちら近々続編UP予定です。

ちなみに以下が私がハマった韓国歴史大河ドラマ三作品です(アドは1話だけですが)

★『トンイ』
李氏朝鮮時代を舞台に、監察府の女官であるトンイを主人公に繰り広げられる王宮内の権力闘争や人間模様を描いた作品。
http://www.youtube.com/watch?v=kyWkqRHrHFI
英字幕しか見つけられませんでした…。すみません。。


★『イ・サン』
李氏朝鮮第22代国王である正祖ことイ・サンを主人公。朝廷内の派閥争いやサンの即位を阻止しようとする陰謀、即位後も常に命を狙われつつ、政治の改革に着手するサンの波乱に富んだストーリーが展開される。
http://www.dailymotion.com/video/x14ld4e_%E6%96%B0-%E3%82%A4-%E3%82%B5%E3%83%B3-%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%9B%9E_lifestyle

★『宮廷女官チャングムの誓い』
チャングムが母の遺志の最高尚宮をめざし女官となるが、謀略により宮廷料理人から一度は奴婢の身に落とされる。しかし医女となり宮廷に復帰するサクセスストーリー。
http://www.dailymotion.com/video/x1081g9_%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A0-%E7%AC%AC01%E8%A9%B1_shortfilms

予告したからには、続編を頑張って書かないと。それでは、もうしばらくお待ちください^^
私は、誘拐される。

「動くな!」

帰宅途中だった。一人暮らしの自分の家まで、あと少しのところで。

「おとなしく車に乗れ!」

それをあえて狙っていたのだろう。あっさり覆面男たちに取り囲まれてしまった。

「…また、誘拐?」

私は犯人を睨んだ。これでいったい何回目だろう?

ニヤリ。

外灯に照らされ、目の前の白い覆面がくっきり光って見えた。私は息を吸い込んでから言った。

「…っていうか、せめて覆面は外そうよ。本当に捕まるよ」

よく見たら、下は何気に就活スーツときている。

「おとなしく誘拐されな、お嬢さん」

彼らは覆面を外し、無邪気に笑って言った。

「一緒に行こうぜ。真夜中の逃避行!」


    *


車は走る。夜を。眠らない街を。誘拐犯と私を乗せて。

「もう吹き出しそうになっちゃった」

後部座席に乗り込んだ私がそう言うと、となりに座る誘拐犯…というより、愉快犯のウッチーが笑った。

「雪(ゆき)んこ、気づいた?この覆面のおでこの『肉』の字に。実はただ『肉』って書いてあるわけじゃないんだよね~!」

そう言って、ウッチーは自分たちが被っていた覆面を私に貸してくれた。

「あ、三者三様なのね!」

おでこに輝く『肉』の字の表現が覆面によって違うらしい。ウッチーは親指をグッと立てた。

「某漫画をみんなリスペクトしてますから」

どうやら漢字の『肉』、片仮名の『ニク』、平仮名の『にく』と言った具合に、人により微妙に書き方が違うようだ。

「ちなみに『肉』がカンちゃん、『ニク』が秦(はた)、『にく』が俺のね」

急いで油性マジックペンで書いたのか、手書きの個性的な字がまたいい味を出していた。

「っていうか、雪んこも被る?まだローマ字版『niku』が残ってるぞ?」

助手席に座っていたリーダーであるカンちゃんが振り返り、あまっていた『niku』覆面を私に投げてよこした。こらえ切れず、私は吹き出した。

「もう、みんなウケ狙いすぎ!」

私たちの様子をバックミラー越しに眺めていた人物が車内ライトを消して手をたたく。

「はいはい、雪野(ゆきの)をつかまえた後はどうすんの?逃避行という名のドライブは。今日はどこ行く?」

逃亡(ドライバー)担当の、秦(はた)だ。

「前はどこへ行ったっけ?」と、私。
「伊勢だよ、伊勢。本店の赤福を食べたいとか誰かが言ったんじゃん」と、秦。
「そんなの誰が言ったんだよ?ウッチ―?」と、カンちゃん。
「えー、俺じゃないよ。っていうか、高速つかっても東京から伊勢はさすがに遠かったなあ。一日あれば行けるんだって発見もあったけど」と、ウッチ―。

