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【アルファポリス様限定公開】  長編作品紹介
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-256.html
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↓↓【【第308夜】 一番遠い場所  ジャンル:青春 ↓↓
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君は好きな人と離れ離れになる。

例えば、そう…。

この世で一番遠い場所にその人が行ってしまう。

連絡もとれない。

会うことなんてとてもできない。

さあ、君たちは心を通わせられるだろうか?


    *


「…君は…いや、君たちは心を通わせる…通わせられる…通わせられ…られれる…?…あれ?ああ、もう!ここの台詞はあとでいいや。場面が切り替わるから、音響フェイドアウト。照明オン…」

高校の自習時間、自分の席で頭を抱えて呻っていると、後ろの席の新田くんに不意に呼ばれた。彼は私の肩に手を置き、人差し指を突き出す。振り向いた私のほっぺたが軽くつぶれる。ぷに。

「後ろって無防備だからいいなあ。これ、お約束だよね?」

新田くんはけっこう悪戯好きらしい。

「さっきから何を呻いてるの、本間さん?」

私はため息をついた。

「演劇部の脚本がうまくかけなくて…」
「本間さんって、演劇部なんだ?」

ぷに。ぷに。

「言ってなかったけ?そうなの。脚本担当なんです」
「へー、すごいじゃん!」

脚本を書いているというと、たいていみんなこんな反応だ。まあ、実際はウワベだけというか、カタチだけというか、単なる社交辞令で誉めてるわりにはたいして心がこもってなかったりする。でも、どうも新田くんは違うようだ。こっちが恥ずかしくなるくらい「すごい」を連呼してくれた。

「…いや~、それほどでもあるような、ないような?」

誉められるのに慣れていない私は頭をかいた。謙遜をしているのか、していないのか、よくわからない受け答えになってしまった。

「どんなのを書いてるの?」
「宇宙と地球で離れ離れに暮らす恋人の話。究極の遠距離恋愛を描きたいです」
「どっかできいたことのある話だな」

言われると思った。

「最近、CMでよく流れてるじゃん。長澤まさみと高橋一生のCMでさ。宇宙飛行士の奥さんの帰りを地球で待つ旦那さんの。あれが元ネタ。で、もっと切なくいじれないかなあっと…」
「クラスの女子が騒いでたやつかな?」
「そうそう。演劇部でも『あれ、いいね!』って話題になってさ。部長に言われたんだよね。『うちの脚本家様、次はあんな感じの恋愛を、究極の遠距離恋愛を四露死苦(よろしく)!』って。もう、言うのは簡単だよね!楽だよね!」

つい愚痴をこぼすと、新田くんは私の部長のマネがツボだったらしい。ぷっと吹き出した。

「あはは!さすが演劇部、なりきるなあ!部長さん、元ヤンなんだ」
「笑いごとじゃないよー。こっちは必死なんだよー。助けてよー」

どこかの猫型ロボットに助けを求めたくなっていると、新田くんが机の中をごそごそと探る。そして、何やら取り出した。

「なんだ、スマホかー」

私ががっかりしていると、新田くんが首を傾げた。

「何が出てくると思ったの?」
「…え?青いタヌキとか四次元につながるポケットとか…」
「あはは!ごめんね、ドラえもんじゃなくて。俺もさ、そのCMを見てみようかなと思って。自習で先生もいないし、スマホを出しても怒られないでしょう。本間さんの力になれるかもしれない」

私は新田くんの手を握りしめた。

「…ほ、本間さん!?」
「今、思ったけど、新田くんっていい人だね!」

授業中、デキの悪い私が先生にさされた時、答えを後ろからこっそり耳打ちしてくれる。何かと困っている私をいつも助けてくれる。拝みたくなってしまうような人柄。そう言えば、顔も妙に仏像の優しげな面差しと似ているような…。後ろの席のあなたは、なんて神々しいんだ!

「…はあ。席替えしてしばらくたつのに、いい人どまりか。ひどいなあ、本間さん」
「たまたま席が近くなって新田くんとよく話すようになったけど、こんなにいい人だったなんて!ここ、いい席だよ~。席替えの時、窓際を選んで正解!」

私がにんまりすると、新田くんが苦笑した。

「…たまたま、ねえ…」

うちのクラスの席替えは自分の好きな席が選べるけど、ちょっと変わっている。席替えの時、いったん全員が廊下に出て、まず先に女子だけが教室に入り、決められた女子の席の中から自分の好きな席を選ぶ。それから男子とチェンジして、男子も同じように、決められた男子の席の中から自分の好きな席を選ぶ。その後、廊下で待っている女子を呼んでご対面というか、新しいみんなの席のお披露目となるのだ。実は女子が席を選んでいる間、教室のドアが少し空いていることを、その隙間から男子がこっそりのぞきみしていることを女子は知らない。

「こんなに近い席なのに、一番遠い場所かもしれないなあ。心の距離がこう果てしなく遠いというか…」
「へ?」
「ううん、なんでもない」

彼はまた人差し指を突き出す。私のほっぺたが軽くつぶれる。

「俺の究極の遠距離恋愛の話です」

ぷに?







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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★長澤まさみ&高橋一生CM『dTVふたりをつなぐ物語篇』×Bruno Mars『Talking to the Moon』★  

これが今年初めてのショートショートのUPになります。遅すぎかもですが、今年もよろしくお願いします。たまたま読書の息抜きで見た素敵CMに、うっかりハマり、気付けば物語が生まれていました。私のはふざけていますが。高校の演劇部が舞台の話はいずれまた書きたいな。

① 長澤まさみ&高橋一生CM『dTVふたりをつなぐ物語篇』
なんとなく新海誠作品の世界観に通じるようなCM。宇宙から地球を眺める長澤まさみさんの表情にぐっときます。そして、私の好きな高橋一生さん。彼はこういう役が似合うなあ。
CM
http://pc.video.dmkt-sp.jp/ft/s0004060#

② Bruno Mars『Talking to the Moon』 
CMの音楽もあっていて即入手。
https://www.youtube.com/watch?v=k0DbpCbGrsQ




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↓↓【第302夜】 VS.たまごサンド  ジャンル:青春 2016/05/14 10:00UP↓↓
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ああ、愛しのたまごサンド様!

あなたは、どうして…どうして…どうして…!!

「見るも無残なお姿にーーっっ!?」

    *

涙にくれる私を保険医の宮村(男)が必死になぐさめていた。

「そんなに泣くなよ…」
「泣きますよ。これが泣かずにいられますか、先生!!」

私は高校の購買で一番人気の『幻のたまごサンド(1日限定3個発売)』を手に入れて、さっきまで幸せ一色だった。でも、それはもう過去の話。だって、目の前の宮村にそのたまごサンドを踏みつぶされたから―。

「…なんで私、廊下を走ってた男子とぶつかっちゃったんだろう。なんでその時、自分のたまごサンドをとっさに放しちゃったんだろう?」

宮村もほとほと困り顔だった。

「俺に聞かれてもなあ…。ぶつかったのは俺じゃないしな」
「どうして、それが地面に落ちたタイミングで先生が角を曲がって来るんですか?どうして、よりによって私のたまごサンドを踏んづけちゃったんですか?ヒドイ!ヒドすぎます!!」
「いや、ヒドイのは廊下を走ってた男子とよそ見をして(たまごサンドに気をとられ)そいつとぶつかったお前だろ。たまたま通りすがって地面に落ちてた食べ物を踏んだ俺はどう考えても不可抗力だ。やつあたりされる身にもなってくれ…」

反省の色がまったく見えない先生に、私は言ってやった。

「どうせなら、先生、(たまごサンドじゃなくて)私をキズモノにすれば良かったのに…!」
「…ちょっと待て。それオカシくないか?誤解を生む言い方はやめろ!」

私はしゃくりあげながら訴えた。

「…先生は知らないんです。うちの購買で売っているたまごサンドがどれほど凄いものなのか…」
「そんなに凄いものなのか…?」
「そうですよ!毎朝、近くの有名な養鶏場にとれたての新鮮な卵を購買のおばちゃんが自ら仕入れて、それを調理してくれるんです。それをまたおばちゃん手作りの優しいお味の食パンで包み込むんですから!たまごも食パンも厳選。だから、数も限られているんですよ!!」

先生は首を傾げた。

「それは別にたまごサンドが凄いんじゃなくて、購買のおばちゃんが凄いんじゃないか?」
「嫌だな。これだから先生は何もわかってない!」

ぽかんとする先生に私は続けた。

「今日は、たまたまお昼前の授業が自習だったおかげで、私は早めにスタンバイできたんです。チャイムよりじゃっかんフライング気味の好スタートで誰よりも早く購買に到り着くことができました。初めて、私はそれを手にすることができたんですよ!なのに、先生のせいである意味本当の『幻のたまごサンド』になっちゃいました!」
「…たまごサンドが凄いかどうかはよくわからないが、とりあえず、お前がちょっとウザくて面白い奴だってことはわかった」
「ああ、愛しのたまごサンド様ー!」

大袈裟に泣き叫ぶ私に宮村はやれやれと肩をすくめた。それから「行くぞ」と声をかける。「行くってどこへ?」と泣き面でたずねる私に、宮村は「どこでもいいだろ」と腕を引っ張った。宮村の突然の行動に思わず怯んだ。

「ひいー、まさか先生!本当に私をキズモノにする気…!?」

先生はため息を吐いた。

「何、バカいってるんだ。俺は色気のないガキに用はねえ!興味もねえ!言っておくが、お前にその可能性は微塵もかけらもねえ!」
「ヒドイ!こっちこそ願い下げだ!」

じたばたと暴れる私を宮村は引きずりながら家庭科調理室へと連行する。なぜ、調理室なんかに?

「今、作ってやるから」
「へ?」
「俺が、今から作ってやる」
「…作るって、何を?」
「何をって『幻のたまごサンド』ならぬ、『幻の幻のたまごサンド』をだよ!」

一瞬、何を言われたのかよくわからなくて、反応が遅れてしまった。

「……ど、どんなミスター味っ○ですか、それは!?」

いかん、私としたことが!ツッコミのキレもいまいちだ!

