「あと4分で世界が終わっちまうんだって」

見ず知らずの男にいきなり声をかけられた。

は?

「だから、あと4分で世界が終わっちまうんだって!」

…へえ、そうなんですか。そうですか…。ていうか、あんた誰!?

「俺がわかんないのかよ?」

見た目、ちょっと怖そうな人。う~ん、記憶になさそう。新手の勧誘か何か…?

「まじか~」

男はショックだったのか頭を抱えて、しゃがみこんだ。でも、グッと顔を上げて立ち上がる。

「俺はお前に会いに来たんだよ!」

え?

「残り4分!お前のしたいことをしろ!」

…そう言われてもなあ。緊急地震速報よりキツイですよ、それ。

「うわ、もうあと3分しかねえじゃん!」

…わー、あっという間だねえ。

「何のんきにしてんだよ!お前はねえの?何かしたいこと」

…いきなりすぎて、思いつかないなあ。

「あと3分の命だぞ?」

カップラーメンの世界に突入しちゃったねえ。 そう言えば、安藤百福(あんどう ももふく)さんって偉大だよねえ。

「…お前なあ。確かにカップラーメンの開発者は偉大だけど、こんな時に思い出すのやめて…。うわ、あと2分!!いや、2分きってる!!」

特に何かしたいとか思いつかないなあ。ところで、あんたは私に会いにきて、それで終わりでいいの?

「俺?俺はお前のやりたいことを叶えに来たんだよ。でも、することねえし。意味ねえし。もう1分もねえし」

そっか。悪いことをしちゃったね。でも、意味なくはないんじゃない?

「は?」

最後の時間を私にくれたんでしょう?

「…そうだけど」

ありがとう。

「…俺が誰かも知らないくせに」

そうだね。

「…世界が終わっちまう理由も知らないくせに」

それはこれから知れるじゃない。

「なんでそう余裕なの?つまらないんだけど…はい、いつの間にか残り10秒きりました」





最後の時間をありがとう、ノストラダムス。



男が私を見つめるのがわかった。



私の記憶の中で、世界の終わりって大騒ぎするの、その人くらいなんだよね。



「今度の予言は当たるから恨んでいいぞ」



恨まないから、私のしたいことを叶えて。やっと思いついたんだ。



男は頷き、私は笑って手を伸ばした。



手をつないで。 

1

一緒に世界の終わりを見届けて。



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=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ くるり 『ワールズエンド・スーパーノヴァ』 × ドラマ『世紀末の詩』 ★

なんか数の埋め合わせて的な物語になってしまいました…。タイトルは聞いてた音楽より。200までのこり50!

① くるり 『ワールズエンド・スーパーノヴァ』
彼らの中で一番好きな曲。 
http://nicoviewer.net/sm10908269

② ドラマ『世紀末の詩』
あることをきっかけに社会からあぶれてしまった男二人と謎の女の子。一緒に暮らす中で、様々な人と出会い、愛とは何かを問う1話完結の哲学系?ドラマ。特に山崎努さん演じる教授が好きでした。BD売ってないんですよねっていうか、UPしてるYouTube凄すぎ…。
今回の物語の影響をうけたのはたぶんこれ。第9話「僕の名前を当てて」
https://www.youtube.com/watch?v=HBuHU5eFbKY
個人的に、好きな回は以下。
第2話「パンドラの箱」
https://www.youtube.com/watch?v=684kHloFrDQ&list=PL8D9AFE35DA6E8DBC&index=1
第4話「星の王子さま」
https://www.youtube.com/watch?v=UCpx_A_Qkyg&list=PL8D9AFE35DA6E8DBC&index=24
第7話「恋するコッペパン」
https://www.youtube.com/watch?v=JQL8w3xSDjY
第10話 「20年間待った女」
http://www.pideo.net/video/pandora/0a548a8111046760/

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最近の福(ふく)ちゃんの悩みをあなたはご存知?