そう、かなり無謀なドライブだった。ドライブというより小旅行のレベルだったな、あれは。でも、赤福がおいしかったから許すけども。

「山梨の有名な名水を汲みに行こうっていうのもあったね」
「あー、遭難しかけたやつか」
「なんで俺ら水のために命かけてるんだよ!?って秦がキレたやつね」

そう、ふだんあまり感情をおもてに出さない秦がいきなり怒り出したから、みんな驚いたっけ。それを思い出し、私たちは笑った。

いいな、この雰囲気。久しぶりだな。みんな変わってなくて安心する。

元々、大学のゼミ仲間だった私たちは、グループ発表で同じグループになったことを機に仲良くなり、プライベートでもよく遊ぶようになった。時たま、こんなふうに変なお題を出しあっては、車で冒険に繰り出す。誘拐、逃避行と銘打ってはヘンテコな夜のドライブを決行するのだ。

「今日はそんな遠くまでいけないよ。近場でお願いします」
「ドライバーの意志は尊重しなきゃね。じゃあ、東京都内近辺か。久しぶりにお台場、横浜とかは?」
「ウッチ―、いいんじゃない?青春&カップルスポットで。俺たちに足りないエネル源をそこで補おうぜ」
「えー、彼女のいるカンちゃんには言われたくないなあ」
「雪んこも鋭くつっこむようになっちゃったなあ」

感慨深げにカンちゃんは頷いた。彼は私の親友、麻里子と付き合っているのだ。

「雪んこ、まずはこっちのエネル源とりなって。何も食ってないだろう?お菓子、買っといたんだ。どれがいい?」

そう言って、優しいウッチーが私にコンビニのビニール袋を差し出す。ありがたい。どれどれ?

「って全部グ○コの『PRETZ(プリッツ)』じゃん!?」
「そそそ。サラダとロースト、あと変わり種のトマト味ね。久しぶりに見つけたら懐かしくてさ、そこにあった全種類をかごに入れたんだ」

さすがウッチー。私はせめてお惣菜代わりになりそうな味を選んだ。

「…じゃあ、サラダで」

今日はオフィス街を歩き通しで、昼から何も食べてなかったから正直助かった。

「サラダ味を選ぶとは、秦と一緒だね」
「え?」

カンちゃんがいきなり意味ありげに呟くから、思わず私はむせてしまった。

「そんなこと言って、カンちゃんもサラダ味を選んでたよな」

でも、秦がうまく返してくれる。別に私のために…じゃないと思う…けど…?

「わかったわかった。そういうことにしといてやるよ」

私はウッチ―から水のペットボトルを受け取ると、気持ちを落ち着かせた。

「んで、お台場と横浜どっちにすんの?」

カンちゃんが仕切り直し、みんな腕を組んだ。

「近場だからって、やることに、お題に、手を抜きたくはないんだよね~」

アイデアマンであるウッチーの閃きを私たちは待つ。

「思いがけないことにするか…いやいや、ここは超くだらないことをしてシュールさ全面に出すのも…」
「雪野が決めなよ」

いきなり秦が遮った。

「今日は雪野、お前が決めな」
「え、私?」

秦がそういうと、カンちゃんもウッチーも「うんうん」「だねだね」と頷いた。私は戸惑いながらも、せっかくだしと、頭を回転させる。さて、どうしようか。お台場と横浜で、できること。さっきウッチーが言ってた超くだらないこと、シュールさを狙うというのも、なんだか面白そうでありのような気もする。

私は食べているPRETZの箱を見つめた。
お台場、横浜、PRETZ、お台場、横浜、PRETZ、お台場、横浜、PRETZ……んん??

「…本当にくだらなくていいの…?」

となりのウッチ―が身を乗り出した。

「いいよ、いいよ!どんとこい、超シュール!」

私は念を押した。

「くだらなすぎて、笑えないかもしれない」

助手席のカンちゃんが手で丸をつくる。

「全然OK!」

私は息を吸い込んだ。

「場所は横浜。秦、そこにあるライブハウスに向かってほしいの」

バックミラー越しに秦がたずねる。

「何てとこ?」
「横浜BLITZ(ブリッツ)」

雪野、ライブに行かない?私、雪野と一緒に行きたいの。
ふと懐かしい親友の声がした。ねえ、麻里子。あなたは今、何をしてるの…?