「まあ、見てろよ」

そう言って先生は手品のように、どこからかたまごを取りだした。

「…マ、マジシャン!?」

いつの間にか調理器具もセットされている。

「…保険医でマジシャン!?…先生がちょっとウザくて面白い奴だってことはわかりました」
「どこかで聞いたようなセリフだな」

先生が笑う。気落ちしていた私のテンションが不思議と上昇する。もしかして、本当に『幻のたまごサンド』をこえる一品に出会えるのだろうか?期待に胸を膨らませていると、不意に宮村がボールに卵をぶつけた。

「え?」

あれ、どうしてたまごを割っちゃうの…?私の戸惑いに気づきもせず、宮村は慣れた手つきでボールの中にたまごを割り、菜箸でそれをかきまぜ始めた。しまった。またツッコミが遅れた!

「こら、何やってるんですか!?たまごサンドはまず、ゆでたまご作りからです!それが常識でしょう、先生!?」

宮村は怪訝な顔をする。

「お前こそ何をいってるんだ!俺の知っているたまごサンドはな、こうやって作るんだよ」
「はあー!?」

たまごをさっさとかきまぜ、宮村は熱したフライパンにそれを流し入れた。

「ちょっと待て―!それは、ただのたまご焼きでしょう!!どこがたまごサンドだっていうんですか!?『その可能性は微塵もかけらもねえ!』、先生!」

またどこかで聞いたような台詞に宮村は吹き出した。

「こら、女子高生!女子らしさがまるでないぞ。その調子じゃ、モテる女子の可能性は微塵もかけらも…おおっと、ここは以下同文だったな!」
「うまいこと、言った気にならないで下さい。…嫌だな。これだから先生は何もわかってないわ!たまご焼きとゆでたまごを間違えるなんてお話にならないわ!」

宮村はおかしそうに笑っている。

「言葉使いをお嬢様っぽく変えたところでダメだぞ。お前の理想女子の方向性はだいぶ間違ってるな」

余計なお世話だ。そうこうしてるうちに、フライパンにおいしそうなたまご焼きができあがってしまった。

「先生には心底がっかりです。料理男子アピールされても、たまごサンドも作れないようじゃ、トキメキません!」
「…でも、俺んちだと、たまごサンドはこうやって作るんだよ。ほれ、あたたかいうちに食うぞ。そこの食パンをとってくれ」

いつの間にか用意されていた市販で売っている食パンがあった。それを宮村に渡す。うまいこと、たまご焼きを食パンにのせると、あろうことか宮村はマヨネーズとケチャップをつけてサンドしてしまった!

「ひいー、何をやってるんですか、先生!は!まさか私にこれを食べさせて復讐でもする気!?巻き込まれた腹いせ!?」
「復讐?腹いせ?何、わけわからないことを言ってるんだ。ほら、黙って食ってみろ!」

そういって宮村はたまご焼きサンドなるものを私の口につっこんだ。むぐっ、やっぱり復讐じゃんか!

ところが、私の口に入ったそれはまさかの輝きを放った。まだ冷めやらぬたまご焼きと柔らかめの食パンはパサつくこともなく、ゆでたまごサンドにありがちなボソボソ感もなく、しっとりと舌に落ち着く。不安要素だったはずのマヨネーズとケチャップのコンビは相性が抜群で、いい感じの甘酸っぱさを披露した。

「…何、このハーモニー!」
「うまいだろ?」

……ぐぬぬ、そんな顔をされるとちょっと困る。たまご焼きサンドにトキメいたのか、何気にイケメンの先生の笑顔にトキメいたのか、よくわからない。私はぶんぶんと頭を振った。

「私の愛しのたまごサンド様がたまご焼きサンドに負けるわけがないわ…こんな邪道ごときに!」
「こら、邪道とはなんだ!俺に言わせれば、お前の言ってる、ゆでたまごサンドこそ邪道と思うがね!…なあ、本当はうまかったんだろ?」

唇を噛む私を見て、宮村はニヤリとした。

「悔しかったら、お前のいう、ゆでたまごサンドを今ここで作ってくれてもいいぞ」
「へ?」
「女子力があるなら簡単な話でしょう、お・嬢・様!」




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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 安藤裕子『SUCRE HECACHA』 
★ スネオヘアー 『共犯者』
★ やまもり三香『ひるなかの流星』  

長編は書いていたので、物語を書くこと自体は久しぶりではなかったのですが、ショートショートは久しぶりでした。3~4か月ぶり?ゆでたまごサンドで育った私はたまご焼きサンドに出会った時、衝撃でした。関東と関西ではたまごサンドは違うと聞いたことがあるのですが、あれってこういう違いなのかな?そうではない気もするけど…。たまごサンドに限らず、家庭それぞれで作り方や味付けの違う食べ物ってけっこうありますよね。ちなみに、物語に出てきていた保険医の宮村先生は何気に他の物語でも登場しています。そちらも一応宣伝しておこう。
【第149夜】 過去世話(むかしばなし)
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-141.html

① 安藤裕子『SUCRE HECACHA』
たぶん安藤裕子さんの音楽は私の物語スウィッチを入れてくれるんですよね。これを聞くまで、すっかりこの物語の声のことを忘れていて、久しぶりに聞いた途端、ドバーッと押し寄せてくるから。よかった。生まれていた声をそのまま、埋もれさせなくて。けっこうそう言うのが溜まって来ているみたいで、適度に消化せにゃいかんな、と反省。ショートショートも書かなきゃな。

② スネオヘアー『共犯者』
https://www.youtube.com/watch?v=hh1sXDMjIsA&list=RDSYDv9li6ZVc&index=8
途中からこちらも聞いてました。先生がたまごやきサンドを作る辺りから。爽やかなメロディにやられます。ところで、いつの間に、ともさかりえの旦那になったんだ、スネオは!

③ やまもり三香「ひるなかの流星」
https://booklive.jp/product/index/title_id/196642/vol_no/001
いつかどこかで紹介したかもしれません。先生と教師の恋愛モノって私はどちらかというとそう言う設定が苦手な方だったのですが、こちらの漫画を読んでから変わりました。転校先でこんな先生がいたら私も惚れてしまいますよ。私はやまもり三香さんの描く男性の横顔や体つき(ライン?)がとても好きなんです。今っぽくて細いんだけど、なんかキレイで。


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最終更新(2015/07/11)
★2015/07/11
第3回 自分的小説ブログ大賞 (2015)候補作更新しました!
・けいさん『セカンドチャンス』/青春小説
・limeさん『モザイクの月』/サスペンス小説
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-205.html
★2015/07/13
予約投稿の関係でアルファポリス様の方が若干更新が早くなっています(一日ほど)。お急ぎの方はアルファポリス様をチェックしてみて下さいね。申し訳ありません。
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【第248夜】 天使&悪魔 ジャンル:青春/ショートショート 
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放課後の教室で、事件は起こった。

「ない!ノートがない!」

大変だ!私の秘密のノートがない!通学バッグも、机の中も探したのに、なんで!?

「探しているノートって、もしかしてこれか?」

苦手な男子の声。同じ日直当番である阿久津(あくつ)だった。その手には見覚えのあるキャンパスノート。

「なんで、あんたが持ってんのー?」
「床に落ちてたんだよ!拾ってやったのに、その言い方はなんだ!」

申し訳ないことに、気が動転している私は今、人に優しく接する余裕はなかった。

「阿久津…もしかしてそのノート、見た?開いた?読んだ?」
「は?」

きょとんとする彼に、私はつめよった。

「見てないよね?開いてないよね?読んでないよね?阿久津、いい子だもんね?」
「俺はいい子だけど、中は見たぞ?」

それ、いい子じゃないじゃん!

「見たけど何コレ?天野(あまの)、出席簿でも作ってんの?クラス全員の名前がずら~っと、書いてあるだけじゃないか」

ひいー!何、内容をぶちまけてんの!?

「それ以上、何も言わないでー!クラスの女子、みんなに殺されるから―!」

幸(さいわ)い、教室に私たち以外、誰もいなかったことが救いだった。私は阿久津からノートを返してもらおうと手を伸ばす。阿久津はニヤッと笑うと、ノートを頭上高くあげてしまった。

「ちょっと返してよ!」

背の低い私が必死に飛び跳ねるのに、悪魔のようなニヤニヤ顔で、阿久津はひょいひょいとかわす。

「なあ、女子の名前から矢印が出てて、その先に男の名前が書いてあるよな?…これってもしかして、クラスの女子の好きな奴、メモってる?」

そうだ!こいつ、勘と運動神経はずば抜けていいんだった!成績は良くないくせに!

「おもしれー。うまいぐあいに、みんな好きな奴、かぶってねえし。でも、俺の名前がないぞ!なんでだ?」
「それはきっとモテないからでしょう?ってそんなこと、どうでもいいから!ねえ、お願いだからノートを返してよ!」
「お前、さらっと今ひどいことを言ったな!」
「何よ、親切に教えてあげたんじゃない!」
「なんてやつだ!おい、天野はどうしてこんなのを書いてんだ?」
「とにかく返してー。何でも言うことをきくから!」
「白状しないと返さん!」

ノートをとりかえせなかったら、私の人生が終わってしまう…。恋のキューピッドとして人気者だった私の人生が…。

「それ、恋愛成就のノートなの。なぜか私のキャンパスノートに好きな人の名前を書くと両想いになるらしくて…!最初、親友のみっちゃんの恋愛相談にのってて、それをノートに書きながら整理してたのよ。そしたら、みっちゃんの恋がうまいこと言っちゃって…。それをみっちゃんに話したら、そこからたぶん変な噂が広まっちゃったんだ…」
「ふうん、そうなんだ。すげえな」

もう半泣き状態の私に阿久津も反省したのか、ノートを返してくれた。

「お前、何でも言うこときくんだっけ?」
「…私にできることなら…ね」

咄嗟に怯んだ。無理難題なことだったら、どうしよう…?阿久津は急に真面目くさった顔になる。

「見たところ、このノートに天野の名前はないよな?」

阿久津のその発言に、私はぽかんとした。

「…私の名前?…え、まあ、そうね…」

好きな人、特にいないしね。

「なら、まずはそのノートに天野の名前を書け!」

…は?