ほら、彼もいい年ですからね。三十路目前と言うから、まわりの友人たちはものすごい結婚ラッシュで、さあ、大変!ご祝儀と言う名の大出費に、友人代表の感動のお言葉。いい加減、財布も祝辞も尽きるってもんです。

福ちゃんも色々と愚痴りたくなりますよ。

…俺、ご祝儀分、いつか取り戻せるのかな? とか。
…う~ん、友人って言うほど仲良かったか、俺たちは…?とか、ね。

なのに態度に出さず、にこやかにスマートに物事をこなす彼。
なかなかの男前だと思いません?

福ちゃんこと、福山治雅(ふくやま はるまさ)くんは見た目も悪くないですし、背丈もあります。学生時代は空手部主将をつとめました。人徳も責任感もあってみんなに頼られる存在。外見や性格は申し分ないんですけどね。

…彼、ダメなんですよ。あれが、ないの。

自分でもようやくそのことに気付いたようで、私のところに毎日通うようになったんです。

…お賽銭やお供え物を持ってね。

あら、やだ。 ご挨拶がおくれましたね。 私、“神”と申します。

福ちゃんが毎日通う、神社の神様です。これでも恋愛成就の神様をやっているんですよ。ここまで言えば、福ちゃんの悩みもなんとなくわかるでしょう?

「…俺、女運がないんでしょうか、神様?いいかげん、嫁がほしいです!」

もう福ちゃんったら、彼女を通り越して、嫁が欲しいだなんて、切羽詰まった気持ちがありありと伝わってきますね。私もいい男に毎日通われて悪い気はしませんから、御利益と言う名の神様パワーを使いたくなったり、なかったり…。

でもね、毎日彼を見ていてね。私も女運がないの、よくわかりました。
こう言っちゃなんですけど、福ちゃんもいけないと思うんですよ。

実は彼のもとに嫁候補というか女性はけっこう現れているのに、福ちゃんはどれもこれも逃してしまうんです…。ある一言のせいで。その話をしようじゃないですか。

福ちゃんは漁港のある田舎街に住んでいます。早朝、役場の仕事に行く前、ランニングをするのが彼の日課。そのコースに私の住んでいる神社があって、途中休みがてら、いつも寄ってくれるんですね。(その時に、お賽銭とお供え物をガッチリgetです!)

ある朝、彼が海辺を走っている時のこと、一人の若い女性がふらふらと海に入っていくじゃないですか!(実はこの海、自殺の名所という噂あり)。福ちゃんは正義感の強い男ですから、彼女を助けたわけです。

彼女は無事でした。特に大きな怪我もなく。でもね、心がね。失恋の痛手をおってましてね。福ちゃんは優しいですから、彼女の話を親身になって聞いてあげました。

彼女は妻子ある人と深い仲になっていたそうです。でも、一緒になれないことで苦しんでいましてね。お腹には子供もいるのに誰にも相談できないし、どうしていいかわからなくて、気付いたら海にいたらしいんです。

そんな彼女に、福ちゃんは言いました。

「相手の男ときちんと話した方がいい。一人で抱え込む問題じゃないから。もし、もう一度海に行くしか道がなかったら…」

もし、もう一度海に行くしか道がなかったら…?

『 俺のところに嫁に来ればいい 』

男前きちゃったよ、コレ!男も女も惚れちゃうよ、そんなん言われたら!!ってみなさん思うかもしれません。きいた女性なんてもうイチコロって。…う~ん。それ、女心を、女性を、ちょっと甘く見てますから。

これをきいて、彼女は自分の愚かさに気付きました。

自分は何をやっているんだろう。見ず知らずの男にそんな優しい言葉をかけてもらうなんて…。嘘でも、その言葉に大きく救われた。よく考えてみると、この優しい男と不倫相手は人間的に雲泥の差。そんな相手と付き合っていた自分が恥ずかしい。あんな男、あてにならない。お腹の子は私が守らなきゃ!