「ドライバー、了解です。聞いた?リーダー、一応カーナビよろしく」
「あいよ。でも、雪んこ、そこで俺たちはいったい何をするんだ?」

私は暗がりの中でニッコリした。

「横浜BLITZで、食べるのよ!」

タイプの違う三人の声が重なる。

「何を?」

私はハッキリと言った。

「横浜BLITZで、PRETZを食べよう!」

そう言って、私はみんなに見えるよう自分の食べているサラダ味のお菓子の箱を振った。
車内に沈黙が広がる。やらかした…!?と私が焦ったその時だった!

「あはははははははっははっははっはっはっはっははははっはっは!」

静けさを打ち破るように、気持ちのいい笑い声が車内に響いた。

「…秦…?」

ウッチ―、カンちゃん、私の三人は思いがけないことに驚いた。…秦が…あの秦が、大爆笑してる…!?

「やべー!超くだらねー!なんだ『BLITZ』に『PRETZ』って…!!ははははははは!!!」

誰もこんなに大笑いする秦を見たことがなかった。知り合って、そろそろ4年…。彼の笑いのほとんどは、カテゴライズすると『鼻で笑う』というものだったから。意外すぎて、それを見たみんなが吹き出すのも時間の問題だった。

「ぷっ!はははははははははははははははは!!」

きっと私の『BLITZ PRETZ(ブリッツ プリッツ)』案より、目の前の秦の方がツボだったと思う。普段笑わない人の、笑顔は貴重だから。麻里子もそうだった。

「よーし、それ採用!!」

車内はおおいに盛り上がり、ネオン街がかすんで見えた。
車は走る。夜を。眠らない街を。爆笑する誘拐犯と私を乗せて。


    *


横浜BLITZについた私たちは車から降りた。

「いや~、マジ吹いたわ!」

さすがにライブも終わってる時間だから、誰もいない。建物の電気も消され、あたりは妙に静かだった。

「秦が違う意味でキレて最高だったわ」

カンちゃんはどうやら笑いすぎて、まだお腹が痛いらしい。彼のセリフに、秦が恥ずかしそうに俯いた。

「シャイが服を着て歩いてるようなもんだもんね、秦は!」

ウッチ―が嬉しそうに秦を破壊占めにする。それを秦が振り払おうと、じたばたした。じゃれ合っているようで、どこか微笑ましい。いいな、男子の友情は。なんか爽やかで。ねえ、麻里子もそう思うでしょう?

「あーあ、雪んこが本格的に麻里子シック、入りました~!」

気づけば、カンちゃんが私の隣に立っていた。

「何そのネーミング!ホームシックとかけたの?麻里子シックはカンちゃんでしょう?」

彼の愛しの恋人は今、イギリスに語学留学中なのだ。

「きっと麻里子なんて今頃、アビー・ロードを優雅に歩いてるだろうさ」
「さすが麻里子様。一人で何度も歩いてそう。ご学友を置いてけぼりでね」

音楽が大好きな彼女の満喫している姿が目に浮かぶ。ふたりで横浜BLITZのライブに行ったのが遠い昔のようだ。

「まあ。でも、気が強い美人の麻里子様でも弱みはあるわけよ。それが、雪んこね」
「え?」

いきなり自分にふられたので、私は驚いた。麻里子の弱み?私が?

「ほら、麻里子はあんなんだから、仲のいい子なんて雪んこぐらいじゃん?相当、雪んこシックなわけよ、あいつ。俺と話してても、雪んこの話題ばっか」
「照れ隠しだよ。麻里子は電話もメールも苦手だし」

私にくれるメールも内容は天気のことばかりだった。『ロンドンは曇ってばかり』そればかり。

「雪野は元気?就活ノイローゼとか、なってない?私の彼氏だったら、ちゃんと雪野のフォローしといてよ!だってさ。…いやいやいや、お前が雪んこの彼氏かよ?っていうね」

私はくすくすと笑った。なんか麻里子らしいな。わがままそうに見えるけど、本当はとても優しい子なのだ。

「…俺は麻里子にデキた彼氏とはなんたるか、学んでるような気がするね。素質あるよ、あいつ。彼氏になる素質…」
「なんだー、それでかー」

私は納得した。

「カンちゃんが今日、私に変に絡むのはヤキモチだったのか」
「それもあるけど、秦と雪んこ見てるとさ、こっちがヤキモキするんだよね」
「…ヤキモキ?それ、どういう意味?」
「麻里子がいなくなってから始まった夜のドライブだけど、主犯は俺じゃないぞ」
「え?」
「秦だ。秦が麻里子がいなくなって淋しがってるお前のために始めたことだ」