「で、天野の矢印の先に俺の名前を書くこと!」

阿久津は顔を赤らめながら、私にそう言った。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★the brilliant green『You & I』×小学生か中学生の時にかいたもの★

小学生か中学生の時にかいた物語を見つけましたが、ところどころ抜き出して手直し。

① the brilliant green『You & I』
http://nicoco.net/sm24765035
当時聞いていたのを覚えてないので、今回作業時に聞いていた音楽を。好きです、ブリグリ。かわいいんですよね、この曲。

② 小学生か中学生の時にかいたもの
本当はもう少し長い短編だったんですけど、少し手直しして短くUP。小学生か中学生の時にかいたっぽいです。

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ああ。

音が、消えた。

    *

「ジン先生、いるー?」

玄関の引き戸が開けられる。

「いないのー?」

俺の「いらっしゃい」の言葉を待つこともなく、今日も彼女は勝手に靴を脱ぎ、我が家にあがってきた。

「あ・た・し・でーす!」

廊下を高校指定のハイソックスで楽しそうに滑り、居間でくつろいでいた俺を発見した彼女は、嬉しそうに軽やかに跳ねた。制服のチェックのスカートが揺れる。

「なんだー、いるじゃん!」
「俺んちだからな」
「ジン先生、一人暮らしでさびしいでしょう?パジャマでおじゃまー!」
「もしかして、『おじゃまします』っていいたいのか?言ってる言葉がおかしいぞ、女子高生!?(ちなみにパジャマ姿は俺なんだけど)」

彼女はむっとした。

「女子高生じゃなくて、サキです!ノカゼ サキ。いい加減、名前を憶えてよ!」

俺は笑った。

「覚えてるよ、女子高生だろ?そのへんの」
「覚えてなーい!」

彼女は後ろから飛びついて、自分の細腕を俺の首に絡めた。彼女が外から連れてきたのだろう。一緒に春の香りがした。

「しかもモブ扱いだしー!」

グッとその腕に力がこもる。しまった、これは全く色気なしの絞め技か!

「女子高生!セクハラ、やめてー!」

俺は叫んだ。

「何よー。ここは喜ぶところでしょう?女子高生と触れ合ってるのに。言ってる言葉がおかしいぞ、スランプ作曲家!」

今度は俺がむっとした。

「スランプとかいうなよ、人が気にしていることを…」

彼女は笑った。

「だってジン先生、あたしの名前、全然覚えてくれないじゃん。仕返しだよ。なんかもう、だめだね。スランプこじらせすぎて、かわいくないよね?」
「…だめとかいうな。しかも三十路手前のおじさんに、かわいさを求めるなよ!」
「あらあら。ふくれちゃって。いきなりかわいくなったね、ジン先生」

俺はあきれた。

「…そうか。わかった。言ってる言葉がおかしいんじゃないな。おかしいのは、お前の頭だ!」

それを聞いたサキはさらに腕に力を込めた。本当は苦しくなんてなかったが、そこは大人。苦しんでいるふりをする。「ギブギブ!」と彼女の腕をたたいた。満足したサキは俺からゆっくりと離れていった。春の香りも一緒に消えていく。それが名残惜しいと思うのは気のせいだろうか。気の迷いだろうか。そのあたりは深く考えないようにする。

「さあ、はじめよう!」

目の前で、彼女の笑顔が咲いた。いつものように場を仕切られ、いったいどっちが先生なのかわからない。俺はため息をついた。また今日も俺たちの『レッスン』が始まろうとしていた。

    *

かつて。

偉大な作曲家がいました。かく曲、かく曲、ヒットに恵まれ、音楽にも、人にも、愛された作曲家が。

数多くのアーティストから依頼が殺到、街中で彼の音楽を聞かない日はありません。子供からお年寄りまで、彼の音楽を口ずさんでいました。

でも、いつしかそれはだんだんと偉大な作曲家を苦しめていきます。

世間の評価とプレッシャーに押しつぶされそうになり、徐々に彼の心は疲弊していきました。豊かだった才能もかげりが見え始めます。偉大な作曲家は彼にとって一番大切な『音』を、『音楽』を、見失ってしまったのです。

    *

「伴奏なんて、どうしてひきうけちゃったんだろう…」

女子高生のサキはグランドピアノの譜面台をにらんでいた。そこには彼女が卒業式でひく予定の『遠い日の歌』の楽譜があった。

「ジン先生、私の代わりに卒業式でひいてよ」
「嫌だよ」
「どうせ暇でしょう?」
「暇とかいうなよ。本当のことだから傷つくだろ?」

そう言って俺は肩を落とした。それを見てサキは楽しそうに笑った。

「自分で言って傷ついてどうするの?」

俺はやれやれと楽譜を指差す。

「ほら、笑って気分転換になっただろう?じゃあ、続きはじめるぞ」

サキは鍵盤に指をのせたが、すぐ膝の上に下ろした。

「どうした?」
「…ジン先生は優しいよね」
「え?」
「優しいから、ピアノの先生もひきうけてくれたんでしょう?」

サキはある日、突然俺んちにやって来た。東京でスランプに陥っていた俺は、亡き祖母の残した古民家のある田舎に逃げてきたばかりだった。それをどこでどう聞き間違えたのか、彼女は有名なピアノの先生が近所に越してきたらしいとの噂を耳にし、うちにやって来たのだ。

「別に優しくなんかないさ。俺がいま人の期待にこたえられないから、たぶんお前にもそうなってもらいたくなかっただけだ」
「…ほら、優しいじゃん。本当はピアノから離れたかったんじゃないの?でも、私が来てそうできなくなっちゃってさ。ごめんね」

俯いたサキの頭を撫でてやる。

「俺はいいリハビリになってるから気にするな。っていうかお前は自分の価値をわかっていないな。女子高生は最強なんだぞ。困ってたら、たいていの人間(男)は助けるさ」
「…先生ってカッコいいの?悪いの?どっちなの?よくわかんない。でも…」

彼女は顔を上げ、手招くと、俺の耳元でそっと囁いた。

「いい人ね!」

それを聞いた俺は腹を抱えて笑ってしまった。さすが女子高生!もしかしたら、そのセリフだけでたいていの男を半泣きにできるぞ!

  *

かつて。

偉大な作曲家がいました。彼は自分の中で容易にその『音』にふれることができました。

手を伸ばした先には『音楽』というものが存在していたのです。彼はただ『音』にふれて『音楽』をきいただけでした。それが彼にとって『普通』のことで、『音楽』を『生み出す』つもりなんてなかったのです。でも、彼の『音楽』をきいた人々はそれを『普通』とは思わず、彼の特別な力だと思いました。そう言って、彼の『生み出す音楽』に勝手に酔いしれていったのです。

偉大な作曲家は、自分が人と違うことに気付き、ショックを受けました。彼にとって『普通』のことは、人々にとって決してそうではなかったのです。それがだんだんと彼を苦しめていきます。人と違うことに悩み疲れ、徐々に彼の心は疲弊していきました。そしてある日、自分の『音』にふれることができなくなりました。彼の目の前から『音楽』が消えていたのです。

    *

そろそろピアノレッスンも仕上げに入る。そのくらい上達した頃、サキが突然姿を消した。毎日のように、我が家に来ていた女子高生はいきなり俺の目の前からいなくなった。

「おーい、卒業式の伴奏はどうするんだ?」

(返事なし!)

「卒業生がかなしむぞ?違う涙を流しちゃうじゃないか?」

(返事なし!)

「女子高生がいくら最強でも、いきなりいなくなるとか、やっていいことと悪いことがあるだろう?」

(返事なし!)

「…俺、幻でもみてたのかな?」

(…座敷童子か!?)

最後は自分で返事をしていた。そして、そのバカさ加減にあきれた。取りあえず、彼女が事件とかに巻き込まれてないかだけ気になった。何も言わずに、いなくなるような子に見えなかったから。無事なのかどうか、ただそれを確認できればいい。そう思って慌ててスマホに手を伸ばしたが、その時になってようやく俺は気づいた。彼女の連絡先を知らないこと。俺が知っているのは彼女が女子高生だということと名前だけだった…。

そう言えば出会った頃、俺が自分の名を「ジン」と教えると、彼女は「なら、『ジン先生』って呼ばないとね!」と笑っていた。「作曲家じゃなくてお医者さんの方がしっくりくる呼び方だけど」とも。

…ジン先生…医者……?

『サキです!ノカゼ サキ。いい加減、名前を憶えてよ!』

…って、おい。まさか…。

こら、女子高生!その名前、某漫画(ドラマ)のヒロインふたりの名前を並べただけじゃないか?

思いきり偽名だったとは!