もう戦闘モード&母性スウィッチが入ってしまって、なんなら一人で生きていく覚悟もできてたりして、しっかり立ち直って帰ってしまうんです。女は強し!ですね。

福ちゃんと言えば、実は本気でプロポーズをしたつもりだったのに、女性は颯爽と帰ってしまうじゃないですか。後で失恋していたのは自分だったのか…!?と苦笑するわけです。まあ、傷ついた女性が元気になったのなら、まあ、いいか…とも思うんでしょうけど、優しいですからね。

そんな失恋の痛手を負った女性がこの海にはよく来るんです。そして…。

福ちゃんが女性を助ける。
  ↓
福ちゃんが女性にプロポーズまがいのこと言う。
  ↓
女性はなんだか強くなって帰っていく。
  ↓
福ちゃん、失恋!
  ↓
ダメじゃん!

その繰り返し。

男前過ぎてもダメなんですよね、彼がそのいい例です。一見モテそうなのに、いい人どまりで終わってしまう不憫な男。負のオーラがやんわりと見え隠れしていてね。なんとなく残念な霊でもついてそうな…。

まあ、私的にはそこが可愛いんですけどね。街の住人もそうらしく、福ちゃんのおかげで海での自殺者が減り、福ちゃんにプロポーズされると恋愛のご利益があるという謎の噂まで広がって、新たな街の観光スポットとなりつつあります。知らぬは本人ばかりなり、です。

福ちゃん、ごめんなさいね。あなたの恋愛もそのうち、私が叶えるつもりですよ。

でもね、もう少しだけあなたを眺めていたいなあって思うんです。優しくて、間抜けなあなたを。あら、やだ。もしかしたら、私が福ちゃんに恋しちゃってるんですかね。私も女神(メス)のキツネですから。女運のなさ、絶好調ですよ、福ちゃん。

ね、もう少しこのままで。
いざとなったら、私が女性に化けて出ますから。



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=影響を受けた作品のご紹介=

ここでは上の拙い物語がたぶん影響を受けたんじゃないかと思われる作品をご紹介します。 お時間や興味のある方はどうぞ~。

★ Supercar 『 Baby Once More 』 × 小花美穂『あるようでない男』 ★

10月に更新があまりできなくて11月巻き返せるといいんですけど…。年末まで200は難しいかな。頑張らないと。追記ですが、この作品の影響も受けてたかも。あたたかな気持ちになれます。マハさんのデビュー作かな?私は映画視聴のみですが。主題歌moumoon の「Evergreen」もいい。
原田マハ『カフーを待ちわびて』映画予告
https://www.youtube.com/watch?v=EsqrGz0vVK4

① Supercar 『 Baby Once More 』
この曲を聞いて生まれた今回の物語。物語タイトルはこれより。ゆるくていい感じ。最近、何かしら音楽を聞けば物語ができてるような気がする。これを機に音楽、開拓せねば。
https://www.youtube.com/watch?v=rGMo0f_BuMY

② 小花美穂『あるようでない男』
小花さんと言えば『こどものおもちゃ』が有名ですが、私は何気にこれも好きでした。当時「猫の島」という短編集に入ってて、収録作品全部良かった記憶が…。もう一度読みたいなあ。『あるようでない男』 は文庫化され、高校生編と社会人編があるそうです。私が読んだのは高校生編みたいですね。
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%AA%E3%81%84%E7%94%B7-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-58-11-%E5%B0%8F%E8%8A%B1-%E7%BE%8E%E7%A9%82/dp/4086194244/ref=pd_sim_b_6/378-4919386-6241161?ie=UTF8&refRID=1DP5E6ZKJ8JG25F7YF2M
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「鬼は、あなたね」

そう言われ、私は目隠しをする。

「さあ、私をつかまえて」

そう言われ、私は戸惑う。

「音をたよりにするのよ」

そう言われ、私は首をひねる。

「手を鳴らすから」

そう言われ、私は頷く。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私は歩き出す。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私は手を伸ばす。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私の手はさまよう。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私は焦る。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私の呼吸は荒くなる。

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

どうして、つかまえられないの?