私はカンちゃんを見つめた。その目は遠くにいる親友と、とてもよく似ていた。

「『最終面接、落ちた!就活って、なんでこう人間否定された気分になるの??神様、ひどい!むきー!!』っていう、今日のお前のLINE(ライン)にいち早く気づいて、みんなにドライブの声かけたのもアイツね」

私は何も言えなくなってしまった。
みんなだって忙しいだろうに、就活スーツを着たまま、駆けつけてくれたんだ。

「就活っていっても別に人間否定されるわけじゃない。お前が否定されるような人間だったら、俺たちはそばにいない。俺たちは雪んこの人柄に感謝してるくらいだ。最初お前がゼミで声をかけてくれなかったら、同じグループになろうって言ってくれなかったら、俺たちの大学生活、こう面白くはならなかった。雪んこのいないところでみんな言ってる」
「いるところで言ってよ!そ、そういうのは…!」

カンちゃんの言葉にグッときて、ついどもってしまった。

「きっとその思いは秦が一番強いんだ。特に警戒心の強い奴だったから」

ゼミで初めて秦を見た時、昔の麻里子を思い出させた。教室の片隅にいる孤高の存在。きっと笑ったら、いい顔をするんだろうな。見てみたいな。だから、声をかけたのかもしれない。

「寒いのか?鼻とほっぺた、また赤くなってるぞ。さすが、雪んこ!」
「カンちゃん!」
「爆笑する秦なんて一生お目にかかれないと思ってたのになあ」


    *


私は、誘拐される。

「動くな!」

私は彼に声をかけた。

「おとなしく、手を上げろ!」
「今度は雪野が誘拐犯か?」

秦は一人で、横浜BLITZのチケット売り場窓口にいた。何やらコソコソしている。

「そう。おとなしく何をしていたのか、言いなさい!」

秦は観念して、ゆっくり手を上げた。

「せっかくだから、記念にPRETZを一箱、ここに置いてこうと思ってさ」

見ると、窓ガラスに立て掛けるように、新品のPRETZサラダ味がひっそりと置かれている。私は笑った。

「きっと朝やって来た人、意味わかんなくて不思議に思うだろうね」

秦も笑った。今のは『鼻で笑う』とは違う笑いだ。4年近く色々な秦を見てきたからわかる。

「ありがとう。私を誘拐してくれて。ここに連れてきてくれて」
「え?」
「昔ね、ここに麻里子と一緒に来たんだ。麻里子がライブに誘ってくれたんだけど、ようやく打ち解けられた気がして嬉しかったな。舞い上がりすぎて、何のライブだったかも覚えてないくらい」
「お前らは高校からの付き合いだもんな。…淋しくないか?」

秦の優しさも今はわかる。いっぱい見たから。いっぱい知ったから。

「今、麻里子がここにいてくれたらなって思うときもあるけど、語学留学はあの子の夢だったし、麻里子様も頑張ってるんだから、私もいちからエントリーシートを書いて頑張るよ。だから…」
「…だから?」
「ちょっと淋しくなったり、落ち込んだりした時は、また今日みたいに誘拐してくれる?」

秦はふっと笑った。

「いいよ」
「みんなが忙しくて無理な時でも、秦一人で覆面を被って来てくれる?」
「別にいいよ」

『別にいいよ』も『いいよ』のうち…。
ポジティブにそうとらえていると、一人ぶつぶつ言う私がおかしかったのか秦がまた笑った。

「雪野が助手席に乗ってくれるならね」

神様、麻里子様!