    *

あたしは桜並木の下を歩いていた。卒業式が無事終わり、慣れ親しんだ通学路を惜しみながら。

「ジン先生は元気かな?」

あの人はきっとあたしを知らない。本当の名前も。あたしが何者なのかも。

ある日、田舎町に突然現れた作曲家を人々は面白おかしく噂した。あたしは彼がこの街にいることを知った時、とても驚いた。だって、恩人が現れたから。あたしは彼の音楽のおかげで自分のスランプを抜けることができたから…。でも、そんなあたしが彼のスランプの原因を作ってしまうことになるなんて思いもよらなかった。

「ジン先生、怒ってますか?」

無意識に先生の家に向かっていた。もう彼がスランプを、それをさらにこじらせてないことも知ってる。私がいなくなって、あの家からたくさんのピアノの音があふれていたことも。もがくように、あがくように、先生が自分の『音』を探り当てて、ようやく旋律と出会ったことも…。

それを聞いたあたしは「ああ、春が咲いた」と思った。冬の厳しさに耐え、芽吹くことを忘れず、音の花が開いたんだな、と―。

「良かったね、ジン先生」

玄関の引き戸が開けられる。

「いらっしゃい」

あたしを迎えてくれたジン先生は、驚いたことにスーツ姿だった。

「来るとしたら、近くの高校の卒業式がある今日だと思ったよ。俺がお前から教えられたのは、女子高生ってことだけだったから。名前は偽名だったしな」

私が気まずい笑みを浮かべると、ジン先生はやれやれと笑った。

「いや、ただの女子高生じゃないな。小説家だったんだな」

私は居間に案内された。推薦入試ですでに大学が決まっていた私には思っていたより時間があった。だから卒業式の伴奏もひきうけたし、少し前まで毎日のように、ここに通った。

「前にタイミングの悪かった仕事があった。女子高生作家の新作が映画になる。その映画サントラ依頼だ。お前の小説の映画化だったんだな。自分のせいで俺のスランプが始まったと思ったんだろ?だから、俺のところに来たのか?」

ジン先生はため息をついた。

「別にお前のせいでスランプになったんじゃない。勝手に俺が自分を見失ってただけだ。時期が悪かった。うぬぼれるなよ、小説家!」
「…ジン先生は優しいよね」
「え?」
「優しいから、女子高生のピアノの先生もひきうけてくれたんでしょう?」

女子高生作家として早々にデビューしたものの、あたしは新作を書けずに苦しんでいた。その時、あたしを助けてくれたのがジン先生の音楽だった。彼のそれは爽やかな風のようだった。あたしの中に吹き抜け、よどみないまっさらな『言葉』を届けてくれた。そうして生まれた小説が話題となり、映画化の話が舞い込んだ。でも、何より嬉しかったのはその映画の音楽を担当してくれる予定がジン先生だったということ。

「お前がいなくなってから、仕事の整理をしたんだ。すでに断った仕事の中に、参考資料として映画の原作小説も一緒にあった。著者の写真を見て、ようやくわかったよ。映画、悪いことをしたな。本当にごめん」

あの映画は、結局他の人が音楽を担当することになったのだ。

「ピアノを教えてくれたからいいの。ちゃんと卒業式の伴奏もできたんだよ。凄いでしょう?」

突然いなくなったあたしのことをジン先生は責めなかった。もしかしたら、気づいていたのかもしれない。あたしの気持ちに。何よりあの時、あたしが自分自身の気持ちに戸惑ってしまった。だから、先生の前から逃げ出したのだ。憧れの作曲家はもう憧れの人ではなくなっていたから…。逃げ出したのは、あたしも一緒だ。

「お前は本当に最強の女子高生だったな」
「ジン先生は詐欺師だったよ。あんな爽やかな音楽をつくる人が、こんなネガティブだとは思わなかった。音楽詐欺!爽やか詐欺!今日はスーツなんか着てどうしたの?カッコよくなっちゃってさ。もっと詐欺!!」
「なんだ、それ!俺、仕事モードはいつもスーツなの。それに今日は誰かさんの卒業祝いもあったんだ。なのにその言い草、ひどくね?」

あたしたちは笑った。ジン先生もあたしも、もう大丈夫だ。だから、お願いしてみた。

「ねえ、良かったらジン先生の新曲を聞かせて。あたし、頑張って歌詞を書くから。おかしい言葉、フル動員させるよ」
「女子高生!セクハラ、やめてー!俺の音楽まで」

あたしは、コホンと咳ばらいをした。

「…言っとくけど、もう女子高生じゃないよ」

ジン先生があたしの手を取る。

「知ってる」

そして、グランドピアノに向かった。

「でも、俺の生徒だろ?さあ、はじめようか?今日のレッスン」
「…言われて初めて気がついたけど、そのセリフちょっとヤラシイね…」
「いつもお前が言ってたセリフだろ?ただ、ピアノをひくだけだけじゃないか。ヤラシイって言うやつが一番ヤラシイんだぞ、元女子高生!」

あたしはむっとした。

「…元女子高生って言い方、なんだか嬉しくなーい!」

ジン先生は笑いながらピアノの椅子に座った。

「そうか?俺は嬉しいぞ。大人の階段、のぼってるってことだ」

彼は顔を上げ、手招くと、あたしの耳元でそっと囁いた。

「早くお前が俺のとこまで来てくれると、もっと嬉しいけどな」

あたしはお腹を抱えて笑っていた。さすが偉大な作曲家!もしかしたら、そのセリフだけでたいていの女子を半泣きにできるよ!

「さあ、はじめよう!」

グランドピアノの鍵盤に、繊細な彼の指が落ちる。



ああ。

音が、咲いた。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

青春モノは参考資料読まなくていいから気楽でいいや。ちなみに作中の偽名のネタバレは村上もとか『JIN-仁-』みたいですね。 ドラマ化(大沢たかおさん主演)にもなったので、有名かもしれません。物語を書いてて一番困ったのはタイトルでした。読み方は「おとはな」でも「おとばな」でもどちらでもよし。二文字の漢字で、なんとなく携帯小説みたいな感じを狙ってみました。

★ 安藤裕子『パラレル』 ★
https://www.youtube.com/watch?v=Ky2Pl6nwY0o
この音楽を聞いて生まれた物語。最後に彼が聞かせてくれる新曲はこのイメージ。彼女がのせるだろう歌詞も。ただこのPV、ねえやんこと安藤裕子さん本人のインパクトがかなり強いものになっています(私はカッコいいと思うのですが!)ドラムもいいんですよ。さあ、耳をすまして、ぜひピアノの音を探して下さると嬉しいです。

ついでにこちらもどうぞ。女子高生が伴奏した曲。『遠い日の歌』
https://www.youtube.com/watch?v=9Q3EUaU5N4c
私が中学生の時、卒業式で歌った曲です。(高校はギリギリまで大学受験に追われてたせいか、卒業式のことはさっぱり覚えてません)確かこれだったと思う。あと合唱曲で個人的に好きなのが、コンクールで他のクラスが歌っていた『フレトイ』というもの。良ければ、こちらもどうぞ。
『フレトイ』
https://www.youtube.com/watch?v=NbIHZGTOkgA

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大学生の、特に野郎だけの飲みなんて、他人から見れば「アホだろ?」とつっこみたくなるようなも内容のものかもしれない。

終電を逃して、安い居酒屋チェーン店で一晩明かす。グダグダ、ダラダラ、マッタリ。グビグビ。沈没(不覚…)。その繰り返し。今夜の俺たち3人も御多分もれず、そのいい例だろう。

夜更け。話しも尽き、目がすわってきた頃、俺はみんなにネタを提供してやった。

「…ドイツが生んだ有名な物理学者、アインシュタインはこう言いました」
「は?」
「 『 神はサイコロを振らない 』 さあ、これはどういう意味でしょうか~?」

みんな酒を飲む手をとめ、俺を見つめた。

「どうしたの、富山(とみやま)?」
「急に、真面目な顔して。何を言い出すかと思えば…」

俺は友人ふたりに打ち明けた。

「実は、彼女に無理難題出されちゃってさ。お泊り旅行したいなら、この意味を当てなさいって言われて」
「富山の彼女、リケジョだっけ?」

と、この中で一番モテるだろう男・雰囲気イケメンの筑波(つくば)がたずねる。

「そそそ。理系女子のリケジョ様」

俺の彼女は良いとこの理系の大学に通っている。それに比べ、俺は三流大学の平凡な学生だ。頭の良さと気の強さは比例するのか、彼女と俺は恋人同士だけど、『彼女>俺』という力関係が存在する。まあ、ホレた弱みもあるかもしれないけどね。

「いや~、女の方が優秀だと男って立場、弱くなるよな。しょうがない。富山のために俺たちがひと肌、脱ごう」

そう言ってくれたのは、やたら人に恩をきせたがる男・脇田(わきた)だ。

「俺にまかせろ!グー○ル先生で一発だ!」

そう言って、脇田はスマホをかかげる。ちょっと待て!

「脇田、ストップ!調べちゃいけないって、彼女から言われてんだよね。自力で頑張れってさ」
「じゃあ、俺たちに聞くのもマズイんじゃ…」
「それは大丈夫。『同じ大学の人たちなら、たかがしれてる』って言われた」

ふたりは眉を寄せた。

「相変わらず、失礼な子だな」
「…お前、よくそんな子と付き合ってんな」

よく言われる。でも、そんなに悪い子でもないのだ。出会いの合コンで酔いつぶれた俺を文句を言いいながらも、最後まで介抱してくれた。向こうは数の埋め合わせで来ただけと後で知り、そんなに楽しい飲みではなかっただろうに。困ったやつ程、ほっとけない。そんな子なのだ。

「彼女と付き合い始めて、はや3か月。そろそろ手を出してもいいんじゃないかと富山は考えたんだな」
「ひっかかる言い方だなー。まあ、間違ってはいないけど」

俺も男ですし。

「俺ら理系じゃないからな~。アインシュタインがどうこう言われても…。べえーって舌出してるくせになぜか偉大なジジイだろ?くらいしかなあ」

脇田の言葉に頷きつつ、隣りの席で酔っぱらったジジイを発見。舌を出してるけど、あのジジイも偉大なのかな?

「きっと、アレだ。サイコロなんて振って遊んでるような暇人じゃない!とでも言いたいんじゃないか?」

顎の無精ひげを撫でながら筑波がそう言った。俺はため息をついた。

「…遠回しのお泊り拒否か。へこむな、それ」

それを聞いた脇田が腕を組んだ。

「んじゃあ、『サイコロなんて重いもの、振れないから。あきらめて』とか?」
「箸も重くて、もてない…みたいな?神様、嫌なやつだな」と、筑波。
「どっちにしろ、断られてるじゃん」と、俺。

本当そうなら、マジへこむわ~。

「…待て待て。そうと見せかけて、実はお泊りOKサインだったりするかも。…案外、こうじゃないか?神(彼女)はサイコロなんて振らない。なぜならサイコロを振るのは、お前(富山)だからだーっ!!って」

脇田の新たな意見に俺は拝みたくなった。神様、なんてカッコいいんだ!