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

どうして、つかまえられないの?

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

そう言われ、私はようやく気づいた。

「鬼は、あなたね」

そう言うと、鬼は笑った。


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ある人から、聞いたことがある。

幸福の国に住む者は、誰でも幸福を味わうことができる。

しかし、それは彼らにとっての本当の幸福ではない。

なぜなら、彼らは幸福という言葉も、その意味すらも、知らないのだから。


ある人から、聞いたことがある。

幸福の国に住まない者は、誰しも幸福を求めている。

しかし、それが彼らにとっての本当の幸福なのだ。

なぜなら、彼らは幸福という言葉も、その意味をも、知っているのだから。
神様、あなたはこの娘さんを妻とすることを望みますか。

はい、望みます。

順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、夫として生涯、愛と忠実を尽くすことを誓いますか。

はい、神様なのでできないことはありません。自分に誓います。

娘さん、あなたはこの神様を夫とすることを望みますか。

はい、望みます。

順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、妻として生涯、愛と忠実を尽くすことを誓いますか。

はい、相手が神様なのでできないことはありません。喜んで誓います。

わたしは、お二人の結婚が成立したことを宣言いたします。お二人が今わたしたち一同の前でかわされた誓約を神様の神様が固めてくださり、祝福で満たしてくださいますように。

…………え、神様の神様?

どうしました?おふたりさん。なに、変な顔をしているんですか?

神様にも上には上がいますよ。は?そんなこと、知らなかった?そんな自分の思い通りになんていくわけないでしょう。ちょっと神様、何ですか、その態度?感じ悪いですよ。私を誰だと思っているんですか?神様の神様は私なんですよ。こら、娘さん!騙されたなんて人聞きの悪い。おふたりさん、どうして指輪を投げるんですか?なに、けんかしているんですか?ちょっとあなたたち、本当に結婚する気はあるんですか?

ありません!この結婚、なかったことにして下さい!!

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ねえ、あなたの声がきこえる。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

今日もあなたの声がする。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

私はいつもその声で目覚め、桜がまだ咲いていないことにがっかりするの。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

あなたと私は、一体いつ会えるのだろう?

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

あなたは、どこにいるのだろう?

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

私はあなたに会いたくてたまらないから、眠る前にいつも、明日は桜が咲きますようにと祈っているの。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

あなたもきっとそうなのね。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

だから、こんなに声がはっきりと聞こえてくるのね。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

ねえ、私の声も、あなたに聞こえているの?

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

私は今日も待っているのよ。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』

あなたと私の声がいつか重なる日を夢見ているわ。

『 サクラハマダカ、サクラハマダカ 』
いらっしゃい。

あなたの名前は?あなた、自分の名前を覚えてないの?そう。でも、気にすることはないわ。私も同じ。私も自分の名前なんて知らない。そんなのあるだけむなしいだけよ。

ここ?…ここを説明するのは難しいわね。とにかく、ここは話をするところなの。そして、話を聞くところ。私もそれしか言えないわ。ここに来る人はみんな話をしたくてたまらないし、誰かの話を聞きたくてたまらないという人ばかり。あなたもそうでしょ?わからないって?あなた、面白い人ね。大丈夫。そのうちそうなるから。

ほら、あそこに満月がみえるでしょう?

月の満ちる夜だけ、ここに人が集まるのよ。私が一番のり。あなたは二番のりね。でも、順番なんて本当は関係ないのよ。ここではただ、好きな時に思ったことを口にすればいいだけ。好きなように、言葉を並べればいいだけなのよ。

まだ他の人たちが来るまで時間がかかりそうね。なら、私が何か話をしましょうか?どんな話がいいかしら?こんな夜だもの。素敵な話がいいわね。そうね。じゃあ、『星つくりのコック』なんてどう?あなたなら、きっと気に入ってくれると思うわ。

この夜空に輝きを放つあの星が、どうやってできるかをあなたは知ってる?