今なら私、最強のエントリーシートが書けるかもしれない。




=====================================


=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ A Red Season Shade『Ghosts & Clouds』× BLITZ PRETZ ★

恋愛話や登場人物はフィクションですが、夜中のドライブは仲間たちとの体験談です。私は赤福と名水には参加してませんが、横浜BLITZでPRETZはやりましたよ。今はなき、横浜BLITZに感謝を込めて。ちなみに作中の覆面のお『肉』の方のモデルは、ゆでたまご『キン肉マン』です。

① A Red Season Shade『Ghosts & Clouds』
http://www.youtube.com/watch?v=fK2bjJX_NaQ
この音楽を聞いて生まれた物語。秦くんの最後のセリフが聞こえ、その仲間たちが見えてきました。ドライブのお供にどうでしょうか?アーティスト情報が少ないのでマイスぺ貼っておきます。私も最近知ったのですが、フランスの5人組とのこと。
A Red Season Shade myspace
https://myspace.com/aredseasonshade
② 横浜BLITZ
http://www.tbs.co.jp/blitz/y_map.html
③ グリコ『PRETZ』
http://www.glico.co.jp/pretz/

追記:登場人物のモデルは、このとき読んでいた漫画、南塔子「ReReハロ」かな。雪んこみたいでカワイイ頑張る女子リリコ(料理上手!)は大好きなヒロインです。
南塔子「ReReハロ」 試し読みができるみたい。
http://betsuma.shueisha.co.jp/lineup/rerehello.html

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みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)候補作一覧http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-119.htmlの追記です。

★☆第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)推薦作品募集について☆★

もし良ければ、みなさんのオススメブログとその作品(自分のものでも可)を参考までにコメント欄で教えて下さると嬉しいです。

全部は読めないかもしれませんが、今年は色々と読んでいけたらいいなと思っています^^

ただ、候補作品はあくまで私個人の好みだったりするので、候補作品にならずとも、広い心で笑って許してやって下さいませ。


以下みたいなことをコメント欄に記入して頂けると、大変助かります。


・推薦ブログ名
・推薦ブログ運営者名
・推薦ブログアドレス
・推薦小説名
・推薦小説のあらすじまたは第1話のアドレス
・選評  


良ければ、みなさんのご理解とご協力をよろしくお願いします!^^


みなさん、いつもご訪問ありがとうございます!

語りべのrurubu1001です。

私は半年くらい前から物語ブログを始めたのですが、毎年個人的にお気に入りの小説ブログ様に自分て作った賞を勝手におくりたいと思いまして、こんな賞を作ってしまいました。名付けて…!

★☆自分的小説ブログ大賞☆★

生意気にすみません。賞品なんてありませんが…(苦笑)。

ちなみに、記憶に新しい2013年の記念すべき第1回は!

けいさんの小説ブログ『憩』に好評連載中の青春小説『夢叶』でした!!
おめでとうございます!超個人的な賞を快く受け取ってくれたけいさんに、ただただ感謝です><。

↓詳細記事はこちら↓
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-116.html

けいさんの小説ブログ『憩』
http://meuniverse.blog10.fc2.com/
連載長編小説『夢叶』のあらすじ・目次
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-68.html
連載長編小説『夢叶』第1話
http://meuniverse.blog10.fc2.com/blog-entry-57.html

2013年は、けいさんの『夢叶』でしたが、他にも素敵な小説ブログはわんさかあります!

そこで気が早いのですが、早速2014年版の準備をして行こうと思っていまして、ここにその候補作を見つけ次第、勝手に更新&紹介させて頂こうかと思っています。最終的に年末、こちらでUPした候補作の中から、第2回大賞を選ぶ予定です。(惜しくも大賞を逃した作品は、来年度の候補作品としてそのまま残ります)

良ければみなさんも、ちょくちょくこちら覗いてみて下さいね☆
読むものをお探しの方のソムリエ的な役割ができたら嬉しいです。

候補作のブログ様で「気持ちは嬉しいけど、自分は遠慮したいかも…」という方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ削除いたしますので、気にせず、言って下さいね^^


★ 第2回 自分的小説ブログ大賞 (2014)候補作一覧 ★

①お名前  :松原きのこ さん
 ブログ名 :『なついてくれてサンキューな』
 ブロアド :http://neboushitaze.blog.fc2.com/
 小説名  :『はぐれ者のおっさん』(短編小説)
 第1話  :http://neboushitaze.blog.fc2.com/blog-entry-14.html
  選 評 :私が文部科学的な何か or 学校の先生だったら、夏休みの課題図書に推薦したいです☆