「…急に神様と彼女が男前になったな」と、笑う筑波。
「悪くないだろう?」と、自分の答えに酔いしれる脇田。

俺は、ビールジョッキを片手に立ち上がった。

「きっと、それだ!そうに違いない!ありがとう、お前ら!それじゃあ、アインシュタインに敬意を払って乾杯だ。アインシュタインはドイツだから、ドイツと言えば…アレかな?」
「アレだな」
「アレだね」

似た者同士、考えることなんて『たかがしれてる』

「ドイツと言えば…!」

俺たちは声を合わせた。

「 ビールとソーセージ!!(乾杯☆) 」

テキトーな乾杯の音頭。重なるジョッキの音。酔っぱらってるせいか、それがやけに気持ち良かった。

「なんか急に食いたくなったな~、ソーセージ」
「筑波も?俺も俺も!」
「脇田もか。なあ、富山は?」

ありがとう、アインシュタイン!

「…富山、聞いてる?」

俺、たぶん今めっちゃ『神に祝福されてる』ってやつかもしれない。

「…ダメだ。こいつ、全然聞いてねー」
「きっと頭がお花畑なんだよ。筑波、気にせず頼んじまえ。ビールも一緒に。いっぱい飲ませて、ここは富山に奢ってもらおうぜ!」

神様、俺はサイコロを振ってみせます!!

「店員さーん、すみませーん!追加でソーセージの盛り合わせとナマ3つ、お願いしまーす」

     *

大学生の、特に野郎だけの飲みなんて、他人から見れば「アホだろ?」とつっこみたくなるようなも内容のものかもしれない。

「…ドイツが生んだ有名な物理学者、アインシュタインはこう言いました」
「は?」
「 『 神はサイコロを振らない 』 さあ、これはどういう意味でしょうか~?」

みんな酒を飲む手をとめ、俺を見つめた。

「まさか富山?」
「急に、真面目な顔して。何を言い出すかと思えば…。前と同じネタってことは…」

俺は、ビールジョッキを片手に立ち上がった。

「次こそは、絶対答えを当ててやるっ!」

それを聞いた友人ふたりは…。

「当てるまでエンドレスなの、これ?(マジか~)」と、うんざり顔の筑波。
「っていうか俺たちの場合、考えれば考えれるほど、答えから遠のくんじゃ…?(助けてグー○ル先生!)」と、途方に暮れる脇田。

そんな彼らの思いは露知らず…。

「待ってろよ、彼女とアインシュタイン!!」

と、なぜか舌を出すじじいに囚われた彼女を想像し、夜更けに闘志を燃やす俺だった。


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【 神はサイコロを振らない 】
不確定性原理への反論に使っていたアインシュタインの言葉。
意味:運命は最初から決まっている。必然。

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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ ドラマ『神はサイコロを振らない』 × Oasis『Roll With It』 ★

私の物語はかなりふざけてますが、この言葉を教えてくれたドラマは感動作ですよ。

① ドラマ『神はサイコロを振らない』
http://www.ntv.co.jp/saikoro/
https://www.youtube.com/watch?v=ZEHDTViN4JY
忘れられないドラマ。10年前、飛行機事故で死んだと思っていた恋人と親友。でも、彼らは10年の時を越えて現代にやってきます。どうやら時空をこえてきたらしい。でも、再会の時間はあまりに短いものでした…。小林聡美&ともさかりえ共演作。「すいか」からいいコンビの大好きなふたりです。

②Oasis『Roll With It』
https://www.youtube.com/watch?v=6XQzm0WlRcg
唯一ライブに行けた洋楽アーティスト。この曲、好きなんですよね。

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そいつは、いつも不意打ちだった。

授業中ぼんやりしていたり、そろそろ眠ろうとベッドの中に入ったり、気がゆるんだ隙を狙って、そいつは僕に声をかけてくる。

『ハロー』

なんて挨拶をされたことは一度もない。自己紹介も特になしだ。
こっちが何者だ?と問う前に、いきなり本題に入るんだ。
 
『お目覚めですか?』

…僕は眠っていたのか…? 次の瞬間、僕は夜の海にいた。

『俺はずっと待ってたんだぞ、相棒』

…待つ?相棒?誰のことだろう? 次の瞬間、僕は知らない男と砂漠にいた。

『何度もあきらめずに手を伸ばす。届かなくても届くまで、つかむまで…』

…そんなことをしてどうするんだ? 次の瞬間、僕はどこまでも続く金色の海を見渡していた。

『力を生み出すんだよ。見ててごらん』

様々な声。それが飛び交っている世界。物語を生み出す世界。はっきりとつかめないくせに、そこに、すぐそこに。すぐ近くに。…いや、ここに存在している世界…。

『…ああ、僕は知っている』

僕はそいつを、『声』と呼んだ。 気軽に親しげに近づいてくるそいつを、そう呼んだ。

『私の末路を辿ろう』

でも、頭のどこかでそいつを警戒する僕もいた。

油断するな!そいつは、危険だ!あまりひきつけられるな、ひきずられるな-、と。
だから、時々怖くなる。『声』が止むことはないから。気がゆるんだ隙を狙って、ぐっと僕に迫ってくるから。

『恐れることは何もありません』

それは夢と似ているのかもしれない。甘い夢。たちの悪い夢。そんなつかみどころのないもの。でも、確かに存在するもの。そういうのって難しいよ。いったいどうやって説明すればいいのかな?

『見えないだけで、確かにここにあるんだ』

『声』を手放そうと思ったこと? 何度もあるさ。 振り切ろうと思ったことも? それも何度もね。

耳をふさげ!遮断しろ!逃げてみせろ!逃げ切ってみせろ! 試したさ。

― 本当は聞きたくてたまらないんだろう? ―

でも、全て無意味だったんだ。意味のないことだったんだ。…なら、もう開き直るしかない。

そいつは、いつも不意打ちだった。

『お目覚めですか?』

挨拶なんてされたことは一度もない。自己紹介も特になしだ。
こっちが何者だ?と問う前に、いきなり本題に入るんだ。

「ハロー」

だから、僕は言ってやったんだ。僕から、挨拶をしてやったんだ。 
今日はどんな『声』を、『物語』を、聞かせてくれるんだい?
さあ、全部聞いてやろうじゃないか!ってね。

『ここは…』

次の瞬間、僕は夜の海にいた。

― 本当は会いたくてたまらないんだろう? ―

上等だよね。 いつか必ず「グッバイ」て笑ってサヨナラしてやるさ。



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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ supercar 『 SILENT YARITORI 』 ★
https://www.youtube.com/watch?v=7LAXwiNghwM
作業中、聞いてた音楽です。人それぞれ物語の生まれ方は違うかと思いますが、私の場合、半分はこんな感じで。半分はフィクションで。よし、200まで、あと60!


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他の物語を待っていた方ごめんなさい。書きたくなって、久しぶりにショートショートを。

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隣りの席の野矢(のや)くんは、いつも傷だらけだ。

高2になってあったクラスがえ。私は仲の良かった友達と離れ、さびしいような、少しホッとしたような複雑な気分を味わっていた。そんな矢先、この謎めいた野矢くんと隣りの席になってしまった。

「俺、野矢英雄(のやひでお)。いつも寝てるだろうけど、気にしないで。よろしくな」

と最初に挨拶をかわした時、彼の鼻の頭に絆創膏が貼ってあったのを覚えている。それを見た私は、本当にそんなところ怪我する人いるんだなあ…、くらいにしか思わなかった。

でもね、夏服(男子は上が学ランから半袖白シャツに変わります)になって肌の露出度が上がってから、私は彼が心配で心配でたまらない。だって、野矢くんの腕はいつも打ち身や痣だらけ、それは全然治る気配も見せず、なんだか増える一方なんだかたら…。…野矢くん、きみはいったい…!?

大きな目がクリっとしてて、女子受けがよさそうな童顔。背は低い痩せ型。小動物系。だから、余計に痛々しい傷が目立ってしまうのかもしれない。

まさか野矢くん、本当はどこかで喧嘩してる不良さんだったんですか…?それとも、逆に悪質で陰険なイジメにあってたりしますか…?そんな彼の隣りの席で大丈夫なんでしょうか、私は…?とか。

野矢くんの心配より、ちょっぴり我が身を気にする始末です。クラスメートなのに、隣人なのに、ごめんなさい。でも、人間、自分が一番かわいい生き物って言うじゃないですか。小心者の私は、不安で心配でたまりません。せめて、誰かこっそり教えてほしい。彼についてぜひ詳しく!!

…そんなこんなで、最近、私はこの謎めいた隣人のことで頭がいっぱいだった。もう一人悩んでいるのも限界を越えてしまったある日、ついに行動に起こすことにした。なんてことはない放課後、野矢くんの後をつけたのだ。世に言う、ストーキングってやつですよ。

放課後のチャイムと同時に、大きなスポーツバックを背負って駆け出す野矢くんを追いかけた。俊足すぎて、見失いそうになっては「廊下を走るな、こら!小動物!!」って叫びたい気持ちをなんとか抑えた。彼の行き先は体育館だった。

半袖ハーパン姿に着替えた彼は、バレーボール用のボールを準備をし、一人黙々とストレッチを開始した。それから、肘と膝の部分にサポーターを付けて、立ち上がり、深呼吸をする。もしかして…これは、ひょっとしなくても…。

「部活の傷ってオチ…!?」

うっかりもらした私の声が聞こえたのか、野矢くんが振り返った。

「…あれ、隣りの席の…?」
「東(あずま)です」

私は自ら名乗り出た。やっぱり私の名前、知らないと思ったよ。授業中、野矢くんはいつも寝てるし、休み時間はものすごい勢いで何かしら食べてるし、まわりに興味なさそうだったから。こっちはあなたのせいで、終始ハラハラドキドキしっぱなしだったというのに。ちなみにそれって青春の痛みとかじゃないから。バイオレンス風味、とでも言いましょうか…。

「ごめんごめん、東さん!あれ、どうしてここに?」

見つかってしまってはしょうがない。私は大人しく白状した。というか、バカな自分の勘違いを一緒に笑い倒してもらいたくなったのかもしれない。たぶん誰よりも早く部活に来て、一人入念に準備をしている彼なら、一瞬犯したストーキングについても笑って聞き流してくれる。そんな気がしたから。案の定、彼は笑ってくれた。人の良さがにじみ出る笑顔だった。

「そっかー、心配してくれてたのか。ごめんごめん。俺、別に喧嘩もしてないし、イジメにもあってないから。これはバレー部の球拾いが原因なんだ」
「球拾い?」
「リベロってポジションなんだけど、知ってる?」