実はね、あれは『星つくりのコック』と呼ばれる者たちがつくっているのよ。彼らはね、決して姿をあかしたりはしない。もしかしたら姿すらないのかもしれないけど。彼らはただひっそりと作業を行うの。誰にも気づかれないようにね。

星ができる源は幸せのちからと言われているわ。私たちの幸せが星を作るなんて、とても素敵でしょう?だから、あんなに尊くて、輝きに満ちているんだわ。でも、だからこそ、私たちの幸せは長くは続かない。

それは『星つくりのコック』が知らぬ間に、私たちの幸せを横取りしているから…。

不思議な話よね?私たちを生んだ星に今度は私たちが犠牲をはらっているなんて。そのことを知った時、私もあなたと同じ顔をしていたわ。素直に喜べないのよね。

でも、彼らも悪気があってしているんじゃない。それが彼らにかせられた使命だから。しょうがないことなのよ。あなたもしょうがないと言って、何かをあきらめたことがあるでしょう?

ほら、また一つの星が生まれた。生まれたての星の産声を聞いてみて。泣いている声があなたにも聞こえるでしょう?

まだあんなにも幼い。かわいい赤ん坊なの。自分がなんて貴重な存在かも知らない無力な子供。こうやって星は生まれるのよ。

どう気に入ってくれたかしら?

たぶんあなたなら気に入ってくれると思ったんだけど。そう、良かったわ。気に入ってくれて。話を聞いてくれてありがとう。

でも、浮かない顔をしているわ。どうしたの?

そういえば、随分時間がたったのに、まだ誰も来ない?そうね。…でも、私はあなたがいてくれればそれでいいの。私はあなたが来てくれたことが、とても嬉しいのよ。喉から手が出るほど。

…だって、これでようやく成長できるから。

実はあの話、まだ終わってないの。まだ、ただの始まりに過ぎないわ。

生まれたての赤ん坊にはミルクが必要。赤ん坊には成長するための、とびきりの力が必要なの。それは幸せの力よりも尊いものなのかもしれない。『星つくりのコック』は星をつくるだけで、その後のことを忘れているバカなやつら…。

だから、赤ん坊の星は人の元へ自ら降り立つしかない。月の満ちる夜にだけ、星は人の姿をかりて、自分で生きる力を手に入れるしかないのよ。

顔色が悪いみたいだけど大丈夫。少しずつ楽になっていくから。だって、あなたと私は一つになる。同じきれいな美しい星になるのよ。

そう言えば、あなたの話をまだ聞いていなかったけど、あなたの話は私の中でゆっくり聞かせてもらうわ。時間はたっぷりあるから。

さあ、私と一緒に素敵な星になりましょう。


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その腕の中は心地よく、私はまるで赤ん坊のように小さく丸くおさまっていた。

私は疲れていた。全てに疲れていた。

「迎えに来たよ」

ぼんやりとした白い輪郭。あたたかな光。

「よく頑張ったね」

涙があふれそうになる。その涙を優しく拭ってくれる。

自分は本当に正しいことをしてこれたのだろうか?