②お名前  :lime さん
 ブログ名 :『 小説ブログ「DOOR」 』
 ブロアド :http://yoyolime.blog83.fc2.com/
 小説名1 :『凍える星』(中編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-669.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-671.html
  選 評 :小説ブログってこんなにレベルが高いんだ!私的「このミステリーがすごい!」作品☆
 小説名2 :『KEEP OUT』シリーズ(長編小説)
あらすじ  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-304.html
 第1話  :http://yoyolime.blog83.fc2.com/blog-entry-305.html
  選 評 :人間の禁域に触れる時、人は目をそむけたくても、それができず、目が離せなくなる…!lime さん、あなたはなんと恐ろしい(もちろん、いい意味!)ストーリーテラーなんですか!

③お名前  :大海彩洋さん
 ブログ名 :『 コーヒーにスプーン一杯のミステリーを 』
 ブロアド :http://oomisayo.blog.fc2.com/
 小説名1 :『清明の雪』(長編小説/ミステリー)
あらすじ  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E3%80%90%E6%B8%85%E6%98%8E%E3%81%AE%E9%9B%AA%E3%80%91%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%81%AE%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%A8%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%99%E3%81%98
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-1.html#%E2%9D%841%E3%80%80%E5%8F%A4%E3%81%84%E5%AF%BA%E3%80%80%E9%BE%8D%E3%81%AE%E5%A4%A9%E4%BA%95%E3%80%80%E5%B9%BD%E9%9C%8A%E3%81%AE%E6%8E%9B%E8%BB%B8%20
  選 評 :このミステリーの一番の謎はブログ小説なのに紙の香りがすることかもしれない!書籍化希望☆
 小説名2 :『天の川で恋をして』(短編小説/恋愛)
 第1話  :http://oomisayo.blog.fc2.com/blog-category-16.html
  選 評 :長編ミステリーを得意とする大海さんが短編×恋愛モノ!?と聞いたら、飛びつかないわけにはいかない。読んだ感想はもうこの一言しかありませんでした。「お見事!!」

④お名前  :ヒロハルさん
 ブログ名 :『 三流自作小説劇場 』(休止中?)
 ブロアド :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/
 小説名  :『それでも私を愛してくれますか』(長編小説)
あらすじ  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-674.html
 第1話  :http://hiroharukohno.blog65.fc2.com/blog-entry-675.html
  選 評 :衝撃のラストに、あなたは『それでも私を愛してくれますか』。SF×恋愛小説の切なさがここに!!

⑤お名前  :ぐりーんすぷらうとさん
 ブログ名 :『修羅の門・刻 夢小説』
 ブロアド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/
 小説名  :『limeさんの絵につけた超SSS』(ショートショート)
 作品アド :http://hujoshiiroiro.blog.fc2.com/blog-entry-321.html
  選 評 :普段は夢小説を書かれているぐりさんが②でご紹介したlimeさんと物語×絵コラボ。熱望してたオリジナル作品も期待を裏切りません!

⑥お名前  :河上朔さん
 ブログ名 :『therehere』
 ブロアド :http://here.x0.com/
 小説名  :『wonder wonderful』(長編小説)
あらすじ  :http://here.x0.com/text/ww/index.htm
 第1話  :http://here.x0.com/text/ww/0.htm
  選 評 :書籍化もした人気ネット小説。大人もハマる異世界トリップファンタジー。面白すぎてヤバいぞ、これは!第二の有川浩さんかも!