私は首を振った。体育の授業で何度かやっているバレーボール。でも、私はポジションとか詳しいルールは知らなかった。

「バレーってさ、相手のコートにボールを落として点を入れるスポーツじゃん?逆に相手に自分のコートにボールを落とされると負け。俺はそうならないように、とにかくボールを拾うんだ」
「へえ、カッコいいね」

野矢くんはきょとんと私を見返した。どうやら私の返事が意外だったらしい。

「東さん、変わってるね。バレーのカッコいいポジションって、素人目には絶対点取るスパイク打つ奴だよ」
「…そうなの?」
「そうそう。派手だし、目立つしね。得点とってチームを笑顔に導く存在(エース)。カッコ良くない?」
「…別に…」

野矢くんは笑った。

「東さん、面白いな」
「そうかな?」

私は懸命に傷だらけになる君の方が面白いけど…。それに、思うんだ。

「…エースなんて全然カッコよくないよ」
「え?」
「ううん。ほら、野矢くんって下の名前が確か英雄(ひでお)でしょう?英雄(えいゆう)って、ヒーローじゃん。そっちの方が断然カッコいいと思う」

私は彼の肩をポンポンとたたいた。

「私、エースよりヒーロー押しなんだ。がんばれ、傷だらけのヒーロー!」

そう笑って、私は体育館を後にした。


    *


隣りの席の東(あずま)さんは、密かに傷だらけだ。

高2になってあったクラスがえ。俺は仲の良かった友達と離れ、さびしいような、少しホッとしたような複雑な気分を味わっていた。そんな矢先、この謎めいた東さんと隣りの席になってしまった。

「私、東 一夏(あずま いちか)。いつも考え事してボーっとしてるだろうけど、気にしないで。よろしくね」

と最初に挨拶をかわした時、彼女の発言に「なぜいつも考え事を…?」となったのを覚えている。それを聞いた俺は、複雑な人っぽいから、あんまり声をかけない方がいいのかなあ…、くらいにしか思わなかった。

でも夏になったある日の放課後、俺の傷の心配をして後をこっそりつけてきたという彼女のことを知ってから、、俺は彼女が気になって気になってたまらない。だって、東さん「カッコいい」やら「私はヒーロー押しなんだ」やら言って、俺を褒め殺す一方なんだかたら…。…東さん、きみはいったい…!?

目尻がすっと上がったきれいな瞳、男受けがよさそうな顔。背は高めで均衡のとれた(つまり出るとこ出た)体型。美人系。だから、発言や行動が余計にが目立ってしまうのかもしれない。

まさか東さん、本当は俺のこと、その、好き…とかですか…?それとも、これは単に俺の勘違いだったりしますか…?そんな小悪魔系彼女の隣りの席で一体どうすればいいんだ、俺は…?とか。

東さんの心配より、ちょっぴり我が身を気にする始末です。クラスメートなのに、隣人なのに、ごめん。でも、人間、自分のことをそんなに褒められちゃ、うぬぼれてしまうじゃないですか。勘違い野郎の俺は、気になって気になってたまりません。せめて、誰かこっそり教えてほしい。彼女についてぜひ詳しく!!

…そんなこんなで、最近、俺はこの謎めいた隣人のことで頭がいっぱいだった。もう一人悩んでいるのも限界を越えてしまったある日、ついに行動に起こすことにした。なんてことはない部活のない放課後、東さんの後をつけたのだ。世に言う、ストーキングってやつですよ。

放課後のチャイムと同時に、自分のスクールバッグを背負って歩き出す東さんを追いかけた。歩くペースがゆっくりすぎて、近づきそうになっては「何、もたついてるんだ!小悪魔!!」って叫びたい気持ちをなんとか抑えた。彼女の行き先はグラウンドの見渡せる屋上だった。

バッグを地面に下ろし、塀に片肘をついてぼんやりしている彼女の視線の先は、野球部の…いや、ソフトボール部のグラウンドだった。夏の暑さの中、部員たちは汗まみれになりながらも、必死に球を追いかけている。それを見て、うちの高校の女子ソフト部が春の大会でいいところまでいって、逆転負けしたことを思い出した。見つめていた東さんは、軽く投げる仕草をすると、深くため息をついた。とてもキレイなフォームだった。

『…エースなんて全然カッコよくないよ』

もしかして…これは、ひょっとしなくても…。

「密かに傷だらけはきみってオチ…!?」

うっかりもらした俺の声が聞こえたのか、東さんが振り返った。

「…あれ、野矢くん…?」
「何がヒーロー押しだよ。ソフト部の嘘つきエースめ!」

見つかってしまってはしょうがない。俺は大人しく白状した。というか、バカな自分の勘違いを一緒に笑い倒してもらいたくなったのかもしれない。たぶん誰よりも傷ついている彼女なら、一瞬犯したストーキングについても、笑って聞き流してくれる。そんな気がしたから。案の定、彼女は笑ってくれた。人の良さがにじみ出る笑顔だった。

「そっかー、ごめんごめん。そう、ちょっと前まで私ソフト部のエースだったんだ」
「ちょっと前まで…?」
「ピッチャーの私の投げた球が最後の最後に打たれて、逆転負けしちゃってさ。仲間に合わせる顔がなくて今、部活サボってます…」

彼女はけらけらと笑った。無理につくった笑顔。…ああ、この笑いを俺は知ってる。だから、たずねた。

「本当はもっと部活に行けない。みんなに顔向けできない。そう思うような理由が他にあるんじゃない?」

東さんはきょとんと俺を見返した。どうやら俺の返事が意外だったらしい。

「鋭いね、野矢君。そうなの。私、仕出かしちゃったの。あの試合、最後キャッチャーのサイン、無視しちゃったんだ。自分なら絶対ストレートでおさえられるってふんで、そうして見事に玉砕…」
「そうだったんだ」
「ほらね、エースなんて全然カッコよくないよ」
「そうかもしれないね」

俺は笑った。

「今の東さんは確かにカッコよくないかもね。本当は部活に戻りたいのに戻れなくて、もたついててさ」
「厳しいなあ」
「授業中、いつもそのことで悩んでたんだろう?」
「もうカッコ悪すぎて面白くない?」

俺はそんなふうに懸命に傷だらけになる君の方が面白いけど…。それに、思うんだ。

「…エースなんてそんなもんだよ。バレーならスパイクで点とったり、ソフトなら球を投げて相手をおさえたり、決めたらカッコいいけど、失敗したら、一番矢面に立たされる。チームプレイのエースなんて、そんなもんだよ」
「責任重大でプレッシャー、ハンパなくてね…」
「でも、投げたいんだろう?」
「え?」
「ごめん。さっき投げるフォーム、見ちゃってさ。すげー、キレイだった。『投げたい』っていう、その気持ちだけで本当は充分なんじゃないかな。それが見られれば、まわりの俺たちは笑ってられるもんだよ、エース」

俺は彼女の肩をポンポンとたたいた。

「待ってるよ、俺たちは。エースがいないとつまらないからさ」

そう笑って、俺は屋上を後にした。


    *


隣りの席の野矢くんは、相変わらず、いつも傷だらけだ。

「で、ソフト部エースは無事、部活に戻ったんだ?」
「おかげさまで。野矢くんのいってたとおり、案外みんな笑って受け流してくれたよ。キャッチャーだけ泣いて喜んでたけど」
「なんかわかるな。そのキャッチャーさんの気持ち、俺すごく…」

しみじみと頷く隣人はエースを支えるポジション同士、何か分かり合えるものがあるのかもしれない。

「それはそうと、東さん」
「うん?」
「きみ、うちの…、バレー部のエースに何かした?」

やっぱり聞かれると思った。私はそらとボケた。

「…別に…」

『待ってるよ、俺たちは。エースがいないとつまらないからさ』

野矢くんのあの言葉が気になって、個人的にバレー部を調査したら、なんと私と似たような理由でバレー部エースも部活をサボっていることを知った。

「本当に東さん、何もしてないの?」
「たいしたことはしてないよ。『ただヒーローが傷だらけなんです。助けて!』って言って、バレー部のエースくんを現場に連れて行っただけだよ」

すると、バレー部のエースは自主練習に励む野矢君の姿を見てえらく感動し、おのれの不甲斐無さ反省したようだ。部活にきちんと戻ったらしい。

「助けられるヒーローってなんだかなあ…」

そう愚痴をこぼす野矢くんは、何気に嬉しそうだった。やっとお互い最近、隣人同士の関係がいたについてきた気がする。話しやすい、いい距離感とでもいいますか…。

「もう少しで、夏の大会か~」

野矢君が傷だらけの腕で伸びをした。私もそれにこたえる。

「あ、バレー部も?うちもだよ」

野矢君はニヤリとした。

「せっかくだから、東さんのエースっぷりでも見に行きますか」
「いいねー、それ。私もバレー部のカッコいいヒーローの応援に行っちゃおうかな」
「…出たよ、小悪魔め。はいはい、名前負けのヒーローですけどね」

そう笑って隣りの席を離れようとする彼を、私は慌ててひき止めた。

「すねないでよ、傷だらけのヒーロー!」
「東さんの褒め殺しの手に、二度と引っかかるもんか」

懸命に傷だらけになろうとする隣人。相変わらず、面白いなあ。だから、思うんだ。
私は彼の肩をポンポンとたたいた。

「私、エースよりヒーロー押しなんだ。今度は嘘じゃないよ」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ 古舘春一『ハイキュー!!』 × 秦基博 『 鱗』 ★

やっぱりショートショート書くの楽しいな。時間があったら、毎日書くんだけどな。ちなみに英雄の名前でヒーローというのは、あだち充さんの『H2』からきたのかと。

① 古舘春一『ハイキュー!!』
http://nicotter.net/watch/sm23702812
(吹き出しを押すとコメントが消えます)
以前紹介したスポーツ漫画。高校男子バレーの話。この動画を見て書けた物語です。秦基博さんの「鱗」も知れて良かった。

② 秦基博 『 鱗』
フルバージョンです。秦さんは、いい歌いっぱいのようで他にも聞いてみたい。
https://www.youtube.com/watch?v=V0xSlwow9rQ


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私は、誘拐される。

「動くな!」

帰宅途中だった。一人暮らしの自分の家まで、あと少しのところで。

「おとなしく車に乗れ!」

それをあえて狙っていたのだろう。あっさり覆面男たちに取り囲まれてしまった。

「…また、誘拐?」

私は犯人を睨んだ。これでいったい何回目だろう?