「そうだよ。だから、迎えに来たんだよ」

私の背を撫で、優しく抱きしめてくれる。これで良かったのだと私は思った。すると、私の体は軽くなり、ふわりと宙に浮いた。

「見てごらん?」

よく見ると、自分の背から羽がはえている。それは銀色で、とても美しかった。そして、私を愛してくれた全ての人々に見せてあげたかったと思った。

「それだけ美しく歩いてきたという証拠だよ」

嬉しさが込み上げた。私は確かに歩いてきた。だから、ここにたどり着いた。

「さあ、行こう。忘れかけていたものに再び会いに…」

その言葉に導かれるまま、私は自分の羽を使って、この地から飛び去る。ここまで歩いてきた自信を力にして…。

私はきっと、どこまでも飛んで行けるだろう。


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自分という人間の位置づけについて考えることがある。

俺は一体どこに立っているのだろうと…。そう思うたびに俺は、自分が細くてもろい塀の上に立っているような気がしてならなかった。

それは境界線だ。人間の境界線。

左側はゼロの人間、右側はマイナスの人間。

幸か不幸か俺はどっちにも属されていなかった。

俺を見ると双方の人間がお前はこっちじゃないだろう!と冷たい目を向けるからだ。
だから、俺はその境界にある塀の上に立つしかない。両手を広げて、必死にバランスを保つしかなかった。

しかし、唯一救いだったのは、これがどこまでも続く塀であったということだ。それは俺がその場に停滞することなく、前に進めることを意味していた。

だから、俺はひたすら前に向かって歩き続ける。そして、時たま後ろを振り返っては自分の運命を呪い、笑う。

永遠に塀の上にいることを余儀なくされた人間…。俺はその人間だ。


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今までこの地には、誰一人として訪れたことなどなかった。
ここはあらゆる生命を枯らせた大地だったから…。死の大地、砂漠。

ここに存在するのは情け容赦ない灼熱の太陽と生気を失わせる乾ききった風、見渡す限りに広がる砂の平原だけだ。

一体この地で昔、何が起こったのだろうか?

それすらも知る者も今となってはいない。もうそのことについて砂漠自身も忘れかけてしまっていた。

そこに、一人の老女が現れた。

体にはしっかりと日を避けるように布を巻いている。そして、古びた小さい壺をかかえていた。

砂漠はまるで夢でも見ているのかと思った。老女はここに何しに来たのだろうか?

突然、老女は抱えていた壺を振り回した。すると、そこから透明な液体が飛び散った。

それは水だった。

砂漠は驚き、その水の甘さに心を打たれた。しかし、それは簡単に太陽の熱に蒸発してしまう。それでも老女はその行為を繰り返した。

不思議なことに、その壺から何度も何度も水があふれた。

砂漠は戸惑いながらも、甘い水を欲した。そして、重要な何かを思い出しかけていた。

老女は精根尽きるまで水をかけ続けると、ついに倒れてしまった。砂漠は悲しみにくれたが、老女は二度と起き上がらなかった。

砂漠は泣いた。悲しくて悲しくて、いっぱい泣いた。

すると、今まで存在すらしなかった砂漠自身の水が生まれ、老女をすっぽりとその水の中におさめた。

それは命の水だった。すべての希望を秘め、愛に満ちた尊い水。

やがて、老女はその水の中で息を吹き返した。

砂漠は思い出していた。

かつて自分は大都市までもつくりあげた豊かな大地だったことを。生命に満ち溢れ、終わりなど考えすらしなかったあの頃のことを…。

「あやまりたくて…」

老女の言葉にやっと砂漠は全てを理解した。

人間はやがてこの地が使いものにならなくなると、早々にこの地から去ってしまったことを。取り残された砂漠はどうすることもできず、全てを、自分をも、枯らせてしまったのだ。そして、眠りにつこうとしていた。

「…本当にごめんなさい…」

老女の瞳から涙がこぼれ落ちる。甘い水が砂の大地に届けられた。

砂漠はもう一度信じてみようと思った。この老女を。この世のすべての生命を。

砂漠は激しく呼吸をはじめ、すべての生命を蘇らせた。いくつもの泉が生まれ、力強い木々が育ち、美しい花々が大地に咲き乱れた。それは再生だった。この地の、この世界の―。

老女は美しい少女の姿になっていた。
それは砂漠からのささやかな感謝の気持ちだった。

少女は濡れる瞳で大地に微笑みかけると、目の前に咲き誇る美しい一輪の花に口付けした。

それは誓いの口付けだった。

この地で一生ともに暮らすという、永遠の約束だった。



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