⑦お名前  :葉嶋ナノハさん
 ブログ名 :『はななぬか』
 ブロアド :http://hanananuka.sakura.ne.jp/index.html
あらすじ一覧 :http://hanananuka.sakura.ne.jp/syousetu-okiba.html
 小説名1 :『椅子カフェ堂』(長編小説/恋愛)
 第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0isucafedou-top.html
  選 評 :美味しい物語展開。満腹感の味わえる文章力。嬉しい番外編は別腹でまだまだいける!椅子カフェ堂に恋をしたのは作中のお客さんだけではありません。一読者の私もです!
小説名2 :『ななおさん』(中編小説/恋愛)
第1話  :http://hanananuka.sakura.ne.jp/0nanaosan-top.html
選 評 :和菓子屋を営む壮介さんのもとに嫁いだ、ななおさん。わけあり『和』カップルの織り成す日常が優しい雰囲気で描かれています。これを読むと、いざ鎌倉着物デートしたくなります!
なんと『ななおさん』は、ただいまアルファポリス様において書籍化進行中。決定後、2014/11/15にサイトから冒頭数話と番外編を残して 本編を取り下げ予定。 11月15日以降は読むことが出来なくなるため、 みなさんお早めにチェックを!!

⑧お名前  :空野みちさん
 ブログ名 :『 空野みちさんのマイページ 』 (by『 小説家になろう 』)
 ブロアド :http://mypage.syosetu.com/25780/
あらすじ一覧 :http://ncode.syosetu.com/n5126g/
 小説名 :『 夏目さんと私』 (長編小説/恋愛)
 第1話  :http://ncode.syosetu.com/n5126g/1/
選 評 :登場人物が魅力的で名前も素敵!森見登美彦さん(より個人的に好き!)を彷彿させる『和』感覚で小粋な文章。丁寧に紡がれる物語に、ただただ、続きが待ち遠しい。なんていいところで~、くうっ!!

図書館から寄宿舎に戻った涼子(りょうこ)が自分の部屋に行くと、来客がいた。同じクラスの遥(はるか)だった。

「秋吉さんにお願いして、部屋に入れてもらったの」

秋吉さんとは、涼子のルームメート秋吉美和(あきよし みわ)のことである。冬休みを実家で過ごした美和は、三学期の始業式前日である今日、寄宿舎に戻ってきた。涼子は遥をみて微笑んだ。

「一番乗りなんて、遥の鼻は相変わらずね」

実家が有名洋菓子店の美和は、美味しいお菓子をたくさんお土産に持って帰ってくる。美和は今みんなにお茶会の召集をかけているのだろう。部屋にはいなかった。

「そう。私の鼻はとてもいいの。甘いものなんて、特に目がないんだから」

遥は涼子のベッドから腰を上げると、意味ありげに笑った。

彼女たちの通う女子高は長期休みに入ると、寄宿舎暮らしの生徒は帰省組と居残り組にわかれる。美和のように実家に帰るものもいれば、涼子や遥のように帰らない居残り組もいる。

「居残り組って響きが嫌よね。なんだか取り残された感があって。涼子もそう思わない?」
「そうね」
「しかも、影で『わけあり組』って言われてるのを知ってる?実家に帰らないのは、きっと何か帰れない事情があるからだ!って」
「知ってるわ。でもだからって、帰省組を『ホームシック気味』って影で呼ぶのも僻みっぽくて抵抗があるのよね」

涼子の言葉に、遥はくすくすと笑った。

「涼子は一見優等生にみえるけど、実はそうでもないのかしら?」
「あら、遥ったら意地悪ね」

図書館で借りた本を自分の机の上に置いた涼子はコートを脱いだ。降っていた雪のせいで、コートは冷たく濡れてしまっていた。

「意地悪なんてひどいわ。私は涼子のことが大好きなのに」
「もう、そんなこと言って。また、みんなに嫉妬されちゃうわ」

自分の部屋に戻って来たのに心が休まらないのはなぜだろう。相部屋の相方である美和が今日戻ってきたからだろうか。話好きの遥がこの部屋にいるからだろうか。一人になれないもどかしさに、涼子は少し息がつまった。

「私は涼子に嫉妬してもらいたいのにな」

涼子と遥はクラスメートだが、特別仲がいいわけではない。美人の遥はクラスの人気者で、憧れる者も多かった。それに比べ、涼子は特に目立たない真面目な優等生である。それなのに、最近なぜか遥は涼子によく声をかけ、かまうから不思議だ。