ニヤリ。

外灯に照らされ、目の前の白い覆面がくっきり光って見えた。私は息を吸い込んでから言った。

「…っていうか、せめて覆面は外そうよ。本当に捕まるよ」

よく見たら、下は何気に就活スーツときている。

「おとなしく誘拐されな、お嬢さん」

彼らは覆面を外し、無邪気に笑って言った。

「一緒に行こうぜ。真夜中の逃避行!」


    *


車は走る。夜を。眠らない街を。誘拐犯と私を乗せて。

「もう吹き出しそうになっちゃった」

後部座席に乗り込んだ私がそう言うと、となりに座る誘拐犯…というより、愉快犯のウッチーが笑った。

「雪(ゆき)んこ、気づいた?この覆面のおでこの『肉』の字に。実はただ『肉』って書いてあるわけじゃないんだよね~!」

そう言って、ウッチーは自分たちが被っていた覆面を私に貸してくれた。

「あ、三者三様なのね!」

おでこに輝く『肉』の字の表現が覆面によって違うらしい。ウッチーは親指をグッと立てた。

「某漫画をみんなリスペクトしてますから」

どうやら漢字の『肉』、片仮名の『ニク』、平仮名の『にく』と言った具合に、人により微妙に書き方が違うようだ。

「ちなみに『肉』がカンちゃん、『ニク』が秦(はた)、『にく』が俺のね」

急いで油性マジックペンで書いたのか、手書きの個性的な字がまたいい味を出していた。

「っていうか、雪んこも被る?まだローマ字版『niku』が残ってるぞ?」

助手席に座っていたリーダーであるカンちゃんが振り返り、あまっていた『niku』覆面を私に投げてよこした。こらえ切れず、私は吹き出した。

「もう、みんなウケ狙いすぎ!」

私たちの様子をバックミラー越しに眺めていた人物が車内ライトを消して手をたたく。

「はいはい、雪野(ゆきの)をつかまえた後はどうすんの?逃避行という名のドライブは。今日はどこ行く?」

逃亡(ドライバー)担当の、秦(はた)だ。

「前はどこへ行ったっけ?」と、私。
「伊勢だよ、伊勢。本店の赤福を食べたいとか誰かが言ったんじゃん」と、秦。
「そんなの誰が言ったんだよ?ウッチ―?」と、カンちゃん。
「えー、俺じゃないよ。っていうか、高速つかっても東京から伊勢はさすがに遠かったなあ。一日あれば行けるんだって発見もあったけど」と、ウッチ―。

そう、かなり無謀なドライブだった。ドライブというより小旅行のレベルだったな、あれは。でも、赤福がおいしかったから許すけども。

「山梨の有名な名水を汲みに行こうっていうのもあったね」
「あー、遭難しかけたやつか」
「なんで俺ら水のために命かけてるんだよ!?って秦がキレたやつね」

そう、ふだんあまり感情をおもてに出さない秦がいきなり怒り出したから、みんな驚いたっけ。それを思い出し、私たちは笑った。

いいな、この雰囲気。久しぶりだな。みんな変わってなくて安心する。

元々、大学のゼミ仲間だった私たちは、グループ発表で同じグループになったことを機に仲良くなり、プライベートでもよく遊ぶようになった。時たま、こんなふうに変なお題を出しあっては、車で冒険に繰り出す。誘拐、逃避行と銘打ってはヘンテコな夜のドライブを決行するのだ。

「今日はそんな遠くまでいけないよ。近場でお願いします」
「ドライバーの意志は尊重しなきゃね。じゃあ、東京都内近辺か。久しぶりにお台場、横浜とかは?」
「ウッチ―、いいんじゃない?青春&カップルスポットで。俺たちに足りないエネル源をそこで補おうぜ」
「えー、彼女のいるカンちゃんには言われたくないなあ」
「雪んこも鋭くつっこむようになっちゃったなあ」

感慨深げにカンちゃんは頷いた。彼は私の親友、麻里子と付き合っているのだ。

「雪んこ、まずはこっちのエネル源とりなって。何も食ってないだろう?お菓子、買っといたんだ。どれがいい?」

そう言って、優しいウッチーが私にコンビニのビニール袋を差し出す。ありがたい。どれどれ?

「って全部グ○コの『PRETZ(プリッツ)』じゃん!?」
「そそそ。サラダとロースト、あと変わり種のトマト味ね。久しぶりに見つけたら懐かしくてさ、そこにあった全種類をかごに入れたんだ」

さすがウッチー。私はせめてお惣菜代わりになりそうな味を選んだ。

「…じゃあ、サラダで」

今日はオフィス街を歩き通しで、昼から何も食べてなかったから正直助かった。

「サラダ味を選ぶとは、秦と一緒だね」
「え?」

カンちゃんがいきなり意味ありげに呟くから、思わず私はむせてしまった。

「そんなこと言って、カンちゃんもサラダ味を選んでたよな」

でも、秦がうまく返してくれる。別に私のために…じゃないと思う…けど…?

「わかったわかった。そういうことにしといてやるよ」

私はウッチ―から水のペットボトルを受け取ると、気持ちを落ち着かせた。

「んで、お台場と横浜どっちにすんの?」

カンちゃんが仕切り直し、みんな腕を組んだ。

「近場だからって、やることに、お題に、手を抜きたくはないんだよね~」

アイデアマンであるウッチーの閃きを私たちは待つ。

「思いがけないことにするか…いやいや、ここは超くだらないことをしてシュールさ全面に出すのも…」
「雪野が決めなよ」

いきなり秦が遮った。

「今日は雪野、お前が決めな」
「え、私?」

秦がそういうと、カンちゃんもウッチーも「うんうん」「だねだね」と頷いた。私は戸惑いながらも、せっかくだしと、頭を回転させる。さて、どうしようか。お台場と横浜で、できること。さっきウッチーが言ってた超くだらないこと、シュールさを狙うというのも、なんだか面白そうでありのような気もする。

私は食べているPRETZの箱を見つめた。
お台場、横浜、PRETZ、お台場、横浜、PRETZ、お台場、横浜、PRETZ……んん??

「…本当にくだらなくていいの…?」

となりのウッチ―が身を乗り出した。

「いいよ、いいよ!どんとこい、超シュール!」

私は念を押した。

「くだらなすぎて、笑えないかもしれない」

助手席のカンちゃんが手で丸をつくる。

「全然OK!」

私は息を吸い込んだ。

「場所は横浜。秦、そこにあるライブハウスに向かってほしいの」

バックミラー越しに秦がたずねる。

「何てとこ?」
「横浜BLITZ(ブリッツ)」

雪野、ライブに行かない?私、雪野と一緒に行きたいの。
ふと懐かしい親友の声がした。ねえ、麻里子。あなたは今、何をしてるの…?

「ドライバー、了解です。聞いた?リーダー、一応カーナビよろしく」
「あいよ。でも、雪んこ、そこで俺たちはいったい何をするんだ?」

私は暗がりの中でニッコリした。

「横浜BLITZで、食べるのよ!」

タイプの違う三人の声が重なる。

「何を?」

私はハッキリと言った。

「横浜BLITZで、PRETZを食べよう!」

そう言って、私はみんなに見えるよう自分の食べているサラダ味のお菓子の箱を振った。
車内に沈黙が広がる。やらかした…!?と私が焦ったその時だった!

「あはははははははっははっははっはっはっはっははははっはっは!」

静けさを打ち破るように、気持ちのいい笑い声が車内に響いた。

「…秦…?」

ウッチ―、カンちゃん、私の三人は思いがけないことに驚いた。…秦が…あの秦が、大爆笑してる…!?

「やべー!超くだらねー!なんだ『BLITZ』に『PRETZ』って…!!ははははははは!!!」

誰もこんなに大笑いする秦を見たことがなかった。知り合って、そろそろ4年…。彼の笑いのほとんどは、カテゴライズすると『鼻で笑う』というものだったから。意外すぎて、それを見たみんなが吹き出すのも時間の問題だった。

「ぷっ!はははははははははははははははは!!」

きっと私の『BLITZ PRETZ(ブリッツ プリッツ)』案より、目の前の秦の方がツボだったと思う。普段笑わない人の、笑顔は貴重だから。麻里子もそうだった。

「よーし、それ採用!!」

車内はおおいに盛り上がり、ネオン街がかすんで見えた。
車は走る。夜を。眠らない街を。爆笑する誘拐犯と私を乗せて。


    *


横浜BLITZについた私たちは車から降りた。

「いや~、マジ吹いたわ!」

さすがにライブも終わってる時間だから、誰もいない。建物の電気も消され、あたりは妙に静かだった。

「秦が違う意味でキレて最高だったわ」

カンちゃんはどうやら笑いすぎて、まだお腹が痛いらしい。彼のセリフに、秦が恥ずかしそうに俯いた。

「シャイが服を着て歩いてるようなもんだもんね、秦は!」

ウッチ―が嬉しそうに秦を破壊占めにする。それを秦が振り払おうと、じたばたした。じゃれ合っているようで、どこか微笑ましい。いいな、男子の友情は。なんか爽やかで。ねえ、麻里子もそう思うでしょう?

「あーあ、雪んこが本格的に麻里子シック、入りました~!」

気づけば、カンちゃんが私の隣に立っていた。

「何そのネーミング!ホームシックとかけたの?麻里子シックはカンちゃんでしょう?」

彼の愛しの恋人は今、イギリスに語学留学中なのだ。

「きっと麻里子なんて今頃、アビー・ロードを優雅に歩いてるだろうさ」
「さすが麻里子様。一人で何度も歩いてそう。ご学友を置いてけぼりでね」

音楽が大好きな彼女の満喫している姿が目に浮かぶ。ふたりで横浜BLITZのライブに行ったのが遠い昔のようだ。

「まあ。でも、気が強い美人の麻里子様でも弱みはあるわけよ。それが、雪んこね」
「え?」

いきなり自分にふられたので、私は驚いた。麻里子の弱み?私が?