「私ね、本当はこの冬休み、涼子と話したくて残っていたのよ。気づかなかった?」

遥の問いかけは、涼子を戸惑わせるものだった。

「私はいつも涼子を見ていたのに。これじゃ片思いね」
「…片思い?」
「そう、片思い。誰かさんと同じ」

遥は涼子のそばに近寄ると、机の上に置いたあった本を手に取った。

「吉屋信子の本、私も好きよ。『花物語』なんて特にね」

涼子は観念し、自分の椅子に深く座った。

「甘いものには目がない、か…」

涼子はそう呟き、無意識に足を組んでいた。遥はこちらがうっとりするような微笑をみせる。

「ごめんなさい、涼子。あの日の放課後、私もいたの。理科準備室に」

涼子は肩をすくめた。

「…見られていたのね」
「言ったでしょう?私、とても鼻がいいの」

鼻がいい、か…。確かにそうかもしれない。成績はあまりよくない遥だが、勘が人一倍冴える。その鼻で甘い香りをかぎつけ、涼子の隠していた思いを一瞬で見抜いてしまった。

「白衣の似合う人はいいなあって私も思うもの」

冬休みに入る少し前、ある放課後のことだ。涼子は理科室に忘れものを取りに行った。ふと人の気配がして、隣の準備室をのぞいたが、そこには誰もいなかった。あるのは化学教師に忘れられた白衣だけだった。涼子は無意識にそれに手を伸ばしていた。

「変よね。どうしてあんなことをしたのか自分でもよくわからないの」

あの時、手を伸ばしたのはなぜだろうか。触れたのはなぜだろう。抱きしめていたのはなぜだろう。物音がして慌てて放し、その場を逃げ出した。

「変じゃないわ。その気持ちはきっと素敵なものよ」

遥にそう言われるとは思わなかったので、涼子は面食らった。遥の目はとても優しかった。

あの日の放課後、夕焼けに染まった理科準備室。そこにいた涼子はとても美しかった。控えめで大人しい雰囲気の少女だったが、内に秘めた熱を垣間見せ、見たことのない表情をしていた。穏やかで甘い。ひた向きで微笑ましい。それはずっと見ていたいと思わせるほど…。

「とても素敵なものだわ」

繰り返される遥の言葉に、涼子はなぜか涙ぐんでいた。それを隠すために彼女は急いで立ち上がった。

「お茶をいれるわね」

涼子の言葉を聞いて、遥もいつもの調子に戻る。

「う~ん、この香りだとお土産はフィナンシェね」
「え?」
「涼子、紅茶はダージリンとか後味のさっぱりするものでお願い」
「遥って、本当に鼻がいいのね」

ふたりは顔を見合わせると、同じように可愛らしく微笑んだ。


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=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ Matt Pond PA 『So Much Trouble』× 氷室冴子『白い少女たち』★

年明け初更新です。今年もどうぞ『1001夜ショートショート』をよろしくお願いします!

昔の少女小説っぽいものを一度書いてみたいと思ってました。できれば、寄宿舎?寮?生活を舞台にしたもの。そこにいる少女たちの姿を。ちなみに書いててなんですが、作中の吉屋信子『花物語』は未読です。少女小説の元祖と呼ばれる方の著作なので、ちょっと読んでみたい。読んだら、またこのジャンルに挑戦してみようと思います。

① Matt Pond PA 『So Much Trouble』
http://www.youtube.com/watch?v=VTbeGDhQlxU&index=1&list=RDVTbeGDhQlxU
最近洋楽ばかりですが、こちらも美メロです。少女たちが主人公の物語でこちらの音楽を使いたかったので叶って良かった。アーティスト情報があまりないので、マイスぺ貼っておきます。
Matt Pond PA  myspace
https://myspace.com/mattpondpa

② 氷室冴子『白い少女たち』
http://www.amazon.co.jp/%E7%99%BD%E3%81%84%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%9F%E3%81%A1-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB%E2%80%95%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-52A-%E6%B0%B7%E5%AE%A4-%E5%86%B4%E5%AD%90/dp/4086102358
ずっと探していた本をようやく入手。寄宿舎を舞台にした思春期の少女たちの物語です。氷室さんが20歳くらいの時に書いたものと聞き、驚きました。話は重くシリアスなのに目が離せなくて。未完の『碧の迷宮』もそうですが、彼女のこんな物語をもっと読みたかったなあ。何より私世代じゃ氷室冴子作品は、ほぼ絶版なのが悲しいです。いっそのことまとめて全集とか出してくれないかな。

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