「ほら、麻里子はあんなんだから、仲のいい子なんて雪んこぐらいじゃん?相当、雪んこシックなわけよ、あいつ。俺と話してても、雪んこの話題ばっか」
「照れ隠しだよ。麻里子は電話もメールも苦手だし」

私にくれるメールも内容は天気のことばかりだった。『ロンドンは曇ってばかり』そればかり。

「雪野は元気?就活ノイローゼとか、なってない?私の彼氏だったら、ちゃんと雪野のフォローしといてよ!だってさ。…いやいやいや、お前が雪んこの彼氏かよ?っていうね」

私はくすくすと笑った。なんか麻里子らしいな。わがままそうに見えるけど、本当はとても優しい子なのだ。

「…俺は麻里子にデキた彼氏とはなんたるか、学んでるような気がするね。素質あるよ、あいつ。彼氏になる素質…」
「なんだー、それでかー」

私は納得した。

「カンちゃんが今日、私に変に絡むのはヤキモチだったのか」
「それもあるけど、秦と雪んこ見てるとさ、こっちがヤキモキするんだよね」
「…ヤキモキ?それ、どういう意味?」
「麻里子がいなくなってから始まった夜のドライブだけど、主犯は俺じゃないぞ」
「え?」
「秦だ。秦が麻里子がいなくなって淋しがってるお前のために始めたことだ」

私はカンちゃんを見つめた。その目は遠くにいる親友と、とてもよく似ていた。

「『最終面接、落ちた!就活って、なんでこう人間否定された気分になるの??神様、ひどい!むきー!!』っていう、今日のお前のLINE(ライン)にいち早く気づいて、みんなにドライブの声かけたのもアイツね」

私は何も言えなくなってしまった。
みんなだって忙しいだろうに、就活スーツを着たまま、駆けつけてくれたんだ。

「就活っていっても別に人間否定されるわけじゃない。お前が否定されるような人間だったら、俺たちはそばにいない。俺たちは雪んこの人柄に感謝してるくらいだ。最初お前がゼミで声をかけてくれなかったら、同じグループになろうって言ってくれなかったら、俺たちの大学生活、こう面白くはならなかった。雪んこのいないところでみんな言ってる」
「いるところで言ってよ!そ、そういうのは…!」

カンちゃんの言葉にグッときて、ついどもってしまった。

「きっとその思いは秦が一番強いんだ。特に警戒心の強い奴だったから」

ゼミで初めて秦を見た時、昔の麻里子を思い出させた。教室の片隅にいる孤高の存在。きっと笑ったら、いい顔をするんだろうな。見てみたいな。だから、声をかけたのかもしれない。

「寒いのか?鼻とほっぺた、また赤くなってるぞ。さすが、雪んこ!」
「カンちゃん!」
「爆笑する秦なんて一生お目にかかれないと思ってたのになあ」


    *


私は、誘拐される。

「動くな!」

私は彼に声をかけた。

「おとなしく、手を上げろ!」
「今度は雪野が誘拐犯か?」

秦は一人で、横浜BLITZのチケット売り場窓口にいた。何やらコソコソしている。

「そう。おとなしく何をしていたのか、言いなさい!」

秦は観念して、ゆっくり手を上げた。

「せっかくだから、記念にPRETZを一箱、ここに置いてこうと思ってさ」

見ると、窓ガラスに立て掛けるように、新品のPRETZサラダ味がひっそりと置かれている。私は笑った。

「きっと朝やって来た人、意味わかんなくて不思議に思うだろうね」

秦も笑った。今のは『鼻で笑う』とは違う笑いだ。4年近く色々な秦を見てきたからわかる。

「ありがとう。私を誘拐してくれて。ここに連れてきてくれて」
「え?」
「昔ね、ここに麻里子と一緒に来たんだ。麻里子がライブに誘ってくれたんだけど、ようやく打ち解けられた気がして嬉しかったな。舞い上がりすぎて、何のライブだったかも覚えてないくらい」
「お前らは高校からの付き合いだもんな。…淋しくないか?」

秦の優しさも今はわかる。いっぱい見たから。いっぱい知ったから。

「今、麻里子がここにいてくれたらなって思うときもあるけど、語学留学はあの子の夢だったし、麻里子様も頑張ってるんだから、私もいちからエントリーシートを書いて頑張るよ。だから…」
「…だから?」
「ちょっと淋しくなったり、落ち込んだりした時は、また今日みたいに誘拐してくれる?」

秦はふっと笑った。

「いいよ」
「みんなが忙しくて無理な時でも、秦一人で覆面を被って来てくれる?」
「別にいいよ」

『別にいいよ』も『いいよ』のうち…。
ポジティブにそうとらえていると、一人ぶつぶつ言う私がおかしかったのか秦がまた笑った。

「雪野が助手席に乗ってくれるならね」

神様、麻里子様!

今なら私、最強のエントリーシートが書けるかもしれない。




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=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ A Red Season Shade『Ghosts & Clouds』× BLITZ PRETZ ★

恋愛話や登場人物はフィクションですが、夜中のドライブは仲間たちとの体験談です。私は赤福と名水には参加してませんが、横浜BLITZでPRETZはやりましたよ。今はなき、横浜BLITZに感謝を込めて。ちなみに作中の覆面のお『肉』の方のモデルは、ゆでたまご『キン肉マン』です。

① A Red Season Shade『Ghosts & Clouds』
http://www.youtube.com/watch?v=fK2bjJX_NaQ
この音楽を聞いて生まれた物語。秦くんの最後のセリフが聞こえ、その仲間たちが見えてきました。ドライブのお供にどうでしょうか?アーティスト情報が少ないのでマイスぺ貼っておきます。私も最近知ったのですが、フランスの5人組とのこと。
A Red Season Shade myspace
https://myspace.com/aredseasonshade
② 横浜BLITZ
http://www.tbs.co.jp/blitz/y_map.html
③ グリコ『PRETZ』
http://www.glico.co.jp/pretz/

追記:登場人物のモデルは、このとき読んでいた漫画、南塔子「ReReハロ」かな。雪んこみたいでカワイイ頑張る女子リリコ(料理上手!)は大好きなヒロインです。
南塔子「ReReハロ」 試し読みができるみたい。
http://betsuma.shueisha.co.jp/lineup/rerehello.html

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この道を何度も君と通った気がする。

「この道を?」

そうだよ。

「…そうだったかしら?」

忘れてしまっているだけさ。

「こんな淋しい道を?」

決まってこんな冬枯れの空の下でさ。

「…ちょっと違う女(ひと)と間違ってるんじゃないの?」

いやいや、そうじゃない。

「じゃあ、本当に私なんだ」

そうだね。

「…そう言われれば、そうだったようなと思わなくも…」

ほらね。

「…ないかもしれない」

…そうきましたか。

「教えてよ。私はここでどうしてたの?」

言っていいの?

「どうぞどうぞ」

君は半泣き状態で、涙を流さないように空をにらんでたよね。

「うわー」

君は怒り極まれり状態で、頬を膨らませて空をにらんでたよね。


「うわー!」

何度も人生にこけたり、つまずいたり、見ててハラハラしっぱなしだったな。

「しょうがないじゃない。だって、にんげんだもの」

元気出せよ、みつこ。

「みつこって誰??ここは、みつをじゃないの?」

一応、君も女の子だからね。ちょっと考慮して可愛くしてみた。

「みつをもびっくりね」

彼女ができて喜んでるよ、きっと。

「それこそ可愛いな」

やっと笑ってくれたね。

「ありがとう。いつも笑顔にしてくれて」

ままならない時は、またここに来るといい。そして、この道を抜けるんだ。

「うん」

抜けた先で、何が君を待ってようとも。

「そうね」

勇気も覚悟も、心意気すら本当は必要ない。

「ただ、歩けばいい」

…わかってるじゃないか。

「この道を何度も君と通った気がする、からかな?」

ほらね。

「もうすぐ雪が降ったら、道がなくなっちゃうけどね」

…そうきましたか。

「その時は、私の足跡が道になるよ」


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ Simon & Garfunkel『冬の散歩道 -A Hazy Shade of Winter-』 ★

https://www.youtube.com/watch?v=bnZdlhUDEJo
なぜか急に聞きたくなってしまった曲。彼らの音楽が好きだった兄の影響かもしれません。渋いセレクトになったかもしれませんが。私の物語とはあってないかもですが。昔の音楽、結構好きなんです。主題歌になったドラマを見たことがなくて、いつか見てみたいんですけど、衝撃的な内容らしく、未だに勇気がありません…。でも、いつか見てみよう。本当はこの音楽でミステリーとかサスペンスタッチの物語を書きたいなあと思ってたんですけど、また違う路線に…歌詞には近い世界観なのかな。いつかこの曲でミステリーorサスペンス系が書けることを願って。

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私は立ち止まって、ゆうに10分は、ひらひらと舞い落ちる桜の花びらを眺めていた。

「おーい、行くぞー」

声がして振り向くと、そこには何度見ても見飽きない、もう一つの優しい顔があった。

「はーい」

彼のもとに向かい、並んで歩き出した。どちらからともなく手を繋ぐ。いつものように、思わず顔がほころんでしまう。

この世の不思議のような、当たり前のようなことに…。

彼も同じように感じてくれていたらいいな、と心から思った。すると、彼はふわりと笑って、こう言ってのけたのだ。

「来年もまた、ふたりで花見に来るか?」

たまらない彼のそのセリフに、私は大きく頷いた。


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=影響を受けた作品のご紹介=
ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★『【第39夜】  冬ノチ春。』の元ネタ★

気づく方もいるかもしれないので先に。これは以前UPした「冬ノチ春。」の元ネタのようです。今回見つけたので、こちらもUPしてみました。雰囲気と文章も、ほぼ一緒ですが…。

ちなみに『【第39夜】  冬ノチ春。』はこちら。興味のある方はどうぞ。
http://short2story.blog.fc2.com/blog-entry-41.html

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